国さんのブログ一覧

ずいぶん前の新聞の記事である。

精神科医とホスピス医としての臨床経験から、多くの「人生の実力者」に会ってきた。
精神科医としては、長年にわたる息子さんの精神障害に根気よく付き合い、再三の入院にも
めげず、いつも穏やかにふるまう母親を思い出す。
「自分が産んだ子ですから、世話をするのは当然です」
といつも言っていた。
「人生の実力」の定義は「自分に不都合なことが起こったとき、その中に自分が人間として生きている証しを見ることが出来る力」であると思った。
ホスピス医としては、客観的に見れば、幸せからほど遠い人生の終わりの時に
「幸せな人生でした」と言って亡くなった６３歳の男性を思い出す。
早くに両親を失い、結婚生活で苦労し、仕事では同僚に裏切られ、ずいぶんつらい思いをした人であった。
亡くなる１週間ほど前の回診のとき、「入院したときのあの痛みがすっかり取れました。
ここへ来て本当に良かったです。ありがとうございました。幸せな人生でした」
と言った。
私の「人生の実力」の定義が変わった。
新しい定義は「どのような状況におかれても、その状況を幸せと思える力」である。
物事が順調に進んでいる時には、人の底力は見えにくい。
つらい、悲しい、やるせない状況、すなわち自分にとって不都合な状況になったときに
どのような態度でその状況に対処できるかで、その人の「人生の実力」が決まる。
その中に、生きている証しを見ることができ、その状況を幸せと思えるかどうかで
その人の実力が決まる。
人生の達人はその実力を持っている。
日々の生活の中で少しづつ実力を養成したいものだ。

考えさせられる言葉である。
自分はこの記事を小さくコピーしてラミネートして財布の中に入れています。
つらくなったときに呼んで自分を励ますようにしています。
皆さんもよろしかったらどうぞ。