今月は前半に立て続けに一気読みして、
月後半は殆ど読んでないというアンバランス。
MH19も半分くらい読みましたよ?(笑)
ジャック・ヒギンズ 『鷲は舞い降りた』 (1975)
原題『The Eagle has landed』
タイトルだけは良く目にし耳にし、そのタイトルを引用したキャッチフレーズも数知れず。
でも、なんの話なの?( ̄▽ ̄;) と思っていたものが、たまたま本屋で新装版で積んであったので。
第二次大戦末期、戦況が敗色濃厚となってきた頃のナチスドイツ。
ヒトラーの密命を受け、イギリス東部の寒村にドイツ空挺部隊が降り立った。
彼らの目的は 「チャーチル誘拐」 。
…というトンデモストーリーかと思いきや、実はコレ、半分は実際の話なんだそう?
ホントに当時のナチス内でそういう計画があったらしい。
グランサッソでのムッソリーニ救出劇という“前例”に勢いづいた背景があるのでしょう。
………という説明そのものが著者の作り出した設定なのかもしれませんが?
ともあれ、二次大戦とナチスに関する情報を徹底的に集め、そこに巧みに肉付けしたフィクションですが、
もちろん史実の実在人物も登場しますし、IRAの人物が物語内でも重要な役回りをします。
(僕はその辺りの時代背景にあまり明るくないのですが)このIRA兵士も、おそらく実在の人物をモデルにしているのでしょう。
というリアリティさもこの作品の魅力ですが、
当時最も評価された部分として、
「それまでステレオタイプ的な悪役としてしか描かれなかったドイツ軍人を、人間味溢れるヒーローとして描いた点」があると解説文にありました。
確かに、主人公格のクルト・シュタイナ中佐は、
ナチス内の不条理に翻弄されながらも、プロの軍人としての誇りに溢れ、部下を想い、礼儀も重んじる、正にgentleman。
SSの恐怖体制に対し頑に自己の信念を守ろうとする情報部のマックス・ラードル中佐。
皮肉に富んだアイルランド人戦闘員リーアム・デヴリン。
口先ハッタリ演技で生きてきた詐欺師の伊達男 プレストン少尉が、無理矢理作戦に編入され屈辱を感じながらも一戦士としての誇りに目覚めていく様。
リッター・ノイマン副長、ゲーリケ操縦士、シュトルム軍曹、デヴリンに恋する少女モリー。
それぞれの人物が非常にリアルに、活き活きと“立って”いる。
一方、SS長官ヒムラーの徹底した “ド腐れ外道” っぷり等、ナチスの中の典型的悪人という存在も上手く見せています。
(「ヒトラーの密命」という事になっているが、実際のところはヒムラーの独断によるものと読める)
むしろ、ヒトラーですらも、実は(無自覚の)傀儡な面もあったのでは?=ヒトラーは真に悪なのか?というニュアンスが見えたり。
“プロフェッショナルの男達” の物語、です。
Red13指定 必読図書!
ブラム・ストーカー 『吸血鬼ドラキュラ』 (1897)
まー…「ドラキュラ」ほど有名なダークヒーローも居ますまい。
映画に舞台にゲームに小説。「吸血鬼」を題材にした作品は常にどこかに転がってます。
それらの“元祖”と言える本作品。
僕もご多分に漏れず、そうした世に溢れた“一人歩きしたドラキュラ像”しか知らないもので、
こりゃ本家本元がどういうモノか知っておきたいゾ、と思って手に取ってみた次第。
派生亜種はオリジナルあってこそ。古典には不動不滅の所以あり。
…ま、ストーリーについては、敢えて言いません(笑)。
気になる人は僕と同じ様に、実際に読んでみてください。
一般的な “ドラキュラのイメージ” は第1章の部分から大きくなったものですね。
ただ、この作品の一つの特徴として、
全編を通して “回顧録” の形をとって展開されるという所。
リアルタイムの情景を著者が第三者の視点から述べるのではなく、
登場人物が記した日記や手紙を、時系列順に並べてある、という形。
これがハラハラドキドキの心理効果に一役買ってる気がする。
一つの状況に対して、誰か一人の視点でしか語られないので、
全体像が見えない部分がある。
その “見えない” という事がホラー作品では重要な要素ではないのかな?なんて。
つまり、この事が一つのネタバレになるのですが。
作中では「ドラキュラ伯爵の思考」というのは一切明らかにならないのです。
他の登場人物達があれやこれや憶測しているだけで、ドラキュラ伯爵自身の言葉というのは驚く程少ない。
後の世に多大な影響を与えた功績という以外に、単純に小説としても傑作だと思います。
強いて言えば、終盤にもう一山欲しかったけど。
教養としてどうぞ(笑)。
ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』 (1957)
ロマンチックハインライン、です。
人語を解する猫、という猫版スヌーピーみたいなのが出てきます(笑)。
1957年時点での“未来”、1970年と2000年を描いた時間モノSFです。
作中の1970年は、我々が知ってる1970年とは違うので、そこを意識しておかないと
時々「ん??」と混乱しますw
21世紀の今我々が読むなら、2070年と2100年に置換して読んだら丁度良いかも。
主人公ダニエル・デイヴィスは、友人と小さな会社をやっていたが、秘書として雇い入れた女にハメられ会社を乗っ取られた上、無理矢理コールドスリープさせられ30年後 2000年の世界に放り出される。
最初はその秘書の女を探し出して復讐しようと考えていたが、
30年後の世界には、(彼にとってはついさっきである)30年前に彼が商品化しようと頭の中で考えていた商品が大普及していた。
純粋な好奇心からその商品の特許を調べてみると、自分と同じイニシャルの名で1970年に特許が取られている。
だが、自分はそんな特許を申請した覚えは無い。
何しろまだ頭の中にあるだけで設計図すら描いていない。
だが、目の前にあるその製品は自分の考えた物そのものだ。
ならば、その特許は誰がどうやって1970年に取ったのか?
…という、時間謎解きです。
最初はダメダメでマヌケな主人公が、最後にはスカッと爽快どんでん返しで栄光を掴むという、シンプルで気持ち良いお話。
特に女関係に関してはオトコノコなら一度は夢想するであろう展開かも?(笑)
ハインラインの初期の作品ですが、代表作に挙げる声も多い。
ページ数も少ないし、軽く読めます。