碓氷峠を17時に出発して、国道18号→関越道→北関東道と経由し、ようやく東北道に入ります。入って間もなく、栃木ICから鹿沼ICの間で前が見えないほどの豪雨に遭いましたが、幸い事故もなく無事通過。その後は休憩を取りつつ淡々と東北道を北へと走ります。
安達太良SAで遅い晩御飯を食べて、福島市内にある吾妻PAに着いたのは23時。入ってすぐの所に空きスペースを見つけてすかさず駐車。今晩はここで一夜を明かします。
日付が変わって20日日曜日。夜が明けても駐車場は満車状態のまま。7時を回ってからようやく起き出し、PA内のコンビニで朝食と行動食を購入。今回の本命、数ある廃線跡の中でも難関と謳われる赤岩廃隧道群へと出発します。
福島飯坂ICで降りて国道13号→県道5号と進み、松川の谷沿いの狭い道をひたすら奥へ。ちょっとした開墾地に出れば大平地区。赤岩駅へと下る砂利道の路肩に車を停めます。
辺りの斜面の様子を伺ってから、リックサックに飲食物とライト類を詰め込んでさっそく出発します。まずは車を停めた道とは反対側の道を進みます。そこから谷のある右側の雑木林へと踏み込んでいきます。
具体的に廃線跡へのルートを掲載しているサイトやブログはありません(そもそも道などないし、危険な場所だからとあいまいにしているケースがほとんど。)。少しでも下りやすい場所を選んで、木を頼りに急傾斜の林の中を谷へと降りていきます。傾斜は30度以上はある感じで、転べばそのまま下まで転がり落ちていきそうです。
写真を撮ることなどすっかり忘れて、急斜面を左右にトラバースしながら降りていくこと約20分。木々の向こうに平場と角張ったものが見えてきました。
第7号隧道
福島駅から7番目のトンネルという意味です。
正直、「ああっ、一発で見つかって良かったぁ!」というのが本音でした。それくらい運動不足の私には厳しい地形でした。
さて、私がやって来たこの廃線区間、明治32年に開通しましたが、目の前にあるこの第7号隧道の内部変状と崩落が原因で、明治44年に放棄されたものです。
近づいてもう少し周りを見てみます。
トンネル上部の「7」のプレートも健在でよく見えます。
せっかくなので、中に入ってみました。ピンボケに写ってますが、天井部分に通路と同一方向に亀裂が入ってます。
そのうち、東海道本線旧石部隧道みたいに真っ二つに割れ落ちるのかもしれません。
さらに奥へと進んでいくと「キーキー」と鳴き声がしてきて、そのうち大量のコウモリが頭上を大乱舞。何度も目の前をかすめていきますが、あまり気にせずに進んでいくと、やがて天井から大量の土砂が噴き出している場所で行き止まりとなりました。
ここで左壁面にある横坑へ四つん這いになって潜り込んでみます。
外側のトンネル外壁に出ました。この辺りもサイトなどでよく見た光景と変わりありません。
再び横坑に潜り直してトンネル坑口へと戻ってきました。
この林の先に第6号隧道がありますが、木々に遮られて全く見えません。
かつての線路跡を歩くこと数分で第6号隧道に着きます。
反対側へと通り抜けるため、中に入っていきます。
こちらのトンネルは第7号隧道と違い、煉瓦が剥がれ落ちているところもありますが、おおむねきれいな状態を留めています。
福島側坑口へと出てきました。
煉瓦の目地に山目地が施されています。
かつて「6」のプレートが付いていたであろう金具だけが残っています。
これで第6号隧道を後にします。
この先の線路跡も草木に覆われています。
100mほど歩いた線路跡に煉瓦の台座が残っていました。
目の前が初代松川橋梁跡です。
かつてアーチだった部分の痕跡が残っています。
松川左岸側に煉瓦橋台・橋脚がボロボロになりながらも残っています。
一番川寄りの橋脚の土台は高い石積みとなってました。
橋脚の脇の急斜面を下り、松川の河原へと降りました。巨石がごろごろしています。
上流側
下流側
続く第5号隧道は、下流側写真右手の崖上にあります。このまま正面からアタックするのは困難と言われてますが、まずは試しにと石伝いに何とか対岸に渡り、土を被ったガレ場と岩場を慎重によじ登っていきます。
何とか第5号隧道の真下まで来ました。
あと10mも登れば到達という所です。ルートになりそうな段差も見えてますが、この先をうまく登り切る自信がどうしても持てません。眼下の河原まですでに20m以上の高さがあり、もし踏み外したら一巻の終わりです。
数分思案しましたがここは無理をせず撤退。バランスを崩さないよう一歩一歩足場を確認しながらゆっくりと降ります。
河原に降りたところでひと休憩。今度は登りやすいルートがあるという下流側へ河原沿いに歩いていきます。しかし、行く手を淵と巨石に阻まれてこちらのルートも断念。ここでいったん初代松川橋梁跡の上まで戻り、中腹から河原へ行けそうな場所がないか下流側へと探していきます。
目の前に滝が現れて進めなくなったところで、今度はあたりの草むらから動物が動いたような草音が何度もしました。小走りで一気に第6号隧道まで引き返します。
こうなっては居る居ないにかかわらず安全第一なので、周囲を警戒しつつトンネルを抜け、吐き気がするほど息を切らせて急斜面を這い登り、車へと戻りました。
今回、最低限見ておきたいと思っていた遺構をこの目で見られたので良かったですが、人跡まれな場所に行く以上、いろいろと危険があることを再認識させられた廃線歩きとなりました。