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2020年06月21日

国道420号新段戸トンネルの旧旧道「阿蔵峠」の峠道を歩く

2020年6月20日土曜日、豊田市と北設楽郡設楽町の境、国道420号新段戸トンネルの旧旧道にあたる「阿蔵峠」の峠道を歩いてきました。「阿蔵」は「あぞう」と読みます。

阿蔵峠とその峠道は、現在の地理院地図(地形図)には記載されていませんが、愛知県の峠をまとめた本に阿蔵峠の記載があり、それを踏まえてインターネットで検索してみたところ、旧旧道を通らないルートで峠を訪れた方のブログがありました。峠付近はかつてのまま現存しているようだったので、旧旧道から探索を試みてみることにしました。

今回の探索ルートのうち、旧旧道に相当するのは地図中の手書きの赤い線になります。ちなみに、西側(左側)が豊田市、東側(右側)が北設楽郡設楽町になります。

※地理院地図(電子国土Web)に加筆。

戦前の地形図はこちらになります。

※5万分の1地形図「足助」(明治24年(1891年)測図、昭和3年(1928年)要部修正測図、昭和6年(1931年)発行。)。

地形図で見ると阿蔵峠の峠道は縣道(県道)表記になっています。下山村誌から明治時代以降の足助から阿蔵峠までの道路の歴史を抜粋してみました。

まず1876年(明治9年)以降に足助~安実京~葛沢~梨野~阿蔵~宇連野~南設楽郡境のルートが二等里道「下山街道」に認定。この時点では、阿蔵から阿蔵峠を越えるルートは認定されていませんでした。続いて1896年(明治29年)に同街道は東加茂郡の重要里道に認定。

1920年(大正9年)、旧道路法に基づき、足助から阿蔵が愛知県道足助新城線に認定。この時に、阿蔵~宇連野~南設楽郡境のルートは県道認定されず、代わりに阿蔵~阿蔵峠(北設楽郡境)ルートが認定され、これで阿蔵峠の峠道が県道となったわけです。

さて、現地へとやって来ました。新段戸トンネルの豊田市側坑口前の駐車帯です。ここから歩いていきます。


新段戸トンネルです。延長1403m。2001年(平成13年)11月22日の開通です。


現国道と旧国道の分岐へと来ました。まずはここから登っていきます。


新段戸トンネルが開通するまでは、この道を昼・夜ともドライブでよく通ったものですが、あらためて見ると狭い道です。


地図上の赤い線の起点に来ました。左側へ分岐する林道保戸嶋線へ入ります。


続いて、無名の林道へと入る予定でしたが、出入口が山の斜面を切り崩したようになっていたので、もしかしたら旧旧道が違う場所にあるかもしれないと思い、通過してもう少し奥へと歩いてみることにします。

無名林道を通り過ぎてすぐの左側に道跡らしきものがありました。山を下っていく方向ですが、ひとまず跡を追ってみることにします。


入り込んでみると明らかに道跡でした。しかし、旧国道の真上辺りまで来たところで薮がひどくなり、これ以上追うことは止めました。




この道跡は、阿蔵峠の峠道である可能性は捨てきれないので、寒い時期にでも再探索してみたいと思います。

林道保戸嶋線まで戻ってきました。今度は今しがた歩いた道跡と同じ沢の上流側を登ってみることにします。


道跡らしきものはありますが、かなり急傾斜です。それでもひとまず登っていってみることにします。


だいぶ沢を登り詰めた所で道跡が無くなってしまいました。地図を見直して、右側の尾根を越えて、無名林道へと向かうことにします。


何とか無名林道へと出ることが出来ました。




ここからは余計な色気は出さず(笑)、無名林道を歩いていきます。地形図に記載されているルートから見て、この林道は阿蔵峠へと向かう峠道と何らかの接点があるはずです。


しばらく歩いていくと林道は途絶えてしまいましたが、その向こうに細くなった道が続いているのが見えています。


いよいよ本命、阿蔵峠への昔ながらの峠道になったようです。


林間を通り抜ける古道の例に漏れず、大きな倒木があります。ここは根っこ側へと迂回します。


けっこう良い状態で道が残っています。




若木が生えていたり、倒木があったりしますが、この程度なら通行には支障もありません。




視界に入る稜線が低くなってきました。いよいよ峠に近づいてきたようです。


阿蔵峠に着きました。幅広の切通しが埋もれることなくきれいに残っています。




ちゃんとありました。事前に拝見したブログに載っていた境界標石です。左列には「東加茂郡下山村」、右列には「北設楽郡段嶺村」、下に「境界」とあります。


下山村は2005年(平成17年)に豊田市へ編入され、今は存在しません。同じく段嶺村も1956年(昭和31年)に近隣町村との合併により、新たに設楽町となりました。「段嶺」は「だみね」と読みます。

ここから設楽町域へと入り、峠を下っていきます。


切通しが終わった所で左へと曲がっていきます。


ここからは道なりです。所々、道が削れて細くなってしまっている所があるので、注意して通り抜けます。


この峠道、戦前の地形図では特に「荷車ヲ通セサル部」とはなっていないので、もともと道幅はそれなりに確保されていたと思われます(それでも3mくらいまででしょう。)。

この沢を渡ったところで、一旦、昔ながらの峠道は無くなってしまいます。


ここからは、作業道を歩いていきます。おそらくは、昔の峠道を基に拡幅したものでしょう。




この作業道が旧国道へと合流する手前に立っていた表示板です。「経営道 藤立環状線」と読み取れますかね。


旧国道へと合流しました。ここは左折し、坂を下っていきます。右折すると埋め立てられた旧段戸トンネルがありますが、そちらへは行きませんでした。


国道用のキロポストが残ったままです。


段戸山への林道の分岐です。道路に付いている轍を見ると、林道へ向かう方が交通量は多そうな感じです。


ここまで旧国道を歩いてきましたが、このガードレールが途切れた地点から、今度は右側の斜面へと下っていきます。




戦前の地形図と現在の地形図を見比べると、昔の峠道は先程の段戸山への林道との分岐を過ぎると、川沿いに高度を下げていっているように見えるので、道跡がその通りに残っているか確認します。

斜面を下っていくと平場が続いていました。上流側は大きく抉れてしまっていたので、下流側へと辿ってみることにします。この時点ではまだ峠道の続きであると確信はしていません。


川沿いで湿気が多いためかひどい薮です。そこに倒木も重なって、なかなか進むことができません。


薮をかき分けて20~30m進んだ所にあった沢で、道跡と思しき平場は途絶えてしまいました。


しかし、先の方を睨んでみると、この先にも何となく平場が続いているのが見えます。慎重に沢を渡って対岸へと進みます。

対岸へと登り直したところ、平場が続いていました。これは峠道の続きとなる道跡と見ていいでしょう。


しかし、この先の道跡も倒木が次々と現れたり、枯れた笹と思われるものが密生したままになっていたりして、最近歩いた廃道の中では劣悪な部類の状況を進んでいくことになります。




ようやく石積み擁壁を見つけました。これで間違いないでしょう。


完全に進退窮まるほどには酷い状況でないことが、ある意味厄介です(笑)。




無数の倒木が折り重なる沢。げんなりしながらも、上流側へと迂回していきます。




なかなか「優しい」廃道になってはくれません…。






また沢を渡っていきます。


少し一息つける状況になってきました。


また沢を渡ります。奥へと道跡が続いているように見えますが、自然の斜面なので、右へと曲がっていきます。


逆方向から見た同じ沢渡りの部分です。渡った先にまた密生した枯れ笹があるのが見えています…。


斜面から浸み出した水でドロドロにぬかるんでいます。


「ああっ、もう!!」という感じで、枯れ笹を踏んで踏んで踏んで踏み倒して進んでいきます。こんな状況なので全然ペースが上がりません。


今までの中で一番大きな川へと出てきました。多分、当貝津川(鰻沢)だと思います。道跡の先端に石積み橋台が見えています。


対岸に橋台は見えません。見えづらいですが、写真中央部に人工の水路があるので、建設の際に取り壊されたのかもしれません。


ここでは河原までちょっと高さがあるので、もう少し渡りやすい場所がないか上流へと進んでみます。


上流へと進んでみましたが、岸の高さは変わらず、道跡も崩れていたので、これ以上進むことは止めました。


結局、橋台の横の斜面に動物が付けたと思われる踏み跡があったので、木を頼りにその踏み跡を使って河原へと降りました。

河原から見た橋台です。積み方はよく見かける「谷積み」という手法ですが、使っている石が長方形に整形されていて、何とも言えない違った印象を与えてくれます。




では、川を渡って対岸へと進むことにします。が、ここである問題が発生しました。長靴が沈まない程度の流れの深い所へ足を置いたところ、いきなり長靴の中に水が侵入してきたのです。

うっかり流れにはまり込んだわけでもないので、ちょっとパニックになりながらも足早に対岸へと渡りました。

長靴を確認すると脛の辺りの場所が裂けていました。


長靴のゴムが裂けてしまうほどの衝撃や感触は憶えがありませんが、知らないうちに鋭い枝か細い木の切り株で裂いてしまったのかもしれません。

この先はもう川はないはずなので、気にせず進むことにしました(もちろん、この場ではどうしようもない事なので。)。

渡った先も全然気を抜かさせてはくれません…。






「ああ、もう辿るのは止めだぁ!」と隣の斜面へと転がり出ました。


斜面の一番下の端を歩いていきましたが、けっこう小石がゴロゴロしていたり埋まっていたりして、何か排土場のようでした。


これ以上進む理由もなくなったので、斜面を直登して旧国道へと出てみたら、ちょうど国道420号の豊邦大橋のたもと付近でした。


これでやっと車へと戻ることができます…。


あの山の斜面の中で悪戦苦闘していたわけですね…。


新段戸トンネルの設楽町側坑口です。


これから1403mの直線トンネルを歩いていきます。




本来ならほぼ平坦の(本当は若干勾配が付いてるとは思いますが。)舗装路で、さっきまで歩いてきた廃道に比べれば何倍も歩きやすいはずですが、すっかり疲れていたことと、トンネル内があまりに単調で、何度も何度も立ち止まってしまいました。

トンネル内にあった市町境の表示。阿蔵峠の標石に比べると味も素っ気もないです。


25分程かけて、ようやく豊田市側の坑口へと出てきました。正直、ホッとしました。廃トンネルなら長さ2kmのものを一人で潜ったことがありますが、こんな疲れは感じませんでした。やはり対象物に興味や関心が無いとダメですね(笑)。


やっと車に到着。全行程3時間20分ほどでした。


最後に、行きの時点で通らなかった無名林道の出入口付近を歩いてみました。


無名林道へと合流するような道跡がないか探しながら進みましたが、何も見つからないまま、山越えして合流した地点に着いてしまいました。

とにかくこれでまた一つ、古い峠道とその峠を踏破することができました。

ここ2~3か月、県外への移動が自粛となっていたために、県内の廃道探しに重点を置いた活動になっていますが、自分なりに地元の埋もれてしまった古道を掘り返す良い機会になっています。図書館で地誌を読んで、下調べや後付け確認したりするのも楽しいですしね。

この先、さらにマイナーな古道を探していく方向性になりそうですが、飽きが来るまではもうしばらく追っていってみたいと思います。
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Posted at 2020/06/21 20:59:38

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