『スペインGP注目会見』スーパーアグリ、交渉決裂からレース出場までの舞台裏
なんとかスペインGP出場にこぎつけたスーパーアグリは、佐藤琢磨が13位で完走(写真)。今後の予定について、ホンダ関係者は「ゴールデンウィーク中に亜久里代表とホンダとで、話し合いを行なう予定」と語っている(C)SAF1 08
今後のパートナーとしてシーズン開幕前から交渉を続けていたマグマ・グループとの話し合いが、スペインGP開幕直前に突然暗礁に乗り上げたスーパーアグリ。一時はスペインGP参戦も危ぶまれていたが、佐藤琢磨とアンソニー・デビッドソンが2人そろってレースに出場することができた。今回はスーパーアグリのもうひとつのパートナーであるホンダのある関係者に、これまでの詳細と今後の見通しについて語ってもらった。
--4月16日、突然「マグマ・グループとの交渉が決裂した」という旨のリリースがスーパーアグリから出されましたが、いったい何があったのでしょう。
ホンダ関係者「スーパーアグリもホンダもマグマ・グループと交渉していましたが、スーパーアグリを支援するのはマグマ・グループそのものではなく、マグマ・グループが交渉を進めていた別の組織です。私から直接その名前を口にすることはできませんが、ウワサされているところ(ドバイ・インターナショナル・キャピタル/以下DIC)だと思ってくれていいです。交渉は順調に進み、バーレーンGPの際に我々も直接その組織の人間と会い、成立まで秒読み段階に入りました。そこで、バーレーンGPの後、急きょ私は日本へ帰らずにロンドンへ飛び、我々の弁護士さんと契約書を作成する作業に入ったんです。ところが、4月16日になって、突然向こう(DIC)が交渉を白紙に戻した」
--その後、どうしたんですか。
ホンダ関係者「そのため、我々は先方(DIC)の要求を再度聞き入れて、かなり譲歩する形で再提案しました。再提案は基本的に向こうの要求はすべて聞き入れた内容になっていましたから、これでようやく成立することができると思ったのですが、スペインGP前日の4月24日になって、先方から再び『交渉を打ち切る』という内容のFAXがマグマ・グループに届きました。1回目(4月16日)は3行。2回目(4月24日)はたったの1行だという寂しい内容でした」
--バーレーンGP期間中に、ほとんど合意に達していたということですが、どのような内容だったのですか。
ホンダ関係者「スーパーアグリというチームは、簡単に言ってしまうと、(F1マシンを開発して製造していく)技術もなければ、施設もないチーム。あるのはF1に参戦することができるグリッド権だけ。だから、先方はそのチームを買収するということは、そのグリッドを買うだけとなってしまうから、そのチームがその後きちんとF1でやっていけるかどうか、当然心配になる。そこで我々は技術的なバックアップに関してマグマ・グループと交渉を開始したわけです。具体的にはエンジンを貸し出すにあたっていくらかかりますよとか、あるいは2010年以降はもうカスタマーシャーシは認められなくなるため、それまでのつなぎとしてのシャーシの開発にはこれだけお金が必要だとか、また2010年以降の技術的な援助はこうしますよという感じで、数年間F1でパートナーを組んで戦うことに関しては合意されていたんですけどね……」
--マグマ・グループとの交渉が行き詰まった経緯はわかりましたが、それがなぜスペインGPへの出場危機へとつながっていったのでしょうか。
ホンダ関係者「世の中には、『ホンダがスーパーアグリの出場にストップかけている』といったような身勝手なウワサを立てた人もいますが、実際はそうではありません。確かに現在のスーパーアグリは財政的にギリギリの状態です。そして、数十億円という借金をホンダが肩代わりしていることも事実です。だから、ここでスーパーアグリを欠場させてもホンダが得することはないのです。確かにスーパーアグリのスペインGP出場に対して最終的なゴーサインを出したのはホンダです。それは、スーパーアグリの状況がスペインGPに出場できる状態にあったと判断したからです。スーパーアグリの最大の債務者はホンダですが、ホンダ以外からもスーパーアグリは借金しています。そして、スーパーアグリが倒産した瞬間に、管財人たちが突然サーキットにやってきて、スーパーアグリの機材を引き上げてしまうということは十分考えられます。我々もB・A・R時代に経験していますからね。いくら亜久里代表が『レースを続ける』といっても、チームの経営はマネージング・ディレクターなど数名のトップマネージメントで行なわれいて、その中の誰かが破産宣告を行なっても不思議ではないからです。というのも、イギリスの国内法では『ディレクター』と名がつく役職の人は、債務超過で経営を続けた場合に、違法行為と判断されて処罰される可能性があるんです。だから、すべての機材は予定通りバルセロナに運び込まれて参戦できる状態にあったのですが、『いつでも引き上げられる状態でいろ』という指示を出すしかなかったのです。そして、こうした状況に陥らないことを確認したうえで、今回スペインGPに参戦したわけです。だから、『ホンダがスーパーアグリの出場に待ったをかけている』というようなウワサは心外です。そもそも2年前にスーパーアグリがF1に出場できたのも我々が援助してきたから。デポジットだって、私が個人的に探した銀行だったんですから」
--今後はどうなるのでしょうか。
ホンダ関係者「マグマ・グループとの交渉は切れていませんが、あそこ(DIC)との交渉はもうないでしょう。それに代わるインベスターとの交渉を始めているところですが、次のトルコGPは2週間後。時間的に非常に厳しい状態です。さらに現在のスーパーアグリの状況も本当に厳しい。しかも、トルコGPはヨーロッパラウンドですが、機材の運搬はほとんど飛行機だから、資金的により大変になります。これまでも何度も(FOMと)もめていたようですから、今度はどうなるか心配です。本当にいつ潰れても不思議はない。我々はスーパーアグリがあって初めてサポートできるわけで、そこが倒産したら引き上げるしかない」
--昨年のコンストラクターズ選手権9位というポジションに対して、テレビ放映権料の分配金は入ってきていないんですか。
ホンダ関係者「入っていますが、分割で入ってくるんです。年間でもらう十数億円の18分2ずつ2ヶ月ごとに入ってくるだけだから、運転資金にはとうてい及びませんよね」
--この後の予定は?
ホンダ関係者「ゴールデンウィーク中に亜久里代表とホンダとで、話し合いを行なう予定です」
--ありがとうございました。
2008年4月29日 13時40分 ISM
Posted at 2008/05/06 00:36:43 | |
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