プラットフォームはカムリと同じGA-Kだが、クルマの作りはカムリとは全然違う。GA-Kの設計目標である、物理的な優位性を維持するために、ハイブリッドシステムのトランスアクスル化、バッテリーを後軸の前に移動を行い、重心バランスの適正化を図っている。
ホイールベースはカムリより45mm長く2870mmある。ボンネットやフェンダーをアルミ化し、カウルセクションを閉断面化設計、ルーフガゼットを追加、リアバルクヘッドの環状構造化、Vブレースの追加、前後パフォーマンスダンパーの装着など、最近のトヨタのクルマづくりの展開により軽量・高剛性化が図られている。 これらの対策の結果、レクサスの中型セダンとしては「軽量な」1730kgに収まっている。 (なお、アテンザ2.2のL Packageは1610kgである。)
ES ボディ構造
ドライバビリティは、紛れもなくFFのドライブフィールであり、フロントの重さも感じるし、挙動も「このクルマはFFである」ことを何も隠さない代わりに、素直な特性を示すように設計されている。 非常に身も蓋もない言い方をすると、北米仕様のアテンザの2.5Tターボのドライブフィールにかなり似ている。
アテンザ2.5T(北米仕様)
トヨタのFFが、マツダ化しているのは、このクルマに限らないが、電動パワステのステアリングフィール、ロールの発生速度、旋回時の荷重移動への反応など、マツダ車的なドライブフィールになっている。マツダのGVCに相当する機能を搭載していない分だけ、ESの方がわかりやすいFFの動きをする。 これは褒めていることになるのかどうかわからないが、ステアリングの操作感は、トヨタのもつラバー感がなくなり、ポルシェやマツダのそれに近い、すっきりと路面状況がわかりやすい設定に変わっている。
2.5L4気筒ハイブリッド。他の同エンジン搭載モデルとドライブフィールは変わらない。
最後は、ダンパーを含めた乗り心地だ。話題は、「スイングバルブショックアブソーバー」で、これは、日本の公道で走るレベルの速度域において、サスペンション構造と相まって良い乗り心地を示す。 いつか、脚については細かいことを書こうと思うが、低速での小さなショックは、減衰を強くして引き受けると、固有振動数近辺の強いショックがない。しかし、これを実現するには、ダンパーの低負荷での衰滅を急速に立ち上げねばならない。そして、中高速で多用するより大きな衝撃には、衰滅を弱くしてやるとフラットライドに近づく。これは、シビックTypeRのような完全電子制御では可能なのだが、機械式でこれをやろうと思うと、3Wayや4Wayという仕組みが必要になるのだが、これに近いことをスイングバルブを利用して実現している。 理想的に衰滅力は変えられない代わりに、低速域での衰滅力の立ち上がり速度を高める(衰滅力自体ではなく)機能をもたせ、中高速では何もしない特性をスイングバルブ機能で与えて、路面の変化をいなそうというわけだ。 この装置の原理と乗り心地の関係は、クルマにおけるバネの振動と衰滅力の関係を理解していないとピンと来ないかもしれない。
スイングバルブ機構付き、ショックアブソーバ(世界初)