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2018年05月28日 イイね!

新アクセラのリアサスペンションの秘密

新アクセラのリアサスペンションの秘密「新型アクセラのリアサスペンションは、トーションビーム(TBA)になる」

MAZDA SKYACTIV Gen2の最初の一台であるアクセラのサスペンション形式がわかると、自動車業界では一つのネガティブな話題になった。多くの自動車ファンは、「コスト優先のTBAかよ」とか「マツダは終わった」と予想通りの反応を口にするようになったし、ジャーナリストや専門家ですらマツダの技術者の意図を正しく捉えられた人は少ない。

SKYACTIVE-Xエンジンとボディデザインの方は、わかりやすい話題になったので、多くの人が認識しているが、SKYACTIV ビークル・アーキテクチャーを理解しようとする人はほとんどいないし、SKYACTIV Gen2を理解しようとする人はもっと少ない。

今日は、Gen2の新TBAサスペンションに隠された秘密を探っていくことにする。



SKYACTIV Gen2試作車

■現在のマツダの状況

技術論に入る前に、マツダの経営戦略とGen2は大きな関連があることを先に理解しておきたい。
今日は、マツダの経営分析の話をするつもりはないが、マツダの経営は安泰というわけではなく、北米では自信のあるCXシリーズでさえ、多額の販売奨励金を投じないと数が売れないことが大きな衝撃になった。つまり、他社よりも魅力のあるクルマをよりアフォーダブルに提供する必用があり、さらにトランプ政権の政策を見れば、日本で作って輸出するというビジネスモデルには、大きなリスクが存在することが明白だ。マツダの次期戦略におけるSmallモデルの中心的な車種であるMazda3は、ライバルより魅力的でお買い得なだけでなく、日本、北米、メキシコ、タイの工場で生産・販売できる設計のクルマでなければならない。
※注:2018年1Qの北米の売上状況は、新型CX-5、CX-9が前年比20%以上増加して、前年度21.8%増 販売管理費の使途状況は不明



北米仕様 現行MAZDA3


■なぜTBA形式をを選んだのか

サスペンションの目的は、路面や状況の変化に関わらず、タイヤの接地面変化を起こさず安定して路面に密着させ、路面からのショックの入力を吸収していなすことだ。 もしTBAに構造が単純で解析しやすいという利点があるなら、ネガを発生する状況を把握するのはより容易になる。

サスペンションの解析でもコンピュータシミュレーションが決定的な役割を果たした。MBD(Model Based Development)の活用である。得意とするジャンルを限ってやればやるほど、コンピュータの能力を生かすことができる。スーパーコンピュータに過度な期待をしてもだめで、コンピュータの計算は、人間が想定できている世界(モデル)の中で繰り返し高速計算をして最適解を出すのだから、MBDで解析するならば、要素は少ないほど早く最適解に達する。というのは当然のことだ。


サスペンションのタイヤ取り付け部分の剛性を格段に上げてやり、タイヤの左右間を結ぶ鋼材を「適切な厚さ」で仕上げて、力のかかる向きと速度を理想通りにコントロールするには、どういう形状が必要なのかをMBDで求めたのだ。 「商品力が下がる」という指摘は理解している。しかし、マツダの次の戦略である、Small Vehicleグループを成立させるには、軽量で構造が単純ながら、次世代の走りを実現できるサスペンション構造が必用なのである。 カタログに「前後ダブルウイッシュボーン」と書くよりも、ネットの口コミに、「新アクセラの乗り心地はすごく良い」と書かれる方が実は効果的なのだ。



SKYACTIVE ビークル・アーキテクチャーによる、サスペンションの役割


■サスペンションに期待すること

Gen2では、従来のバネ上へ伝わる力の大きさ(最大値)を衰滅させて低減する考え方から、バネ上へ伝える時間をコントロールして遅れなく滑らかにする考え方に変わった。 たとえば前輪が突起物を踏んだ場合、従来よりも早くタイヤを動かして力全体を滑らか吸収するようにしたいということだ。 巨大な重量を持つジェット機が着陸する時に、着地速度を調節して滑らかに滑走路に接地する方法と同じ考え方である。



シャシーの進化(新Mazda3シャシー)


この目的達成するには、3つの課題を解決せねばならない。

①路面から受けた力によるサスペンションの支持剛性部分のブレをなくす。
②タイヤの上下バネ運動を低減した上で衝撃を吸収する。
③②と同時に上下の入力をより早く適切な時間で滑らかに増加させるるために
 サスペンションの取り付けアーム角を拡大し、接地面を適切に制御する。

「本当にTBAでは、タイヤの位置決めと振動遮断の両立はできないのか」

という疑問から、Gen2のサスペンション形式の議論は始まった。


■TBAの長所と短所

サスペンション形式に、マルチリンクなどの複雑なリンクを持つ構造を用いるのは、様々な車両の状態に対してタイヤを接地させるバリエーションが多く取れるからである。 一方で、リンクが増えるとそれらを接続するブッシュのゴムの遅延が発生するので、情報の伝達速度も遅延するという欠点がある。また、リンクの設計を誤ったり、時系列を経ることでこれらのリンクの組み合わせにずれが発生すると想定外の動作をしてしまう。 これを封じるためにレースカーなどでは、乗り心地や路面の荒れへの追従性を無視して金属ピロボールを使って遅延とずれを防ぐわけである。 マツダだけでなく、他社も複雑なマルチリンクの構造に発生する様々な応力変化をスーパーコンピュータでモデルをでシュミレーションして、適正化を図って設計しているけれど、要素が多いがゆえに千差万別な組み合わせを解析し、最適解を求めることは容易ではない。

一方で、トーションビーム方式は、左右のタイヤが組み付けられているトレーリングアームを、センタービームという「棒」で結ぶという単純な構造なので、部品点数が少なく軽量で、力のかかる方向が集約しやすい。その代り、TBAは前側のブッシュにリヤタイヤの正確な位置決めと振動遮断という相反する機能が求められるから、大抵はどちらも中途半端なサスペンションになる。



トレーリングアームへのセンタービーム取り付け位置の最適化の図


マツダは、現行SKYACTIVEで地味に、トーションビームを改良している。現行デミオで、トレーリングアームのボディとの付け部分の角度を改良している。左右のトレーリングアームが接続する箇所だから、振動を制御するキーポイントである。ここには接続のゴムブッシュがはめてあって、ボディとつながっているわけだが、後輪が路面のギャップを踏んだ際に後方に動くように取り付け位置を変更している。この結果、ボディに伝わるショックを25%低減した。ならば、突き上げの吸収のために犠牲になっていた、ダンパーの縮み側の衰滅力を元に戻してやることができる。 ギャップを踏んだショックは、一度後方に逃げて、リアボディとセンタービームがゆがむことで吸収するので、上下の振動は素早く止めても、突き上げには影響しない。


取り付け角度(すぐり角だけ)の変更状態

 日本車の多くは、ユーザ様からの「突き上げがー」の声が怖くて、縮み方向の衰滅力を落として、びよーんとリアをゆっくり戻す設定にしている。(自動車メーカー側も愚かな設定だとわかっているけれど、お客様の声だから仕方ない)現行デミオはこの悪癖から解放され、前後ダンパーの縮み側の衰滅力を高めることができて、サスペンションの上下振動を素早く止めることができるようになった。

SKYACTIVE Gen2がTBAを装備しても、伸び方向、縮み方向のいずれにも自由な設定ができるわけで、SKYACTIV ビークル・アーキテクチャーを実現する上で、TBAではできないという理由が一つ減ったのである。



■TBAを改良する

TABの取り付け角度を最良にすることで、ダンパーの伸び、縮側の設定を理想的な方向へと変更できることがわかった。次は、トレーリングアームの中心的な部品であるセンタービームの改定だ。

センタービームの主たる機能には、

①タイヤを支持する機能
②車両のロール姿勢を制御する機能

の二つがある。理想的な形とは、両端のトレーリングアームとの接続部は、曲げ剛性を高く(変形しづらくがっちり固めるということ)設定することが有効なので、結合部断面を大きくしたい。 一方で、ロール姿勢を制御するには、ねじり剛性をクルマの特性にあった適切な値に合わせて、端から中央部の断面の大きさを決める必要がある。


ここまでわかったら、クルマの妖精に何をお願いしたらいいのだろう。

「タイヤの位置決めを正確にするために、タイヤついているトレーリングアームをがっちり固定した上で、同時に、センタービームの端から端まで使ってうまいこと振動をボディに伝わる速度を調整してください。できれば、その過程で振動も吸収してくれちゃってもOKです。」

とお願いすればいいのだ。


名前は、Smart Expand Beam(SEB)としよう。 と名前と理想の形は決まった。


つまり、こういう感じにSEBを整形できればいいんじゃないかと。



Gen2のサスペンションのポリシーは、「振動を適切な速度で伝達する」だったから、タイヤから入力された振動を伝える棒の直径を適切に変えてボディに伝わる振動の速度を調整できるように最適な形を計算すればいいわけだ。どう考えても、まっすぐな棒の形状のはずはなく、直径が滑らかに変わっていく形状になるだろうということは想像に難くない。

そこで、棒の太さの加減を、MBDで集中計算させて、その図面の通りの棒を作ることにする。

では、在来型のセンタービームと形状を比較してみよう。


在来式: クラッシュドパイプ式センタービーム
DJデミオに採用

鋼管から形状を変更することで各断面を成形した中空断面のパイプの真ん中を潰して接続する方法で、使用するパイプ径は、ロール姿勢の大きさに合わせたねじり剛性にあったパイプ径を使うことになる。ロール剛性を得る代わりに、トレーリングアームとの結合部分の曲げ剛性の大きさは、パイプの直径で決まってしまうので、どうしても端っこがヨワヨワになり、タイヤのついたトレーニングアームは好き放題な方向に動いてしまう。



新型:可変直径センタービーム と在来式の比較
上段の図の構成が現行DJデミオ、下段の図の構成が次期アクセラに採用されたSEB


新しいセンタービームは、ロール剛性に合わせた中央部のねじり剛性を確保した上で、センタービームとトレーリングアームとの結合部分の断面前後幅を拡大した。つまり、人間の骨と同じように、両端を太く丸く、中央を幅広くする形状の筒にしたわけだ。



可変直径センタービーム (SEB)
タイヤの両端を結ぶ棒がアーチ状に変化しているのが分かる


では、両者にどのような差が出るのか、比較してみよう。

直管とSEBの二つのセンタービームの各部位のZ軸まわりの、「部材の変形のしにくさ」(材料工学では、断面二次モーメントと言う)の比較を示す。



SEBと直管の断面二次モーメントの差異
(2本の管は、同じねじり剛性と質量である)


SEBは、直管に比べて、中央部からトレーリングアームとの結合部分に向けて剛性を増加させることができており、結合部近傍での部材の変形しにくさを同等重量で1.5倍にしている。(これは、比較図であって、実際に採用されるSEBは、材料と構造の見直しにより、より断面二次モーメント値が高い物が使われる)


同時にこのグラフは、各部の剛性をどのように設定すれば、理想的に振動を吸収できるかをも示している。振動の吸収を理想的にするには、直線的に直径を変化させるのではなく、偏微分方程式で示される線形で変化させていくわけである。この妙な形状が、Gen2のキーである。 現在でも、この形状の理想を求めて日々改定が繰り返されており、発売までにより理想に近いセンタービームを作ろうと改定が続いている。



SKYACTIVE Gen2サスペンションの実車構造(試作車)


こうして出来上がったりサスペンションは、剛性あふれるかっちりしたものではなく、人間の筋肉のように、「やわらかで力強い」構造に仕上がっている。 両端はしっかりと固定し、中央部は上下、左右に計算道理にたわみながら振動を吸収していく。新TBAを人間の構造に例えるなら、新しいセンタービーム(SEB)が骨であり、タイヤ、ダンパー、バネが筋肉の役割を果たすのだ。そのため、GEN2用のタイヤは、サイドウオールやトレッド面が柔らかい専用設計のタイヤを必要とする。 人間の体は、鋭敏性よりも正確性を重視して設計されている。GEN2もまた、この原則通りに作られている。 現在のSEBが最終回答というわけではないが、人間の生命に時間の限りがある以上、現時点で計算可能なモデルで最適解を求める方が、想定数値で複雑な機構を使うより早く正解に近い所にたどり着けるというわけだ。 よりコンピュータの解析能力が進化した時代の未来のモデルでは、さらに進んだサスペンションが設計されるだろう。



新Mazda3


■どうやって量産するのか

可変直径・形状パイプを使えば、理想的に剛性をあげられることはわかったが、どの会社もこんなことをしていないことには、理由がある。試作品ならば、鍛造の太い鉄の棒に穴をあけて、ガリガリ削って作ればいいわけだが、こんなものをどうやって量産すればいいのかということが、量産車における課題である。

パイプを作るには、鍛造した丸棒に穴をあけるか、板を丸めて溶接するかである。しかし、どちらの方法であっても、同一パイプ内の直径を変化をさせる加工は容易ではない。 また、硬い鍛造品に穴をあける加工は、簡単なことではなく、生産コスト的にも厳しい。 世界中の工場で生産するMazda3なのだから、特殊な生産設備も使えない。

要するに、
 「板曲げ溶接成形の生産性を維持し、在来のプレス機を使ってSEBを製造せよ」

と、言うのは簡単だが、実行することがさらに難しい課題が現れたわけだ。
生産工程に関する話は、金属加工の話になって興味がないと思うので省略するが、以下のブレイクスルーで安定した品質の中空の棒を作り出す生産方法を実現している。学術的用語を排して書くと下記のような説明になる。

1.可変形状の棒を作る際に隙間を完全密着した後に発生する弾性回復による隙間発生を最小化する数値を見出した。
2.隙間部分を埋めて、が溶接品質を確保するための「溶接のりしろ」を加えた断面形状とのりしろ幅を見出した



製造方法:3回に分けて折り曲げ、のりしろをきれいにつなげて溶接する。


このように、Small Vehicleに搭載するSKYACTIVE Gen2サスペンションは、新しいポリシーに基づいた構成と、世界中の工場で量産できる汎用性を達成したのである。 


新Mazda3

新TBAの製造においては、工場の生産設備を大きく変えることなく、組み付け方法も在来のTBAと同様なので、車両組み立ての生産性もこれまでとは大きくは変わらない。(無論、マルチリンクよりも生産性は高い)新Mazda3は、デザインとエンジンの話題が先行しているが、Small モデル用のサスペンションの完成度にも注目したい。
Posted at 2018/05/28 23:44:26 | コメント(3) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年05月24日 イイね!

アテンザの2019年モデルの目的とは何か

アテンザの2019年モデルの目的とは何か

5月24日にマツダから、アテンザの年次改良についての発表があった。
これまでリークされてきた内装、外装を含めサプライズはないが、改めてアテンザの改良について考えてみた。

GJアテンザは2012年に発表され、CX-5に続いてSKYACTIVE-Dを搭載する2番目の車種としてデビューした。SUV型のクルマに抵抗があるユーザにとって、流麗なセダンボディの新型アテンザは魅力的であった。 アテンザの中身は実質CX-5だったのだが、ユーザは魂動デザインをモデルカーそのもののようにまとったアテンザのデザインをまず気に入ったのだろうと思う。 私もその一人であったから、クリーンディーゼルよりもボディデザインで選んだと言ってよかった。 2014年、2016年と大きな改良を経てきたGJアテンザであるが、今回の商品改良は、外装、内装、サスペンション構造、パワートレインと全面的に手が入っている。 

日本はセダンが不人気で軽自動車とSUVが主役になっており、今更なぜFFの大型セダンであるアテンザに大きな改良をするのか、という疑問を持つ人はいるかもしれない。 実は、アテンザはマツダの販売台数の上でも重要な車種なのである。 アテンザは、海外ではMAZDA6と呼ばれ、2017年は、世界120か国で総台数の約10%近い15万台を販売する、重要なモデルなのである。 マツダのフラッグシップは、CX5でもCX8でもなく、変わらずにMAZDA6だというわけだ。 日本の路上ではアテンザを多くみかけないかもしれないが、中国、タイ、マレーシア、ベトナムと言った東南アジア圏ではDセグメントのスタイリッシュなセダンとして人気があるのだ。




旧アテンザ(2016年モデル)

2012年にデビューしたGJアテンザはデザインだけでなく、フロントヘビーなフロントを持ちながらも、中高速コーナーを得意としたハンドリングを持ち、クリーンディーゼルターボは、低速から出力を発揮する特性で、街中の走行が楽しく、高速道路では、卓越した直進性を持っていた。 2012年当時としては先進的な対衝突安全装備を持ち、MRCC(レーダークルーズ)による追尾型オートクルーズは、設定速度の最高が110km/hまででと制限はあったが、高速道路の移動を楽にしていた。


フロントヘビーな物理特性から、登りのタイトなコーナーを苦手にすることや、大柄なボディサイズなど、いくつかの欠点はあれども、日本の道路事情にも適したクルマであっただけでなく、よくしつけられた電気式のパワーステアリング、何度もデータを更新して熟成していった、SKYACTIVE-Driveの賢い動作がこのクルマの魅力であったと言える。日本でのセダン不人気のため、トヨタのクラウンまで売れなくなるような状態の中で、台数は多くでることはなかったが、大型のFFセダン(後に4WDモデルも追加)が十分に健闘したのは、ボディデザインとハンドリング、クリーンディーゼルの組み合わせによるものだと言えるだろう。 そして、セダンを評価する国ではさらに人気を博することとなったわけだ。 5年の間でマツダが得たMAZDA6(アテンザではなく)の改良点の中心は、強みであるデザインをより上品に差別化すること、乗る人の気持ちをリラックスさせる内装に進化させること、より静かに真っ直ぐ走ることであった。



旧アテンザ(2016年モデル)


さて、新型のアテンザは、その目的を達しただろうか。 日本市場は2012年の時以上にセダンの人気がない。現在のアテンザの本命は、優れた電子式常時4WDシステムを搭載する、アテンザの4WDモデルだと言えるだろう。 しかし、4WDシステムは優秀であっても、スバルの4WDセダンたるレガシーB4は、よりフロントが軽く低重心であり、価格も100万円近く安い。 そのため、残念ながらCX-5に比べて、アテンザでは、積極的に4WDを選ぶユーザは多くない。 しかし、アジアマーケットでは、まだFFが中心ではあるものの、北米や欧州では4WDの評価が上がってきている。 アジアや北米に向けたペトロエンジンと、今や世界で唯一といって良い本当のクリーンディーゼルを提供するマツダにとって、クリーンディーゼルの進化の両立をやめるわけにはいかないわけだ。



新アテンザ


新アテンザには、CX-5に搭載された技術がほぼ同様に搭載される。CX-5に対するセダン&ワゴンモデルという位置づけでもあるように、生産技術面でも売れ筋のCX-5に近くすることで、価格の上昇を抑えている。 デザインは、「マツダ化」した新カムリに比べて、いまだに魅力的であり、深い彫を持つボディ形状は、面の色の変化を生かすクリスタルレッドが似合う。魂動デザインにとっての大きな進化は、プレミアムレッドからクリスタルレッドへの移行であろう。 多くの人は気が付いていないが、ボディデザインに大きな変化がないのに、プレミアムレッドのアテンザは、あきらかに「旧式」に見えるのである。 マツダの強みである、魂動デザインの改良点は塗装以外にも大きく二つある。 一つは、「車高を下げてみせること」 もう一つは、シルバーの加飾を美しく、下品にしないように使うことで、ボディカラーとボディの筐体の美しさを引き出すことにある。 

ラジエターグリル、正面、背面、側面、伸びと深さを求めた新型ホイールを連続で見ていくと、MAZDA6としての「高級感」を引き出すために、強く輝くシルバーの加飾を連続させて、さらにその基準線を下方に下げるようにしてあることがわかるだろう。 正面のアイラインの上下をひっくり返し、フォグランプを廃止してまで下方に銀の加飾を追加し、と背面のシルバーのラインの位置を下げたことで、ボディ全体の重心位置を下げてみせる効果を狙っているわけだ。 ボディラインのデザインテーマを一切変えることなく、新鮮度とデザインの洗練度を上げることに成功していると思う。



アテンザ比較


室内は、構造的には大きな変更はないが、素材面、遮音面での更新が図られて、より一層静かで快適な移動を実現している。 ダッシュボード正面に貼られた東レ製の「ウルトラスエード・ヌー」と本木材で作られたダッシュボードが、高品質さを増している。 ウルトラスエード・ヌーは、2015年8月に東レが開発した、銀面調の光沢とスエードタッチを備えたハイブリッド人工皮革であり、マツダは早速東レに自動車用に使えるように共同開発を持ちかけて装備を行っている。 この素材だけで一本ブログが書けるほどのハイテク素材だが、マツダの他にレカロも採用を決めている。



Ultrasuede(R)nu 素材構成図



アテンザの内装への使用例 インパネ上部は本木材の装飾が行われている



アテンザのメーターパネル 液晶化され、ガラス投影型HUDを採用している。


もう一つの内装の大幅改良ポイントがシートである。今回は革シートにベンチレーションを加えただけでなく、フレームから構造を変更している。 新シートは、人間の脊髄の位置を正しく配置する理論に基づいて作られている。今回は細かくかかないが、マツダは今、「人馬一体ではまだ不十分」理論でクルマを設計している。その研究の一環から生まれたのが今回の新シートの構造帯なのである。 腰と脊髄と頭蓋骨を適切な形に整え、腕と足を理想的な形に配置してやることが、クルマが人間と同じ動きをすることの第一歩だという考え方である。(本理論はマツダがら学術論文として発表されている。)



シートに座る時の脊椎と骨盤の理想形状(マツダ)


シートの出来が悪いと腰が痛くなったり、脚がしびれたりするのは、体の中心の幹である脊髄に不要な力が加わっているからだとしている。背骨と骨盤の性能が遺憾なく発揮できる姿勢を崩さないことこそシートに求められる要件であり、新シートがアテンザに採用された。


新アテンザシート


ダンパーの取り付け位置は、2014年に行った思い切った設計改定で、設計上の誤りを修正して不要な突き上げを削減し、ショーワのダンパーを適切に動かすように、ボディ補強を行ったことで、前後共に快適な走りを実現できるようになった。 しかし、今回の改良では、直進時にハーシュネスを減らして走行性能をより上質にするためにサスペンションの取り付け位置を変更した。 マツダの設計は飛び道具を使わず、当たり前の方法で物理学上の理想を追求する形をとる。今回の改良で、直進走行時のハーシュネスが大きく改善される。


ホイールデザインだけでなく、サスペンション構造も変更した。

新エンジンに置き換わっても、物理的なバランスは変わらないから、相変わらず、Rの小さいコーナーは苦手だけれど、大人4人と荷物を載せて、1000km以上の距離を快適に移動できることが、新型アテンザの狙いである。 SKYACTIVE-Dは熟成してより静かに滑らかになり、パワーの出方も適切になった。 ペトロモデルの2.5はピストンなどの基本部品の見直しで抵抗が減り、出力が伸びたことよりも、シュンと上まで抵抗なく回ることを目標とした。 CX-5で採用した気筒停止機能により、実燃費が大幅に向上している。(実燃費で、一般道走行時に14km/Lレベルを期待できそうだ) 



新アテンザ


今回の改良は、「MAZDA6をより継続して売るためにはどうすべきか」と考えたものだ。オリジナルのロードマップでは、FRの新型シャーシに、SKYACTIVE-Xの直列6気筒エンジンを組み合わせて出す予定であったが、新SKYACTIVEのFRシャーシも、SKYACTIVE-Xも開発にもう少し時間を要する。 そのため、今回のMAZDA6の改造は、あと3年、市場で競争力を持たせるためのものだ。

日本市場のアテンザは人気がないクルマであるが、マツダは持てる最新の技術を注いだMAZDA6をアテンザとして登場させた。 仮にCX-5で失敗していたら、改善版をアテンザで出すつもりなのであろう。こうして、マツダのクルマは、それぞれが更新→市場テスト→更新と順を追って進めていくことで、車両全体のレベルアップを図ろうとしている。 今回のアテンザのチャレンジは、魂動デザインのシルバー加飾によるアップデートと、内装素材、新シートである。 これが市場で受け入れられれば、この素材はアクセラとデミオへと引き継がれていく。 


日本国内でも、北米でも、欧州でも、東南アジアでも、しばしば比較されるマツダとスバルは企業の大きさが同等くらいで、ともにハイブリッドもEVに関するアナウンスもしないといった共通点があるが、両社のクルマの開発に対するポリシーは異なる。 次は、スバルがどのような手を打ってくるのか楽しみにしたい。

Posted at 2018/05/24 21:42:45 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ
2018年05月16日 イイね!

千葉の新鮮な地魚と横須賀の地産地消のイタリアン

千葉の新鮮な地魚と横須賀の地産地消のイタリアン
「新鮮な魚が食べたいですね。」

魚と言われても、鯵から鮪まで様々なものがいるわけだが、この人が右脳でしか考えてない状態で、何が食べたいと言っても、答えは出てこないだろうと思った。それに、新鮮な魚というところまで指定したのだから、後は考えてほしいと思っているだろう。
そこで、館山に新鮮な地魚を食べに行く提案をしたところ、「関アジ」を思い出したのか、即答でOKであった。

日程の関係から、今回は遠くにはいけないため、千葉の館山にある、地魚で有名な寿司屋「富鮨」と、横須賀のイタリアンレストラン、「アクアマーレ」に行くことにした。 どちらのお店も予約は必須である。



当日は、写真の通りいい天気であるが、週末だから、朝からアクアラインに向かう道路は渋滞していて、海ほたるまでは、のろのろ運転が続く。 1.5に比べて2.0は同じギア比で、排気量が大きい分、低速トルクが厚いので渋滞時の走行が幌車より楽である。海ほたるあたりから、道路が空いて快適なドライブとなる。 



 館山フラワーパーク


房総半島を横断して、鴨川へ抜ける道を選ぶ。走りやすいワインディングロードと、苺が目当てである。多くのクルマは、マザー牧場や鴨川シーワールドに向かうため、館山自動車道を南下するルートを選ぶだろうから、逆行するルートを選んだわけだ。 今日は快晴でまさにオープン日よりであるが、同行者が「太陽を浴びると灰になって死ぬ体質」らしいので、太陽が出ている間はオープンにできないという、何のためにロードスターに乗っているのかわからない状態で走ることになる。 その点、RFは屋根を閉じていれば室内の狭いクーペになるだけなので、まだましなのかもしれない。

この時期は、苺狩りが盛んで、あちこちのでイチゴ狩りができるが、これもまた予約しておかないと、週末などは「今日は無理です」と断られることになるので、注意した方が良い。 「きみつのいちご」ということで、メジャーどころの「渡邉いちご園」に伺う。30分ほど食べることができて、お土産を買って帰ることもできる。「紅ほっぺ、やよい姫、おいCベリー、かおり野」と種類があるが、何を食べたのかメモをするのを忘れていた。



 渡邉いちご園のいちご


世間一般の女性の認識として、オープンカーと背の低いスポーツカーは好まれない。それがフェラーリであっても、ロードスターRFであっても同じである。(ちなみに、フェラーリF355より、RFの方が大分ましだとのこと。 F355は古いクルマだから仕方ないか)乗り降りはしづらいは、荷物は置けないわ。 さらに、美容に多額の費用をかけてる身からすれば、「わざわざ太陽の光を浴びるなんて自殺行為でしかない」というわけだ。 世間でロードスターを買うために、説得せねばならない相手がうんと言わない理由は、金銭的なことだけでなく、「自分の好みの反対」のクルマをなぜ買おうとするのかわからないということも多いのだと思う。


 
 かつて、F355は絶不評だった。。


気を取り直して、県道92号線を進む。 何かと不評のBOSEオーディオも、音楽ソースがスマホならば、大きなことは言えない。 流石にBlueToothでつないだ音は聞くに堪えないが、USBケーブルでデジタルソースをBOSEのアンプに流せば、それなりに聞けるレベルだと思う。 スマホ接続のいいところは、クルマのオーディオの音楽ソースを誰もが持ち込めることにあると思う。 過去の「カーオーディオ」の時代は、ドライバーの独りよがりな選曲で選ばれた音楽をずっと聞いてなければならなかった。 それは、聞かされる方も苦痛だっただろうが、準備する側もそれなりに苦痛だったのだから、それからの解放はありがたい。 また、相手の音楽の趣味が分かって、それはそれでいいものだと思う。たとえその中身がアニソンとボカロつながりの米津玄師ばかりだったとしても。



 iPhoneとマツコネはUSB接続でつなぐべき


道の駅などにもよりつつ、鴨川を経由して館山へと向かう。千葉県も関東地方の農産物の生産を支えていることがよくわかる。 この辺は、空からは見慣れた場所で、空中からはゴルフ場ばかりが目立つけれど、地上では様々な農産物が作られている。 道の駅で地場の野菜や落花生を買うのは楽しい。
 「富鮨」は住宅地から離れた海の近くにたっており、思ったより奥まったところにある。駐車場も前後で止めれば6台くらいは駐車可能だが、周りの道路は狭いので行き違いには注意した方が良い。 この店の主人は非常に話好きなので、旅程に時間がない人はつかまらないように注意した方がいい。鮨は大振りの地魚の身が乗っていて、安いとは言えないけれど、美味しいと思う。脂ののった白身がうまい。



 地魚の鮨(3240円)


千葉の郷土料理のさんが焼きと、伊勢海老のみそ汁を頂く。伊勢海老のみそ汁は小ぶりの伊勢海老が丸ごと入っていて、汁にたっぷりエビの味が出ているだけでなく、具も楽しめるので、是非注文した方が良い



 郷土料理のさんが焼き
この料理は初めて食べたが、なかなかにおいしい。


もう一人は、新鮮な鯵のなめろうを注文


 鯵のなめろう


伊勢海老の味噌汁を注文すると、お寿司のみそ汁が無くなる模様


 伊勢海老のみそ汁


お店は、岸壁に立っているので、部屋から眺めの良い太平洋が見える。鮨屋として評価することはできないけれど、珍しい千葉の新鮮な地魚を食べるという経験をする上では、適切なお店だと思う。


 太平洋


おなか一杯になったところで、海岸通りを回って、フェリー乗り場である金谷に向かう。わずか40分のフェリーだが、クルマもトラックもたっぷり運べる大きさなので、ある程度余裕をもって到着すれば積み残されることはない。 ロードスターは4M以下なので、航送料金も割安である。 約40分の船旅で久里浜に到着する。


途中を省きつつ、横須賀美術館の隣にある、アクアマーレに向かう頃には、太陽も傾き地表に沈みつつあるので、オープンで走行することにする。ヒータオン、シートヒータオンの状態ならば、寒がりの女性でも大丈夫ではあるが、そうまでしてオープンで走りたいという心境はきっとわかってもらえないと思う。多分。

アクアマーレは、それなりに有名なイタリアレストランで、週末は予約しないとまず入れない。今回は、メニューにないお料理も出してもらえるとのことで、まずは、マンボウの腸のソテー(ソテーはフランス語だけど、イタリア語がわからない)を頂くことになった。マンボウの腸を初めて食べたが、癖はなく、こりこりとした触感の味わいで、シンプルな味付けとよくあっていた。



 マンボウの腸のソテー

天使の海老のパスタは、フレッシュな海老の触感と味わいが日本的ながらも、細めのパスタとトマトソースと組み合わされていて繊細ながらもバランスが良い。




 天使の海老のパスタ


メインの恵水ポークロース肉は、ボリューム満点で食べごたえがあるし、味付けは岩塩ベースだから豚肉を味わう料理だと言える。火の通し加減が丁度よく、このポークが持つ味わいがよく引き出されていた。



 メインの肉料理 「恵水ポークロース肉」


チョコレートのドルチェとシーズンの苺のドルチェを注文した。今日新鮮な苺をたくさん食べたせいか、少し物足らない感じであった。なぜか、写真はいまいちだと書いた生苺のドルチェの方。



 生苺のドルチェ


それぞれ、好きなものをアラカルトで注文していて、コースを頼んだわけではないのだけれど、一定のコースの形にしてくれた。 このお店は、地場の素材を生かした、地産地消のイタリアンで、私達の好きなタイプのお店だ。マンボウの腸のソテー以外は、わかりやすい素材で作られたメニューが並んでいるが、選ぶ時にわくわくするので、是非アラカルトで注文することをお勧めする。

デザートだけは今一歩かなと思ったけれど、その他の料理はおいしい。スタッフのサービスはちゃんとしているので、満足が行く食事ができると思う。 お値段はかなりリーズナブルで、ワインが飲めないという状況ではあったけれど、ディナーでも一人1万円以下で済む。お客様の多くは地元の方であったように思えたが、東京からも遠くないので、横須賀に行ったときには、食べに行ってみることをお勧めする。


なお、食べ物の写真の中に時々出てくる「Foodie」の文字は、同名のiPhoneのアプリで取った時に記録されるものである。このアプリで取ると食べ物が美味しそうに見えるので使っている。



ロードスターRF(改装前)

ロードスターで回る小旅行としては、丁度よいコースであったと思う。あまりオープンにすることはなかったが、小型のクーペとして使っても、2名乗車でもそれほど狭くて困るということはなかった。 RSは乗り心地が固くて困るというシーンもないし、レカロのロゴが付いているシートも、腰が痛くなることもなく快適に過ごせた。屋根を閉じていると遮音性も高いので、もっと遠くまで旅行しても疲れないと思う。

Posted at 2018/05/16 20:35:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 旅と料理 | 旅行/地域
2018年05月14日 イイね!

大人4人で、コンパクトカーでツーリングは可能なのか?

大人4人で、コンパクトカーでツーリングは可能なのか?
大人4人で一泊二日の旅行に行くことになった。
もともと、2人でいくつもりであったから、どのクルマでもいいかと思っていたのだが、結果的に4人で旅行に行くことになった。家族の誰もが4人で旅行するなどということは考えてもいなかったから、うちには都合4台のクルマがあれども、いずれも大人4人が乗って旅行に行くのに向いたクルマではない。

■デミオで行くしかない
 私は、長距離旅行は鉄道や飛行機で行く主義なのだが、そもそも今回の発着地は広島である。2人しか乗れないロードスターを持ち込んでも意味がないし、別のもう一台は、ドアこそ4枚ついてるものの、脚まで固めたオタク向けの青いスポーツカーで、こんなので旅行したらリアシートの住人が死んでしまう。レンタカーという手もあるが、一泊二日の旅行のために、わざわざレンタカーを借りるのはどうかとも思う。

 こんな時にアテンザがあれば、何の悩みもないのだが、「ファミリーカーはもういらないか」と手放したわけで、無いものねだりをしてもしょうがない。更なる一台は10分以上は乗る気にならないトヨタのコンパクトカーなので、もうデミオでいくしかないという結論に至った。 XDなら余裕のトルクで大人4人が乗っても動力性能に不足はないだろうが、デミオは量産型の13Sで、エンジンはSKYACTIVE-Gのガソリン1.3である。このデミオは車両紹介にもあるように、短距離移動には一切使われない、旅行スペシャルではあるのだが、通常、乗員は1名~2名で、リアシートはお犬様専用である。



 デミオ13S(デミオのオーナーは、免許取得後1年以内)

 私は飛行機で広島に移動して、今回は島根県の津和野と、山口県の萩、青海島、角島を目指すことにした。 宿泊は歴史の町の萩で、GW中のとんでもない値段の有名旅館ではなく、築100年と言われる、歴史のあるアフォーダブルな宿をとることにした。


■島根県から山口県へ
 広島から津和野にかけては、いつくかの山を越えながら国道187号線を進む。道はそれほど狭くなく、ドライブには適した道路だが、コーナーが厳しいため、平均車速はやや低くなると思う。わずか72馬力のSKYACTIVE-Gだが、決して軽量ではない4人と荷物を載せても、制限速度程度で山道を登るには何の力不足も感じない。下りでエンブレが効くように、トランスミッションの設定をSPORTにしているが、コンパクトカーには贅沢なSKYACTIVE-Driveは、適切なギアチェンジを行ってくれる。エンジンブレーキが必要なところで不要なシフトアップをすることもない。この区間の燃費はさすがに16km/L程度と下がったが、下りセクションに入ればまた燃費も回復していくだろう。

 旅行記ではないから、各所を詳しく紹介はしないが、津和野は以前訪れた時よりも、魅力が減っているように感じた。森鴎外の博物館と、新しい道の駅の温泉は良いと思うし、D51型蒸気機関車が引くやまぐち号も風情があると思うのだが、「グルメ不足」は残念である。名物のうずめ飯も今一歩だし、津和野そばも、もっとおいしい物が世の中にたくさんある。その中で何か一つ選ぶとしたら、蕗飯だろうか。(素朴でおいしいが、写真からもわかるように、人に勧めるほどの名物でもない)


 
 津和野の蕗飯

 やまぐち号の蒸気機関車はもともとC57型であったが、1両では整備が難しいのでC56型も加わった。残念ながらフレームがもう寿命らしくC56型は今年で引退だそうである。代わりとなるD51型は旅客・貨物の両用の主力機関車で、今回はD51型がけん引していた。蒸気機関車の運転は、基本設計が19世紀だから、それはもう気が遠くなるくらいに難しい。21世紀の現在でも、D51の運転方法は変わっていないそうだから、石炭の質がいかによくなっても、津和野まで登ってくるのは至難の業だろうなと思う。



 津和野駅に停車中のD51


 津和野から萩にかけては、ご機嫌な高速ワインディングロードが続く。中国山地は、山の高さがあまり高くないので、それほど急坂にならず、山越えがつらくない。分水嶺を超えるとデミオは淡々とワインディングを進み、萩へと向かう道を進む。 途中で、日本三大猫寺と言われる、「雲林寺」に立ち寄る。 私は特に猫好きではないので感心することはないけれど、猫好きな訪問客がひっきりなしに訪れていた。 拝観料は無料であるし、本堂の中にある様々な猫関連の置物の見学も無料である。 お茶もいただけるので、何もお金を使わないのは申し訳なく感じる。 同行者の一人が猫好きで、様々な猫グッズを買っていたからそれでよしとしよう。なお、リアル猫も4匹ほど飼われているようである。



 猫寺(雲林寺)


 萩は歴史の町であり、高杉晋作をはじめてして、明治維新に活躍した志士の町でもある。当時をしのばせる街並みや、史跡があるほか、萩反射炉のような、金属加工の遺跡など、明治維新以外の遺跡もあるので、じっくり時間を取るといいだろう。 萩にある大きなホテルに「萩本陣」というホテルがあり、ここの温泉は数も多く快適なので、日帰り入浴でも良いので近くに来たら立ち寄ることをお勧めする。 GW期間とお盆期間は料金が非常に高いので、それ以外の時期に来るといいと思う。 さて、山口県の萩と言えば、烏賊(須佐男命(みこと)いか)を食べねばなるまい。烏賊は夏が盛りのシーズンだけれど、西日本のこのあたりでは、そろそろシーズン開始の時期だ。 烏賊から受けるイメージほど、値段は安くないが(一人あたりの予算は5000円くらい)、思い切って食べてみても後悔はしないと思う。生で食べられない箇所はてんぷらにして出してくれる。 最盛期は7月とのことなので、また食べに行こうと思う。



 「須佐男命いか」の生き造り


 100年の歴史?のある宿は、それはもう、端から端まで昭和で統一というか変化がなくて、部屋にあるテレビは、液晶ではなくブラウン管+地デジチューナである。細かくは書かないが、どこにも21世紀感がない。クレジットカードやWIFIなぞ、何それおいしいの状態だ。 この宿は夕食の提供はなく、朝食(何のひねりもない旅館の朝食だがおいしい)のみであるし、温泉は3人くらいでいっぱいだけれど、この旅館が、「ボロい」にも関わらず、多くの人に高く評価されるのは、非常にリーズナブルな値段だけではなく、この昭和感もあるのだと思う。私ももう一度泊まっても良いと思った。



 萩の旅館(芳和荘)


 翌日は国道191号線を青海島方面へと進む。 青海島は、長らく新たな道の駅「センザキッチン」の建設が進んでいたが、この4月20日についに完成した。仙崎駅からも近く、朝から多くの観光客が訪れていて、朝10時にはもうメインの駐車場は満車(道の駅なのに!)で、隣の漁業用のスペースにクルマを停めることになった。 遊覧船の他、様々な海の幸を食べることができるし、地元の野菜や魚介類も買うことができるので、これからも人気を集めるように思う。



 道の駅センザキッチン


 帰路によった、千畳敷展望台では、二種類の青を楽しむことになった。一つは、日本海の青い海だが、広い駐車場には、青がスポーツカーのイメージになっているメーカーのクルマのオフ会が開かれていた。多分、WRXが主体のオフ会だと思われるが、BRZやレボーグなどの姿もある。写真にあるように、青色のクルマが多いのは自然の流れなのかもしれない。 


 スバルオフ会



 美しい日本海


■ボディのメンテナンス
写真中のデミオは途中で泥をかぶったこともあり、あまり綺麗な状態ではないが、このクルマは、ワコーズの「バリアスコート」でメンテナンスされているので、帰宅後の洗車で簡単に汚れが落ちたことも、合わせて紹介しておく。 バリアスコートは、洗浄能力もあるので、水洗いの後、少々の汚れであれば、コーティングと共に汚れ落としもできる。 ボディの美しさに拘る人にお勧めするものではないが、このデミオのオーナーのように、超ものぐさな人にとって、3か月に一度くらいのメンテナンスで一定の艶を維持できるので、お勧めのお手軽コーティング剤である。 なお、バリアスコートは、撥水力の維持性はあまり高くない。(1か月もつか持たないかのレベル) 撥水力も重視する人は、他の製品をお勧めする。


■ツーリング全体を通してみて
 全体を通して、走行距離374km、燃料消費が19.5Lだったので、平均燃費は19.2km/Lと、大人4人乗車の燃費としては良いものであった。都会に比べると、交通量と信号が少ない山口県を中心に走ったとはいえ、全行程の2/3は一般道だし、山陽→山陰→山陽と往復の山越えをしているのだから、SKYACTIVE-Gの実燃費の良さがわかるだろう。ちなみに、1名乗車で70km/hくらいでたんたんと走ると、25km/L以上も走るから、カタログ燃費以上の燃費を出すこともできる。 ガソリンのデミオで長距離走行をしてみた結果、狭さが懸念されたリアシートも、それほど苦痛ではないことがわかったし、前席は相変わらず快適だった。 走行中の騒音もコンパクトカーとしては小さく、直進性もホイールベースの長さからくる安定性が効いていて、文句はなかった。 その上で素直なハンドリングで、ワインディングも楽しませてくれる。



 デミオ13S


 多人数で旅行するならば、アルファードのようなミニバンをレンタルした方がきっと快適だろうけれど、4人までならば、コンパクトカーでも十分に旅行に行くことができる。クルマがコンパクトなだけに、田舎にありがちな、細い道に迷い込んでも簡単に転回できるし、宿の駐車場が狭くても簡単に駐車できるし、サイズ的にも初心者でも、ベテランでも誰でも運転できるだけに、ドライバーを選ばない。何より、運転することが楽しいクルマだから、ドライバーチェンジに揉めない(逆に、「いや、変わらなくていいよ」と言われる)ことも自動車旅行に向いている要素だと言えるだろう。 長距離はディーゼルじゃないとダメだということはなく、ガソリンでも十分走ることが実証されたと思う。


Posted at 2018/05/14 11:25:41 | コメント(0) | トラックバック(0) | 旅行/地域
2018年05月08日 イイね!

ロードスターRF マイナーチェンジ情報

ロードスターRF マイナーチェンジ情報いよいよ、NDロードスターのマイナーチェンジの内容が明らかになってきた。

幌車は、ピストンの変更、シリンダー内部抵抗の低減により、1馬力出力が増えて132馬力になる他、安全装備アドバンストSCBSが搭載されて、対車両:約4~80km/h走行時、対歩行者:約10~80km/h走行時)、ブレーキを自動制御して衝突回避をサポートする自動ブレーキの装備が大きな変更点になる。(AT誤発進抑制制御、スマート・シティ・ブレーキ・サポート[後退時]、AT誤発進抑制制御[後退時]も装備)

より大きな変更は、RFに対して行われる。
RS、VS、Sのグレード構成は変わらないものの、全車両共通で、以下の装備が追加されることになった。

1.幌車と同じ自動ブレーキ(非レーダー方式、カメラ式)
2.エンジンの大幅な改良
3.クルーズコントロールの追加(定速維持機能MRCCではない。)
4.VSの内装色が3色(ベージュ、黒、オーバーン)から選択可能
5.VSに、ブレンボブレーキ、BBSホイールがオプションで選択可能
6.RSのホイールの色が黒色に変更

が大きな変更点となる。
価格は、RSが49,800円の値上げ、VSが70,000円の値上げとなるが、内容に較べて極めて小さい値上げだと言えるだろう。


■自動ブレーキの搭載
アテンザなどで採用されている、レーダーによる衝突防止機構ではなく、デミオなどに搭載されている、アドバンストSCBSを中心にした自動ブレーキ制御が搭載される。これにより、対車両では、約4~80km/hで自動ブレーキが有効となり、対歩行者では約10~80km/h走行時で有効になる。アイサイトとは異なり、極低速では自動ブレーキは有効にならない。


SCBS動作図

■エンジンの大幅改良
今回のマイナーチェンジの肝になる改良である。 ピストンスカート短縮化・軽量化、ピストンリングの摩擦抵抗の低減、クランクシャフトのフルカウンター化、コンロッドの軽量化により、最高機関回転数が7500回転に向上する。 最高出力は184馬力(135KW)/7000回転、最大トルクは20.9Kgm(20.5Nm)/4000回転へと向上し、低回転から高回転まで持続的に高トルクを発生し、高回転まで伸びのある出力特性をもつことになる。 今回注目すべき点は、最大トルクの発生回転数が4600回転→4000回転へと低回転域に移動している点である。 高出力はハイリフトカムによって成し遂げられているが、ハイカム搭載による低回転域~中回転域のトルクの減少に対して、以下の対策をとっている。

・ハイリフトカムシャフトの搭載
・吸気ポートの流量23%向上
・排気ポートの流量30%向上
・エキゾーストマニホールドの短縮化
・エキゾーストマニホールド内部・接続部の平滑化
・吸気ボアの拡大と内面抵抗の低減
・フライホイールイナーシャ低減
・燃料ポンプの交換
・燃料噴射PORTの改良
・ECU変更
・排気管変更
・サイレンサー形状変更
・フライホイールのエンジン/ミッションン用に分けた二重マス化

上記の対策により、ハイカムで高回転域の出力を確保し、エキマニを短縮化して低回転域でのトルクの増大を対策し、ハイカム搭載によるトルクの落ち込みを、給排気の抵抗を低減することで排除している。 これにより、在来エンジンに対して、低回転~高回転においてトルク特性で劣らず、伸びやかでリニアな出力特性を実現している。

■クルーズコントロールの追加
RF全車種に固定速度型、クルーズコントロール機能が追加される。 MRCCと異なり、前車についていく機能はない。 北米仕様に在来から用意されていた、クルコンと同じ仕様である。 速度設定は180km/hまで。


■VSの内装色が3色から選択可能
RFで最も人気のあるVSに手をいれている。これまで、北米や欧州に提供していた、タン(ベージュ)内装、黒色内装を新たに選択可能とした。在来のオーバーン色も選択可能で、ラインナップされる外装色に変更がない代わりに、VSでは内装色、外装色を選択する楽しみが増えた。RSとSは在来通り黒色内装だけとなる。 RFはAT車の比率が高いが、悪名高いATのファイナルは、3%ほど低速化されて、3.454から3.583と変更されて、幌車とのギア比は縮まるが、依然として約15%もハイギアードのままのため、2.0の高回転トルクをもってしても、1.5よりも高回転の伸びが抑えられてしまいそうだ。  MT車は在来と同じ変速比、ファイナルなので、1.5と同様に高回転の伸びを楽しむことができる。


ベージュ内装


■VSに、ブレンボブレーキ、BBSホイールがオプションで選択可能
そのままだが、これまでRSにのみ用意されていた、ブレンボブレーキ+BBSホイールのオプションが選択可能になった。 BBSのホイールの色、デザイン、サイズに変更はない。BBSのホイールは在来どおり、RF全車種で選択可能である。


ブレンボブレーキ+BBSオプション

■RSのホイールの色が黒色に変更
S,VSの純正ホイールの色は、在来と同じガンメタだが、RSの純正ホイールのデザインはそのままに、ホイールの色が黒色に変更となる。



今回、技術的な肝は、エンジンの特性にある。高回転エンジンにするためにハイカムを使い、最高出力の発生回転数を7000回転にしたにもかかわらず、最大トルクの発生回転数が600回転下がって4000回転になっている。 このエンジンに一体どのような改良が行われたのか、以下に示す。

ハイカム+吸気抵抗の削減は定番の構成だが、エキマニを短縮して、低回転重視の掃気構成にすることは予想外であった。エキマニを低中速重視にしつつ、高回転でのバルブの開度を広げて高回転でも十分な空気の流入をはかり、最高出力を発生する7000回転までトルクの谷を作らず吹ける特性に仕上げられているというのが、マツダの販売店に対する説明である。 その他の対策はハイカム搭載車に対するセオリーで固められていると思うが、7月に実際に乗ってみることが楽しみになるエンジン特性である。

このように、RFはエンジンの強化を中心に、VSの内装バリエーションの強化により、より多くのユーザを増やそうとしている。 6月に発表となり、7月には試乗車が各ディーラーに配備される予定となっている。 今までRFの購入を迷っていた層について、自動ブレーキの装備、内装のバリエーション強化、エンジンの強化は、購入に向けて大きく背中を押してくれる存在になると思う。
Posted at 2018/05/08 00:41:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | 自動車技術 | クルマ

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