
海上保安庁 横浜海上防災基地に併設されている
工作船資料館(海上保安資料館横浜館)

2001年12月22日に発生した九州南西海域工作船事件における
北朝鮮の工作船と回収物などを展示しています

館内入って最初に見えるのは 工作船
当初は不審船事件の名称だったのですが
沈没した不審船を海底から引き揚げた結果
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の工作船だった事が判明し
「九州南西海域工作船事件」と名称がつけられています

汽笛や無線 拡声器 発光信号等による停船命令
上空や海面への威嚇射撃など度重なる停船命令を無視して逃走を続ける工作船
船体をも狙った威嚇射撃の許可を受け
海上保安庁の巡視船は工作船の船体へ射撃を行いました
船首に20mm機関砲の当たった跡が残っています

こちらは反対側
貫通してる様子がわかります
目標自動追尾機能(RFS)により3m以上のうねりがある中でも船首への正確な射撃が行われていて
工作船乗員へ危害を与えないよう配慮されています
船首に記されている船名は「長漁3705]と書かれていて漁船に偽装していたものと思われます

漁船と違いV字型の船体下部は高速航行が可能なように設計されていて
特殊用途・任務に用いられることを考慮して建造された特別な船舶で
日本から輸出されて改造したものでは無いと考えられています

武器の展示
朝鮮人民軍にも配備されていないような当時最新鋭の火器が搭載されていました
旧ソ連・ロシア製やそれらを元に北朝鮮が生産したものが配備されていたようです
一番奥は船首に装備されていた
82mm無反動砲 B-10
全長 1.85m
重量 71kg
有効射程 400m

82mm無反動砲弾
この事件では発射されたかは不明です
対戦車用砲弾が用意されていて
もし当たっていたら巡視船は大破していたかもしれません

手前の2本が
携行型地対空ミサイル発射機
9K310イグラー1(NATOコードネーム SA-16 ギムレット)
全長 1.57m
重量 10.8kg
射程 5.2km

5.45mm自動小銃 AKS-74
AK-74の折り畳み銃床(ストック)式
湾曲した弾倉(バナナマガジン)に28発のライフル弾が装填できます
全長 943mm 折り畳み時690mm
重量 3.3kg
有効射程 500m

5.45mm自動小銃実包
5.45x39mm小口径高速弾はAKS-74から発射された場合
初速900m/s 発射速度600-650発/分
工作船事件で巡視船への攻撃に使用されました
事件当時 海上保安官に支給されていた防弾ベストを貫通する威力がありました

手前
7.62mm軽機関銃 PK
弾薬をベルトでつなげて給弾する方式のマシンガン
AK-74小銃と同じ設計で開発されました
全長 1173mm
重量 9.0kg
有効射程 1000m
事件の際 巡視船への攻撃に使用されました

7.62mm軽機関銃実包
7.62x54mmR弾
初速825m/s 発射速度650発/分
隣は船尾に搭載された対空機関銃の実包
14.5x114mm弾

手榴弾
炸裂すると内部の鉄球が飛散し殺傷させる破片型手榴弾

上2本は
ロケットランチャー RPG-7
携帯対戦車擲弾発射器
発射機の前端(画像左側)にロケット推進弾頭をねじ込み固定して
肩に担ぐようにしてトリガーを引き発射させます
全長 950mm
重量 7.0kg
射程 900-1100m
初速115m/s
巡視船への攻撃に使用され事件動画では「シュッ」という音が記録されています
うねりが高かったため外れましたが 当たっていたら大破していたものと思われます
※参考画像 例:射撃姿勢

装備品の展示
ラジオがデカい
ポケコンはシャープ製
この時期 犯罪に多用されていたプリペイド式携帯電話
J-PHONE(現ソフトバンクモバイル)J-T03

奥の照明スイッチには北朝鮮の英語表記
DPRK(Democratic People's Republic of Korea)が書かれています
自爆スイッチが展示されていました
ハングルで「自爆」と表記してあります
「タイムボカンシリーズ」の悪玉メカのようだ・・・
ポチッとな

個人所有物も展示されていました
金日成 キムイルソン(←なぜか変換できた)バッジの拡大写真

日本製の腕時計
山形県の食品会社 日東ベストで製造された「赤飯」と「とりめし」の缶詰
援助物資として送っても一般市民には行き届かず
軍などに流れていってるようですが
コレらも援助物資の横流し品なのでしょうか?

潜水具にも日本のセイコー製ダイバーズウォッチ(150m防水)

無線機のヘッドホンや無線送受信機は日本製
モールス信号を打つ電鍵などもありますね

船尾は観音扉になっていてエアシリンダーにより開閉
ここに小舟を搭載し工作員を上陸させます

巡視船からの砲撃により空いた穴にモモヒキのようなものを詰めて浸水を防いでいた様子

3枚翼のスクリュープロペラが4機
エンジンも4機でトン数44トンの船にしては異常な数のプロペラ
4軸推進は空母などの大型船しかありません
最高速度33ノット(約61km/h)で航行できます

「浦」と書かれている周りには鉄枠があり
偽装用の板を差し込むことができます

偽装できるように搭載されていたもの
MZ2-23・・・と書かれた板は船橋付近の木板
宮崎県登録を示すのが「MZ」とのこと
日本の漁船に偽装可能でした

工作船船尾に格納されていた小型舟艇
全長 11.2m
全幅 2.5m
総トン数 2.9トン
偽装用にイカ釣り灯が装着されていたようです
船体前方付近に水中スクーターを格納していました
また操舵室は工作船に格納するため昇降式になっています

スウェーデン製ガソリンエンジン3機 300馬力x3=900馬力
3翼スクリュープロペラ3機
最大速度 50ノット(約92.6km/h)と推定

ゴムボートと水中スクーター
工作員が潜水しながら水中スクーターに掴まり高速で移動することができます
ゴムボートは日本のアキレス社製

2連装機銃ZPU-2
船尾甲板上に搭載されていた14.5mm対空機関銃
14.5x114mm弾はかつての対戦車ライフル用弾薬で貫通力があり
巡視船や航空機を貫通する恐れがあり
対人に使用すれば防弾ベストを貫通し即死は免れません
最大射程 7000m
有効射程 2000m

対空機関銃用のレールがあり引き出せる状態で
後部船橋に格納されていたものと推察されています

自爆により吹き飛んだのか船橋部分がありません

操舵装置やスロットルレバーが残ってました

右舷の船橋付近に自爆によると思われる穴が開いています

巡視船の射撃によるものと思われる弾痕があります
この付近に当たった曳光弾が燃料に引火して火災が発生してましたね

船体前方の第1機関室
2機のロシア製高速ディーゼルエンジンを搭載し
外側のスクリュープロペラを駆動します

直後の第2機関室
同じくロシア製高速ディーゼルエンジン2機で
内側のスクリュープロペラを駆動します
小型艇を格納するため前方にエンジンがあるので
後方のプロペラを駆動する軸は長いシャフトを使用した特殊な構造です
出力1100馬力x4=4400馬力

長漁3705
全長 29.68m
型幅 4.66m
総トン数 44トン

館内のスクリーンには事件の動画が映されていました
日本の海を守る海上保安庁
映画「海猿」シリーズの効果により海上保安官志望者数が増えているそうです
2016年8月現在 周辺国の公船や漁船が接続水域や領海内へと侵入し
対応に追われている海上保安官に敬意を表します
場所:神奈川県横浜市中区新港1-2-1(赤レンガパーク隣)
みなとみらい線「馬車道駅」または「日本大通り駅」下車 徒歩8分
JR・市営地下鉄「桜木町駅」から汽車道経由 徒歩17分
公開時間:午前10時から午後5時まで(閉館30分前に受付終了)
休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌平日) 年末年始
見学料:無料