2013年10月12日
行き先は同じ
90年代後半くらいから自動車を取り巻く環境が変わって、自動車自体の中身も大きく変わって来た。
まずは衝突安全性。E100系カローラのときだったと思う。こんなニュースがあった。
カローラ以外の車種は忘れたけど、トヨタ、日産、ホンダがアメリカやヨーロッパでも販売しているカローラクラスの乗用車を日本仕様とアメリカ仕様の両方を持ってきて車重を測る。すると同じ仕様のはずなのに日本仕様のほうが軽い。それも微々たる差ではなくかなり大きな差。カローラは確かE80系だったかと。
ドアをグラインダーで切断してみると、アメリカ仕様にはあるサイドインパクトバーが日本仕様には無かった。仕向け先によって装備が削られていた。この時代ではこういうことが当たり前だった。
ユーザーが安全性能よりも内装の高級さやカタログスペックを求めていたことも理由だったが、これによって日本の自動車メーカーはバッシングを受けることになった。
最近では電子制御が進んで自動で止まるブレーキとか前の車についていく機能など安全装備はどんどん進化している。ハンドルやペダルは最早ただのスイッチに過ぎない。最終的には自動運転になるんだろう。
環境対策も進化している。
一昔前までは燃費とクリーンな排ガスの両立は不可能と言われていた。排ガスをクリーンにするには排気量を上げるしかなかった。
レシプロエンジンでどんどん高効率化が進んで燃費とクリーンな排ガスの両立が可能となり、さらに高効率化を進めるためにハイブリッドが登場し、バッテリーの高性能化で電気自動車が実用化された。過給器を利用して効率化を進めるなんて一昔前では考えられなかっただろう。ディーゼルエンジン分野でも排ガスのクリーン化がどんどん進められている。
今の車ではどんどん電子制御化が進んでいる。強い加速を望むならアクセルを踏み込むだけでいい。いちいちシフトダウンする必要は無くなった。MTでせこせこ燃費運転するよりも、CVTで安楽に走っているほうが燃費がいいなんて時代になった。これからも効率化の追及は続くだろう。
共通しているのは「電動化」と「自動車の社会的コストの低減」だ。
自動車は排ガスや騒音、事故など社会に対して少なからず害を与える。それでも自動車が普及したのは「自動車が社会に与える害 < 自動車の便利さ」だったから。人間社会に自動車が認められるために、厳しい排出ガス規制などを乗り越えて進化し、「電動化」に至った。
社会的コストの低減のために電動化が生まれた。従来の方法では限界が来て、さらに効率化を進めなければいけなくなった。そこで電動化をすることで人間では出来ない部分を効率化していった。最初は人間には遠く及ばなかった電動化だが、現在では人間では絶対に真似ができないほどに進化している。例えば加速度センサー。現在では100mで1mm登る坂を認識できてしまう。人間がそれを認識するのは不可能だろう。
電動化の流れは欧州でも加速していて、フランクフルトモーターショーでVWのトップが電動化を主眼に置いたスピーチを行った。
それらの動きに対して最近の自動車ジャーナリストはどのような反応をしたかというと、知っているとは思うがあまり褒められた反応ではない。
環境性能で言えば無意味なジャンル分けにこだわり、まるで日本が世界から遅れているような報道をしている。燃費という数字を使って「ハイブリッド」と「ダウンサイジングターボ」がまるで対立しているかのような構図を作り出そうと必死になっているように見える。
「ハイブリッド」「従来エンジン」「ディーゼルエンジン」という細かいジャンル分けでも対立軸を勝手に作って遊んでいる。彼らはどこからか大金でも貰っているのだろうか。それか大衆に迎合して自分の中に確固たる信念すら持っていないのだろうか。物書きとして恥ずかしくないのだろうか。
上に書いたように、ハイブリッドも従来エンジンもディーゼルもダウンサイジングターボも、自動ブレーキやレーンキーピングアシストなども、全て行き先は「社会的コストの低減」だ。そこに至るまでの道のりが違うだけで本質的には同じだ。その中で消えてしまう技術もあるだろうが、最終的に一本化されることは無いと思う。ハイブリッド、レシプロエンジン、ディーゼル、ダウンサイジングターボなどがあるが、それぞれにそれぞれの長所と短所がある。だが技術革新によって短所を少なくしたり、組み合わせて補うことはできる。例えばハイブリッドは短所を補い長所を伸ばす技術だ。
自動車ジャーナリストはこういう話題の記事を書く際に、全体的な技術の潮流を見極めなければいけないはず。なのに読者を煽って発行部数だけを考えて記事を書いているからわけのわからない記事が出来上がる。提灯記事なんて書いている暇があったらもっと勉強したらどうだろうか。
先に言った通り、社会は自動車に害の低減を求めてきていて、年々それは加速している。自動車メーカーはこれからどんどん努力しなければいけないだろう。その中でいかに効率的にリソースを使うかという部分で、メーカー同士の提携や協力関係が生まれていく。例えばトヨタとBMW、日産とメルセデスという関係が生まれてきている。
その過程で大きな淘汰が起きるだろう。少しでも努力や研究、創意工夫を怠れば会社の未来だけでなく、自動車の未来も閉ざされてしまうかもしれない。
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Posted at
2013/10/12 09:24:02
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