さて試乗記の後篇です。後編は新型ノアのガソリン車となります。こっちもエアコンフル稼働です。
前編はこちらからどうぞ。
あぶさん、カローラハイブリッドと新型ノアを試乗する の巻 前編
ノアという車のルーツを紐解くと、1996年に発売されたR40 / 50系タウンエースのワゴンモデル「タウンエースノア」まで遡ります。今でもたまに見かけますね。
2001年にFF化されR60G型として初代ノアが誕生。プラットフォームも新型となり兄弟車としてヴォクシーも用意されました。
2007年に2代目にモデルチェンジしR70型となります。エンジンが新型のZR系となりCVTも新型になりました。この代のヴォクシー/ノアはなかなか走れます。一度ですが山坂道でやたらと飛ばすヴォクシーを見かけましたがちょっとミニバンの動きには見えなかったですね。
で、2014年にモデルチェンジが行われR80型となったわけです。
新型では先代からいろいろと変わりました。まず上の写真の様にフロントのデザインが大幅に変更。最近のトヨタ車に合わせてきた形です。先代も先々代も当時のトヨタ流デザインに合わせていたので当然っちゃ当然の流れです。
今回はクラウンなどと同じようにちょっと大胆なデザインになりました。まあ写真ではえぐく見えるのですが、実際に見るとどこか落ち着いた優しさを感じます。
新型ノアのガソリン車は廉価グレードの「X」、売れ筋と思われる中間グレードの「G」、エアロパーツなどが設定された上級スポーティグレード「Si」の3つとなります。今回試乗したのはGグレードです。
エンジンは先代から改良され第二世代ZR系エンジンとなった2.0L 直4 DOHCの3ZR-FAE型です。それに7速シーケンシャルのSuper CVT-iを組み合わせています。シフトレバーはもういろんなところでお馴染みとなったメルセデスゲート。この呼び方も古くなっちゃいましたね。
まずアクセルですが、一時あったペダルの操作と電子制御スロットルの違和感は感じなくなっていました。鋭い加速を演出しようと踏み始めでスロットルを大きく開くような調整ではないはずです。
とりあえずDレンジのままフル加速を実行。やはり一瞬シフトダウンをためらいます。シフトダウンしていない状態でも加速はされているので緩い加速が一瞬あった後に強い加速が来ます。個人的にはもう少しシフトダウンを素早くしても良いと思いました。この部分に関して言えばAT教習で乗ったコンフォートのAT車のほうが優れています。コンフォートは踏んだ瞬間に間髪入れずにシフトダウンしてくれましたから。
このGグレードにはシーケンシャルシフトが付いています。残念ながらパドルシフトではないのですが、シフトレバーをDレンジから右に倒すとメーター内のシフトインジケーターがDから数字に変わります。走行中の切り替えはやっていません。
7速シーケンシャルのギア比は1速が2.517、7速が0.390でそれを均等に割っていると思われます。ファイナルギアが5.182なので1速での総ギア比は13.043094となります。参考までにAT212型カリーナは1速3.545、ファイナルギアが3.722で総ギア比は13.194になります。車重などの条件を無視すれば1速ではあまり差は無いようです。
逆にオーバートップギア(ノアでは7速)を見てみると、ノアは2.02098、カリーナは2.698になります。おそらく高速燃費で少し影響があるかと思います。
今回の試乗では7速は使えませんでした。おそらくシフトアップ後の回転数が一定以下になるとシフトアップをしないようです。ブレイド マスターやマークXのようなシフトアップ固定型ではなく、指定したギアにちゃんと入れてくれるタイプのようです。
シフトアップ、シフトダウンの反応はまずまずと言ったところ。空ぶかしで回転を合わせるのではなくCVTのギア比変更とエンジン制御で回転を変えているようです。回転の変化はカリーナの5A-FEよりも早いと感じました。
シーケンシャルを使用した1速フル加速は2.0L + バルブマチックの効果なのか想像よりも瞬足で、ちょっとおおっとなりました。少なくとも1.5Lのカリーナより少し早いと思います。加速時のエンジン音もちょっとやる気にさせてくれるような音を出してくれますので、これは気に入る人が多いんじゃないかなと。私もちょっと欲しいなと思ってしまいました。今度は車重が軽い車で試してみたいですね。
もちろんシフトダウンすればエンジンブレーキも効きます。1速のエンジンブレーキはかなり効いていました。
このシーケンシャルですが、シフトダウンは自動でやってくれます。信号で止まるために自動で減速していくと順番にギアを落としていってくれました。営業マンの話によるとメーカーオプションのナビなら、山坂道を判断してシフト制御を変更することが出来るらしいです(詳しく聞いていないのでもしかしたら他の車種の話かもしれません)。
シフトレバーの感触は適度な手ごたえがあり好ましいと思いました。シーケンシャルで頻繁に操作することを考えていたのでしょう。試乗中はずっとシフトレバーに手を置いて無駄にシフトアップやシフトダウンをしていました。
ブレーキはカローラハイブリッドとは違い大きな違和感は感じなかったです。普通に減速して普通に止まれます。フルブレーキングは試していませんが、車重がかなり重いのでブレーキは慎重にしたほうがいいと思います。
ハンドリングはカローラと同じく可もなく不可もなく。特段スポーティと言うわけではないです。ちょっとだけカローラよりも切り始めの反応がいいような気がしましたが、気のせいだと思います。
足回りやボディなんかもカローラと同じく適度にロールを抑えてスムーズに曲がる感じ。ふらつくこともなく、少なくとも街乗りレベルでは全くと言っていいほど不満がありません。着座位置が高くAピラーの三角窓もそれなりに役立ちますし、箱の形をしているのでどこにタイヤがあるのかも把握しやすい。場合によってはカローラよりも運転しやすいと思います。
ミニバンは剛性面で不利になると思っていたのですが、試乗中にボディからガタピシ音は全くなし。もちろん内装もガチャガチャしません。
ちなみにこちらのパーキングブレーキは足踏み式ですのでサイドターンの練習は難しいと思われます。昔乗っていたワゴンRのパーキングブレーキと比べるとギーギー言わなかったので驚きました。

こちらがノアのメーターです。オプティトロンメーターになっています。すごく見やすい。スピードメーターの文字盤はオーリスを思い出しますね。
シーケンシャル使用時は60km/hで6速1500rpmほどです。Dレンジならさらに回転数が下がると思います。確かウィッシュの同じエンジンで60km/h巡航するとノーマルで1100rpm、エコモードでは1000rpmだったはずです。
こちらもシートが良いと感じました。長距離を乗っていませんが、わりとしっかりしていると思います。
あとはやっぱりエンジンですね。回転フィールと音が良く、営業マンに「こんなええ音させたら回したくなって燃費悪くなっちゃうじゃないですか~」と言ってました。それくらい踏みたくなる、回したくなるエンジンです。今度は同じZR系になる1.8Lのカローラフィールダーで試したいですね。
マイナーチェンジでの要望は2つ。
□ペーキングブレーキペダルとフットレストの位置を改善してほしい。
□パドルシフトをオプションでもいいので設定してほしい。
私のAT212型カリーナはボディやシャシーは90年代、エンジンとミッションは80年代に設計されたものです。一応は今でも通用するような性能を持ってはいますが、カリーナが発売されて18年の時間というのは非常に大きいと実感しました。
そしてもう一つ実感したのは、積極的に車を楽しもうとすれば、車に歩み寄って楽しもうとすれば意外に楽しめるものだということです。カローラとノアという二つの車に試乗しましたが、最初に持っていたイメージをいい意味で裏切られました。これは積極的に車を楽しもうとしていたからなんじゃないかなと。先入観が強すぎたりすると大事なものを見落としてしまうと思います。
最後に一つだけ注意を。
今回の試乗では公道での常識的な速度が上限でした。交通量的にそれ以上の速度を出せません。なので高速道路での長距離運転や、超高速巡航でどうなるかは全くわかりませんのであしからず。