
久々に登場した4ドアセダンの新型車、ホンダ グレイスに試乗してきました。
最近は新規車種でセダンが追加されることはほとんどなくなり、セダン自体の数もめっきり減りました。実用性が重視する人が増えてきたのか、ワゴンやミニバンは大人気です。まあ確かにいちいち降りないと荷物取り出せないですからね。
そんな不人気なセダンに敢えて新規車種を投入する。まあラインナップ上で開いていた穴を埋めていく形ではあると思いますが、なかなかできることではありません。
最初は試乗する気は無かったのですが、シートに座ってみるとなかなか良さそうな雰囲気がありましたので試乗したくなってしまいました。
□外観
オーソドックスなセダンの形状と、最近の流行である空力を優先しキャビンを最大限広く取った形状でもあります。全体的なスタイリングは初代プリウスに通ずる部分を感じますね。フィットの様にフロントを詰めていくのではなく、リア周り、特にトランクとリアウィンドウのつなぎなどで全体のプロポーションを最適化させています。
排気量は1.5Lですがボディサイズや室内空間、トランク容量、質感を考えると1.5~2.0Lクラスセダンくらいでしょうか。競合車種はハイブリッドであることを考えるとカローラアクシオハイブリッドですが、プレミオやアリオンも入りそうです。
フロントデザインは最近のホンダデザイン。ゴテゴテしすぎではなくスタイリッシュ & シンプルにまとまっていて好印象です。
サイドラインはフロントフェンダー上部に小さなラインが一つ、フロントドアからトランク後端のテールレンズにかけて深いエッジが一つあります。このエッジがかなり目立ちます。
リア周りは可もなく不可もなく。テールランプの外側が上方向に飛び出すL字型になっています。ちょっとマークXなどの上級車種感が出ています。
トランク容量を稼ぐために、これも最近の流行ですが尻上がりです。サイドのエッジにより緩いカーブを描くような印象があります。尻上がりと言えばアルテッツァやIS Fなどがかなり尻上がりでしたが、グレイスはかなり自然にまとめていると思います。
□内装
内装の質感はかなり高いと感じました。触ってみるとやはりプラスチック部品が多いことがわかりますが、見た目はほとんど気になりません。特に手に触れる部分の質感はかなり良かったです。
シートもこのクラスとしてはかなり質感が高く、座り心地もなかなかのもの。しっかりと張りがあり体を支えてくれます。
セダンのシートと言えばやはりリアを重視したいところ。1.5Lクラスではリアシートは少し質感が劣りますが、グレイスはリアシートの質感もグッドです。
質感以外でも様々なところに工夫の跡があります。センターコンソールボックス後部にあるリアシート用のエアコン吹き出し口や、アシストグリップを離したときにゆっくりと戻るところなど、おもてなしの心が感じられます。
メーターは中央にスピードメーター、左右に情報表示です。左側はギアの段数やシフトポジション、右側は燃費計や走行距離、タコメーターを切り替えることが出来ます。タコメーターはデジタル表示ですが、かなり視認しづらいです。
センターコンソールは最上部にエアコン吹き出し口、その下にナビ画面とハザードスイッチ、さらにその下にエアコン操作用のタッチパネルが備わります。

驚いたのがこれ。
完全にプリウスのシフトスイッチです。操作は↓でL、→でN、→↓でD、→↑でRです。ハンドルからかなり離れており、シートポジションによっては手が届きづらく操作しにくい位置にあります。AT車なので運転中は操作しないという判断なのかもしれません。
試乗したのはEXという最上級グレードですのでステアリングにはパドルシフトが装備され7速シーケンシャルを使うことが出来ます。7速ギア比は以下の通り。
1速ギヤ 4.148
2速ギヤ 2.007
3速ギヤ 1.481
4速ギヤ 1.098
5速ギヤ 0.810
6速ギヤ 0.605
7速ギヤ 0.446
ファイナル 4.842
1-2速のステップ比が0.484とマニュアル車では考えられないくらい離れています。1速では約40km/hしか出せません。2速では約80km/h、3速では約120km/hまで受け持つことが出来ます。
営業マンの話によれば1速はモーターだけということでしたので、こんなギア比担っているのだと思われます。試しに試乗コースで2速全開加速を行いましたが、カリーナの2速全開加速よりもやや速かったです。
100km/h巡航時の回転数は1900rpm、ギア比だけでの最高速度は350km/hを超えます。
視界は前方はシートを全開まで上げてもボンネットの後端しか見えません。左右、斜め後方は良好。後方視界は尻上がりなスタイリングですので少し悪いです。ルームミラーからボンネットの後端は見えません。
□パワートレイン
さて肝心の走りです。今回の試乗コースはなんと六甲山! 峠アタックですよ。残念ながら芦有ではないので某峠動画のシビックレースを再現することはできませんでした。
グレイスのハイブリッドシステムはアコードのスポーツハイブリッドi-MMDとは違い、i-DCDというシステムのようです。どのようなものか詳細はわかりませんが、おそらくシリーズハイブリッドに動力分割機構をDCTとクラッチによって実現し、パラレルパスを追加したものだと思われます。
エンジン走行中はほとんどパラレルパス固定。充電する際にシリーズパスを使用しエンジンの駆動力の一部をバッテリーに回すのか、それとも充電は全て回生ブレーキに回すのかはわかりませんでした。たぶん充電でもエンジン使うんじゃないかな。制御が違うだけでTHSとあまり変わらない気がしますね。
出だしはモーターのトルクでスッと加速。直ぐに変速し2速へ入れてエンジン主体で走行する制御へ。なかなかいい加速感です。
六甲の登り坂でノーマルモード全開加速、Sモード全開加速を試してみましたがきつい登り坂をガンガン登って行きます。1.5Lとは思えないほど頼もしい。
アクセルペダルを全開まで踏み込んだ状態で出てくる最大出力はノーマルモードとSモードでは違うらしいです。Sモードのほうがよりエンジンのパワーを引き出しているとか。つまりVTECに入ると言うことですわ。
加速感もいいのですが、サウンドもかなりいいです。プリウスのモーッという音ではなくちょっと前のホンダ車に似ている音がします。直管にしたらいい音しそうですわ。
登り坂で試しにエコモードに入れてみると、明らかにパワー不足な感じに。カリーナでいうと4速で無理やり登ってる感じ。
下り坂ではエンジンブレーキの利きを試してみました。
まずはパドルシフト。カチカチとシフトダウンして2速に入れるとかなり効きます。六甲の下り坂でも十分効果ありです。次はシフトスイッチを使ってLレンジへ入れてみたのですが、全く効きが感じられませんでした。パドルシフトはEXだけですので、DXやLXの場合はちょっと困りそう。
エンジンはLEB型直列4気筒 DOHC i-VTECです。4気筒ですがホンダらしく振動は皆無です。まあ低回転で動かすことがほとんどないからかもしれませんが、回転の変化もかなりスムーズです。
□足回り
足回りも好印象でした。
微小入力はほとんど遮断。母屋を不必要に揺らしません。大入力があっても突き上げをしっかり丸めています。段差を乗り越えたとき、継ぎ目を乗り越えたときでも揺れを一発で収めています。かなり足のセッティングや、ダンパーの精度、スプリングの動作精度を高めたんでしょう。
ハンドリングはセダンらしくやや落ち着いた印象ですが、意のままのハンドリングと言ってもいいくらいです。ロールも適度に抑えてしっかりと踏ん張り感が伝わってきて腰砕け感はありません。ロールスピードも抑えられていました。
全体的な印象はややしたたかですがしなやかさも持っている印象。イルムシャーRとハンドリングバイロータスの間くらいと言ったところでしょうか。ワインディングも楽しめそうです。
□グレイスの良いところ
・内装の質感
・おもてなし
・ハンドリング
・乗り心地
・加速
・エンジンサウンド
全体的に好印象です。ホンダの本気が感じられました。特に足回りがいいですね。
□グレイスのダメなところ
・エアコン操作パネルがタッチパネル
走行中に操作する部分がタッチパネルなのはいかがなものかと。
・低速域でのドライバビリティ
40km/hくらいから約10km/h以下まで減速した後、停車する前に再加速しようとすると約1~2秒ほどスロットルが反応しなくなる。これは要改善。
これが起きたのは右折時です。前に右折待ちの車が1台いて、こちらが停車する前にその車が右折しました。対向車がいなかったので停車する前にアクセルを踏んだのですが全く反応しませんでした。
・シフトスイッチの位置
低すぎます。走行中に操作するには不適切。
・EX以外ではLレンジ以外にシフトダウンできない
Lレンジの出来が悪いので、出来れば低グレードでもシフトレバーで変速操作ができた方がいいと思います。Lレンジが改善されればいいのですが……。
・ペダル配置
ブレーキが中心よりやや左寄りにあるためややブレーキ操作がしづらい。
またアクセルペダルと離れすぎているためヒールアンドトゥができない。
全体的に好印象でしたが、ちょっと気にかかるところがあります。私的にかなり気になる部分ですので、それが改善されないと購入には踏み切れないなと。
試しにオンラインで見積もりやってみたらDXなのに300万超えました……。ちょっとオプションをつけすぎたかな。
2015.01.15追記
□余談
・ディーラーの雰囲気
ホンダのディーラーは面白いとホンダリアンに参加したときにいろいろ聞いていましたが、噂に違わず面白いディーラーでした。
営業マンも面白ければお客さんも面白い人が多いらしく、形式ばった対応が多いトヨタディーラーとは方向性が全く違います。私は好ましいと感じました。
・試乗コース
いつも行くカローラ大阪交野店の試乗コースは店を左折で出て次の信号を左折。幹線道路で左折。幹線道路では次の信号を左折。そのまた次の信号で左折して元の道に戻ってくるルートです。

距離は約3kmですが、時間にしてわずか8分ですし幹線道路は渋滞が頻発する区間です。一番長い西側の直線では100km/h程度なら出せますが、ハンドリングがどうとか荒い路面で乗り心地がとかは試せません。
今回試乗させていただいたホンダカーズ神戸中央店の試乗コースは、なんと六甲山です。六甲の山坂道でハンドリングを十二分に堪能できます。カローラ店の試乗コースでもわかるっちゃわかるんですけど、わかる範囲が違いすぎます。
ですのでカローラ大阪交野店の試乗コースを考えてみました。

約33km、所要時間約33分
簡単に言いますと磐船街道 + R163 + 打上バイパス or 外環+1号バイパスです。
もう山坂道のハンドリングからR163のフル加速、打上バイパスや外環+1号バイパスでは低速時のドライバビリティを確認できます。問題は距離が長いことですが、これくらいなら許容範囲でしょう。
試乗コース問題は私のカリーナを担当してくれています営業さんも認識しているらしく「できれば貸し出して1日フル試乗をしたい」と言っていましたので、いつか改善されるかもしれません。
・見積もり
帰宅してからオンラインで見積もりを取ってみました。
グレードは一番下のDXでいろいろオプションつけるとあら不思議、なぜか300万オーバーです。
試しに同クラスのプレミオ、アリオン、カローラアクシオハイブリッドの見積もり取ってみました。

ちょっと手違いで3つとも上級グレードです。排気量は1.5Lですが、プレミオは1.5F EXパッケージ、アリオンはA15 G-plusパッケージ、カローラはHYBRID Gです。
なぜかカローラがプレミオ、アリオンを超えました。HIDビューアシストパッケージが10万ほどするのでそれのせいかな。
プレミオ、アリオンは試乗したことがありませんのでカローラとグレイスを比べてみますと、走りの良さ、質感の良さ、装備ではグレイスの勝ち。ドライバビリティ、使い勝手ではカローラの勝ちです。
グレイスで感じた不満点はカローラでは全くありません。でも運転してたのしいと言う部分ではグレイスが圧勝です。
私が選ぶならカローラですかね。おそらくカローラ1.5G 5MTを買っていると思います。

やっぱマニュアル車は安いわー