実際、V40 に Bluetooth ペアリングした状態でホームボタンを長押しすると、車載マイクを通じて Eyes Free に近い機能を利用できますが、運転中に端末を手に持って操作すると違法になりますから、やはり純正の音声認識のようにステアリングのボタンで操作できるのが気分良いですよね。
と言うわけで、ステアリングのボタン操作を読み取って、iPhone の Siri を起動する「Eyes Free もどき」の仕掛けを考えました。本物の Eyes Free は、単なる Siri と違って、タップを要求するアクションが封印されているようです。必要となるのは、ステアリングのボタンを読み取る仕掛けと、iPhone に Siri 起動の指令を送る仕掛けです。
さて、もう一方の Siri の起動方法についてですが、車載の Bluetooth モジュールに介入するのが最も直接的ではありますが、デジタル信号への介入は容易ではありません。一方、iPhone 自体は同時に複数の機器とペアリング・接続できますから、新たに Bluetooth デバイスを追加することにしました。
実は、Siri を起動することに特化した、ホームボタンだけの mobile home という製品が市販されています。
これだとマイコンから駆動するのが難しいですし、なにしろボタン1つに $79+送料というのは高過ぎです。次に、Satech iRemote Shutter という製品を見つけました。 Siri を起動できるようです。
mobile home に比べると価格はかなり抑えられますが、使い勝手の悪さは mobile home と似たようなものです。HIDプロファイルで接続するというところは注目に値します。
Siri を起動できる Bluetooth モジュールには他にどんなものがあるのかと、HID プロファイルでペアリング可能なモジュールを探したところ、 Microchip の RN42-XVP が見つかりました。ぼくらの味方、秋月電子通商に取扱があります。
iRemote Shutter よりも更に安価な上、UART でマイコン等と接続して自由に操ることができる、理想的なデバイスです。さっそく、UART-USB 変換アダプタを介して PC に接続してみました。モジュールのピンが 2mm ピッチと特殊なため、またもや汚い直配線です(汗
これまでは、低速 CAN 信号の解析に力を入れて来ました。低速 CAN バスでメディアシステムの情報を取得できると予想していたためです。ところが、この結線からわかるように、音響を司る IAM (Integrated Audio Module) が CAN と接続されていないことが判明しました。これはつまり、ICM が CAN バスのゲートウェイになっており、IAM とは MOST バスを通じてやりとりしているということになります。CANの信号をいくら解析しても、メディアプレイヤーの情報に連動する信号が出てこないわけです。IAM の役割は重大で、MOSTバスを通じて来る音声信号の再生、特にパフォーマンスオーディオパッケージにおいてはスピーカーを直接ドライブする役割も担っています。、Koyu さんからのご指摘で、助手席下の AUD を通じてスピーカがドライブされるようになっておりました。
IAM はオーディオモジュールと呼称しつつも、USBメディアプレイヤー(Divx動画再生含む)、 DVDプレイヤー、RTIナビ本体も含んでいるようで、ICM がマルチメディアの表の顔とすれば、IAM はマルチメディアの心臓部と言えそうです。未確認ですが、もしかすると Bluetooth 関連も IAM に含まれているかもしれません。海外版だと SIM を刺せるPHMという電話用のモジュールがあるようですが、日本版は単なるHFP プロファイルの Bluetooth 機器としての動作ですから、異なると考えられます。V40MY13に見られたラジオチューナーの不具合の対処法としてナビパッケージが置き換えられた事例がありましたが、これはつまり IAM をそっくり別のものに置き換えたということになりそうです。MOSTバスLVDS はデジタル映像を流せるため、IAM 由来の映像(DVD、Divx動画、ナビ)がクリアな映像なのに対して、テレビ映像とカメラ映像がアナログ入力になっているところは興味深いですね。MOST150 規格ならすべてを乗せても余裕そうですから、それより低級の MOST25 を使用しているということなのかもしれません。
ここまででわかった注目すべき点の一つに、ステアリングモジュール(SWM)からのLIN信号が ICM に接続されていることが挙げられます。これは、ステアリングボタンの右側のモジュール(ミュート、ボリューム、スキップ、OK、EXIT)の信号を受信するものです。AVC製のテレビキャンセラーは、赤丸の部分に割り込ませるものですが、ミュートボタン長押しに反応するように作られているのは、この LIN 信号を読み取っているためです。色々試しましたが、ミュートボタン長押しという動作が、唯一メディア系に何の作用も与えないシーケンスになるため、うまいこと共存できるわけです。
ここで試してみたいのが、Eyesfree もどきを作ることです。画面を見ずに音声認識で選曲したり SMS の送受信したりなどは、安価な Bluetooth モジュールを追加することで出来そうなことが分かって来ました。詳しくは次回、Eyesfree 編にて。。。