とあるグルメサイトを閲覧してると、気になるワードが目に飛び込んで来た。
『注文の多い料理店」
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ん?
どこかで聞いたことがあるワードだった。
そう、それは宮沢賢治の短編集のタイトルだ!
場所を調べてみると、埼玉県越生町。
私がドライブでよく行く秩父からは山ひとつ越えた東側に位置する。
この時は「いつか行ってみよう」とくらいの軽い気持ちで、とりあえず『行きたいリスト』には入れておいた。
今年の春〜秋にかけて、私は秩父市をドライブで通るたび、気になるお店をあちこち開拓していった。
もう10軒以上は開拓しただろうか、
秩父駅前のお店を除き、9割程度は『行きたいリスト』から『行ったリスト』へ移り変わっていった。
月日は流れ、晩秋にさしかかった頃、
「そろそろ秩父方面のドライブは春に持ち越しだなぁ」と思いながら、『行きたいリスト』を眺めていると……
そうだ!
越生町にある注文の多い料理店へ行ってない!!
まずは地図🗺で場所の確認。
県道から外れ、林道を通る必要がありそうだ。
ナビでは狭い道を表示する赤い線で案内している。
さらに、道が途中で途切れている💦
本当に辿り着けるのか?……
早速、文明の力『ネット』を駆使して、エリーゼでも行ける場所かを調べてみる。
Googleマップのストリートビューで確認すると、どうやら狭いところでも車1.2台分くらいの幅はありそうだ。
それに、狭い部分は数百m程度で長くはなさそう。
よし、これで行く決心がついた!
実際に行って無理そうなら、引き返せばいいのだ。
作戦決行はとある11月の休日。
先にイオンモールで買い物をちゃっちゃと済ませ、ナビに目的地をセットする。
ウワサでは、休日ともなるとバイク乗りやロードバイク乗り達でお店が混むらしい。
なので、出来るだけ早く着くように最短距離で向かうこととした。
R299で飯能まで行き、K30で越生方面へ。

ここを左折し、
越生梅林の脇を通り過ぎる。
道は普通の田舎道で安心した。

さらに、K30から右折し、あじさい公園の方へと進む。
すると、分かれ道には親切にお店の看板が建てられている。

ナビではこの先道がないので、ここからは看板を目印に進むこととした。
だんだんと道は狭くなり、九十九折の登り坂も増え、改めて山奥へ向かっていることが感じられる。
対向車が来ないか、カーブミラーの確認と耳をすませ慎重に進む。
しばらく進むと、少し拓けたところに1軒の建物が見えてきた。
もしかして、アレか?
ワクワクとドキドキが複雑に混ざり合う感情のなか、恐る恐る近付いてみた。
車が2台停まっている。
先客か?
到着したのは11:30頃だろうか、ウワサに聞いていたほど混んでなく安心した。
お店のエントランス横のベストポジションにエリーゼを停めた。
早速、ブログ用にと写真撮影。
お店からは人の気配が無く、周りを見渡すと杉林しか見当たらない。
お店のすぐ脇にある道は、山奥へと続いている。
木々の間から遠くに町が見えるが、霞んでいてよく分からない。
ひとしきり写真を撮り終え、エントランスへ。

このお店は『山猫軒』という。
店名までも『注文の多い料理店』になぞらえているようだ。
門には山猫が浮き彫りになった銅板が嵌められている。
こんな山の中にあるくらいだから、お店は廃墟みたいな雰囲気かと想像していたが、思っていたほど廃れてはいない。
入口が見当たらない…
建物の外壁には、入口を示す矢印が描かれた看板がある。
その矢印の先へと目を向けると、建物の右手にチョットした螺旋階段があった。
踏み板が抜けないかとヒヤヒヤしながら、1歩1歩昇っていく。
まず目に飛び込んで来たのは、広々としたテラス席。
しかし、11月とは思えない暖かい日にもかかわらず、テラス席に座るモノ好きは居ないようだ。
左の方から何か視線を感じる……
視線を感じた方へ目を向けると、そこには大きな山猫が私の方を見ていたのだ!
扉にいっぱいに浮き彫りにされた山猫がこっちを睨んでいる!!
あまりの迫力に、この扉を開けることが躊躇されてしまう。
扉には「土足禁止」の文字が。
書かれている通り靴を脱ぎ、スリッパへ履き替え、恐る恐る重い扉を開けた。
店内は扉の威圧感とは裏腹に、天窓からやわらかな光が差し込み、明るく温かい感じがした。
また建物は古民家風の造りで、剥き出しの梁が私的にツボである。
視線を下に向けると、ポストカードや書籍がテーブルに並べられ、ギャラリーになっている。
どうやら商品として販売してるようだ。
廊下の突き当たりを右に曲がると、まずグランドピアノが目に飛び込んで来た。
そのグランドピアノがある空間の窓側半分にテーブルと椅子が置いてある。
ざっと20〜30人が座れるくらいの広さだ。
確か、宮沢賢治の『注文の多い料理店』では、部屋を1つ1つ進みながら、貼り紙に書かれた通りに服を脱がされ、カラダに油を塗り、最後は登場人物が山猫に料理されそうになるというストーリーのはず。
しかし、ここは部屋がいくつもあるわけではないし、ましてや扉もほとんどないオープンな空間だ。
そこまで忠実に再現されているわけではないので、お店に興味のある方はご安心を。
すると、20代と思われる女の子の店員さんが出て来て、
「お好きな席へどうぞ♪」
と言ったので、
私は2人席を選んで座ることとした。
メニュー表を見ると、ピザ、パスタ、カレーがメインで、あとは飲み物である。
早速、ピザのマルゲリータ(7inch=1人前)と「宮沢賢治オススメのサイダー」を注文することとした。
料理が作られる間、店員さんに断って写真を撮らせてもらうことにした。
決して20代の素朴な女性店員を撮る勇気は、私には持ち合わせていない。
5分ほどして、サイダーが出てきた。
ピザはまだ時間がかかりそうだ。
待ち時間の間、テーブルの片隅に置かれていた『山猫軒ものがたり』というタイトルの本を読むことにした。
ところどころ飛ばしながら半分くらい読んだ頃にピザが運ばれてきた。
焼きたてのチーズが香ばしい。
早速ひと口食べてみる。
おっ、おいしい♪
7inchのピザは一見多いように見えるが、ペロリと食べれてしまった。
本はまだ読んでる途中なので、半分残ったサイダーをちびちび飲みながら本を読んだ。
30分後、
本を読み終え、もう少し余韻に浸っていたいが、この後に行きたいお店がもう1軒あるので先を急ぐことにした。
おしまい