2014年07月04日
とあるお父さんのお話
毎日毎日一生懸命働いて、週末といえば畑や田んぼに精を出し、妻とかわいい子供をつれて出かけ自分の時間なぞ作れずにいる日々。
たまに行う薪割。無心に薪を割る。何故か楽しく気分転換にもなる。趣味といってもいいかも知れない。
斧によって異なる切れ味。研ぎ方によって良くも悪くもなる切れ味。使う楽しみと手を入れる楽しみ。
ただ残念なことに新しい、いや違うもの好きといったらいいのか、1つの斧で満足できない。種類を換えてみたり、手入れの仕方を変えてみたり。目新しい物を見つけるとまた換えては手入れをする。
数年前に以前から欲しかった斧を手に入れてからというもの、それまで大切にしてきた金の斧を磨かなくなってしまった。さすがに磨く為だけに置いておいてはもったいない。売ってしまおう。思い立ったが吉日、道具屋へ行こう、いや待て、相場を調べていかなきゃ損をする。
普段から覗いている山奥の池。池なのか沼なのか。
ここには各地からいらなくなったものを処分しようとする者。一儲けたくらむ者、いろんな人間がここに放り込んでは拾い上げている。
一昔前ならお宝がごろごろ見つかったもんだが、ついぞ最近はいいものを見つけられない。
そういやぁ隣の親父も、ここに投げ入れたら最近また新しいのに変えられたとか何んとか言ってたな。
ここに斧を落とすと池の神が現れて(正直者にはコレを授けよう)とか何んとか、ヒヒwうまい話が転がるかもしれん。
ありもしないことを想像をしながら奥の池を覗いていると、
『おまえの欲しいものはこの斧か・・・』
声が聞こえる。頭の中に響くなんともあまい声が。
そこにはなんと昔手放した斧、色は違えど黒光りする斧が浮かび上がってきた。
当時欲しくて欲しくて手に入れたそれと同じ赤い斧。手に馴染むように大切に手入れをし、一生付き合うと決めたはずのその斧は、自分の気まぐれから手放してしまっていたその斧が、再び目の前に現れた。しかもきちんと手入れされ、お父さんの思い描く理想的な形となって。
お父さんは導かれるままにその黒い斧を見つめていると・・・
『おまえのその金の斧と交換してやってもよいぞ』
と別の声が聞こえる。
どうやらこの斧を落とした主のようだ。
いやまてこれはこれから売って生活の足しにしなきゃならん。そもそも減らそうと思ってるのに。
ばかいえ!こんないい話はないかも知れんぞ。こっちは金の斧とはいえ一度大きな傷を負っている。直してあるとはいえ完全じゃない。こんなもの道具やへもってきゃ叩かれて終わりだ。だったらこいつと交換しておいてまた売ればいい。
しかしどうする。今大切にしている斧は2つもある。そんなの維持していけるわけはない。それにだ、この黒い斧は、あの斧と作ったところは一緒だぞ。同じ頭を持った斧二つあっても・・・。使える人間は体1つだ、だったら斧ばかり集めても。それに嫁にはなんて説明すんだ。
そんな事は分かってる。分かりきってる。じゃ何か?今出てきた神だか妖怪だかしらねえが、この声無視して奥の池に放り込んだところで、金の斧が泥に変わっちまうかもしれねぇ。だったら話に乗ったほうが得策じゃねえかい?
一度は手放した斧。ただそいつ以上のものにめぐり合えていないのも事実。しかし手がかかる。機嫌を損ねたら最後、銭がかかることは目に見えてる。銭の問題で何んとかなるならまだいい、そんなことより、もうそれを作った職人は辞めちまったというし、壊したら最後ってことだってかんがえなきゃならねぇ。
考えててもはじまらねぇ。とりあえずお互いに見せ合おうじゃねえか。
写真だけじゃわからん。切れ味だって試さにゃ。
おっ!うぉ!なんだこれ?!こりゃすごい!こんなんだったかな、いや以前のとは形は同じでも中身が違う。まだ研ぎ方が荒削りだけど、これからの楽しみでもあるし。ん~それにしても小回りきかねーな。こんなんだっけか。
そっちはどう?俺の金の斧は使ってみねえの?遠慮しとくって、いいの?あっそう。何?コレ貰う?いいの?傷あるよ。嫁と一緒に使うにはこのくらいがいいって?そりゃこっちの黒い斧に比べりゃ使いやすいだろーよ。そっちはもうその気だね~。こっち?ちょっと考えさせておくれよ。
いや悪かないよ。むしろ極上じゃねぇか。でもな~こんなの持って帰った日にゃ嫁に何言われっか。言われるくれー慣れっこよ。でも減らすっていってて いや~売れんかった、代わりにこっちにしたから、ヨロシク!ってわけにもな~。
・・・・・
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よし決めた!そっちが俺のを気に入ってくれたってんならしょうがねえ。
俺も男だ、四の五の言ってる場合じゃねーわな。
もってけドロボー!ドロボーじゃねえ?あたりめーだ、言葉のあれだ。俺の気がかわらねーウチにとっとともってけ!!
結局、このお父さんの性根は直らなかったようで。
今では青い斧、茶色い斧に、黒い斧が仲間に加わりましたとさ。
山奥の池に潜むなにかによって誘われたお父さん。得たものは損か得か・・・・
いずれにしても、池に近づく時は気をしっかり保ってないと、引きずり込まれますよ
というお話・・・。
え?嫁はどうしたかって?
嫁:なにこれ?換えて来た?あたし使えないじゃないの。ふ~ん。
昔あんたが使ってたあれと同じ?いままでのほうが良かったジャン。
もったいない。騙されたんじゃないの?
長男:新しいのがある!今度の黒かっこわりー。金のほうが良かった!
次男:おれも~!これかっこわりーw
えぇ~~~~~・・・・。
評判すこぶる悪い・・・・・・orz
Posted at 2014/07/04 19:44:19 | |
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