• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2013年05月22日

彼女がつけたブラックマーク 第2章 【セリカ編】 その8

前置きは極力簡潔に、連続創作シリーズ、続編でございます。

-------------------------------------------------------------------------------

初めて彼女の口から出た、婚約者のこと。
「はい、聞きました。確か式は来年の6月だって。」
「うん、そう。」
「後は、なにか聞いてる?」
「いえ、特に。」
「なら、いいの。」
僕は、知っていた。
相手は大手企業のエリートサラリーマンで、超絶イケメンだってことも。
(ノロケ話を聞かされるぐらいなら、席を蹴って帰ろう。これは仕事じゃないのだから。)
そう思った時、彼女は、またしても意外なことを言い始めた。

「ナオちゃんは、仲はいいけど、女同士だから、ま、色々あるの。あの子、いい子なんだけど、ちょっとお喋りだし、なにか言われたり聞かれたりしたら、適当に流しておいてね。
それにさ、私、女子大だったから、何でも話せる男の子の友達がいたらいいなって、ずっと思ってて。
だから、V君とは、仕事から離れた時ぐらい、同級生でいて欲しいっていうのかな。
まず、その主任って呼ぶのと、敬語、止めてくれない?」
会社では上司で絶対服従、外では気が許せて要は使い勝手のいい相手だなんて、小ずるい、いや、ずる過ぎる。
下心を見透かされた相手に、『V君のことは嫌いじゃないの。でも、まず友達からじゃないと分からないよね。』と、ニンジンをぶら下げておいて、体よく呼び出されて食事を奢らせたり、長電話の相手にされたりと、ロクな目に遭ったためしがない。
ひょっとすると、僕が彼女に対して抱いている特別な感情は既に感づかれていて、さっき、彼女自ら、自分が結婚することを告げたのは、僕の反応を確かめる為だったのか。
そういう僕も、恋人をうっちゃっているだけに、人のことは全く言えた義理ではないのだが。

彼女のこの身勝手なコマンドは、僕を奈落の底に落とすだろう。
こうして二人でお茶をしているだけで、僕の心はフワフワと浮つき、どこに行くのかさえも定まらないでいる。
上司と部下との間柄だから、特別な気持ちに歯止めが出来ていたのに、友達として仲良くなってしまったら、ABSがぶっ壊れてしまう。
そして、その先には、結婚という僕にとってのバッドエンドが確定しているのだ。

「え~と、友達ってことは、仕事帰りに、こうしてお茶とかするってことですか?」
色々考えているうちに、つい、下らないことを口走ってしまった。
「勿論。」
襟元に掛かる栗色の巻き髪を指で弄りながら、唇を僅かに動かして答える彼女。
「後は、、、」
一体何だ『後』って、いちいち確認なくてはいけないことなのか。全くもって自分で自分が情けなくなる。
「ねえ、友達なんだからさ、メールアドレス交換しよっか。とは言っても、V君のはもう知ってたりして。」
社員名簿を作成した時に、登録したと彼女は言う。
楽しげにスマホを取り出した彼女は、赤外線通信で、プライベートの携帯番号とメルアドを送信してきた。
と同時に、僕は、彼女の提案を実質、無条件で受け入れたのだった。

上着のポケットにスマホを入れる僕に、彼女は、再び聞いてきた。
「ナオちゃんのも知ってるの?」
「はい、昨日、教えてもらいました。」
「ふ~ん、ならメールとかしてるんだ。」
「まあ、1回もらいましたけど。」
「そうなんだ。」と言った彼女の目が笑っていないことに、僕は気付いてしまった。
仲がいいはずの、あの二人の間に一体、何があったのだろう。
こればっかりは首を突っ込むのはよそうと決めた僕だったが、この時、すでに手遅れだということをまだ知らないでいた。

その後、総務内のメンバーや仕事について、彼女は自分なりの見方や哲学を語り出し、またしても閉店の時間を迎えてしまった。
お会計の時、マスターにジロジロ見られたりもしたが、こっちには、彼女とまた来て、ヤキモキさせてやろうとの意地悪な楽しみがある。
駐車場に出てから、
「ごめんね、付き合わせて。」
「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます。」
「だから、『ですます』は止めてって。」
「はい、、、あ、うん。」
「V君の彼女さんのことも、今度教えてね。画像送ってよ。」
「それは、ちょっと、、、、」
「なに、私の言うことが聞けないの?」
「あれ、今は、友達じゃあ・・・」
「帰宅途中は業務の一環。だから上司命令。」
「それ、無茶苦茶過ぎ。」
そんなやり取りをしつつ、セリカのロックを解除する彼女から、思わぬ言葉が出た。
「時間遅いから、地下鉄の乗り換え駅まで送ろっか。」
「い、いいの?」
「ちょっと片付けるから待ってて。」
そう言うと、彼女は助手席に置かれた紙バッグやメイクポーチリアシートへと移動させたのだった。

僕の関心は、セリカはもとより、運転する彼女、短くも二人きりの空間、彼女に打つメールの文面、そして、『友達』が、どこまで許されるものなのかに注がれていた。

(続く)
ブログ一覧 | 創作シリーズ | 日記
Posted at 2013/05/22 19:35:15

イイね!0件



タグ

今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

みん友さん、ありがとう
アンバーシャダイさん

途中で.....。
138タワー観光さん

カメムシ 雨雲レーダー 打合せ
urutora368さん

通勤途中の別所沼公園 あれっ〰️!
kuta55さん

シニアドリーム!
レガッテムさん

イノクラブBBQオフ(*´༥` * ...
なぉなぉちゃんver.2さん

この記事へのコメント

2013年5月22日 19:50
いよいよ楽しみな展開になってきましたね。
どうなるのかワクワクします(^_^;)
コメントへの返答
2013年5月23日 10:36
勝さん、ありがとうございます!
さて、これからなにが起こるのか、良い子が寝た頃に、またお付き合いくださいませ(笑)
2013年5月22日 20:52
おーっと、クルマで二人きりパターンは、今までのVさん小説だと、何かのフラグが勃っ……、いや立ったということで、次回以降のオトナな関係に期待が(爆)
コメントへの返答
2013年5月23日 10:39
AlohaRomeoさん、な、なんと、鋭い(汗)
ですが、今回はそれ以上となりますので、頭上注意ならぬ、股下注意と言うことで、R指定の展開にご期待くださいませ(汁爆)
2013年5月22日 22:54
やっぱり車の中なんですね!!!
毎回こういうシチュエーションでてきますが、ポリシーなんですか??
それともただ単にここでの経験値が半端ないとか笑?!ええなぁー。。
とにかく色々妄想が止まりません!!
コメントへの返答
2013年5月23日 10:52
Shojunさん、な、なにか多大なる誤解をされてしまっているような気がしてならないんですけど(滝汗)
みんカラですから、車での絡み、、、じゃなかった車を絡めないと、いけないかななんて。
でも、スキンシップは大切ですよね(謎)
経験値は、やっとメラが唱えられるぐらいですよ~
過去のブログで登場した、友人の変態犬さんはパルプンテ一択ですけど(爆)
2013年5月22日 23:16
おおっ。
会社では厳しくて外では優しい。
こういう女性の先輩いました~。歳は結構上でしたが。
そのギャップにヤラれルんですよね♪
コメントへの返答
2013年5月23日 11:00
あっくんりょうパパさん、そうなんです、こういう落差は、反則ですよね。
計算して、あざとくしてくるのも、嫌いじゃないですけど、ツンデレは天然が一番(笑)

プロフィール

20年前に偶然出会った96年式M3CLimousineを溺愛すること4年、そして涙の別離を乗り越え、その後、やって来たE46M3と忘れえぬ10年来を共にした不人...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/9 >>

1 234567
8 91011121314
15161718192021
2223242526 2728
2930     

リンク・クリップ

蛇使いたちの特濃空間 エテロドッソさん 
カテゴリ:メンテ&チューン
2011/12/06 10:03:34
 
BMWのマイスターショップ TKsquareさん  
カテゴリ:メンテ&チューン
2011/12/06 09:56:25
 

愛車一覧

BMW M3 セダン おハナさん (BMW M3 セダン)
M3最後であろう純粋な内燃機関をどうしても乗っておきたく、大好きなF80M3を手放し、迎 ...
BMW 1シリーズ ハッチバック BMW 1シリーズ ハッチバック
スイフトRS-Tを嫁に進呈し、その後釜としてやってきたのがこちら。一度は真剣に購入を考え ...
スズキ スイフト スズキ スイフト
初めての新車として我が家にやってきたスイフトRS-Tです。 旧型よりも格段に向上したボデ ...
BMW M3 セダン 電子制御の鎖で繋がれたバイエルンの獣 (BMW M3 セダン)
難病が寛解したら絶対にこれに乗ると心に決め、闘病し続けた3年半。 2020年に待ちに待っ ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation