2021年02月24日
女子大生とS3 とある運び屋日記 その1
ごく限られたみん友さんからはご好評を博し、その他大勢の皆様の眉を曇らせた『M3とお姉さまシリーズ』のAudi S3版をご紹介。
病気になる前に書き溜めたものに少々手を加えただけにつき、ちょいと古いですが、お暇な時のお目汚しとしてお楽しみください。
Audiがメインカーの映画といえば、アベンジャーズもそうですが、あちらは、トニー・スタークのプライベートカーとして登場するのみ。ほぼ主人公と言っていいのは、そう「トランスポーター」(正確には2以降)ですね!
シリーズ最新作となる「イグニッション」ではS8がメインを張っています。
というわけで、「トランスポーター」をオマージュしつつ、虚実ないまぜにして吐き出してまいります。
----------本編----------
先日、とある依頼を受けた。
今日は、その約束の日だ。
プロの運び屋が守る3つのルールは知っての通り、「(依頼者の)名前は聞かない」「契約厳守」「依頼品は開けない」
と、その前に、いつになく手洗い洗車+ガラスコーティングのコースを奮発し、バリピカに仕上げられたS3を引き取りに行った。
俺も真新しい下着に着替え、S3に乗り込む。
おそらく、S3至上、最大にして最難関のミッションであり、それは死地へと向かうに近しいからだ。
依頼者から指定された場所は、シロノアールを全国区にしたとある街道沿いの名古屋喫茶。
5月に入ったばかりだというのに少し汗ばむ。
駐車場の隅に停め、俺はいつものように気配を消し、分厚い木扉を開けて、店内へと入った。
依頼者はと、、、いた、あの奥のボックスだ。
というより、こっちに向けて手を振っている。
なんということだ、気配を完全に消していたはずなのに、先に見つかってしまうとは、やはり今回の依頼は一筋縄ではいかない。
「先生、遅い!授業の時、5分前には用意しとけって言ってたのに、遅刻ですよ!」
「お久しぶりでーす。」
「やだ、本当に先生来てんじゃん。ウケル(笑)」
俺が先生と呼ばれているのは、裏稼業をカモフラージュする仮の姿の一つ。
詳しくは後述する。
手を振っていたのは、倉科カナ似の、国立大学医学部に通う医者の卵。「カナ」としておこう。
その隣は、黒髪ロングの和風な顔立ちながら、凶悪なボディラインをこれでもかと際立たせている看護学生。彼女はそうだな、「ナース」としよう。
何がウケたのか謎なのが、ユルフワヘアーの量産型女子大生。
「先生、そこどうぞ~」
言われるがままに、「量産型」の隣に腰かけた。
すでにレシートが俺の目の前に鎮座している。偶然でないとしたら、やはり油断ならない。
「久しぶり、元気そうだね。」
「はい!」と声を揃えるこの3人。
とにかく店内の他の客、特に男性客からの視線が痛い。
個性は三者三様、ビジュアルは控えめに言ってもハイレベルだ。
それに比べ、「あの冴えないヤロウ、なんなん?」との怨嗟の声が漏れ聞こえてきそうなほど、スーツ姿の俺は悲しいほど浮いている。
いや、そんなことどうでもいい。
集中すべきは依頼だ。
少し、ここで時系列と人間関係を整理しておこう。
世を忍ぶ表稼業と一つとして、色々訳あって大学受験生達の面倒を見ていた時期があった。
彼女らは、その時の教え子たちだ。
「合格したらAudiで美味しいもの連れて行く。」と勢いで口にしたのはあくまで社交辞令であり空手形だ。それをのらりくらりと躱していたのを、彼女たちが業を煮やし、今回の運びの依頼となったのだ。
「先生、いつにします?」
「約束しましたよね?」
「ダメですよ~大人なんですから、自分の言ったことに責任持たなきゃ」」
「あれ~もしかして、今さら無かったことにしようとしてません?」
「そうそう、一応、こっちの希望言っときますね。」
ここ最近のスマホの通知がこんな感じで姦しい。
俺の気分は、さながらアンブレア社に潜入したミラジョボビッチの前に立ちふさがるレーザー回廊か、はたまた、トレンドに便乗すると、無残様の前に引き出された下弦の鬼達といったところだろうか。
ふぅと一息ついて、ディスプレイを叩くと、数分と経たないうちに、新しい通知が来る。
「分かりました!来週の水曜ですね?」
「場所と時間はどうしますか?」
「あ、でも、先生、ちゃんとAudiで来て下さいね!そうなると、お酒はダメですね~残念ん!!」
「お店、こっちで適当に探しておきますね!」
再び、モタモタと入力していると、
「ここなんてどうですか?」
「前行った時、いい感じでしたよ♪」
「良かったら予約入れときましょうか?」
入力をキャンセルして、URLをタップした後、
なんとか「いいね。参考にするよ、ありがとう。」と返した。
これまでのいきさつを簡単に整理すると、ざっとこんな感じだ。
それにしても、本当に見違えた。
ほんの2ヶ月ほど前まで素朴な受験生だったのが、目を疑うようなばっちりメイク、体のラインも気のせいか丸く女性らしくなっている様に見える。
何よりも、まき散らすフェロモンの量がジャブローのミノフスキー粒子並みに凄まじい。
車で例えると、もともと倉科カナ似だったカナは、NSXがNSX-Rへの正常進化だ。
ナースは、黒髪おさげのジト目だったのが、地味で堅実なセダン、そうだな、3シリーズだと思っていたら実はB3だったみたいな感じだろうか、いや、あんな凄いものを隠し持っていたなんて、ランチャテーマ8.32の方がイメージは合うかもしれない。
量産型は、まさにフルモデルチェンジだ。クラスでも顔と名前がギリギリ一致するかどうかの目立たなさが、芋っぽい、いや失礼、お芋っぽいばっかりにFJ20を与えてもらいながら、全くパッとしなかったあのガゼールから、S13シルビアへと洗練されたように、今やそのビジュアルはアルファベット3文字のアイドルグループにいてもおかしくないほど。
彼女を見た瞬間、「アートフォォォォォース!!」と叫んでしまうところだった。
----------続く----------
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AUDI S3 | 日記
Posted at
2021/02/24 14:25:27
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