
さてさて、もう終わってから一週間以上経ってぼちぼち人々の記憶から消えつつあるオートサロンネタですが、個人的に書かないと気が済まないのでいかせていかだきます(爆)。今回は、個別に各ブースで聞いてきた話です。
*めっちゃ長いので、気が向いたら暇つぶしに読んでね♪
・マフラー騒音規制強化について~某老舗マフラーメーカーにて~
コレは、ワタシも話を聞いて一安心しました。結論から言うと「現在使用中&販売中のクルマについては関係無く、マフラーも今のまま販売される」との事でした。
例の規制強化は'08.1月以降に国交省の型式指定を受けるクルマ及びそのクルマ用にアフターで販売されるマフラーに対して適用されるものなのだそうです。車検証に新排気騒音規制適合である旨が記載され、そのクルマに対しては認証を受けたマフラーであるか否かをチェックされるという流れになるようです。現時点ではまだ完全に内容が決定した法案ではなく、広く意見を募集しているパブリックコメントの段階で、今年の7月を目処に内容を詰めているところだとか。また、今回の報道に関しては事実と報道内容に食い違いがあり、国交省は各報道機関に対し抗議したそうです。マフラーでは有名なF社さんで聞いた話なのでほぼ間違いないでしょう。あせって買う必要が無くなってホっとしました。
・ブレンボジャパンにて
いや~ここではいっぱい話し込んでしまいました。おかげでかなり長いです(汗
①ブレンボでは推奨するピストン数は4ポットまでで、本来は6ポット以上は作りたくないとのこと。パッド面圧の均一化が難しい事や可動部分が増える事によるフリクションの増加・各ピストンの同期を取る必要性などから微妙なコントロール性が悪化しがちになる。ただ、今はクルマがどんどん高性能化してそれに伴いブレーキ容量のアップが望まれている事及びABSを始め電子制御デバイスが数多く付加され、繊細なコントロールを必要とせず「ガツン!」と踏めるようになった事などによりブレンボでも作るようになったそうです(他社がやるから見劣りしないように、というのもあるそうですが)。また、レーシングドライバーに目隠しテストをすると効きを除けば6ポットよりも4ポットのほうが好印象だと答えるのだとか。マルチピストン化が必ずしも良い訳ではないようです。モーターサイクルの世界ではドゥカティが8POTを採用していますが、あちらさんは1ピストンにつき1パッドというからオドロキ!パッド面積を増やしつつ面圧分布を最適化しようとすると分割パッドになるというのがこれからのウルトラパフォーマンスカー用ブレーキの方向性でしょう。
②インプレッサSTI RA-R用6ポットは、さすがに鍛造では無く鋳造とのこと。注湯するために必要な圧力はかけるのですが、その程度では鍛造とは呼ばないときっぱり言われました。おそらく低圧鋳造でしょう。期待していただけにちょっとがっかり(悲)。それから、モノブロックキャリパーのピストン穴加工は今ではそれ程高価なものでは無いそうです。むしろフルードを通す穴の加工のほうが難しいとか。今では採用している車種も多く、そうでなけりゃ量産出来ませんとこれまたきっぱり。なるほどねぇ~。
③見た目の形は似ていても、ポルシェやフェラーリ、メルセデスといった車用と量販車用とではやはりかけるコストが違うとの事(材質や熱処理でしょうか?)。
インテR用のブレンボはワンメイクレースで使うと熱により変形を起こし、キャリパーが開いてフルード漏れするというのが多発したそうです(対策としてワンメイク用はフルードラインをキャリパー内を通さずパイプで伝達するタイプに変更した)。もう有名な話ですから、と前置きした上で「あれはほんとにひどかった…」て言ってました。RA-Rのはどうなんでしょ。大丈夫か?
④ブレンボのキャリパーは全て海外製。本国であるイタリア製以外のもの(欧州にいくつか工場を持ってるそうです)もあるが、間違ってもス○ンボやヤ○ンボなどでは無いと力強く言ってくれました。ヨカッタ!
⑤スバル車は伝統的にリアブレーキの効きが弱い!極端な言い方ですが「殆ど効いていない」とまで言っていました(まぁ昔から言われている事ではありますが)。
RA-R用6ポット開発の際に「リアはどうします?」と聞いたらあっさりと「2ポットのままで」と返され、逆に「他社はどうなんでしょうか」と言われたとか。なんだかなぁ。ただ、現状では構造的にリアはビッグキャリパーにし辛い面もあるようです。キャリパーをハブキャリアでは無くバックプレートに固定しているので取り付け剛性が低く、効きを強めると振動が出て鳴きやジャダーが発生しやすくなるのでは?との見解でした。実際、リアのバックプレートには振動防止に円盤状の錘がついているとの事。初めて知りました。
多分、リアをあまり効かせないのはABSが無かった頃に「4WDの採用などで雪道に強いと定評を頂いているスバルのクルマが、低μ路でリアタイヤをロックさせてスピンするなど断じてまかりならん!」という発想の名残ではないかと。余談ですがやたらオフセットの深いホイールを好んで使うのもフロントをネガティブスクラブにしてスプリットμ路でのブレーキング時の直進安定性を保ちたいからでしょう。電子制御に頼らない骨太なクルマ造りなのか、それとも設計思想が古いだけなのか…いずれにせよリアブレーキの強化はスバル乗りの課題といえそうです。
⑥欧州車は効き、日本車は鳴きとダストが最優先事項。そんなわけで、日本車はPAGIDのような効きの強いものは採用出来ず、ユーリッド辺りのなかから鳴きとダストが少ないもの(=効きが弱い)をチョイスする傾向にあるとか。ちなみに、V35スカイラインクーペが後期モデルからMTモデルでもブレンボを止めたのもまた鳴きの問題でかなりのクレームが出たということです。ナルホドねぇ~。
・RAYSにて
①今履いているホイールとほぼ同寸のRE30・18×8.5J +52 PCD114.3の重量は約7.6kgとのこと。1本あたり1.4kg軽いです。金も無いのに購買意欲をそそられてしまいました(汗)。CE28Nなら同サイズは7.0kg近辺らしいです。ディスク面外周のアール形状をテーパーカットしたりハブボルト穴に隣接する肉抜き穴を拡大する(CE28Nでは装着時に間違えないよう、敢えて内径に差をつけていた)などして、剛性を落とさない軽量化に努めたそうです。
②意外な話ですが、ポルシェ911でサーキットを走るユーザーの中にはあまりにホイールが軽いとリアがばたついて挙動が乱れるという人がいるそうです。きっと相当パワーを上げているんでしょうけどね。
・モンスターにて
①「インプレッサはやらないのか?」という声が多く、モンスターでもコンプリートエンジンを始める事にしたとか。内容はグループN規定対応が前提なので、ピストンとコンロッドは純正品を重量選別してバランス取りしクランクも人手で再バランス修正・オリジナルガスケット使用・ヘッド面研+隠し味?(さすがに話してくれなかった…)でタービンはノーマルなんだそうな。目標出力350PSなら充分なのでしょう。
②カーボンボンネット
インプレッサは(ランエボもそうらしいが)フロントから入った空気はラジエーターを抜けたあと横に逃げる量が多く、エアクリーナーケース付近とバッテリー周りに滞留するので、その部位を狙って”必要最小限の”穴を開けて逃がすようにしたとのこと。エンジンルーム内のレイアウトが純正もしくは同等なら、むやみにデカイ穴を開けると純正で考えられた内部の空気流を乱し冷却のバランスを崩すという事でした。また、縁の部分を滑らかに面取りして触れたときに手を切ったり表層と内面の骨格との接合面から剥がれるのを防いだりと細かいところまでよく作り込まれています。
スバル/STIにて
さて、最後はやっぱこれでしょ!てことで真打ち登場です(笑)
①ステラのコンセプトモデルについて

過給器をルーツブロワー(ブースト0.75kg/㎠)→リショルムコンプレッサー(同1.0kg/㎠)に変更し108PS&11.6kg・m!まで向上。現状ではCVTの伝達トルク容量13kg・mに対し余裕が無いのであまり走らせられないというシロモノです。今までの「万人受けする当たり障りのない路線」に対するSTIからスバル本体への提案とのこと。他社を見れば某N社はSチューンだのRチューンだのと自動車メーカー直系の技術力を生かしたハードチューンに手を染めており、STIが今後は従来路線に加えこういう方向性も追求していってほしいものです。
②STIではS耐・S-GT・WRCなど数多くの競技車両のコンピューターチューニングを手がけていて、S204のECUマッピングを担当した方は現在ではS耐orS-GT(どっちかははっきり憶えてないのですが…)とのこと。データが入っていないまっさらのモーテックに打ち込めるということです。また、STIではエンジンの運転領域のどこが危ないか正確に把握した上でマージンを取りつつきっちり性能を引き出すチューニングをしているので社外品のへたなパーツにはあまり手を出さないほうがいいと言われました(同等の技術力があるショップさんなら話は別ですが、とも言ってましたが)。
③辰巳さんに会った!
昨年スバルからSTIに移られた”火の玉オヤジ”こと辰巳英治さんとお話しする機会に恵まれました。説明員の札をつけていなかったので声をかけようかどうしようか迷ったのですが、「こんな機会は滅多に無い!」と意を決して話しかけてみましたところ、イヤな顔ひとつ見せずにお話ししていただけました。○○感激っ!って感じでした(笑)。
④ブレーキキットについて
4月発売予定の6ポットブレーキキットですが、本当は税込みで50万円を切りたかったそうです(実際は”税抜き”で498000円)。また、これとほぼ同じものがすでにメルセデスのAMGに使われていて、次期GT-Rなどにも採用されるらしいのですが日本車ではRA-Rが初めてということでちょっと誇らしい気分でした。キットにはリアのブレーキパッドも含まれていて前後のブレーキバランスが変わらないように配慮したとのこと。しきりに薦められてしましました(汗
⑤今後の方向性について
辰巳さんはテストコースでポルシェ911GT3など欧州のいいクルマを数多く乗りこなしていて、これからはその知識・経験がSTIのクルマ造りに注ぎ込まれる事になりそうです。例えば、従来のスバル車は「いいクルマ」を造るためにはまずボディを固め、それから足を造っていくという方法論だったのが辰巳さん曰く「欧州車の中でもいいとされるクルマ達はボディを適度に”抜いて”しならせる事で絶妙な味を造り込んでいる」というのだそうです。これからはガチガチにボディを固める補剛パーツだけでなく、いなすパーツも出てきそうです。
・あとがき
とまぁこんな調子で2日間かけずり回っては写真を撮りまくり、話を聞きまくったのですが、いつも思うのは「話を聞く相手によって応対がまるで違う」という事です。親切丁寧に且つ楽しそうに話してくれる人もいれば、こっちがパーツを指さして話しかけても「あちらのコーナーでパンフレット配ってますのでそちらをご覧ください」などと取材拒否する奴もいたり(しかもゼ○○ポーツブースで!)様々です。やはりあちらさんもただ突っ立ているのは退屈とのことで、長い時間色々と話してくれる人はその方が気が紛れて楽しいといってくれたりします。長々と立ち話につきあってくださった方達にはありがとうを言いたいと思います。