
遡る事・・・約一月前。
「来月はまとまった休暇を取れるが何をしようか?」と、私は考えていた。
どこかへ出掛けたい→行ったことが無い所が良い→簡単にたどり着けない所が良い→ガソリン高いが利便性が良いので交通手段はクルマ→ならばあまり遠くない所→ ・・・・・!!
結局考えがまとまらずに、ぼんやりと尾瀬へ行くという考えだけで時は流れて・・・
出発一日前。
天気予報を調べまくって、これから数日は現地で雨は降らなさそうだと確信してから必需品の買出しへ。『るるぶ』の高価さに驚愕しながらも「情報収集には欠かせない雑誌!」と割り切り購入、で色々と想定し携行品を絞っていく。尾瀬での宿泊は完全予約制なので山小屋に宿泊手配、無線電話なのでちょっとかかり辛いです・・。
出発日。
ザックに持ち物を詰め込むが、総重量10Kgくらいに(汗)その大部分を占めるのがカメラ&三脚の撮影グッズ。三脚はいらないのでは?と思いつつもシャッター速度をかせげない時のブレ防止にはこれ以上効果的なモノがないので仕方なく持っていくことに。なかなか行けない所で「あ~やっぱり持ってくればヨカッタ(ToT)」となると悔しいですからね。
しかし、これが後々邪魔なだけの存在になって後悔するのでした。。。
現地で行動するのは二日間、ただし二日目は帰途につくことと翌日の仕事に備える時間が必要で実質半日程度の行動時間となるため、高速代も安くなって一石二鳥の夜行作戦に決定。と言っても、深夜走りっぱで早朝から登山なんて無理なので夕方に出発。
前泊地、赤城高原SA。
「早めに着いたのでしっかり休めるゾー!」などと思っていたら大間違い。レストランなどの施設が営業中なので煌煌と輝く電灯が駐車場を照らしてくれます。しかも暑い!高原なので外に出れば丁度良い気温ですが、中に入っていると窓を開けていても換気が悪く暑苦しくなってきます。オマケにインテグラ得意のバックシート倒しの急造寝台はさらに換気が悪いのでもう限界です・・。ナビシートを倒してみたりと試行錯誤を繰り返しながらまぁまぁ休んでAM3時頃、運転再開準備。
すると私と同じ目的なのか?周囲には結構車内で休んでる人がいました。ちなみに隣で休息していた人とは現地駐車場で遭遇しました(笑)
大清水駐車場。
ETC深夜割引の関係で4時前にしっかり沼田ICを出るためにちょっと急ぎ気味にインテを走らす!この辺りって街灯が少なく山の中を高速道路が通っているので、暗闇を100km/hで走る感じで意外と怖い!ハイビームにしてると虫がたくさん来るわ対向のトラックに照らし返されるわで嫌なモンです。
R120に入ったらひたすら北上、だんだん夜が明けて山の姿が見えてくる。そして日光方面と分かれてR401を走る。途中の戸倉というところにも大きな駐車場がありますが、バスに乗り換える手間があるのでさらに奥へと向かいます。
5時過ぎ、ようやく大清水駐車場に到着!もう既に尾瀬に向かわれる人たちがチラホラ現れ始めてました。
行動開始!
やはりよく寝れなかった為か、まだちょっと眠かったので休憩。
で、みんな出発していなくなった頃合に起きて出発準備に入ります。この駐車場は一日辺り\500なのですが、当然早朝から係員がいるわけないのでインテを置いて登山口へ向かいます。
「寂しいだろうが明日まで待っていておくれ・・・」
『( -.-)/~』
秘境に到達。
6:30に大清水をスタートして、尾瀬沼目指して6Kmほどの道を進みます。既に分かっていたことではありましたが、ザックが重過ぎです(つД`)
あっという間に汗だくになってから3.5kmほど砂利の坂道をあがってきて一ノ瀬休憩所に着きました、7:10頃です。ここもまだ営業してませんので先へ行きます。
すると間もなく本格的な登山道に入ります。入り口には「種落としマット」なるものがあって、人工芝みたいなのに靴底をこすり付けて外界の植物の種を落として尾瀬には持ち込ませないようにしよう、って狙いだそうです。実際には完璧に防げないみたいですけどねぇ。。。
辛い急坂が続きますが、階段だったり木道だったりと道自体は整備されてるので歩きやすいです。蛇、カエル、デッカイかたつむりなどに出くわしましたがノータッチで進みます。途中に水飲み場があります。
8時過ぎに上りきって三平峠に到着。休憩していたら尾瀬沼から中高年の集団が現れて騒がしくなったので追い出されるように出発。
それから間もなく、木々の隙間から尾瀬沼が見えてきます。沼というよりは湖という方が正しいかもしれないくらい思っていたより大きいです。静かな沼にカッコウやウグイスなどの声が響き渡っています♪
散策。
尾瀬沼南岸からスタートし東岸へ進みます。もうこの辺は2本の木道だけが道になります。周囲はニッコウキスゲが綺麗で、沼を挟んで向こう側には燧ケ岳(ひうちがたけ)がよく見えます。
東岸に着くと山小屋やビジターセンターなどの施設が充実してます。ひとまずビジターセンターで情報収集。周辺地図やトレッキングガイドの冊子を集められますが、「寄付金をお願いします」みたいな標識が妙に心に引っ掛かります。そりゃここまで持ってくるのは大変苦労しますもんねぇ・・・。
ああ、忘れてましたが尾瀬周辺は普通にツキノワグマが生活しているので熊の出没情報をチェックするのを失念してはいけません!そういえば私は熊除けの鈴を持っていなかったのでクルマのキーをチャラチャラ鳴らしながら歩きました(汗)
東岸から沼山峠方面へ北上すると大江湿原です。ここは貴重な植物がたくさん植生しているので苦労して担いできたD80で撮影を楽しみます。
迷走する。
東岸に戻り、今度は泊まる山小屋のある西の尾瀬ヶ原方面へ向かいます。しかしルートは二通りあって、沼沿いを進んで森の中を抜けていく道と、燧ケ岳を通って降りていくルートとあります。私は「ここまで来て登らなかったらもう二度と登らないだろう」と勝手に決め付けてあえて『茨の道』を選択してしまったのです。
沼から離れ山頂へ向かう道を辿り森の中を進みますが、おおよそ「道」と呼べるような大そうなシロモノではありません。「泥沼」です。そこに倒木が渡してあるだけで勝手に進めというものです。
背中に10kgの米袋を背負ってるような状態でフラフラしながら進んでいくと、斜面をえぐり抜いたような獣道になってきます。しかも大雨で流れてきたのか、大量の笹が覆っていて滑りやすい状態で最悪です。草の影響からか、ムゥ~っとする蒸し暑さがあって水分・体力を消耗します。
それでもめげずひたすら進み続けて2時間くらい、やっと辺りが山っぽくなって尾瀬沼を見下ろせる高台に着きました。もうこの辺りで下りにならないかなぁ~ってくらい疲れてました。
それでも頂上が間近に見えるようになっていたので気合で攻略します。
天国。
いやぁ~、すっごい遠くまで見渡せるので感動です☆俎嵓(まないたぐら)という頂上に登頂成功です。尾瀬沼がよく見渡せます。いつか行った奥只見湖も少しだけ見えます。
もう一つ側には俎嵓より10m高い柴安嵓(しばやすぐら)という頂上があるので移動します。こちらにくれば尾瀬沼、尾瀬ヶ原の全てが見渡せます!
地獄。
景色を堪能し、写真も撮り終えて「さぁ山小屋へ向かおう」と下山を始めて間もなく体に異変が現れます。
寒気がしたので「汗が乾いて冷えたのだな」と思ってジャケットを羽織りましたがあまり改善せず。そしてついに嫌な予感は現実に・・・震えだして手が痺れ、腹が痺れ、足が痺れだして立っていられずザックを落とすようにその場に下ろして自分もへたり込みます。見る見る手が硬直し親指以外が変に力が入って動かなくなり「ヤバい!」と思って急いでウイダーインゼリーを取り出し親指と人差し指の付け根に挟んで開封し胃に流し込みます。さらに残り少なくなってきたので温存していた2Lペットボトルのウーロン茶を惜しまず飲み込んでしばらく様子を伺いました。
「・・・なんとか動ける状態に戻った!?」痺れが消えてきたので近くに落ちていた枯れ木を杖代わりにヒョロヒョロと下山を再開しました。目的地まで3.4kmの立て札。
この時ほど一人であることを辛いと思ったことはありませんでしたね・・。
あとで調べたら熱中症のうちの熱痙攣という症状に近いことがわかりました。水分だけでなく塩分なんかも補給しないといけないみたいですね。殆どまともな食事なしで登山開始からドラクエの作戦でいう「ガンガンいこうぜ」的な進み方してたら誰でもすぐに限界に達しますよね。
希望の沢。
延々と続く深い森の中を、杖片手に無駄に重いザックを背負って枝に付けられてる目印を頼りに下山します。暑い・・・水を飲みたいけど残り少ない、かと言って我慢してると体調をまた崩しかねないし意識を失ったらそれこそ終わる、助けを呼ぼうにも電波が届かず携帯が使えない、通りがかった人に助けを求めようにも険しい登山道でしかも午後だから誰も通らない、さらにツキノワグマに出くわしたら・・・と、こんな感じで色々考えながら山をナメて掛かった自分への怒りとルート選択に失敗した後悔の念を抱えながら、ただヨロヨロと老人のごとく進みました。
もうなんだかね、亀仙人のもとで重い亀の甲羅を背負って修行していた頃の悟空とクリリンを思い出しましたよ。「あいつらも大変だったんだなぁ・・」と思う辺りにまだ余裕があったのかもしれませんが・・・
多めに休憩を取りながら進んで非常食も少なくなって「荷物捨てて行くか?」と本気で考えはじめた頃に急な下りが終わってほぼ平坦な道に、そして目的地まで2.1kmの立て札。そしてチョロチョロと流れる小さな沢を発見!
もう汚いだの細菌がどうだの考えてられませんでした。冷たくておいしく2、3口飲んだだけでも凄い回復しましたよ。ここでなんとか持ち直してあとはサクサク進んでもう一つのルートの木道と合流、山頂から3時間半ほどで山小屋に到着♪
朝を迎える。
水をがぶ飲みして食事もガッツリ食って寝て復活。でも昨日のことが頭にあるので予定の散策をかなりカットして尾瀬ヶ原を少し見て帰路につきます。真っ直ぐ尾瀬沼まで向かって休憩所で山菜蕎麦の昼食。沼の南岸をまわって昨日と逆の行程で三瓶峠→一ノ瀬→大清水へ。ほとんど写真撮ってません・・・。
帰り道。
懐かしの(?)インテと再開し、一通り片付けて準備して駐車料金払って出発。途中、眠気覚ましを兼ねて「吹割の滝」に立ち寄って撮影。我ながらよくやるわ、と思いつつ早々に撤収です。
最後に、関越でトラック炎上の影響でだいぶやられましたが無事に『生還』できたことを本当に嬉しく思いました!
乱文乱筆で失礼m(_ _)m