2013年秋のこと。
朱い人「コペンのブレーキってすぐ燃え尽きるよね〜」
––––––そうですか。(まあ公道では安全運転でお願いします)
朱い人「もっと大きいブレーキ、普通車から流用できればね〜」
––––––そうですね。(僕はこれで十分ですけどね)
朱い人「ヴィッツとかハブ径同じだし、キット的なのあればね〜」
––––––キットですか(ググる)あーなるほど、ブラケットかまして大径化するんですね。
朱い人「ダイハツはナックル共通だから、作ったらコペン以外もみんな喜ぶよね〜」
––––––そうなんですかね。(そうなんですかね?)
朱い人「じゃ、作って☆」
––––––へ?(へ?)
というわけで、作ることになりました。
これが2013年の秋の話。
んで、ヴィッツのローターとキャリパーだと
キャリパーの加工が必要なことが判明し
グラスリップだなんだとgdgdやってたら
当の朱い人は途中からエリーゼとかいう
「すーぱーかー」に乗り換えちゃったので
地元コペンサイトの某4気筒の人に話を持ってったら
・ナックル同じだから新型コペンにもいけるよ
・競技用なら14か15インチ入るように作りなよ
・純正だとすぐブレーキ終わるから欲しいなあ
ということで、そこから本気出して泣きながら設計して試作して
そして2014年9月に完成版ブラケットが2セット削りあがり
削り出しフェチの自分は、我ながらあまりの出来栄えに
そこで満足して放置
1セットは協力してくれたその人に
もう1セットは部屋に飾り、観賞用に
たまに持ち出しては人に自慢
……していたのですが、とうとう
「ほしい」という奇特な人が出たので手元を離れていきました。
「んじゃ、これを機に写真撮って記事書いて公開しとくか」
ということで
2016年8月、ようやく公開!となりました。
構想から苦節3年くらい
(そのうち2年は完全にほったらかしでしたが)
いま明かされる、gdgdなダイハツ用強化ブレーキ開発の記録です。
(設計とか実装の過程はコペンの整備手帳にUP済み)
(記事もgdgdです)
例によっていつもの手法。
まず性能要件、そしてコスト要件を決めます。
性能要件
・ランニングコストを含め安価であること
・コペン純正の15インチホイールが履けること
・無加工でポン付けできること。特にローター
・高性能なキャリパーを使用すること
コスト要件
・一式あわせて5万円以内に収まること
以下、性能要件の詳細です。
「ランニングコストを含め安価であること」
まーwilwoodとかブレンボはパッドもローターも高いっすからねー
安くてデカいローター × 安くて面積広いパッド
これで
パッド長持ち & 減ったら惜しみなく交換!
というのをコンセプトにしました。
当然ながら他車純正の流用が前提。
安価な純正を無加工で使えるようにします。
高くて性能高いブレーキKitは他にいっぱいあるしねー
「コペンの純正15インチホイールが履けること」
ブレーキは大きくなりましたが16インチしか履けましぇん。
これではタイヤ的にもサーキットで使えましぇん。
(カッコイイですけどね!個人的には大好きです)
そのため、大前提として
一部の14インチホイールが履ける
ほとんどの15インチホイールが履ける
ことを要件としました。
また、今回は
コペンの純正ホイールがそのまま使える
ことも目標としました。
これは僕が個人的にコペンのデザインを気に入っており、それを維持したかったのが理由です。
また、純正15インチが入るなら余った純正にスタッドレスを入れて使うこともできます。
(165/50R15のスタッドレスは高いですが、無いよりマシ)
というわけで、目指す理想は
外見ノーマルなのに
なんかブレーキがデカい
です。ハイ。
「無加工でポン付けできること。特にローター」
ローターが要加工だと交換のたびに面倒だしねー
幸いにして、これはNBロードスターRSの270mmローターがポン付け可能でした。
穴数・PCD・ハブ径が同じ、という条件を満たし、かつ
NB8Cより直径の大きいローターはトヨタ系列に複数ありましたが
いずれも直径が大きすぎ、15インチが使用不可になってしまいます。
また、ローターのハット高さも重要です。
ハット高さが純正から乖離しすぎると
ホイールを外に逃がさないといけなくなったり
ロングハブボルトへの打ち替えが必要になったり…
つまりホイールの選択肢が(ますます)狭まります。
この270mmローターの場合、純正とのハット高さの差は4ミリ。
ハブボルトのかかり具合も純正のまま余裕を持ってセーフです。
(ダイハツは打ち替えめんどくさいですからね)
サンキューマッツ。
「高性能なキャリパーを使用すること」
ローターの厚みが22ミリなので、それを前提に純正キャリパーを選定します。
つまり、22ミリ厚のローターを採用している車種から探します。
選ばれたのは、デミオでした。
DYね。
いいですね。DYデミオのこのキャリパー。
なにがいいって、これドイツ車に定番のATE製なんですよ。
VW・アウディでよく純正採用されてるATE54型です。
横への張り出しが少なくてホイールの逃げも楽になるし
パッドも分厚くて面積広いのでガンガン踏んでよし。
ピストン径も
コペン 51mm
デミオ 54mm
ですので、拡大幅は10%以下。
ペダルフィールの悪化も極小でしょう。
「ほう、何といい仕様だ」
「ティンときた!君のようなキャリパーを求めていたんだ!」
というわけで、採用。
なお
「なんで日本車にドイツのキャリパーが?」
という話ですが、これは当時のデミオが
フォード・フィエスタとプラットホームを共有していたのが理由です。
フィエスタは欧州フォードの売れセンですから、ブレーキも当然ながら
欧州での要求性能を満たし、かつ現地の整備工場が慣れているATE製を採用。
それがそのままデミオにも使われている、というわけ。
ぶっちゃけ、日本ではオーバークオリティでしょう…
アイシンに慣れた整備士にはパッド交換が面倒なだけだし。
フォードとマツダの当時の力関係がこんなところにー
……ま、おかげさまで安く手に入るんだし結果オーライですね。
サンキューマッツ(2回目)
あ、あと
「キャリパーもNB8Cのでいいんじゃない?」
という意見もあるかもしれませんが
これについては以下の下手クソな絵をご覧ください。
見ての通り、アイシン製とATE54型には「足」の作りに違いがあります。
もちろん、強度の高いブラケットを作りやすいのはATEのほうです。
ぜんぶ見てきたわけじゃないのですが、おそらく欧州車は
・同じキャリパーを大量生産
・大径ブレーキを使う場合はナックルを設計変更
という方針なのでしょう。
一方、日本車は
・キャリパーは多品種を少量生産
・大径ブレーキを使う場合でもナックルはそのまま
という方針が多いのかもしれません。
特に、ダイハツなんてナックルは全車種完全に一致ですよね。
おかげさまで流用は効くので、その点ではありがたいですが。
以上、ひょんなことから感じる欧州車と日本車の違いでした。
さて、いいかげんgdgdなので仕様をまとめます。
ローター:マツダ ロードスター NB8C RS
キャリパー:マツダ デミオ DY5W
ブレーキホース:マツダ デミオ DY5W
純正からどのくらい強化されたかの比較では
ローター径:246mm→270mm
ローター厚:17mm→22mm
パッド面積:35cm^2→62cm^2
ハット高さ:42mm→46mm
ピストン径:51mm→54mm
となります。
特にローター厚とパッド面積がいい感じですね。
で、ホイールですが。
ぶっちゃけ14インチは入ると思っていなかったのですが、社外なら入りました(整備手帳参照)。
14インチだとキャリパーとホイールリムのクリアランスは5ミリほど。
もちろん、目標にしていた純正15インチも入りました。
ただ、純正ホイールは全般的にスポークが太めなので、今度は横方向がシビアになります。
3ミリほどのスペーサーを入れれば余裕で履けるとのことでした。
まあ結局のところ
(1)NBロードスターの穴数・PCD・ハブ径がダイハツ車と同じだった
(2)ジャストな大きさの大径ローターをNBロードスター用に設定してくれた
(3)DYデミオに、コンパクトで「足」の短いATE54型を採用してくれた
(4)しかもDYデミオのローター厚がたまたまNBロドと同じだった
以上、4つの奇跡が重なったことによりダイハツ車への移植が実現したわけで。
マツダには本当に、足を向けて寝られません。ありがとうございます。
カープ優勝よかったね、おめでとう。
コスト要件
「一式あわせて5万円以内であること」
結論から言うと、無理。
最終的に必要になったお金
新品ブレーキディスク:1.0万円(通販)
新品ブレーキパッド:0.3万円(通販)
新品ブレーキホース:0.6万円(ディーラー)
中古キャリパー左右:0.3万円(ヤフオク)
ブラケット左右:3.6万円(外注)
ボルト・ワッシャー規格品:0.1万円(通販)
合計 59,000円
/(^o^)\
実際にはこれプラス、中古キャリパーのオーバーホール費用かな。
スポーツパッドにするともうちょっとかかります。
……作った本人が言うのもなんですが
ヤフオクに出てるFD5純正ブレンボ流用Kitのほうが
同じ費用で見た目的な満足感は得られると思いますw
あれは16インチでキャンバーつけないと入らないそうですが僕は好きです。
まーというわけで、これを必要とする人は
「14インチか15インチ履きたい人」
「見た目より実戦での実用性重視な人」
「コストとフェードを気にせず走行会で踏み抜きたい人」
「なぜか公道で純正ブレーキが炭になる朱い人」
ということになります。
よく分からないけど、よかったね!
…ま、コストオーバーの原因はどう考えてもブラケットですね。
A7075使って応力集中にビクビクして曲線使いまくりで作った結果
カッコよくはなったんですけど見積もり見てビビりました。
でもネジ切るならA7075を使いたいし
今 さ ら 紙 図 面 書 き 直 す の 超 め ん ど く さ か っ た
ので、何も考えずそのまま作ってしまいましたとさ。
もっとざっくり作ればもっと安かったかも。
でもそれだと、自分で設計する意味があんまりないね。
おわり。
おまけ
パクろうと思ってるなら
ナックル側のボルトのかかり代と
各座面の限界面圧にだけは気をつけて。
今回の設計ではそこが最もシビアでした。
あとは雑なコピーでもたぶん死にません。
でも保証もしません。
以上。