年明け間もない1月8日、名古屋方面に出張。
仕事はお昼過ぎで片が付き、そのまま帰るのもつまらないので、高山線から富山回りのルートで帰ることにしました。
名古屋駅11番線14時35分。
JR東海キハ85系『ワイドビューひだ13号』が岐阜方から回送で入線。
12番線停車中の、関西線快速『みえ』キハ75系との並びを捉えます。
昨年武豊線が電化され、名古屋駅でキハ75が見られるのは快速『みえ』だけになりました。
隣の10番線には、383系長野行『ワイドビューしなの17号』の姿が。
『しなの』は今年3月のダイヤ改正で、1往復だけあった大阪直通が廃止され、全列車名古屋-長野間の運転になります。
大阪-長野間の走行距離441.2kmは、現行在来線特急で最長。
JR東日本、JR東海、JR西日本の三社直通特急も、今となっては稀な存在でしたが、また一つ国鉄時代のネットワークが姿を消していきます。
(-_-;)>
『ワイドビューひだ13号』は1~4号車が高山行、8~10号車が富山行の7両編成。
(6,7号車欠車)
9号車の富山行自由席車に乗り込みます。
14:48 名古屋を定刻に発車。
20分で到着する次の岐阜までは1号車が先頭ですが、岐阜から進行方向が変わるので、初め座席は後ろ向きになっています。
富山までは、ダイヤ上4時間4分の旅。
乗車時間が4時間を超える列車も今では少なくなりました。

先週の帰省ラッシュがウソのようながらがらの車内。
乗車率は20%くらいかも。
岐阜から高山本線に入ります。本線といっても全線単線非電化の偉大なるローカル線。
名鉄各務原線と並走し鵜沼駅を通過。
隣には名鉄新鵜沼駅が見えます。
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名鉄新鵜沼駅といえば、ここから高山線に乗り入れていた特急「北アルプス」号が思い出されます。
名鉄キハ8000系(Wikipediaから)


1965年、高山線直通準急用として名古屋鉄道が新造した気動車。
走行装置はキハ58系に準じ、台車はコイルばねのDT22、最高速度95km/hでしたが、パノラマカー譲りの連続窓と赤い転換クロスシートに加え、当時まだ珍しい冷暖房が完備され、国鉄特急「ひだ」キハ82系に遜色ない設備を備えていました。
このため当初から「特急として運転しては」という声もあったようです。
しかし私鉄車両の特急を走らせることに国鉄のプライドが許さなかったのか、名鉄神宮前-高山間の準急「たかやま」号として運転を開始。
全車指定のデラックス準急は大好評を博しました。
(小田急の御殿場線直通「あさぎり」「銀嶺」も同じ事情で初めは準急扱い。のちに連絡急行から特急に格上げされています。)
キハ82系と並ぶキハ8000系
名鉄キハ8000系の車体幅は名鉄車両限界に合わせ、キハ82やキハ58の2940mmより狭い2730mmとなっています。
(最終増備のキハ8200は、車体長が延びたため2710mmに)
1970年、高山線を全線走破し富山地方鉄道立山駅までの直通運転が開始されます。
列車名は急行「北アルプス」に改められました。
地下鉄相互乗り入れを除くと前例のない、名鉄-国鉄-富山地鉄の3社直通運転が実現します。
神宮前-高山間は所定6両編成。
高山で3両切り離して立山に向かいました。
当時、富山地鉄は国鉄直通運転に積極的で、475系電車「ゆのくに」「立山」、58系気動車「むろどう」「うなづき」そして8000系気動車「北アルプス」が、線内特急扱いで乗り入れていました。
後年、485系「スーパー雷鳥」、681系「サンダーバード」も立山、宇奈月に直通運転しています。
その後1976年、プライドなどとは言ってられなくなったのか、国鉄増収策の一環(?)として特急に格上げされ、初の私鉄車両特急が誕生しました。
しばらくして富山地鉄乗り入れは中止になり、神宮前-富山間の運転となります。
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国鉄民営化後の1989年、JR東海は高山線近代化を目指し、特急「ひだ」に高性能気動車キハ85系を投入。
ステンレス車体、大きな窓に全席フルリクライニングシート、最先端のイギリスカミンズ社製高出力ディーゼルエンジンを搭載し、最高速度は120km/h。
「ワイドビューひだ」の誕生です。
こうなると、運転開始時は「デラックス」と言われたキハ8000系も、性能そして車内設備の見劣りが顕著になりました。
乗車率も低迷し、名鉄は「北アルプス」用の気動車新製を決断。
1991年、キハ85系をベースに同じくカミンズ製エンジンを搭載した直通特急用気動車、名鉄キハ8500系が生まれました。
最高速度は120km/h、車体側窓はパノラマスーパー1000系と同じデザインを採用。
やはり車体幅は狭いため、床下機器の設計は大変だったそうです。
名鉄キハ8500系(Wikipediaから)
走行性能がキハ85系とほぼ同じになったことから、JR東海と名古屋鉄道は単線で逼迫する高山本線のダイヤに対応するため、臨時増発の「ひだ」と「北アルプス」の高山線内併結運転を検討。
美濃太田-高山間の異系列連結が実現しました。


名鉄キハ8500(左)とJR東海キハ85(右)
国鉄と私鉄車両の連結運転は、南海電鉄、富士急行、島原鉄道で見られました。
最近では、北近畿タンゴ鉄道「丹後ディスカバリー」とJR西日本「北近畿」や、北越急行とJR西日本「はくたか」の併結運転例があります。
2001年、東海北陸自動車道開通の影響もあり、利用者が減少して採算が取れなくなった「北アルプス」号は廃止されてしまいます。
名鉄が威信をかけて製作したキハ8500系は会津鉄道に譲渡され、快速「会津マウントエクスプレス」号として会津若松-鬼怒川温泉間で運転開始。
しかし元々高速仕様のキハ8500系には、加減速が多く最高速度の低い第3セクターでの運転は変速機への負担が大きく、会津鉄道での活躍は8年程度で終わってしまいました。
新鵜沼駅には「北アルプス」専用の高山線連絡線があり、各務原線、高山線とともにデルタ線を形成していました。
高山線から新鵜沼連絡線を経て名鉄犬山線に入るキハ8000系とキハ8500系


奥に新鵜沼駅が見えます。
「北アルプス」廃止後、しばらく連絡線は残っていましたが、今では駅傍の住宅地に姿を変えてしまいました。
高山本線鵜沼駅の側線にわずかにその痕跡が残っていて、「ひだ」の車内から確認することができます。
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さて、特急「北アルプス」の話が長くなったところで、
17:12 「ひだ13号」は高山駅に到着。
ここで、高山止まりの1~4号車を切り離します。

17:15 、グリーン車の10号車を先頭に、3両の身軽なスタイルで高山駅を発車。
乗客はさらに減って、乗車率10%くらいかも。
10号車グリーン車には誰も乗っていません…。
飛騨古川を過ぎると、宮川沿いの崖淵にへばりつくように走ります。
このあたりは例年なら雪が深く、この時期は雪のカベの中を走っているはずなのに、今年は暖冬で雪もなく、あたりは暗闇にまぎれてよく見えません。
気ダルい時間が流れていきます。
猪谷を過ぎ、越中八尾が近づいて、列車は富山平野に入ります。
最後の停車駅速星の次は終着富山。
18:52 定刻に富山到着。仮ホームの4番線に入線。
富山駅在来線は高架化工事中。
1番線新潟方にあった富山地鉄との連絡線は撤去され、過去のものとなりました。
現在、富山地鉄とはJR魚津駅と富山地鉄新魚津駅で線路がつながっていて、マヤ34軌道検測車が富山地鉄の委託を受けて測定のために乗り入れることがあります。
以前はクモヤ443系電気検測車の入線も見られました。
さて、富山駅北側には運河を整備した「環水公園」があり、そこには「世界で最も美しいスタバ」と言われる「STARBUCKS COFFEE」 があります。

今日は寄っている時間がないので、先を急ぐことに。
別の日に、散歩中のLEN吉とのショット。
富山からは北陸新幹線には乗らずに、第3セクター化された北陸本線に乗ります。
北陸本線は、米原‐直江津間が本来の姿ですが、現在では、米原‐金沢間が「JR西日本」、金沢‐倶利伽羅間が「IRいしかわ鉄道」、倶利伽羅‐市振間が「あいの風とやま鉄道」、市振‐直江津間が「越後トキめき鉄道」、と4つの会社に分断されてしまいました。
今や、これらの路線を通しで走るのは、JR貨物の高速コンテナ列車だけです。
「あいの風とやま鉄道」の仮改札口。
富山駅在来線が全面高架となり、地鉄富山市内線と富山ライトレールが高架下で直結されるのは、2018年のこと。
金沢方面1~3番線は既に高架化されています。
乗車するのは快速「あいの風ライナー4号」金沢行。
(停車しているのは富山終着の回送列車)

特急街道だった北陸本線も、新幹線開業後はローカル輸送に徹しています。
その中、数少ない優等列車が、快速「あいの風ライナー」
JRでは見られない521系の全席指定列車で、乗車には¥300のライナー券が必要です。
金沢までの停車駅は国鉄時代の快速よりも少なく、小杉、高岡、石動の3駅。
(国鉄の北陸線快速は、小杉、高岡、福岡、石動、津幡に停車)
途中の特急退避がないので、富山-金沢間59kmを46分で走ります。
評定速度は77km/hで、在来線としては結構速い。
19:25 JRから譲渡された521系2次車2両編成が入線。
「快速」の表示が誇らしげに見えます。

通勤ライナーの位置づけで、帰宅客で座席は満席でした。
ライナー券¥300払って一駅だけ乗る人も見られます。
20:15、金沢に到着。
521系は、下り「あいの風ライナー5号」泊行きとして、20:20に折り返して行きます。
金沢では改札を出て、駅ナカのそば屋「おらが蕎麦」にちょっと寄り道…。
<(;^^)
「そば」は頼まずに、厚揚げ焼き、おでんと枝豆に、生ビールを!


そして、そば焼酎のお湯割りを1杯。
ほろ酔い加減で気分がよくなったところで・・・、
金沢21:35発、福井行特急「おやすみエクスプレス」に乗り込みます。
「お休みエクスプレス」は、朝の「おはようエクスプレス」とペアの通勤特急。
列車は683系の3両編成。
福井で最後の乗り換え。
22:30発、普通敦賀行きは、いつもの521系3次車。
22:37北鯖江駅、到着!
東海道新幹線経由、米原乗り換えだと1時間40分ほどで行ける区間。
在来線のみに乗車して、8時間近く掛けて移動。
退屈することも、疲れることもなく、自分だけの至福の時間を満喫したのでした。
(^o^)b