2014年01月06日
二輪にはつらい季節の昨今、皆様いかがお過ごしのことであろうか。
この寒い季節でも、必要に迫られて、あるいは個人的な趣味で走っている方も
たくさんいらっしゃることと察する次第。
かく言う自分は通勤でバイクを使っているため、ヘルメットの曇り止めケミカル
を使う機会が多くなった。そこでふと、曇りについて考えていたらガソリンタンク
の水抜き剤に思い至ったのである。
長い前置きはこのくらいにして、今回は水抜き剤の「正しい使い方」を考察して
みたいと思う。みんカラのユーザーは四輪乗りが多いようで、当ブログのような
二輪中心の記事はあまり読まれないと思うのだが、今回は別である。水抜きの
是非や効果、どう使うのがいいかについては内燃機関をメンテナンスする者と
して少なからず興味のある話題であろう。
主剤はイソプロピルアルコールがほとんどのようだ。水に対しても、ガソリンに
対してもよく溶けるため、アルコールに水を溶かし込んでガソリンといっしょに
燃焼、排出してしまうというのがそのカラクリである。多くの製品の使用方法に
書いてあるのは、満タン時にガソリン×リッターに対して○mlを入れろ、という
ものだが、ここに罠がある。
知っての通りガソリンや軽油は水と反発するため、タンク内で分離する。水は
重いのでタンクの底面にたまるわけだが、満タン時に水抜き剤を使うと、水が
アルコールに溶ける前にアルコールが燃料に溶け込んでしまい、水が溶ける
効果が薄くなってしまう。これでは効果が半減以下である。実にもったいない。
ではどうすればいいかというと、給油したい気持ちをぐっとこらえてできるだけ
燃料を減らす。ガス欠まで減らすのはまずいので、燃料計の残り1目盛りとか
2目盛りあたりまで減らせばいいだろう。そこでおもむろにセルフの(ここ重要)
ガソリンスタンドに出向き、減った燃料タンクに「規定量の」水抜き剤を入れる。
つまり満タン時の燃料の量に対応する水抜き剤を入れる。
残り少ない燃料に対して水抜き剤の濃度は高くなる。まだ給油したい気持ちを
こらえ、車体をゆする。バイクの場合はフロントブレーキを握りながらフォーク
を前後にゆすり、四輪の場合は車外から車体をゆするといいだろう。こうする
ことで、濃度の高い水抜き剤入り燃料と底面にたまった水をよく混ぜるのだ。
しかるのち満タンまで給油すれば、より効果の高い水抜きができるのである。
はっきりいってオカルトすれすれの話かもしれないが、水はアルコールにより
多く溶けるわけだし、使用時の濃度は高いほうがいい。給油することでタンク
に注がれる燃料の勢いで燃料は混ざるし、トータルでは規定量の濃度で使用
したことになるので文字通り結果オーライである。
オカルト好きのドライバー、ライダー諸兄は一度お試しあれ。
Posted at 2014/01/06 20:41:45 | |
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メンテナンス | 日記
2013年11月07日
鉱物油はスラッジができやすい説につながるネタ。
最近はAPIグレードの高度化にともなって、低灰分化・・・すなわち燃焼や化学変化を
起こしても固形物を発生させにくいオイルが求められていると聞く。そんな中、とある
オイル販売業者のページを読んだら、クリアランスの大きい空冷のようなバイクには
ZnDTPという添加物が必要だと書いてあった。最近の合成油には、ZnDTPが不足で
旧車にはよくないとも。
ばらしてしまうとそのメーカは米国Kendall(ケンドール)のオイルを輸入販売している
代理店なのだが、そのZnDTPという成分に興味を持ってグーグル先生に聞いてみた。
情報はいくらでもヒットするので気になる人は各自で検索されたい。
この添加物は、亜鉛分子1個に硫黄分子4個とリン分子2個、炭化水素分子4個が
結合したような構造になっていて、金属表面の極圧剤や潤滑剤として働くそうだ。
問題は金属イオンの亜鉛と、燃焼による化学変化でH2SO4、つまり硫酸に変化する
可能性がある硫黄、リン酸に変化する可能性があるリンである。硫黄とリンは熱や
化学変化を通してオイルを劣化させるのだが、残された金属イオンの亜鉛がどんな
形になるかというと、灰分すなわち固形物=スラッジになるのである。
最近のオイルはスラッジの元になる成分を減らす動きがあるので、あまり心配する
必要はないと思うのだが、そのKendallのオイルは旧車や空冷用と称して鉱物油に
ZnDTPを含んだ添加剤を加えているそうだ。それはHPにも書いてあった。
この成分は規制のゆるい昔から使われていたもので、潤滑油の添加物として現在
でも割とポピュラーに使用されるものらしい。オイルの劣化が進まないうちに交換
していれば問題はなさそうだが、交換をさぼっているとスラッジがたまるというのも
あり得る話だ。
じゃあ化学合成の2大成分であるPAOやエステルはスラッジにならないかというと
なるのである。PAOについては調査不足でよくわからないのだが、エステルは熱
や酸化、加水分解などによる高分子化(分子構造が変化して粒が大きくなる)に
よってスラッジになっていく。エステルで作った繊維であるポリエステルはご存じの
方も多いだろう。
なんだかよくわからなくなってきたのだが、結論としては鉱物油でも合成油でも、
添加剤と運転状況と走行距離によってスラッジができるときはできるということに
ならないか?鉱物油のほうができやすいって根拠はどこに・・・・
いずれにせよ四輪と比べて最高回転数が2倍から3倍、常用回転数は約2倍、
クランクケースのオイル量は約50%~80%ぐらいしかない二輪は、四輪より過酷な
環境で使われていることに変わりはない。メーカーが交換距離としているのは
5000km程度らしいのだが、2000km~3000km程度で変えたほうがいいのかも
しれない。このへんはまあ各自の判断になろう。
やはり定量的なデータがないとこの手の話題はなかなかオカルトの域を出ない
というのが結論かな。オイルとは奥が深いものなり。
Posted at 2013/11/07 23:49:16 | |
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メンテナンス | 日記
2013年11月02日
都市伝説いろいろ。
○鉱物油は中東産のナフテン系オイルがベースなので品質が悪い
鉱物油は原油から精製した成分のうちエンジンオイルに適する成分(パラフィン油)
をベースに作る。ナフテン油は粘度が非常に低く、エンジンオイルとしては不向きの
ため使われることはない。ナフテン油ベースというのはセールス用のデマである。
○鉱物油はスラッジが発生しやすい
この論理を主張する人が、スラッジが発生しやすい理屈を説明しているのを一度も
見たことがない。たぶん憶測で語ってるのではないだろうか。自分でも調べてみた
のだが、鉱物油にスラッジができやすい根拠は見つからなかった。知っている方が
いたらぜひ教えてほしい。
○短距離しか乗らないので3000kmまたは3ヶ月などのルールを守る必要はない
まったく逆で、短距離高頻度走行はオイルにとってもっとも過酷である。短距離で
エンジン停止を繰り返すとブローバイガス中の水蒸気が冷やされて結露したり、
添加剤の効きが悪くなったり(一番効果的に働く温度が暖気完了の状態)という
ことになり、ロングランより劣化速度は速い。
○スラッジがたまったらフラッシングすれば落ちる
低粘度のフラッシングオイルを少し回したぐらいでは、粘着性のあるスラッジを
落とすことはできない。逆に沈殿していたスラッジがフラッシングでエンジン内を
漂い始める危険がある。フラッシングオイルを抜いても一定量はエンジンに残る
ので、新油を入れても混ざって粘度低下を起こす。百害あって一利なし。
○じゃあスラッジがたまったらどうすればいい?
エンジンをおろしてオーバーホール。粘着性のスラッジは簡単には落とせない。
カムシャフトやロッカーアームなど動弁系にべったり付着することが多いので、
完全にばらしてパーツ単位で物理的に削り落とし、洗浄するしか手段はない。
スラッジが発生する前にオイルを交換するのが最大の対策である。
○100%化学合成
化学的に合成したエステルやポリアルファオレフィン「だけ」でベースオイルを
作れば原理的にはそうなるが、最近は鉱物油から水素化精製したVHVI油も
「化学合成」として売られているようである。このVHVI油は、鉱物油を精製した
油なので厳密には合成油ではない。だがオイルメーカーは成分を公開しない
ため、真実は闇の中である。
Posted at 2013/11/02 18:18:57 | |
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メンテナンス | 日記