のび太2002のブログ一覧

　一つまえのブログを書いていて思い出しました。
　私が、SAVANNA　RX-7（FC3S）と言うクルマと出会って、今月はちょうど20年目でした。

　職場の真向いのガソリンスタンドでブラックのFCに一目惚れ。
　当時は、「クルマは走ればいい。」って人で、とんとクルマには興味がなかった。
　けれど、ガソリンスタンドでいぶし銀を放つその一台のスポーツカーは、私の目と心を捉えて離そうとしなかった。


　家に帰って、クルマ雑誌と中古車雑誌でセヴンを調べる。
　その時点で、絶版車であったセヴンは、中古車でも200万円前後。色やトランスミッションによっても値段が上下し、特に赤や黒、そして白・ガンメタは人気色で、当然5速が最人気だった。

　当時、勤め人になったばかりの私には、いきなり200万円から250万円のクルマを購入するのは不可能だった。ローンを組んで購入するという手もあったけれど、基本的に借金が嫌いな私には、現金一発購入しかありえなかった。

　１年間一生懸命貯金をした。それで、どうにかこうにか、オートマチックのセヴンを手に入れることができた。オートマは人気が無くて安いけど、乱暴に乗られているのも少ないし、後に５速に載せ替えようと考えての購入だった。

　周囲では「スポーツカーにオートマかよ（笑）」と嘲笑のネタとなっていた。まあ、当時も今も、私はスポーツカーにオートマはありだと思っているが。

　情けない話だけど、それでもこれは、自宅通いだったからできた芸当だったろう。あの時は、自分一人の力で手に入れたつもりだったけれど、いまさらながら親には感謝している。



　今年は70年ぶりの記録的な大雪と言われているが、納車の日もこんな大雪だったのを覚えている。ちなみに最近はちょっと雪が降った程度で大騒ぎだけれど、この頃までは、この程度の雪は日常茶飯事だったような気がする。

　納車の時は、あまりの喜びに涙がこぼれそうになった。嬉しい気持ちが胸の奥から溢れて溢れ出て止まらないのだ。初めてステアリングを握る手が震えるのは、けっして雪の寒さからではなかった。その日の夜は、抑えられない興奮を胸に、毛布にくるまって、セヴンのなかで一夜を過ごし、見事に風邪をひいた。



　セヴンとは、いろいろなところへ行ったし、RX-7というクルマを介して、たくさんの人に出会い、一緒に楽しい時間を過ごした。
　季節になると、風の匂いや、耳慣れた音。デジャブーのように目に浮かぶ懐かしい場所。そして眩しい笑顔。どんな場所にも、誰にでも、セヴンで逢いに行ったことを思い出す。いつも、となりにはセヴンがいた。



　１リットル100円程度でセヴンにガソリンをたらふく与えることができたのも、今は昔となってしまったけれど、これからまた20年、ともに思い出を刻んで行くのだろう。
　サンクス、オレのRX-7.。

　探し物を探して見つからないものが、あるとき、突然ひょんなところから見つかることがある。思い出もそんなものかもしれない。
　何年も考えもしなかったこと、思い浮かべもしなかった眩しい記憶が、ふとした行為や、目にしたものからフラッシュバックすることがある。まるで、失くした大事なものを見つけ出したみたいにだ。

　若い頃、ヘンな仲間（笑）で集まって、夜通し走り、遊ぶのが大好きだった。夜の空間は無限に感じたし、夜が持つ“どこかイケナイ雰囲気”が大好きだった。そんな仲間の興味の的は、アプローチは違えど、辿り着く先はクルマだった。

　スポーツカーが好きなヤツ、アウトドアなカーライフにハマるヤツ、メカやクルマ文化に惹かれるヤツ。走りに命を燃やすヤツ。様々だったが、集まれば気がつけば、その時が終わる頃には、なにかかにか、クルマにまつわる話をしていたような気がする。



　そんな仲間の中にあって、腐れ縁で付き合いの長い親友がいた。ブサイクだが、粋で小洒落たヤツって、どんなグループにもいなかっただろうか。コイツはそんなヤツだった（笑）仮にＹとしよう。Ｙとは３歳くらいからの腐れ縁で、いつも一緒だったような気がする。

　Ｙは、人を喜ばせるのが上手なヤツで、それだけ気配りの人だったのかもしれない。何人かでドライヴに行く機会があれば、ドライバーが好むようなCDをBGMに持ってきてくれたり、酒の席があれば酔っぱらって話し足りないヤツに真夜中の最後の最後まで付き合ってくれたり、誕生日だ、記念日だと言っては、プレゼントを片手にさりげなくあらわれる。マメと言うか、よく友達を見ているヤツだった。



　私がセヴンに乗り始めたころ、納車記念だとか言って、マツダスピードのローター型オイルフィラーキャップをくれたことがあった。野郎からプレゼントもらうのもなんだか薄気味悪い（笑）のだが、いつものＹの善意と言うか、クルマ好き同士の付き合いだったので、喜んで受け取った。

　気軽に受け取ったが、後々考えると、当時は定価で10,000円くらいしたのではなかったか。このオイルフィラーキャップは、その後に、事故を起こしてセヴンを廃車したときに失ってしまった。

　今の相棒セヴンには、今風のオイルフィラーキャップを付けていたのだが、最近、Ｙからもらったオイルフィラーキャップと同じものを手にすることがあり、“あの頃をよろしく”とばかりに、マツダスピードローター型オイルフィラーキャップに付け替えた。



　所詮、物は物、今さら思い出の品を身に着けてみたところで、あの頃に戻れるわけではない。まさに“帰れぬ季節”だ。若かったオレ達も年を重ね、家族ができたヤツ、大病したヤツ、仕事に励むヤツ。バブルと不景気、栄枯盛衰を喰らい、いろいろな人生を経てきた。

　されど、そんな“モノ”ひとつだ。薄汚れたオイルフィラーキャップを長い時間かけて黙々と磨いていると、いろんなことがアタマを駆け巡り思い起こさせた。最近の行き詰った閉塞感のなか、あの頃輝いていた笑顔や喜び、なんの不安も考えていなかった気持ちが少し帰ってきたような気がした。

　変わらないもの、変わらない人・・・。そんなものあるわけがない。だけど、なにか思い出の品に触れて、楽しい時間を思い起こすのはそう悪いモンじゃないなと感じた。

相変わらず、ブッサイクで小洒落たヤツなんだろな、アイツは（笑）