
携帯電話が鳴る音で目を覚ます。どうやら少し寝ていたようだ。友人からのEメールだった。
「ち○こから膿が出てくるんだけど病院行かないとダメ?あとションベンする時スゲー痛いんだけど・・・」
そりゃクラミジアだろうが。てゆうかなんで俺に聞く。性体師じゃなくて整体師だって言ってるだろ。
だるい体を動かし、煙草に火をつける。
その時
気配、それも圧倒的な悪寒のするただならぬ気配。
ヤツだ。
ぬらぬらと黒光りしたボディ、せわしなく動くシャープな触角、そう
ゴキだ。
キンチョールを捜す。不運にもゴキの向こう側にある。
とっさに近くにあったヘアスプレーをかけるとゴキはその俊足で冷蔵庫の下に逃げ込んだ。
その隙にキンチョールを手に取る。だがいざキンチョールを構えると少しずつ不安がこみ上げてくる。
「フマキラーの方が良かったか・・・。」
冷蔵庫の下にキンチョールを噴射するとゴキが飛び出してきた。すかさずキンチョールをゴキめがけて噴射する。
「ぎゃあああああ!!!」
ゴキの悲鳴。いつもは女達に心地よい悲鳴を上げさせるゴキの悲鳴。
ごろりと仰向けになり6本足をバタバタと動かしてもがき続けるも、なかなか死なない。恐るべき生命力だ。
いや、これは生命力だけでは無い。ゴキの執念のなせるものなのか。
「何故だ!何故死なない!?」
「俺には・・・守るべきものがあるんだ・・・ここで・・・死ぬわけには・・・!」
驚きだった。ゴキも人間と同じく守るべきもののために戦っていたのだ。当たり前の事だったのかもしれないが今まで害虫としてしか見ていなかった俺にとっては衝撃的だった。
だがこちらも引くわけには行かない。さらにキンチョールを噴射する。
「ああ・・・あ・・・。」
ゴキの動きが急に鈍くなった。すでに虫の息だ。いや最初からそうか。虫だし。
「お前の守るべきものとは・・・なんだ?」
「一階の自販機の下にオレの可愛いベイビーがいるんだ・・・ニンゲン・・・お前を同じ戦士と見込んで頼みがある・・・オレのベイビー達を立派なゴキに育て・・・て・・・」
「ゴキーーーーー!!!」
さらば黒光りの勇者。お前の事は忘れない。
新たな決意を胸に、歩き出す。一階の自販機に向かって。
そして自販機の下に
たっぷりとフマキラーを噴射した。
Posted at 2006/07/09 21:22:14 | |
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ストップ安 | 日記