今年もハラハラ、ミニカの点検の季節がやってまいりました。
こんなもん、ごく普通の車に乗ってりゃ数日で済むような取るに足らぬ話が、ここ数年のコイツは数か月単位で部品を用意した上で整備に望んだ挙句にタダでは終わらないような、地味に精神的負荷の大きい行事になりつつある訳でして。
さて、今回の主なお題はクラッチ。
気が付けばこの車に乗るようになって丸10年経っていたようですが、その間の5万キロそこらの走行距離で少なくとも2回はクラッチ交換をしていて、いずれもエンジンやミッション交換時のついでだったとは言え、たったそれだけの期間でクラッチに異常を感じていた為の「ついで」であって、今回もやはりジャダーが出ていた事と、レリーズなのかメンドラなのか、何らかのベアリング異常と思しきクラッチ連結時のガラガラ音の酷さに単独メンテを決めたんですが…
まあ、時々相当荒っぽい使い方をしている事は確かです。
…にしても、極端な話一撃でおかしくなっているような気がする程に弱い…。
ビートやライフのクラッチはそこまで簡単にはヘタらないし、何故ミニカはこんなにすぐダメになってしまうんだろうかと考えた末、思い立ったのが他車用クラッチの流用。
そこで真っ先に思いつくのは同じH22系のターボ用ですが、クラッチ径が異なる為に基本的にはフライホイールとのセット移植が前提となるため、クラッチそのものよりもフライホイールを見つける事の方が難題になってしまって埒があきません。
またエンジン出力に対する容量についても、ウチのはH22系当時の3G83ラインナップ中でも最低クラスのトルクしかないキャブ仕様なので、絶版部品を探し出してまでターボ用の高トルク対応型クラッチを流用する必要性は無く、それよりも後年の車種で現在も容易に部品調達出来る車種を見つける方が余程現実的です。
…であれば…
これなんてイケるんじゃね?
と、白羽の矢が立ったのは、よりにもよってクラッチ流用の標的とするにはいささか変態的な、友人所有のH92Wオッティ。
何と言っても書類があるのでショートパーツを含めた部品の整合性が取りやすいですし、部品供給の有無なんて気にする必要すら無い高年式なので新品フライホイールだってなんのその。
そしてこのオッティのMT車は純正で3G83エンジン+F5M12ミッションという組み合わせなので、H22系当時で言うダンガンZZ用だったF5M12に換装したウチのミニカの現状と同じになり、適合する可能性は高いはず…って
…ん?
うーん…フライホイールとフライホイールでフライホイールがダブってしまった。
このフライホイールは一枚で十分なんだが…。
…続いて現れた2枚目は、純正フライホイールを買った直後に友人が見つけてしまった、ekワゴン用とされる謎の中古クロモリフライホイール…
確かにクランクシャフト締結用の穴は3G83か4A30用っぽいし、クラッチフェーシングの接触面は、既に取り寄せてあったオッティ用クラッチの内外径と同じサイズ。
旧来のダンガンターボやトッポBJ-Rターボ向けだったらいざ知らず、下っ端NA車にしかMT設定が無くなってしまったekシリーズ向けにこんな物を作っていたメーカーがあったんだろうか…?
しかも不審な事に、クランクシャフトに締結された形跡はあるのに、クラッチに摩擦された痕跡が全く無いので、実際の走行に使用された事が無いのは明らか…
だがしかし…オッティ用のカバーはしっかり載っちまった…
これを見てもまだ胡散くせえ…マジでなんなんだこれわ…
取りあえず、いずれのフライホイールを組むにしてもミッションを降ろさなければいけない事だけは確定なので、その次に問題になったのがラジエーターホース。
以前から滲み始めていたホースは遅かれ早かれ交換が必要な状態だったので、今回のような本格的な脱着となれば再使用なんて出来ません。
…が、H22A型の純正ホースはアッパーもロアも既に生産廃止になっている上、純正ゴムタイプの汎用ホースを探しても適合サイズがまるで無く、やむなくSAMCOのシリコンホースを使う事に。
しかしまあSAMCOの汎用品は一々値が張り、あれよあれよと額が嵩んでたったこれだけで4万円オーバーとは…純正フライホイールとクラッチ類一式の総額より高いんですけど…
まあとにかく、これら部品をそろえて後は車検整備と一緒に工場にお願いして…終わらないのがこの車。
結局社外のフライホイールを組んだまでは良かったものの、いざ使い始めるとセルモーターのピニオンがリングギアへの飛び込みを頻繁に失敗するようになり、イグニッションキーをひねった瞬間にギア鳴りを起こしてエンジンを始動出来ない事態が頻発…
ほんの数日使っただけでリングギア上にこんな傷が、だいたい120度間隔で3か所…
これは3気筒のいずれかの圧縮上死点付近でエンジンが止まった後、それぞれの場所で1回以上クランキングに失敗してるって事ですね。
この原因自体は、取り付け前から指摘はされていたんですが…
社外品の方は、リングギアにチャンファー加工がされていなかったんです。
このわずかな加工の差で、まさかこれほどまで使い勝手が悪くなるとは…
1週間足らずでこのザマですからこんな物使い続けたらまずギアが持ちませんし、イレギュラーなエンストでも起こしたら状況によっては命にも関わりかねません。
それに…
アイドリングの振動がとにかく酷い…
1000回転以下でアイドルさせるとバルクヘッドからルームミラーやステアリングといった前回り品が軒並みガタガタと音を立てて共振し始めてしまって、ルームミラーなんて夜間は後続車の車種が全く分からない程酷いものです。
ミニカ純正フライホイール+クラッチカバーと、オッティ(ekワゴン)のクロモリフライホイール+クラッチカバーとではカバーの重量差が大きく、単純な部品重量ではオッティのクロモリセットがミニカ純正セットに対して-300g程度にしかなっていないし、アイドリング以外の7000回転前後までの常用回転域では特に異常な振動は感じないのですが…一体何が悪いんだ…?
一応、アイドリング共振は回転数を上げてしまえば誤魔化せるし、エンジンの吹け上がりはわずかに軽くなっている気がするものの、それ以外のデメリットがあまりに大き過ぎてこれでは使い物になりません。
…結局すぐにオッティ純正のフライホイールに再交換する羽目になり、部品重量はミニカ純正に対し+700g程となったものの…意外にも吹け上りの悪さを感じる程ではありません。
当然ながらクランキングに失敗する事も無くなり、やっと普通の車に戻った感じです。
しかしアイドリング共振は軽減こそされたものの、何故か完全には消えてくれませんでした。
マスダンパー効果や、ダイナミックバランスの問題ではないのか…原因は未だ分からず。
…クランクシャフトやメタルに悪影響が出なきゃ良いんですが。
ただ、交換前に発生していたガラガラ音は幸いにもベアリング類ではなくクラッチのダンパースプリングのガタによるものだったようで、アイドリングだけでなく走行中の異音までも消えた体感効果は大きく、走行中に関してだけはエンジンが以前より滑らかに回っていると感じるほど印象が変わりました。
そういえば、これまで交換したクラッチもことごとくダンパースプリングにガタが出ていた事だけは記憶しているので、H22AミニカのNA用クラッチは基本的にここが弱いんでしょう。
なので、今回の流用に意味があったかどうかは、オッティクラッチのスプリングの耐久性次第という事ですね。
ラジエーターホースの方もどうにか取り回せたので今後のホースの心配は解消されましたし、この点については確実な前進です。
…まあ今回も総じて回り道が多かった割に大した結果が伴っちゃいないんですが…
これでまた1年は大丈夫。…だと良いなあ…