ゴールデンウィーク。
この時期がやってきたら、夜明けを見ない訳にはいかない。
相棒の
杉原氏から連絡があり、彼は今回、本州の最西端に向けてロングツーリングし、そこで夜明けを迎えるとのことだった。
ただ、彼の目的地での夜明け予定日はおそらく平日となるであろうことが予測されるが、僕はあいにく土日以外は休みではなく、その日は動けない。
そのため、僕が動ける日に合わせて別の場所でも夜明けを迎えてくれるとのことだった。感謝である。
ゴールデンウィーク中の天気予報とにらめっこするが、どうやら4月30日(土)の朝は道内どこでも晴れ、翌日5月1日(日)は雨。
5月7日(土)、8日(日)は予報精度低いものの悪天候の可能性が高かった。
そのため、夜明け決行日を
4月30日と定め、計画を立てた。
前日の29日は通常通り仕事があり、退勤後は散髪の予定を入れていた。
出発はその後諸々準備をしてからになるので、計算上早くても午後9時過ぎになる。
この時期の日の出時刻は概ね午前4時過ぎ。
道中走るのに使える時間は最大7時間となる。
無論、これは出発が遅れれば遅れるほど手持ちの時間が少なくなる。
道中小休憩する時間や、万が一腹を下すなどの体調不良により走行を休止せざるを得ない事態を想定すると、おおよそ6時間程度しか時間がない。
その時間で到達でき、かつ今まで行ったことがない場所をいくつかリストアップした。
美幌峠
時間的にギリギリ行けそうな感じだが、昨今の情勢からいって、今シーズンは混み合いそうで、流行り病の感染リスクが高い気がする……
北見神威岬公園(枝幸町)
前から気になっていた場所である。
ただ、出発日直前になり、地元の新聞によると今シーズン枝幸町ではヒグマの出没が多発していることだが……
龍宮台展望台(湧別町)
ここも前から気になっていた場所。
一つ引っかかるのは、今年の元旦もそっち方面(網走)に夜明けに行っている中、2連チャンで同じ方向に行くのは如何なものか……
結論……
龍宮台展望台で決定。
これは、湧別町の中湧別地区に知人が働いている野菜直売所があり、以前からいつかは行くつもりではあったが、今回ようやく夜明けついでに立ち寄れそうだと判断したためだった。
出発日当日。
諸々の用事を片付け、撮影機材と車中泊道具を用意、出発できたのは29日の午後9時半頃だった。
出発時の総走行距離を記録。128,141km。
久々の遠征。どこまで走行距離が伸びるか楽しみである。
今回のルートは、
霧立峠を超え士別市へ
↓
道央道・旭紋道で遠軽町へ(士別剣淵IC~比布JCT~遠軽IC)
↓
国道333号・242号で湧別町湧別地区へ
↓
道道204号・656号で三里浜・龍宮台展望台へ(ゴール)
Google先生に依れば、単純な走行時間は約4時間。
ただし、小休憩などの時間を含めば、おおよそ5時間くらいの行程になるだろうと予想した。
運転に集中していたため、道中の風景を全く撮影していなかったので、写真は貼ることができないが、実際のところ概ね予想通りのスケジュールで走ることができた。
いくらゴールデンウィークといえども、深夜帯はどの道も空いていたため、予想外の遅延は発生しなかった。
チェックポイントにしていた湧別地区のセブンイレブンに午前2時前に到着。
そこで最後の小休憩を行い、龍宮台展望台までひた走る。
午前2時20分頃、龍宮台展望台に到着。
空を見上げると、雲ひとつない見事な快晴。星も綺麗に見える好コンディションだった。
日の出時刻は、4時18分。日の出まで約2時間。
せっかくなので、数枚星空を撮影した。
前日入りをしていたら、もっと長い間星空を撮影できていたであろうことが悔やまれる。
もっとも、このようなスケジュールを組んでしまったのは自分なのであるが……
肌寒さから用を足したくなり、僅かな時間ではあるが仮眠ができそうなこともあり、一度現場から撤退。道の駅「かみゆうべつ温泉チューリップの湯」へ向かう。
この時点で午前3時。
出発前に予め、レガシィの後部座席を倒して広くした荷室内に布団を敷いて作った仮設ベッドにて半分気絶するように入眠。
次に僕の眼が光を感知したのはそれから約50分後だった。
眠る前に嫌な予感はしていたが、環境の変化に滅法弱い僕の腹がグズり始めた。
常備携帯している正露丸糖衣錠を飲み、道の駅のトイレで用を済ませてから出発したが、湧別地区のセブンイレブンで再度トイレへ駆け込む。
ホント毎度のことであるがもっと強くなれ、僕の腹。
日の出時刻の7分前、4時11分。ようやくセブンイレブンを再出発。
龍宮台展望台までの所要時間は概ね15分前後。
普通に走っていればどうやっても間に合わないどころか、大幅に遅れてしまう。
ここ最近封印していた「とても人には言えない走り」を解禁。
地元警察が取締をしていないことを祈りつつ、龍宮台展望台手前の漁師町である登栄床地区へ向かう地元ドライバーをぶっち切る恥も外聞もない走りをした結果、現地に到着したのは太陽が水平線から出た直後だった。
(周りの車両やドライバーへのご迷惑は最小限に留めたつもりです……)
展望台付近は、僕と同じく日の出目的であろうご年配の方々が数人と、釣りのためか海岸に数人居た程度だった。
流行り病の感染予防としても、人が苦手な僕自身にとっても好都合である。
先に展望台にて日の出を撮影していた男性と少し距離を置きつつ、シャッターを切り始めた。
しばらくしたら相手の方は展望台から海岸の砂浜へと下りてしまった。きっと僕が煩わしかったのだろう。申し訳ない……
1時間程シャッターを切りながら、太陽から生きる力を分けてもらった。
日の出を迎えるまで長時間・長距離のドライブを強いられるが、こうやって元気を貰えるのだから、夜明けはやめられない。
杉原氏に連絡すると、先方は島根県の三瓶山(さんべさん)という山の麓に居り、空一面に雲が広がっているも、ほんの少し雲の切れ間から日の出を見ることができたとのこと。
向こうもなんとか夜明け成功したようである。
愛車「Верный」と僕とを照らす、祝福の光が降り注ぐ。
俺たちの夜明け・第29回
~Рассвет~
成功である。
現地を後にし、湧別町内のセイコーマートで朝飯を調達して、道の駅へ移動。
朝飯を済ませて2~3時間仮眠を取る。
午前9時半、再度起床。
すでに道の駅は観光客で賑わっており、駐車場は半分埋まっていた。
やはり今年のゴールデンウィークは人出が多いようである。
道の駅のトイレにて洗顔と歯磨きを済ませたら、少しばかり道の駅内を散策する。
道の駅は、「かみゆうべつ温泉チューリップの湯」と旧国鉄・中湧別駅を再利用した「上湧別百年記念公園 中湧別駅記念館」で構成されている。
やはり旧駅舎と旧国鉄時代の車両が目を引くのか、年配の方から若い人まで立ち寄っていく。
上湧別名物、チューリップ。
かみゆうべつ温泉チューリップの湯の入口前に植えられていたものの大半はまだ花開く前だった。
帰り道に「かみゆうべつチューリップ公園」の様子も伺ったが、そちらも同様だった。
チューリップ目当てならもう少し時期を遅らせるべきだろうか。
道の駅の散策後はこちらへ。
ゆうゆう野菜直売所
以前旭川の同人誌即売会で出会った知人「Yさん」のお店である。
いつか立ち寄りたいと思っていたが、ついに念願が叶った。
入店しYさんに話しかけるも、最初は誰か気づいてくれなかった。
無理もない。最後に出会ったのはおそらく2年前だ。おまけにこちらはマスクをつけていて顔半分が隠れている。
マスクを外すと「あ! 良く来てくれたね!」と歓迎してくれた。
お店では地元で採れた野菜、野菜の苗、地元の団体が作った石鹸や洗剤などが売られており、お客さんが入れ代わり立ち代わり、ひっきりなしにやってきていた。
積もる話もあったが、他のお客さんのご迷惑になるし、彼も忙しそうだったので、早々に退店した。
季節をずらしてまた来店したいと思う。
時計を見ると、正午になろうとしていた。
帰路に就くために行動を開始。上湧別地区のローソンで昼飯休憩を取った後、湧別町を後にした。
帰りは、旭紋道を使わず、あえて国道333号・北見峠経由で上川に抜けることにした。
これは往路と同じルートを走るのはつまらないということと、日中は下道である国道よりも旭紋道を使う車がたくさんいるであろうことを見越した判断によるもの。
また、以前に北見峠を走ったのは第10回(2014年元旦・紋別市での夜明け)以来であり、かつ冬の北見峠しか知らないので、今度は非積雪路面の北見峠を味わってみようという思いもあったからだった。
その狙いは的中し、国道333号は極めて通行する車両が少なく、快適に走ることができた。
丸瀬布の道の駅で小休憩を取り、そこから急峻な峠道を駆け上った。
北見峠名物、連続急勾配ヘアピンカーブ。
ここで、レガシィの本領発揮である。
2.5リッター・ターボエンジン「EJ25」とスバルが誇る「シンメトリカルAWD」により、急坂を難なく駆け上がり、カーブも安定して走り抜けるレガシィ。
ヘアピンカーブに差し掛かる前、自車の後ろには1台普通車(日産・ノート)が居たが、ルームミラーから見えなくなった程である。
愛車がとても心強く感じられたのは言うまでもない。
さすがはスバルのフラッグシップ・グランドツアラーである。
北見峠を突破し、国道273号・39号に合流。
午後2時45分頃。
上川町のセブンイレブンで休憩をしつつ、この先のルートを思案。
いくら仮眠を取ったとはいえ、身体は疲れているようで、若干眠気は来ていたし、足や腕の疲労の蓄積は誤魔化しようがなかった。
往路と同じ最短ルート(士別・霧立峠経由)を走り、疲れ切ってしまう前に帰宅するか。
遠回りになっても休憩地点が多いルート(旭川・深川・留萌経由)を走り、休み休み帰宅するか。
結局、後者を選択。
比布北ICから旭紋道・道央道を走り抜け秩父別ICへ、そこからは国道233号・国道232号にて留萌経由で帰宅するルートである。
ここで高速代をケチって、比較的混み合う下道や深川留萌道を走るよりも、金を払ってでもこちらのルートを走った方がよっぽど精神的・身体的に楽だろうという判断である。
そして、その判断は大正解だった。
一度音江PAで小休憩しただけで、後はひたすら走り続けたが、極めてスムーズに走れたおかげか、そこまで疲れずに済んだ。
午後5時過ぎ、留萌市内へ到着。
ここまで来れば、もう帰宅したも同然だった。
留萌にいるついでに、オカモトセルフで燃料補給し、イエローハットで虫取り用の窓拭きクロスを購入。
後は、走り慣れた国道232号を北上。
夕陽が綺麗だったので、途中で数枚写真を撮る。
朝陽も夕陽も見て、元気を貰った。
これでしばらく戦える。
そして、午後7時前、無事自宅へ到着。
帰宅後の総走行距離、128,741km。
今回の走行距離、ちょうど600km。
平均燃費、13.056km/L。
峠道や高速を走り、アイドリングも割りと長めにしていたけれど、この燃費は上出来。
今回も愛車は大活躍である。
次回の夜明け遠征はおそらく8月。
その時もできれば健康で、かつ世の中が可能な限り平和であることを願っている……
※サブタイトルの意味について
昨今の情勢から変に誤解されると困るので、一応説明します。
「Звезда(Zvezda・ズヴェズダ)」
……ロシア語で「星」
「Рассвет(Rassvet・ラスヴェット)」
……ロシア語で「暁」
という意味。
どちらも国際宇宙ステーション(ISS)のモジュール名から取ったものです。