JAPAN CUP 2010
宇都宮の森の中、10月23日-24日の二日間にわたり、ツールドフランスやワールドカップ、グランツールの参加選手が日本国内で唯一参加する、自転車のロードレース。

一日目は、宇都宮市街中心の道路を封鎖した1.6キロのコースを20周する「クリテリウム」。
餃子で有名な宇都宮。「みんみん」「まさし」がある目の前の道路で展開する、世界最高峰のパフォーマンスは凄かった!
何重にも重なる人垣、その中を選手達が登場すると盛り上がりは最高潮。大歓声に宇都宮が揺れた。
選手達もその観客の多さと盛り上がりにうれしそう、チームメイト同士でヘルメットぶつけ合ったり、両足を後方に伸ばして股間でサドルに乗った珍妙なライダー乗り?等々サービスパフォーマンス。
2周のパレードランを終えるといよいよスタート。

まず飛び出したのはジャパンチームの数人を中心とした10人ほどの選手達。
その後方に大集団が付く。
凄いスピードのトッププロ達が市街地コースを駆け抜ける。ものすごい迫力だった。
区間賞狙いの先頭集団はポルシェチームの誰かが存在感を示し、グイグイと後方の大集団を引き離す展開。
20周のレース、15週目まではこの様な展開で後方メイン集団との差を30秒まで引き離す。
バイクやクルマのレースだとこのまま先頭集団の争いになるだろう。
沿道の観客達も30秒のタイム差のアナウスと、見た目数百メートルと広がった距離からも、「このまま行っちゃうんじゃないの?」の声が上がりはじめたその時。
場内解説
アナ「先頭集団独走状態ですね。このまま先頭争いなのでしょうか?」
解説「いや、先頭集団、泳がされてますね」「そろそろ後続のメイン集団が先頭集団追撃に向けてコントロールに入りますよ」

そんなやりとりのあった15週目、それまで無秩序で大集団だった後続のメイン集団がチームごとに隊列を整えはじめた!
解説「コントロールに入りました」
サクソバンクチームを先頭に、空気抵抗の分散を狙い先頭を入れ替えローテーションしながら先頭チーム撃墜体制。
それまでと全く違う後続メイン集団の様子に、沿道の観客達もドヨドヨしはじめる。
アナ「先頭、後続集団のタイム差20秒!」
いきなり一周で10秒もタイム差を詰め、沿道の観客大歓声!
それまで30秒もあったタイム差を、周回を重ねるたびに20、10,5、秒と、わずか3周で後続メイン集団が先頭集団を吸収してしまった。
世界最高峰の戦略と駆け引きを目の前にして最高に痺れた。これはおもしろいわ!!

大いに盛り上がったこのクリテリウムで一番の声援を受けていたのが、実はこの最後尾の選手。
ブリッツェンチームから出場した「片山右京」さんだったのだ。
途中、集団からジリジリと遅れ初めてもなお必至に漕ぐ姿に、右京さんの様々な苦労を知ってか沿道の観客は大声援。
その必至に漕ぐ右京さんをガーミンチーム?の誰かが併走してサドルを押しサポートする。しかしその選手は片手運転で余裕の表情。
世界最高峰のロード選手って圧倒的に凄いんだな。
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一日目のクリテリウムが終わったら、目の前には餃子!
コース目の前に老舗店が軒を連ねてるんだから、行くでしょう、喰うでしょう。「みんみん本店」「まさし本店」、老舗の2店が隣り合ってるとは思わなかった。
この日はみんみん。
揚げ・焼き・水、とライス。+夜食用のおみや。一皿220円。美味いモノを安く、こうでなくっちゃ!
安さに勇んで買い込んだおみやが、その後いつまでもなくならず二日間餃子地獄になる。そんなうれしい地獄もたまにはイイさ。
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夜は市街中心にあるオリオンスクエアでオープニングイベント。

各チーム選手の紹介なのだが、その司会進行をつとめたのがJ-WAVEでお馴染みの「
サッシャ」。
遠く宇都宮の地でいつもの声を聞く不思議。
クリテリウム表彰式、三位選手が欠席だったため、変わりにチャンピオンジャージを着るサッシャ。
サッシャ・・・調子に乗りすぎだ。
ジャパンカップの魅力の一つには、選手と観客の近さがある。

世界のトッププロ達が普通にマイ自転車で、会場までつらーっとやってくるんだもの。
サイン・握手等々も大歓迎。サービス精神もすばらしい。
残念なのは、選手の個人名を一人も知らずに観戦してる事。誰が誰だか。。。
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翌日の本チャンロードレースに備え、温泉 - 夜食 - 車内泊

市街から10キロほど離れた場所にあるロードレース会場の宇都宮森林公園。
その周辺に用意された無料駐車場に前乗りして車内泊キャンプ。
そんな人は自分しかいなかったらしい。バイク・クルマ・マラソン・・・競技によって観戦方法も様々だな。
メイン会場に一番近いと思われる駐車場は、山奥の行き止まりにある数年前に閉鎖された射撃場跡地。
広大な射撃場は見事に廃墟。ホラーキャンプ。
ドキドキな俺好みのシチュエーションだぜ。
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獣の気配を感じながら一夜を過ごし夜が明けると、9時スタートの本レースに向けて続々と観客が集まってくる。
一周十キロの山岳コース。
皆、山頂のメイン会場方向を目指す様だ。
自動車は完全通行止めになるため、自転車や徒歩で観戦場所を目指す。

観戦場所と云っても十キロコースの一部区間(2キロ)を除き全てが無料の自由観戦。マラソン大会と同じ。
自転車界最高峰の大会、多くの自転車乗りがマイマシンで山頂を目指す。
山岳地を多くの自転車と走ってるだけでも、気分は高揚してくる。なんか楽しー
「サッシャ」がスタート直前のコースを一周
さながらツールドフランスの山岳コースの様で、日本の光景とは思えない盛り上がり!
はじめの観戦地点。
メイン会場手前で上りの難所、鶴ゴルフ場。
テレビ局のカメラポイントでもある事から、杉並木の美しいコースを遠くから見通せる上り絶好のスポット。

しっかり場所取りを確保したスタート二十分前、まだ余裕のあるコースサイドも数分後には熱狂の渦に。
上りでの観戦ポイントの醍醐味は、この近さ。

上りという事で速度が落ち、世界最高峰のパフォーマンスを目の前でじっくりと見る事ができる。
来た来た来た
すごい。
何が凄いて、息が全く上がってない!
私、実はこの場所で観戦しようと思ったのは、あまりにきつい上りのため自転車を降りて押し歩きしはじめた場所だからなのだ。
そこまできつい上りなのに、選手達は息一つ上げずににグイグイ上ってくる!
その凄さはその場にいる観客皆が誰よりも分かっているのだ。さんざん疲れて自分たち自身上ってきたのだから。
この場所は鶴ゴルフ場の中を突き抜ける美しい場所だが、そこを抜ける風はとても冷たかった。
この季節、まだ日中は20℃になる日もある穏やかな日々だが、前年までの情報でここは寒いとの事で、大げさと思えた真冬の装備で正解だった。スキー場の格好でも寒さに耐えられなかったから。
長居はせずに山頂メイン会場の方が日差しも届き暖かなので、移動しながらの観戦がよいだろう。
一周十キロのコースを十周するジャパンカップ。
十回、目の前で観戦できる。
選手達が駆け抜けたコース上は、次の観戦ポイントへ急ぐ観客達で溢れる。

これがまた一騒動で、たった一分ほど前、目の前を世界最高峰の選手達が駆け抜けたコースを、マイ自転車で駆け抜ける。
いやでもその走りに力が入るわけで、良い走りする人には沿道の観客からもヤンヤと歓声が飛ぶ。
一台数百万もする様な高級ロードレーサーだったり、皆ご自慢の自転車だからちょっとした品評会になったり。
はい、私全力で走りました。
多くの高級ロードレーサー乗り達に負けずピタリと張り付いて。
下りでは走行風の影響は絶大で、前を行くロードレーサーのスリップストリームに入ると余裕でついて行ける。
メーターを見たら「72キロ」!!
そんな速度でロードレーサー群にピタリと付いて走る小径自転車の私「スピードスター号」。
かなり目立ったらしく、沿道から笑いと歓声を盛大にいただきました。ありがとうございます。
その高速走行で見つけた小径自転車の良い点。
それはいくら速度を上げても、ハンドリングが変わらない事。
フルサイズのロードレーサーは速度に応じたハンドリングの変化をしアンダー特性になり、タイヤのグリップ変化も如実に「伝えてしまう」のだが、小径自転車はほぼ変わらず。
70キロ越えという異常な速度でも恐怖心は皆無だった。
バイクで250キロ越えの方が怖いよ、スキーで70キロの方が緊張感あるよ、みたいな。

山頂メイン会場はポカポカ暖か。食べ物もあるし。

右ゴルフ場方面からの下り坂から最高速のまま駆け抜け、前方ゴールゲート。
オフィシャルサポートカーの「スバルレガシー」がタイヤを慣らしながら選手達について行く。
積載能力の低いレガシーがなぜサポートカーに?と思ったがその限界域の走りついて行く様子を見ると、半端なクルマじゃつとまらない事を実感。

表彰式
レースの模様は、
前日クリテリウム同様、中盤までは日本人選手が先頭集団を造り意地を見せ、中盤以降は後続のメイン集団をチーム「ガーミン」がコントロールし先頭集団を吸収。
ガーミンの多段ロケット発射という感じで、その中からガーミンのダニエル選手が抜け出し独走。
その走りは驚異的で、山岳ポイントの古賀志林道の上りでもグイグイと後続を引き離す。「ダニエル・マーティン」次世代の新生誕生という感じ。
多くのトッププロの中でも目をひいた走りは、「新城幸也」。
ライディングスタイルからレースの中でのポジジョン取りも、全てが剛。凄く強い走りをする選手。イイ選手だ。
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先にも書いたが、ジャパンカップの魅力はこの選手との近さ。

世界最高峰のトッププロ達が表彰式の後、観客の集まる広場に下りてくるんだよ。
サインや握手・写真撮影、皆笑顔でサービス精神に満ちている。
たった一時間前の激闘の様子を、観客の皆と盛り上がりながら話してる。

クルマやバイクのレースはさんざん見てきたが、それらの世界が忘れてきたモノがここにある気がする。
クルマ・バイクのモータースポーツ界が廃れるわけだわ。
トップアスリートの肉体が目の前に。興味津々。

特別筋肉がある様には見えないのに、あの上りのパワーはどこに秘められているのだろう。
レースでの駆け引きやダイナミックさ、選手の生身の肉体が生み出す魅力と距離感。
自転車というマシンの格好良さと、生身の肉体が生み出す魅力。
クルマ・バイクを含めた全てのレースでも、圧倒的に一番おもしろかった。
今から来年の開催が楽しみという、2010ジャパンカップでした。