「欲望産業」上、下巻
高杉良 著
角川文庫 上巻680円、下巻660円
今は韓国企業の傘下となった消費者金融武富士をモデルにした経済小説です。
帝都銀行の常務であった大宮紘平は、将来の頭取と期待されながらも、系列会社である帝都クレジットへ転出させられます。帝都クレジットでは、業界トップに肉薄するほど業務拡大しますが、同時に不良債務の増大を招き、それが原因で一期二年で、またもや系列会社への転出を命ぜられます。
ちょうどその頃、消費者金融最大手豊福の社長里村栄一からのオファーを受け、クレジットカード業務への進出を条件に入社を決意します。
当時(昭和55年ごろ)は、銀行は個人への融資から企業への融資に積極的でした。そのため、消費者金融はサラ金三悪(過剰融資、過酷な取り立て、高金利)を行いながらも、融資残高は増える一方でした。
一方、大宮は副社長から社長に昇格します。個人銀行(パーソナルバンク)を目指し、豊福の古い体質を改めようとしますが・・・。
少し古い話ですが、著者は武富士を代表とした消費者金融の未来を予想し、その予想は見事的中しました。また、消費者金融の実態やこれを取り巻く諸問題を上手く小説の中に織り込んでいます。
結局、「欲望産業」という題名の意味がはっきりしませんでした。僕は金を貸すことで、人々の欲望を満たすという産業という風に解釈しましたが・・・。
昔、小倉競馬に友人と行った時、友人が競馬資金を消費者金融に借りに行きました。銀行のATMみたいな機械にカードを差し込み、金額を入力するとすぐにお金が出てきました。この手軽さに客は騙され、やがては借金地獄へと向かうのだろうと思いました(この友人は借金を全額返済しました。)
Posted at 2011/07/22 08:37:57 | |
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