「海将」上、下巻
白石一郎 著
講談社文庫 700円(上、下巻とも)
戦国時代、堺の薬屋問屋の養子から24万石の大名になった小西行長の若かりし姿を描いた小説です。日本史を学習したことのある人なら、一度は聞いたことのある人物ですが、教科書で教えられるのは、彼が朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の先鋒となったことや関が原の合戦で西軍に付き、敗戦後斬首されることのみで、24万石の大名になるまでの資料は非常に少なく、興味深い作品です。
小西弥九郎(行長)の養父である小西隆佐は、薬屋問屋を営みながら、明、朝鮮等との交易も行い財を成していました。隆佐は、当時勢力を拡大していた織田信長の一武将でしかなかった羽柴秀吉に、残りの人生に全てを賭けます。やがて、秀吉が毛利輝元の治める中国地方攻めへの大将に任じられると、弥九郎を備前・美作の領主宇喜多直家の御用商人である魚屋九郎衛門の後継ぎとして養子に出します。目的は中国攻めに必要な情報を得ること、謀略家として名高い宇喜多直家をあわよくば織田方へ寝返らせることでした。
弥九郎は、交易で得た航海術が、海軍の整備に乗り出した宇喜多家に認められ、商人の身でありながら、仕えることになります。
当時、陸戦が主で、海軍と言っても物資を運ぶ船の警護など、どちらかといえば裏方の仕事で、派手さはありません。それでも行長は、地道に自分に与えられた仕事をやり続けた結果、24万石の大名にまでなりました。「継続は力なり」という言葉を改めて考えさせられる作品でした。
Posted at 2011/10/09 07:41:13 | |
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