
「鉄の骨」
池井戸 潤著
講談社文庫 880円
「下町ロケット」で直木賞を受賞した著者の最新文庫です。
この作品も、文学賞受賞作です(吉川英治文学新人賞)。
中堅ゼネコン「一松組」の若手富島平太は、現場から業務課に異動します。
別名「談合課」と呼ばれ、課長以下、談合を必要悪と考えています。
正義感の強い平太は、ジレンマを抱えつつも、職責を全うすべく、工事受注のため、日夜奔走します。
そんな中、数千億円の地下鉄工事が発注予定となり、平太たちは、新工法によるコストダウンを提案し、単独受注を目指します・・・。
「談合は必要悪か?」という企業小説の色合いが濃いのですが、青春ドラマあり、ミステリー的な要素ありと、なかなか奥の深い小説でした。
解説に、著者は「走れ平太」という題にしたかったらしいのですが、版元の意見により、この表題になったそうです。
僕的には、著者のイメージの方に共感を覚えました。
談合については、土木設計という仕事柄、世間一般とは少し違った考えを持っています。
この小説が世に出た頃から比べると談合が難しいシステムが構築され、国の発注する大規模工事では、それが運用されています。
(入札価格の要素と技術提案の要素を組み合わせた総合評価方式が採用され、たとえ、低い入札価格を提示しても、技術的に劣れば落札できない。)
ただし、それは小さな工事、中小企業に対して運用するのはいろいろ難しい面があり、談合はしばらく世にはびこって行くだろうと思います(いけない事ですが・・・)。
おススメ度・・・4.5
Posted at 2011/12/29 18:11:04 | |
トラックバック(0) |
読書 | 趣味