
「子産」(上)、(下)
宮城谷 昌光 著
講談社文庫
子産は、中国の春秋時代中期(紀元前600年~500年ごろ)、中原(中央部)の国「鄭」の実力者として数々の改革を行い、また知識人として、かの孔子にも敬仰されたという稀有の人物です。
当時、中国は「楚」、「晋」という大国が南北に存在し、その他多くの国が中小乱立していました。
「鄭」は小国ではないものの、両大国に挟まれる形であったため、国を維持するためには、どちらかの盟下に付かねばなりませんでした。
子産の父子国、そして子国と父を同じくする子嗣は、両国及びその他力関係を見ながら、時には「晋」に、時には「楚」にと、綱渡りで国体を維持していきます。
子産は、そんな自国の危うさを危惧しながらも、内紛に巻き込まれ死した父の跡を継ぎ、国を背負っていくこととなります・・・。
人物の名前が題名になっていることもあり、英雄伝的なイメージを抱いていましたが、ちょっと違いました。
どちらかというと叙述的で、結局この時代で覇を唱える国が出てこなかったのは、信義や礼節に欠けた人物が多かったためだと著者は論じているように思いました。
子産は、傑出した人物であったものの、このような時代にそぐわない人物であったとも言えると思いました。
小説としての完成度は高いものの、ややインパクトに欠ける作品だと思いました。
嘘でもいいから、子産をもっと活躍させて欲しかったです。
おススメ度・・・3.75
Posted at 2012/02/08 23:47:59 | |
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