
“悪魔のℤ”としても大人気の国産スポーツカー、初期型『ニッサン フェアレディZ(S30)』に搭載しているパワーユニット[L型6気筒エンジン]についての続報です。
米国でも初期型『フェアレディZ』の人気は絶大であり、様々なチューニングやカスタマイズを施してあるクルマが見られますが、魅力的なのは美しいスタイルだけではなく、そもそも“エンジンのフィーリングが米国人の好みに合っていた”と聞いたことがあります。
私にはスポーツカーのエンジンとしては“ちょっと違う”と思うところもありますが、米国車に近いトルクフルな乗り味が好まれたことも人気を博する要因になっているようです。
そんな初期型『フェアレディZ』をチューニング&カスタマイズする方は少なくありませんで、排気量を大きしてパワーやトルクを上げることはもちろん、より高回転域まで回せる“本来のスポーツカーのエンジン”を目指している方もいるようです。

こちらのクルマは、同じく米国で“オリジナル製作されたDOHC24バルブのシリンダヘッド”を搭載した1971年式の『フェアレディ240Z』で、フロリダ州にある【ダットサンワークス/Datsunworks】というプライベーターが製作したクルマです。
創業者であるデレク・ミネッティが個人で経営する【ダットサンワークス】では、3Dプリンターを使った砂型の製作や鋳造技術、CNCによる切削技術を持ち、デレク氏自身が所有する『フェアレディ240Z』に“ツインカムヘッド”が欲しいという願望を原動力に、製作したんだそうです。
実はこのエンジンは【ホンダ】の直列4気筒エンジンである[K20型エンジン]のDOHCヘッドを3Dスキャンし、L型6気筒の寸法に合わせてCAD上でデザインして製作したものなんだとか・・・

このシリンダヘッドは現在17基が存在しており、プロのチューナーで調整しながら組む必要があるというものらしいですが、あらゆるチューニングに対応することが可能なんだそうです。
チューニング例としては、排気量を3.1Lまで拡大した「L28型ブロック」を使用して、4バルブ化に合わせてバルブやピストンなどもマッチングを図り最適なものを調達し、6連スロットルボディや大容量インジェクター、等長エキゾーストマニホールドを装着などのトータルなチューニングによって仕上げたならば・・・
最高出力は350ps以上、最大トルクは330Nm以上を発揮し、その最高出力の発生回転数も8100rpmに達していることから、抜群なフィーリングとサウンドを味わうことが可能になるんだとか。
それを得るためにかかった費用は“考えたくないレベル”に達していると思われますが、それでも大好きなクルマを望み通りに仕上げられたならば本当に幸せなことだろうと思います。
とはいうものの、クルマはエンジンだけで走るわけではありませんから、ボディや足回りもきちんと仕立て直さなければならないことを考えると、個人では達成できるようには思えませんから手を出すのは考えた方が良いかも知れません。
よく考えてみれば、[L型6気筒エンジン]の後継機として[RB型6気筒エンジン]が登場したことを考えると、単純に[L型6気筒エンジン]に[RB型6気筒エンジン]のシリンダヘッドを流用すれば良いのでは?!と考えますが、そう簡単にはいかないようです。
いろいろな部分で寸法設定が同じエンジンではあるそうですが、シリンダヘッドの駆動方式が前者はチェンで駆動するのに対して後者はベルトで駆動していますから、流用するためにはそれなりの加工(その他にもオイルライン加工など)が必要になるのだそうです。
また先の記事で[LZ型4気筒エンジン]の話をしていますが、実はシリンダヘッドをクロスフロー化した[LY型6気筒エンジン]も存在しています。

こちらも高性能を追求したレーシングパーツとして製作されていたもので、ワークスマシンを始めとする一部のレース車両に供給された“クロスフローとして製作されたSOHCシリンダヘッド”を搭載しているエンジンです。
こちらも希少性の高いパーツであり、現存しているのは10基前後だと言われているそうですが、もともと初期型『フェアレディZ』と[S20型DOHC6気筒エンジン]の相性が悪かったようで、そのために排気量を2400cc にアップさせた[L型6気筒エンジン]でレースに参戦することになったようです。
その後に、さらに高性能化を目指してクロスフロー化したシリンダヘッドを開発したらしいのですが、あえて“ツインカムではない仕様”があったことに驚きます。
チューニング&カスタマイズをされる方の中には、この[LY型6気筒エンジン]をオリジナルで製作してしまう方も見つけました。
『フェアレディ240Z』をベースにして、あえて2000ccの[RB型6気筒エンジン]の「SOHCシリンダヘッド」を載せたうえで、シリンダヘッドカバーを[LY型6気筒エンジン]風にワンオフ製作しています。

エキゾーストマニホールドのすぐ近くにあるプラグコードがちょっと可哀そうに思いますが、レイアウト上は仕方のないことになるのでしょうか。
こだわりの深さや巾は人それぞれになると思いますが、実現させている方たちのその努力と情熱には頭が下がります。
それとともに、未だに現役スポーツカーとして走っている初期型『フェアレディZ』にロマンを感じますね。
次に紹介するのも“ツインカムではない仕様”になりますが、私が好ましいと思っているものです。
チューニングやカスタマイズによっては私の想像しているものとは全く異なるものかも知れませんが、少なくとも“画像から察するレベル”としては、オリジナルを活かした現代版の初期型『フェアレディZ』と思えています。
それが下の画像で、キャブレター仕様の[L型6気筒エンジン]にダイレクトイグニションを組み合わせてあり、エアクリーナーも普通に取り付けてあることを考えると、ストリートを前提にして“より旧車を快適に楽しむためのチューニングを施してある?!と思えました。
オリジナル性を大切にしていることから、正統派のレストモッドと言えるかも知れません。

エンジンこそ[L型6気筒エンジン]のままですが、状態から見るとかなり手が入れてあるのではないかと思います。
チューニングやカスタマイズの度合いはわからないものの、点火系をダイレクトイグニション化しているほかにも、吸気系ではキャブレターの変更や、排気系ではフルに変わっていることが想像できます。
快適にスポーツカーを楽しむのは私の意図するところではありませんが、できる限りメンテナンスフリーで旧車に乗れるようになることは嬉しいことですから、こうしたチューニング&カスタマイズはお手本にしたいところです。
また状態がとてもキレイで、容量の大きそうなアルミラジエターを見てもトータルできちんと仕上げているように思えますから素敵です。
[L型6気筒エンジン]はチューニング次第でどんな要求にも応えられると言われているパワーユニットで、あくまでも費用などを考えなければという前提になると思いますが、それほどフレキシビリティに富んだ耐久性のあるエンジンになるのでしょう。
このクルマのエンジンもどのように仕上げられているのかはわかりませんが、ハイパワーを狙っているのではないでしょうから、走らせれば気持ちの良いフィーリングを得られることを期待しています。
初期型『フェアレディZ』をスポーツカーとして乗っていて、速さだけを求めているのでなければ、いつの時代も“身の丈に合わせたチューニングやカスタマイズを楽しむ”のがベターだと思っています。
[L型6気筒エンジン]の“ツインカム化”は素敵な話だと思いますが、私はアメリカンっぽいトルクフルなフィーリングを持っている『フェアレディZ』も好きなので、シンプルなオリジナルの“SOHCエンジン”の方が好ましく思えます♪