はやいねぇー

　もう六月が終わろうとしている。
　彼はそんなことを思い、改めて月日の流れの早さを噛締めていた。

　やってみたいことに手が付けられずに、かれこれ５年にはなるだろう。

　自分が歩んできたこの道は本当に自分の好きな道だったのか。
　未だわからずにいる今に、彼は自己嫌悪をしながら時の流れに身をまかせていた。

　これではいけないんだ！と叫ぶ自分。
　いや、今はこのままでいいんだと思う自分。
　昔みた夢ではなかったのではないのかと今の自分を思う自分。
　現実と夢とのギャップに悩み、苦しみ、悔やみ、それでも適応していこうとしている自分・・・
　
　彼は、本当になにをしたいか夢を忘れているんだと、ふと思った。昔、夢を忘れた大人になるものかと誓った彼ではあったが、いつの間にかその夢を忘れた大人になっていた。

　そうだ夢を忘れたなら、新しい夢をみてやれば良いのだと彼は気づき、そして彼は・・・。

　（その後の彼については、皆様の御想像にお任せします。作者）