本格的にゴルフ7HLに乗り始めて感じたこと
”走り”の次の時代は確実に
「ダウンサイジングターボの時代になる」
ダウンサイジングといっても自分が1stカーに求めるのは
3500cc級自然吸気型(NA)エンジンのダウンサイジングですから
必然的に2000cc級となります。
愛車のBP5E-GTも同じ2Lターボじゃないか?と言う話になりますが
全然違います。
ダウンサイジングターボ(ロープレッシャーターボ)は最大トルクの発生回転数が低いです。(1000回転台)
過給圧を抑えさらにターボに小型のタービンを用いているからで非常に素早いレスポンスを持っています。
ターボラグの存在をほぼ知覚できません。
DSGという素晴らしい変速機も相まって踏んだ瞬間から全開です。
車両の持つ性能を自分の好きなときに直ぐ引き出せるというのは文句なしの快感です。車好きの皆さんには分かって頂けるのではないかと思います。
図1.ゴルフ7HLに搭載される1.4LターボTSI性能曲線
愛車のBP5E-GTもAT専用タービンで2000回転から最大トルクを発生しこの手の車としてはとても優秀ではあるのですがこの数百回転の差が大きい。(またパワーターボでタービンが大きいのも過給が始まるまでのタイムラグに繋がっています。高回転型のEJ20Xとしてはしょうがないのでしょうか)
図2.BP5E-GTに搭載されるEJ20X(Y)の性能曲線(画像が小さく恐縮です)
ここまでだと、ダウンサイジングターボ>既存ターボですが
その先があります。
ダウンサイジングターボはNAエンジンにも優り得るのではないか?ということです。
踏んだ瞬間から最大トルクが取り出せる、というのはNAエンジンでは決して成し得ないことです。
言葉では伝わりにくいかと思いますが1.4TSIの踏んだ瞬間にガバッと来るあの感覚は今までにない衝撃的なものでした。
無理矢理例えれば1400ccなのに”踏んだらすぐMAXトルクが出る出来の良い2500ccNAエンジンに乗っている感覚”です。
図3.Ashimoの選ぶトヨタの傑作エンジン2GR-FSE(V6 3500cc)の性能曲線
これはレクサスIS350などに搭載されるV6 NA 3500ccエンジン2GR-FSEの性能曲線ですがおおよそ2000回転を境として常用トルクと言えるトルクが立ち上がっているのが分かります。
図4.Audi A4 Avantなどに搭載される2.0TFSIエンジンの性能曲線
これはAudi A4などに搭載される2.0TFSIエンジンの性能曲線です。
(本当はS3のCJX型の画像を探しましたが見つかりませんでした)
わずか1500回転で最大トルクを発生します。
Audi A4 Avantに乗ったときに馬力以上のパワーとダイレクト感そして運転する気持ち良さを感じたのはなぜだろう?と思っていたのですが
その理由はどうやらNAを超えるパワーレスポンスにありました。
FA20DIT、8AR、4B11など主だった国産2Lターボが86.0×86.0mmのスクエアを選択する中ロングストロークを選択しています。これも低速域のレスポンス改善に貢献しているでしょうか。
皆さんご存知の通り、
我々が実用車を日々乗るような日常域では高回転域は滅多に使えません。
低い回転数のレスポンスやパワー感が重要です。
その点で長い間NAはターボに対する優位性を持っていました。
それが欧州のダウンサイジングターボ革命で逆転しようとしている夜明けを見ているのだと思います。
もちろんエンジンだけではなくVW/AudiのDSG(DCT)という優れた伝達効率とレスポンスを持った変速機の存在も無視できないことを付け加えます。
もっと言うとVWグループの"MQB"という優れたプラットフォームについてもっと勉強しないとなと思っている最中です。
ダウンサイジングターボでは日本は10年遅れていると言われます。
あのレクサスがとうとう2L直噴ターボの8ARを開発したことが記憶に新しいですが、
これを見る限りまだVWグループのダウンサイジングターボには及ばないようです。
(タービンが大きいのかな?)
ダウンサイジングターボには水冷インタークーラー、高性能EGR、直噴化などなど数えきれないぐらいの現代の最新技術が投入されており追随は容易ではないかもしれません。ダイムラーのエンジンを積む国産車も現れました。
図5.スバルの"BLUE BOXER"FA20DIT型の性能曲線
スバルのFA20DITの性能曲線です。トルクの立ち上がりをシャープにして欲しい!2000回転以下のトルクがなんとも潔いグラフです。
途中から2次曲線的にトルクが立ち上がるフィーリングもそれはそれで魅力的なのですがどうやら時代は次の段階へ進もうとしていると感じ始めました。
もちろんダウンサイジングターボもいまだ発展途上ですが。
上記のような内容のことを薄っすらスバルの担当さんにも話したのですが
「今現状でバカ売れしているので・・・」という感じでした。うーむ。
スバルには何としても天狗にならず今まで通り地に足を付けた素晴らしい開発をして欲しいと切に願います。(某雑誌にも同様のことが書いてありました。)
話は大きくそれますが、個人的には2Lターボクラスでは
駆動方式はAWD以外に有り得ません。
莫大なトルクを使いきるために必須だからです。
1車軸あたり200ps、20kg・mほどが限界と考えています。
ちょっと踏んだだけでTSCが介入するというのは不本意なのです。
スバルは車両の基本性能を追求することで電子制御をなるだけ使わないという開発方針を取ってきた点が素晴らしいと思っています。BP5E-GTはTSCなどなくてもドライ路面ならタイヤが空転することがほぼない。トラクション性能が非常に優れています。
車両の基本性能を十分に高めたその後で安全性能を高めて初めて安全装備は意味を持つものだと思います。
細いタイヤに安全装備を付けてあたかも「安全です」と謳うメーカーのモラルの低さには苦言を呈したい。燃費アタックに特化した”レーシングカー”を市販してはいけません。
ハイト軽の横転事故多発も室内空間のカタログスペック競争が生んだ弊害でしょう。重心が高いため急ハンドルで簡単に横転する、という顛末です。
日本に古くから蔓延るカタログ・スペック信仰は如何なものかなと思います。消費者が賢くなって本質を見極めなければ安全は手に出来ません。
そういえば、
ゴルフ7HLはエキストラトルクを加えて25.5kg・mと、程良い数値となっています。
奇しくも”最善の実用車”ぶりがここにも表れていますね。
ゴルフ7のレビューよりもこういう総合的な話ばかり思いついて困っています(;゚д゚)