ゴルフ7と共通のアイデンティティーを持つことが伝わるリアビュー。ゴルフのようにTSIのSIが赤くなっているということはないのでエンブレムからグレードの判別はできない
フルモデルチェンジを受けたばかりのパサートTSI Highlineへ試乗しました。
妻の愛車ゴルフ7Highline(以下HL)(MY2014)の1年点検の待ち時間に暇なので
担当営業I君に「何か乗せてよ~」とお願いしての試乗となりました。
パサートは、日本ではイマイチ認知度が低いが世界的に見ればゴルフよりも売れているフォルクスワーゲンの最量販車種。この刷新された8代目パサートはヨーロッパのカーオブザイヤーも受賞したとのこと。
自分が買うことはないな~と思っていた車なので物見遊山気分で試乗。
乗り始めて降りるまで一遍の隙もない質感の高さ
ゴルフ7HLと基本的には同じ心臓、トランスミッションを与えられているはずだけど
DSGの変速マナーもゴルフ7よりもより滑らかで質感が高められている。発進から停止に至るコンティニュアスは確実にゴルフ7HLを上回る。
エンジンはリファインされ型式名をCZE型として馬力が10psアップし150馬力へ、
重量はゴルフ比で100kg重いにもかかわらずJC08モード燃費は0.5km/L向上して20.4km/Lに達する。
100kg重いといってもその車重は1460kg。Dセグメントカーとしては間違いなく軽量の部類だ。これらの変更点は先代パサートと比べれば
隔世の進化と言っていい。
室内はとにかく静か。遮音材がしっかりと奢られており遮音性は今まで試乗インプレッションを書いてきた車の中でも一二を争う。
同じグループのAudiやPorscheと比べて利益率が低いことから過剰品質とまで揶揄される
MQBモジュールのもたらす高い剛性はもはやVWグループのお家芸だ。鉄壁の剛性を背景に不快な振動を遮断、吸収して室内は快適そのもの。ユーザー側からすれば利益率の低いフォルクスワーゲン車はVWグループ内で比べれば
お買い得ということになる。
パサートはスバルで言えばセグメント的には新型レガシィB4/アウトバックが比肩するが
質感は値段の差分開いている。操って楽しいのはそれでもなおスバルだが、コンフォートプレミアムセダンとしての世界観の完成度ではパサートが優るだろう。(レガシィがトヨタレクサスに遠慮してそこまでプレミアムを指向していないというのはさておき)
ゴルフ7よりも車重が増したことをどうやらセッティングでは上手く生かしており、
ロール許容量もゴルフ7よりも大きくとり、ダンパーもよりマイルドにセッティングされている。ギュンギュン!というダンパーの効きはVWの伝統のようだけどパサートは非常に優等生。
ほとんど欠点らしい欠点のないゴルフ7HLに幽かに感じていた「こうだったらもっといいのにな」というポイントが程良く解消されていた。
コーナーに入り横ヨーを掛けていくとXDSがしっとりと介入して車を曲げていく。あからさまに主張はしないもののはっきりと介入を認識できた。おそらくFF車としては最高レベルのハンドリングとその質感。
総じて慣性重量の増加を上手く処理し、質感を高くまとめあげた乗り味だと感じた。逆説的だがゴルフと比べてボディがCセグメントからDセグメントへと大きくなり車重が増した事でこそ到達できた乗り味ではないかと思う。タイヤの扁平率も55%で肩肘を張ったセッティングとは無縁だ。同じ55%を履いた新型レガシィB4の足が硬いと感じたのとは対照的だった。このパサートの乗り味は60%を履いたアウトバックに比類、もしくは上回る。
ちなみにパサートHLはピレリCINTURATO P7を履いている。215/55R17。プレミアムコンフォートという感じでピッタリのタイヤだと思う。
いつもスバルを試乗するときと同じコースを走ったが車が跳ねるポイントでのダンパーの収束はかなりハイレベルにセッティングされていた。ダンピングレートは決して高くないものの収束マナーが非常によく素早く室内が何事もなかったかのように平穏に戻る。高い実力が文字通り全身に伝わってきた。ボヨヨーンとしたレヴォーグ1.6GT(B型)とは掛けられたコストの差を感じざるを得ない。パサートはこのまま速度域を上げていっても容易にはその走りが破綻しないことは簡単に想像できた。
エンジンの絶対的な動力性能は1400ccターボで150psだからBPレガシィターボに乗っている自分からすれば大したことはない。車重差があるからゴルフ7HLの加速感にも及ばないように感じる。
しかし積極的に加速しようとも思わせないゆったりとした上質な世界観を持った車だ。勿論いざ加速を命じてもその世界観が破綻しない事は請け合いだ。
50~60kmぐらいのスピードでゆったりと流して走るときに高い動的質感を最も楽しめる車だと思う。営業氏にそう伝えると10日ほどメーカーから車を貸し与えられたジャーナリストも同じようなことを言っていたらしい。
この出来ならいよいよワールドプレミアも近付いてきた同じグループ、セグメントの次期Audi A4にも大いに期待できそうだ。
今回試乗したパサートセダンハイラインは414万円。トレンドラインなら329万円から。この完成度にして破格のプライスタグだと思う。競合Dセグメントカーは首筋が寒くなったでしょう。流石、ヨーロッパのカーオブザイヤーを取っただけの車だと思います。少なくとも走りに関しての手抜きは一切感じられなかった。
ただし実際問題日本市場で売れるかっていうとなかなか厳しいと思うケド。乗れば良い車だと分かるけどターゲットにしている購買層に乗ってもらうところまでいくのがなかなか難しいと思う。まずは候補にして貰う所からですね。
(我が家には特別内覧会のご案内なる文章が来ていました。しばらく新玉のないVWさん、力を入れている模様)
欲を言えばDCCを選択できるようにして試乗車には装着しておくべきだと思った。そういう走り推しの車じゃないのは分かるんですけどね。