• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

たいにーMのブログ一覧

2015年01月04日 イイね!

9月某日の出来事

9月某日の出来事

















僕は駅前のビジネスホテルの一室で、ぼんやりと天井を眺めていた。

オレンジ色のほんのりとした優しい光が、白い壁に覆われた部屋をうっすらとオレンジ色に染める。

夕焼けのようなどこか温かくも切ない気持ちにさせる空間を演出していた。

それは、女の子の体から伝わる温かみを知りつつも、少年から大人の階段を登った事を僕に気付かせていたのかもしれない。

つけっぱなしにしたテレビから、午後10時を知らせるニュースが流れる。

いつもと変わらず淡々と伝えられるニュースを読む声は、僕の胸の高鳴りと相反しているようで、少しばかり愉快であった。

毎日毎日同じことばかりを言っている。

世界中の不幸を伝える大人たちと僕とは違うんだと思っていたから。

何が楽しくて生きているんだろう…

大人が少しかわいそうに思えてくる。



クスッ…


そんな気持ちを察したかどうかはわからないが、僕の耳元にかすかに笑い声が入ってきた。


つい先ほどまで髪の毛をふりみだし、歓喜の声をあげいた5歳年上の女の子の声であった。

シーツが乱れるほどに激しく動いていた体は、ほんのりと桜色をしていたが、静かな呼吸とやわらかな温かみだけを残して、僕の体に寄り添っていた。

一糸まとわぬ僕たちは、うすい毛布にくるまりながら、互いの体を寄せ合い、額をくつけたり軽く口づけを交わしたりしていた。







僕のケータイがなる…。


「ひょっとして女の子から?くーちゃんってそういう人なの~。」


リサはニヤニヤしながら冗談っぽく言った。


「そう思う?そんなに慣れている男だったら、告白するのに言葉はつっかえませんよ。」


「でもさ~…。初めてのわりには…結構よかったよ…。」


「は…?うるさいな。まぁ…。こっちも…なんていうか…」


「私は、もうこの年だもの。そりゃ初めてじゃないけど…。こんなにドキドキしたことは…」


「別にいいよ。」


「信じないんだ。早く電話でなよ。」



「うん。」


ナンバーディスプレイのところを見ると、シンからであった。


応答ボタンを押すと、夏の終わりが近づいてもまだパートナーを探せていないアブラゼミのような大きな声でしゃべる声が、僕の鼓膜に突き刺さった。



「おい!くーちゃん、俺が便所言っている間にどこ行ったんだよ!ケン兄ちゃんに訊いたらバリオスのテストしたいって言うからキー渡したとしかいわね~し…。」


「その割には電話かけんの遅いじゃん…。おまえ、乗ってたろ…。」


「へ…。ばれた?俺の単車も調子がよくってよ~。ダイシン管からの排気音がもう最高~!おれ…イッチちゃいそう…。」


「そんなことは言われなくてもわかるよ。あ…おれはもうイッちゃったけど。」


プ…クスクス…

と笑うと、様子を聞いていた口元がにやりとした。


「あれ?くーちゃん、今女の子の声しなかった?」


「空耳だよ。お前、19000回転の音を聞きすぎておかしくなったんじゃね~の。」


「そうかもしれない…。あ…。そんなことよりテストは終わりだって!おわり!大変なんだよ~!」


「どうしたんだよ。盆と正月が一気に来たみたいなテンションで…」


「バカ。俺の頭は一年中夏休みだって!水着のちゃんね~がいつでもフィーバーしてっから…

じゃなくってさ、今イクミチャンから連絡あって、今日合宿かなんかで俺達の地元に来るんだってさ!最終の電車で着くみたいだから、むかえにいくんべ~よ。しかも、リサちゃんもいっしょみてーだしさ。」


「え~。リサちゃんも来るの!それは一大事だ。今10時を少し回ったところだから…。」

迫真の演技をする僕を見たリサは、足をバタバタさせて笑っていた。


「ごたごた言うなよ。どこはしってっかしらね~けど、とりあえずいつものコンビニな!10時半までに来いよ」

「わかった。それじゃ。」


僕は電話を切った。

「へぇ~。どこのリサちゃんが来るの~。イクミチャンと一緒なんだ…。」

「ちょ…ふざけ過ぎだろ~。シンには言えねぇんだからさ…。今は…。」


「それって…私とこんなことしたから?」


「それもあるけれど、あいつの思考回路がショートするな。頭降るとたまにカラ~んって音するから…。」


「ちょっと~友達でしょ。」


「うん。親友だよ。」


「私もなんて言われる事やら…。」


「何とも言えないよ。不器用ですから。」


「はいはい。それじゃまた。私はシャワーしてから駅に向かうから、時間稼ぎよろしく。」


「なんで。イクミちゃん着いたらすぐ会うんでいいじゃん。」


「女の子の身だしなみ。よろしくね~。」


そう言い残し、リサはバスルームへと消えていった。


「はいはい。」


僕は部屋を出た。


ほんの2時間ばかりであったか。


停めたときには温まった金属の音を出していたエンジンは、手で触れるくらいにまでなっていた。


僕は愛機にまたがりエンジンをかける。


セルを回すと、あっという間にエンジンがかかる。


独特の感触が伝わるチェンジペダルをローに入れ、僕は走りだした。


少しずつ温まるエンジンの様子を見ながらスロットルを開け、回転数をあげていく。


8000回転…

12000回転…


回転数を上げるたびに聞こえるバリオスの声は、先ほど聞いたリサの声と相まってくる。


単車は女…。


そんなことを聞いたことがあるが、いま一致した気がする。


通勤ラッシュが終わった金曜日の夜の国道は、いつもとは違っていた。

バスの排気ガスの暑さもない。

ゆったりと走る自動車の影もない。

目の前に広がるアスファルトの路面は、僕の行先を、十戒のごとく切り開いていったのであった。


市民会館前の信号を左折し、一本路地を入るといつもの公園にたどり着いた。


既にシンは来ていた。


ライムグリーンを基調に、ピンクや赤、白を差し色に入れた疾走感あるレーサーレプリカは、オーナーがエンジンを掛けて走り出すのを今か今かと待ちわびている。


オーナーも同様だった。


口に何やらくわえて…


「く~ちゃんのもいい音してんな~。だけど遅いって。今から出なきゃ間に合わないジャンよ。女の子はまたしちゃいけね~って兄貴も言ってたしよ。」


「でもさ…。さっきリサちゃんから電話があって、イクミちゃんがおなかすいたっていうからご飯食べてからくるって言ってたよ。」


「は?俺も飯食ってね~し。」


「おまえは大丈夫だ。何とかなるベ。」


「んなこたね~よ。」


「んなことあるって。こないだアップハンつけたときには飯食うンも忘れてやってたじゃん。」



「でもさ~それとこれは別だって!俺も一緒に食べたいって!」



「わかったわかった。向こうもご飯食べてくるから、こっちもなんか食いに行くんベ~。」



「く~ちゃんも食ってねえのかい。お互い似たもん同士だな。単車にどっぷりハマってさ。」


にこりと笑いながら僕たちはこぶしを突き合わせた。


「そしたら…。いつものラーメン屋行くベ。満塁軒!おやじの指からいいダシがでるんだよな~。」

僕が言う。

「ひゃっひゃっひゃ…。あれ、きっとトイレから出てから、おやじ手~洗ってねーぞ。コクがありすぎるもん、味噌ラーメン…。」


「それ以上言うなよ。食えなくなるだろ!ま、行くベ。」


僕たちはラーメン屋に向けて走り出したのであった。









「ごっそさ~ん。は~うまかった。」


「あんたよく食べるね~。こっちが気持ちいいわ~。替え玉。2個分にしといてやるから。」


「おばちゃんいつもわりいんな。くーちゃんはひとつしか食べてないから、くーちゃんはらいなよ。」


「意味わかんね~。てかお前いくつ食ったん・・・。」



「6玉!」


「おまえはウシか?胃袋いくつあるんだよ。」


「いいっていいって。こうやってるのを見ると、息子がいたらこんな感じだったんかな~とも思うしね。それに何より、あんたら教えた田中君はうちの娘と幼なじみでさ。たびたびお店に来るのよ。あっ…。あんた。山崎君だっけ?君の話はよくしているんだよ。」



「え~。もういいよ。あいつ滅茶苦茶にいうんでしょ。」

「そんなことないよ。あいつは好きなことなら一生懸命やれるから、思い切ってバイク屋さんの職場体験いかせてみようって言ってたんだからね。」


「初耳だな。どうして今まで言わなかったの?」


「やつらが中学出て自分の道を歩き始めるまでは黙ってて・・・。そう言ってたからさ。それに、真面目な子をつけてその子の負担にならないか心配してたのよ。でも、それはないみたいね。」


「なるほどな~。」


その時だった。



ボボボボボボ…。

クァ~ン…


フォァ~ン…


ヒュイ~ン…。





それは…

F1マシンが走り去るような…

いや、アメリカのジェット戦闘機が離陸したような…


何ともいえぬソプラノサウンドがした。


シンはさっと立ちあがり、ラーメンの代金をカウンターの上に置き、一目散に外に出た。


「おばちゃ~んつり、いらね~から。」


「いや、足りてね~し。これ。奴の分です。」


「はいよ。それにしてもあんたは面倒見がいいのね。まあ、そのうちいいことあるわよ。」


もうあったよ…


心の中で思いながら僕は外に出た。



「あ~見失った…。」



「ずいぶんと甲高い音だな~。アイドリングは低音だけど…。」



「訳がわからね~。あ!はぁイイだんベ。迎えに行くベ!」


「うん。」



駅に向かって2台の4気筒マルチは走りだしたのであった。


駅に着くと、イクミとリサがいた。



「わりい、遅くなっちゃって。こいつがラーメン6杯も食うからさ。」


「そりゃおまえだろ。ごめんね待たせちゃって。」



「もう。女の子を待たせた上に、シン…。あんたウソついたわね。私に向かって…。またスクワットやらせるけど…いいのかな~。」



「ご…ごめん。それよかどっかいこうよ。今からだと…。カラオケとか…ゲーセンとか…」


「ふふふ…。さすが高校生。」


「何がおかしいんだよ。いいだろ」


シンが言う。


「懐かしいね。てか、バイク乗せてくれるんでしょ。」



「もちろん!ほら。」

シンがイクミにヘルメットを渡す。

「うわ~。リサ…私たち初めて乗るね…ドキドキするね…。」


「うん。楽しみだな~。」


「おい、く~ちゃん俺の夢がかなったよ。こんなにかわいい女の子後ろに乗せられるんだぜ。背中に感じるアレ…。楽しみだな~。」


僕の耳元で囁くシン。


「だな。おし。行くベ。」


20分ほど、生ガスのにおいとフレグランスの香りを楽しんだ僕たちは、カラオケボックスに着いた。

「よ~し。歌うぞ!」


そう言って息巻いていたシンだった…。

受付の店員が言う。

「お客様、こちらの男性の方、何か身分証は…。」


「へ…。あ…。」



僕がおもむろに免許証を取りだそうとすると、シンが制止した。



「なんで必要なん?」


180センチの大男がバイトであろう大学生風の男の店員に詰め寄る。

鬼気迫る表情はまるで般若のごとく…。

「当店は22時以降の18歳未満のおきゃく…ひ…。」



「18未満の客がなんだって!あ~!もっとでっけえこえでいってくんね~かな~。俺、単車のエンジンブン回してっから耳が遠くって…。」



「ですから…わ…わ…。」



「おい、にぃちゃんよ。歌えね~なんてこたぁねえベ。あ…なんなら俺の単車でいいとこ連れて行ってやるよ。な…いこうよ…。」


「い…いえ。大丈夫です。251号室にご案内します…。」



「251だってさ。コミュニケーションって大事だよな。さすが俺のダチ!」


そう言ってシンは颯爽と部屋に向かっていった。


部屋に入ると…。


「シン、あんたムチャしすぎ!警察来たらどうすんの!」


イクミが言う。


「いいんだよ。せっかく来てくれたことだし。」


「バカなこと言わないで。あんたに何かあったらね…。」



「あれ、心配してんの!ひょっとして俺のこと好きなんかい!」



バチン…。


カラオケルームに響く音。


「そんなんじゃないから。もう。いいから歌って…。」


「へ~い。」


少々ふてくされ気味のシンであったが、いつもの曲を入れて熱唱した。




うまいとは言えないが、一生懸命だった。


「これ…単車の名前がいっぱい出てくるんだよな~。やんちゃな感じの奴だけどさ…。」


そこから色々と盛り上がる曲を入れて一気にテンションをあげていった。


成人している彼女達のお酒も進む。


もちろん…


イクミは完全に出来上がっていた。


「ほ~ら歌って歌って。う…き…きもちわる…ちょっと…そと行ってくる…。」


「イクミ…。大丈夫?手伝うよ…。ほら…。」


「大丈夫。ねえ、シン。ちょっと…いい・・・・。」

先ほどの勢いはどこへやら。急に女の子っぽくイクミが言う。


「は~。ったく。ほら…立てるか…。」



「だ…だいじょう…」



「大丈夫じゃないじゃんよ。ほらおぶってやっから…。」


「ごめんね…。」


そう言って二人は外へ出た。



「行っちゃった。どうする…。あと30分くらいあるよ。」


僕が言うと、リサは何も言わず見慣れないタイトルの曲を入れた。


「これって…。しらね~な。コメディチックな歌詞だな~。焼き肉の唄?何?」


「いいから聞いて…。」






僕は思わず息をのんだ。


歌詞の一言一言が心にじんわりと響く。


先ほどまでの光景がフラッシュバックしてくる。


歌い終わったリサを見た僕は、彼女のことを愛おしく思い、抱きしめたくなった。


しかし…。


リサは半身になり、受け付けなかった。

いたずらな笑みを浮かべながら彼女は言った。


「次はく~ちゃんの番だよ。アンサーソング歌ってよ…。」


なるほど。


って…。



おれ…


あ…


おもむろにデンモクを叩く。


立ち上がりマイクを手にしてうたった。


これならば…。

歌えるぞ…。





「へぇ~。生まれる前の曲なのに、よく知ってるね。」


「うん。まぁ、俺の今の気持ちとかにすごくマッチするんだよね。それに透き通るようなメロディとかさ」


「あれ…どんな歌詞だったっけ…。サビの部分…。メロディしか出てこない…。ちょっと歌ってみて…」


「うん…。」

そう言って僕はサビの部分を歌い始めた。


するとリサが立ち上がり僕の方に歩み寄る…。


「いつまでも離れなくさせるんでしょ…。」


「…確信犯だな~全く…。」


少しうつむきながら微笑みを浮かべたリサを見た僕は、彼女のことが愛おしくて…

先ほど我慢した分の感情がにじみ出てきて、爆発した。


僕はリサを強く抱きしめた。

「い・・痛いって…。」


「ごめん。でも我慢できなくて…。」


無情にも時間の終了を告げる電話が鳴った。

僕たちは外へ出る。

イクミとシンの分のカラオケ代を払って…。


「そういえば奴らどこ行ったんだろう。」

そう言いながら駐輪場に行ってみると、あの夏の光景が広がっていた。

そこにはヒンズースクワットをする大男がいた。

「はい。気合い入れて~。ほら、へばるんじゃない。男だろ!」


「ひ…勘弁してくれよ…。あ…く~ちゃんとリサちゃん!助けて…。」


その情けない顔を見た僕とリサは笑い転げてしまった。


「は~面白い。だけど明日バイト入っているから帰るベ。」


「ようし。ここまでだ。ほらシン、送ってって!」


「はい先輩。」

「おまえ、いつから後輩になったんだ~?あ?」


「もう…。」


そういったやり取りをしながら僕たちは彼女たちをホテルまで送り、シンの家に向かっていった。


シンの家について気付いた。


明日はバイト代が出る日。


僕はその話をケンに伝えた。


「そうか~。よかったな。よし。日曜日は走りに行こう!いい景色を見ながらさ。」


「はい!」



僕は胸を高鳴らせて家路へと着いたのであった。









バイトが終わった。


店長から渡されたバイト代を手に僕はシンの家に着いた。


これで晴れて、僕のモノになる。


白い馬。

白いバリオス。

たまらなくうれしかった。

お金を渡して僕は愛機にまたがる。

今までとはちょっと違う。

シートの感覚がしっくりと来る。

スロットルをひねると、バリオスも嬉しそうに応えてくれる。

跳ね上がるようにしてタコメーターの針は踊る。

エンジンからの熱が布一枚を通して僕の体に伝わってくる。

前足を天高く跳ねあげた神馬のエンブレムは、僕の心を躍らせてくれる。


しばらくはここに置いておくつもりだが…。


ケンが言う。

「くーちゃん、おめでとう。これで晴れてオーナーだよ。オイル替えといたぞ。明日はよろしくな。」

「はい。」

「よかったな、くーちゃん。」

シンも満面の笑みを浮かべる。


高鳴る胸の鼓動を抑えてその日僕は布団に入ったのだった…。











「おはようございます!」

僕は朝一でシンの家に行く。

「おう。昨日は寝られたかい?」

「はい。もちろんです。」

「今日は何人か俺の知り合いも来るからよろしくな。」

「楽しみだな、くーちゃん。」

「ああ。って…カナさんも行くの?」

フルフェイスのヘルメットを片手に持ったカナの姿を見て僕はビックリした。


「うん。私も実は乗るんだ~。意外…?」


「いや…。知らなかっただけです。」


そう言ってカナはバイクを取りに行った。


しばらくして…。


「お待たせ!」


そこに現れたバイクもまた異様な輝きを放っていた。

定規で引いたようなまっすぐなラインのタンク。
黒光りするタンクに差し色で入れられた赤いライン。
少し高めのハンドルと銀色に輝くメーターケース…。
武骨な黒いエキパイの先に付いたモナカ管…。
少しばかりアンコが抜かれているであろうシート。
リアサスは憧れのオーリンズ製であった。







これ、バリ渋…。


「どう。私のFX。ケンちゃんのお下がりだけど。カッコいいでしょ。」


僕は息をのんだ。


上背は僕と変わらないのに華奢な子が…。


「ようし。準備はいいかい。他の仲間と集合する地点まで先導するからついておいで。何かあったら遠慮なく言うように!」


「はい。」


僕たちは腹の底から精一杯の返事をした。


皆でバイクのエンジンをかける。


下っぱらまで響く重低音でアイドリングするGPz1100…






甲高い音でブリッピングしながら出発の時を待つZXR250…。





華奢な女の子が乗る男バイクZ400FX…。





そして、僕のものになった相棒、バリオス…
レーサーレプリカ直系のエンジンは、狼のように吠えている。






いよいよ集合場所に向けて出発をする。


もちろん…


みんなでローギアに入れたときの儀式を済ませて…。


ガッコン…。


ということは次は幻のニュートラルか。


そんなことを想いながら心をときめかせていると、集合場所に到着した。


しばらく談笑していると、2台のホンダのバイクがとこちらの方へと走ってきた。


スマートでありながら少しボリュームのあるタンク。
シルバーの車体に落とされたブルーのライン。
教習所で見たことあるような、、、
ないような…。
四角いテールは少し古めのバイクの証なのか…








そしても一台…


戦艦のように大きな車体。
タンクからは両サイドにエンジン一気筒分はみだしている。
またがっているのが大きい男だからかさほど違和感はないが…

エンジンを軽く吹かす…。

あれ…。


この間ラーメン屋にいたときと同じ音…。
これが音の主か…。





大型バイクにまたがった大きな男がヘルメットを外した瞬間…


それは衝撃であった。


昔バイク屋でお世話になった梶山がCB750Fを…

そしてぼくがバイクに乗る大元となった田中がCBX1000から降りてきたのであった…。



続く…
2015年01月04日 イイね!

3か月振りになります








ここのところさぼっていた、私的自己満足小説…

久々に書きます。

初めての方も今まで読んでいた方もおさらいとして読んでいただけると嬉しいです。


ざっくりここまでのエピソードを話すと…。


中学時代にバイクに出会った主人公が、さまざまなバイクや人と出会い、成長していくというお話です。

あの頃バイクに乗って青春を謳歌した方。

3ナイ運動のおかげでバイクに乗れなかった方。

バイクにはあまり興味がないけれど読んでみる方…。

いろいろな方がいると思いますが…


共通して言えること…。

かつて皆が通った青春時代。

早く大人になりたかった。

自由を手に入れたかった。

学校や世間といったゆがんだ型に押し込められるのに違和感を感じた。

クルマやバイクの雑誌を見ては、あーでもないこうでもないと談笑した。

異性に興味を持った。

女の子の髪の香りがたまらなかった。

校庭のグラウンドを走る男子が気になったものの、話すことができなかった。

いざ告白しようとしたが、言葉をつっかえて何を言っていいかわからなかった。

初めて異性と付き合ったものの、何を話していいかわからなかった。

玉砕して失恋ソングを聞いていた…。

初めてのキスは歯があったって思わず苦笑いをした…。

抱きしめたときのあの感覚。

思ったよりも華奢だった女の子。

ついこの間まで自分より小さかった男のこが自分よりも大きくなって頼りがいがあると思えた。

憧れる先輩がいた。

いつか追いつきたいと思ったその大きな背中。


色々と背伸びがしたくって…

頭がくらくらになったり…

隣町まで自転車に乗って買い物に行ったり…。

親や教師に立てついて、痛い目を見た…。

自分とは何か、当てもなく探し続けた。

思いだそうとすると、つい昨日のことに思い出せるであろう思い出。


どれか当てはまるのでは…?


そんな気持ちにバイクを絡めてお送りします。


素人で頭の中が一年中お正月のおめでタイニーがお送りしますのであしからず…。

では早速ですが…


登場人物おさらいから…



川端孝太郎

この物語の主人公
普通科高校に通う16歳。
成績はちょっと上。運動もそこそこできる。
中学時代所属していた運動部ではキャプテンを務めていた。
それを買われてかはわからないが、問題児シンの世話係として、バイク屋に職場体験に行ったことがきっかけでバイクが好きになる。
バイクの維持をするために近所の雑貨屋で働いている。
教習所で出会ったリサに一目ぼれし、初めての彼女として付き合うことになる。



愛機は、白いバリオスⅠ


仕様
RPM管
メーカー不明のZ2テール          
フェンダー加工によるフェンダーレスキット
          


山崎シン



中学時代の職場体験で孝太郎の親友となる。
教師たちが頭を抱える問題児。
ハイテンションで周囲は付いていけない。
かと思ったら電池が切れたようにしゃべらなくなることもしばしば。
通知表のアヒルさんを見て歓声を上げる男。
体育だけはずっと最高評価。
腕っ節がめっぽう強いため、悪の道への誘いもあったものの、まっとうに中学時代を送る。
兄であるケンの影響でバイク好きになる。
現在は工業高校に通う。

愛機は、ZXR250R

仕様 メーカー不明アップハンドル
    メーカー不明アルミ製トップブリッジ  
    ニッシン製ブレーキマスターシリンダー 
    ダイシンレーシング製オールアルミマフラー   
    メーカ不明バックステップ 
    


山崎ケン



シンの兄。
シンが最もしたっている相手。
隣町の工場で働いている。
僕たちにとっての憧れの存在。
現在25歳。
独身。


愛機GPZ1100

仕様 アップハンドル化
    ブレンボ製クラッチ・ブレーキマスターシリンダー
    ウィリー製アルミスイングアーム
    KERKER製マフラー
    前後輪17インチ化に伴い、ダイマグホイールを装着。
    弁当箱テール撤去に伴いリアカウルへのテールランプ埋め込み
    オーリンズ製リアサス


池田リサ



合宿免許取得で出会った女子大生。
年齢は21歳。

髪はほんのりとした茶色で肩まで伸びたセミロングのゆるふわカール。
身長は150センチちょっとくらい。

色白で、くっきりとした瞳。
鼻筋はスッと通っている。
プっくりとしたくちびるが特徴的である。

体格に似あわず、出ているところは出ているが、折れてしまいそうに細い腰…。
弾力のある太ももが何とも言えない…

いわゆる…
原宿系…
いや、どちらかというと小悪魔系…
僕が想像する年上の女。


年下の僕がオタオタしているとちょっぴり叱ってくれる、まさに僕が想像する大人の女性。
そうれとは裏腹に、たまに年下の僕に甘えてくる一面も見せる。

意を決して告白したことで初めて付き合うこととなる。


加藤イクミ


リサの親友。
ショートカットの髪にさわやかな笑顔がとてもかわいらしい。
あくまで想像だが、ブルー系の浴衣が似合うであろう和風美人。
身長は160センチ前後。

残念ながら、出ているところは出ていない…
筋肉質な体型。

それもそのはず。
高校時代ソフトボールの選手であり、国体にも出場したとのこと。
体育会系で、年下にはちょっと厳しい。
免許合宿で酔っ払って絡んだシンにヒンズースクワット1000回させてしまった。



やるシンもシンだけど…。


よくわからないが、シンがひそかに想いを寄せているのか…。

山崎カナ


シンの姉。

21歳。
金色のロングヘアーを赤色のシュシュでひとつしばりにしている。
くっくりとした二重に長めのつけまつげ。
薄めのくちびるには赤いグロスが乗せられている。

最近話題の失恋ソングを歌う歌手に似ている。

考え事をするときは口をとがらせる癖がある。

見た目は最近のギャルであるが、料理の腕はピカイチ。

彼女目当てにシンの家の周りにはちらほら男がいるが、シンの姿を見るとみな退散してしまう。

僕もかつては彼女に想いを寄せていたのだが…。
僕が思い切って第二ボタンを渡そうとするも断られる…。




初めてご覧になる方は、最初から見ていただけるとありがたいかと…。

正月の完成されたテレビ番組に比べたら、稚拙ではありますが、優しい気持ち…

いつかの少年の気持ちになって読んでいただくと、ありがたいです。


前回までで…

主人公の僕は、普通二輪の免許取得した。
アルバイトを始めた。
そして…
憧れていたリサに教習所では告白できなかったものの、地元に彼女が遊びに来るということで、改めて告白。
念願かなって付き合うことになった。

バリオスでタンデムデートをして…
そして初めて女性の温かさや愛おしさをを知ると…
みなさんがちょっとだけ好きな…。
ちょっと過激な場面もあったかもしれませんが・・・・。


そして今日は…。


といってポンとは出てきませんが悪しからず。



それでは、しばしお待ちを…。





左がシンで右が僕…


あくまでイメージです(笑)
























2014年10月04日 イイね!

恋のスピードウェイ

恋のスピードウェイ


















※…この物語はあくまでフィクションです。
   道交法および未成年の夜間外出は条例等で禁止されている場合があります。
   また、ちょっぴり青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすシーンもでてきます。
   






「ありがとうございました~。またのお越しをお待ちしております~。」



ふう…



お店の中から楽しそうに出てくるお客さんを見送った。



夏の太陽はまだまだ猛威をふるっている。


夏休みも残るところ3週間となったが、お盆休みのせいか、帰省した人たちで店内は賑わっている。



あ~。


あっちぃ…


僕はケンの紹介で、近所の雑貨店にてアルバイトを始めた。



とはいっても、涼しい店内ではなく、主に倉庫の整理と、大型家具・自転車の組み立てが僕の仕事であった。



時給は850円と高校生にしてはイイと思い、二つ返事でオーケーしたが現実はそう甘くない。


二の腕の筋肉が膨れ上がり、腰のあたりがだるい…。


休憩に入るとすぐに作業用のつなぎとTシャツを着替え、タオルで汗をふく。


スポーツドリンクは体中にしみわたり、これまでにないほどおいしく感じたのだった。


かわいた土に水がしみこむように…。

するとまた汗が噴き出す。


その汗をふく。



汗とイタチごっこをするような感覚だ。


しばらくして…


休憩から戻ると…


「お~い、川端~。これお客さんの車まで運んでくれや。」


先輩が呼ぶ。

「は~い。」

急ぎ足で駆け付けると、大きな段ボールに詰め込まれた組み立て式のキャビネットが鎮座していた。


ちらりと見た段ボール箱には30kgと丁寧に書かれていた。



「これ…俺一人で持って行くんっすか。」



「そうだよ。まあ、ちっと重いけど平気だろ。」


「え…無理っす。何とかなりませんか…。」




「頑張ってくれ。あ…そういえばこれ買ってくれた人と一緒にいた娘さん、おまえと同じ学校だった気がするぞ。ショートカットのかわいい子!」




「え…よっと…30キロなんて楽勝っす…。やべ~。空気と変わらないですね。」



「さすが16歳。それじゃあお願いするわ…」



暑さと重さで疲れた体に鞭を入れる。

下腹に力を入れて歯を食いしばる。



かわいい子って…


ショートカットって…


もしかして…



僕は学年で一番人気のある女の子を思い浮かべてにやにやしながら荷物を持ち上げた。











でもぼくにはリサが…


ごめんね、ごめんね…。


僕はルンルン気分でキャビネットの箱を肩に担ぎ、指定された車まで行った。
わずか20メートルのところではあったのだが…



「お待ちどうさまでした~。これ、トランクに入れればいいですか~。」

「あ~御苦労さま。それじゃあお願いするよ…。俺もこっち持つよ…。」

買い主である40代のおじさんはそう言って手を掛けた。



「いいっす。これ俺の仕事ですから。それ…」



僕はできる限りの力を使い、ワンボックスカーのトランクに押し込んだ。

「おぉ~。ありがとう。若いのに大したもんだ。これ持って行きなさい。」


そう言って、栄養ドリンクを手渡してくれた。


「ありがとうございます。」


躊躇することなく、好意に甘えた。

しばらくすると…

「あれ…川端君…?」


カート置き場から戻ったのだろう。

女の子の声が聞こえた。

でも…

なんで僕の名前知っているんだ…。

顔がにやけてくる…。

きらりと光る汗…

バイトを始めてから体格も少したくましくなった。

頑張っている自分…。

は~い…



振り返ってみるとそこには…


え…


え…



同じクラスの高橋がいた。


ボブほどボリュームはないが、首の真ん中くらいまでのショートカット。
背丈は150センチくらいだろうか。
第二ボタンまで開けられた白いシャツに、ジーンズ生地のショートパンツをはいていた。
ちょこっと膨らんだ胸と、白くふっくらした太もも…。

くりっとした二重瞼とスッと通った鼻筋…。
くちびるにはほんのりと乗せられたグロス。


学校にいるときとは大分雰囲気が違う。

ハイスクール・クイーンを期待した僕であったが、これはこれでいい。


不純だ。


「あ~。高橋さんだっけ。クラス一緒の…。」


「私の名前知ってるの…。てか初めてしゃべるかも…。」


「そうだね。なかなか学校じゃしゃべんないかもね。」


「まあ…。わたし男の子だと人見知りしちゃって…。ちょっとしゃべっただけで変なうわさ立てられちゃいそうだし…」


「そうなの…。てか学校にいるときと雰囲気違うね。」



「それはね。休みの日くらいはおしゃれしたいし…。」


「なんだ、サキのお友達か~。いつもお世話になってます。」

お父さんであろう男が言う。

「いいえ。こちらこそお世話になってます。」

「ここで働いてるの…?」


「うん。社会勉強だよ。それと、まあ服とかほしいからそれでね。」



「へえ~。がんばってね。それじゃ、また学校が始まったらよろしくね。」


「こちらこそ。」


女子って…


恐ろしいな…。

こんなにも雰囲気違うんだ…。

そう思いながらも…

僕は一礼し、手を振って車が見えなくなるまで見送ったのだった。


それから僕は休みなく働いた。

1日1日がとても短かい。



アブラゼミの鳴き声がやがてヒグラシの鳴き声に変わっていった。


7日間しか生きられないセミたちのごとく、僕の16回目の夏も今となっては一瞬で駆け抜けたようであった。


思い起こしてみると色んな思い出が残っていたのだが、終わってしまえばあっという間だった。


免許の取得、リサとの出会い、初めてのアルバイト…。


全ての記憶と感触を覚えた頭とこころ。

日に焼けた肌とふたまわり大きくなった二の腕を制服のシャツに通して、僕の2学期が始まった。














校門をくぐると、現実に戻されたことに何か違和感を覚えた。

僕はいつもの席に座り、文庫本を取りだした。


始業までにはあと少しある。

すると…

「おはよう。この間はどうも。」





高橋が声を掛けてきた。


「あ~どうも。あれ使ってる?」


「うん。とってもいいよ。」


「そう。」


そこから会話が続かない…。


高橋はいつものグループが集まる席にいそいそと戻っていった。


高校生に戻った高橋は、夏休みとは大きく雰囲気が異なっていた。


ふ~ん。


そして今日から相も変わらない、どこか退屈な学園生活が始まったのであった。



ただ、1学期と違っていたのは放課後のアルバイトが始まったことであった。



は…は…は…


自転車を全速力で僕はこいでいた。

ピンポ~ン・・・。


「こんばんは~。」


ガチャ…。

「なんだよ、く~ちゃんか。」

シンが出てくる。


「何だよじゃないよ。バイク見に来たんだから。」

「熱心だね~。毎日来たって意味ね~って。誰もバリオス走らせないんだからさ。まあ、俺は毎日乗ってるけど。」



「いいな~。でもさ、こいつ見てっからバイト頑張れるんだよ。」



「ひゃっひゃっひゃ…。く~ちゃんさ、リサちゃんにもそれくらい熱心になればいいのに。そんなものなのかな。おれはバイトかったるくっていやだよ。」


「うるせんだよ。まあ、そういうなって。」


「まあな。」


そんなやり取りを始めて、どんなパーツをつけるとかどこ行くだとか、僕たちは話し込んだ。
時間のたつのも忘れて…。

20万貯めて早く愛機にまたがりたい。

こいつで色々なところへ出かけたい。

後ろには…


アルバイトが終わると必ずと言っていいほどシンの家に行き、エンジンに火を入れるのを心待ちにしている愛馬のもとへと駆けて行った。

するとある日…。


いつものようにバイク談義をしていた僕たち。


今日はケンが仕事が休みのため、3時位から3人で熱く、時がたつのも忘れるくらい話し込んでいた。

エンジンについて、足回りについて、お勧めのツーリングスポットからキリがない。

しかし、3人の会話が止まった。

それはガレージの時計が7時を回ったところだった。


僕のケータイがなる。


メールではなく電話の着信だった。


2ストバリのすっとんきょうな声の母親からの電話は無視ししたかった。


ケータイを見ると、画面には見たことない電話番号だった。


いたずらかと思い電話に出なかった。


すると、間髪おかずに同じ番号から電話がかかってきた。


「なんだよ…。出てみるか…。」


そう呟いて僕は応答ボタンを押す。


「はい、もしもし。」


「もしもし…。く~ちゃん…?」



電話の向こうからは聞き覚えのある声がした。


「え…あれ…リサ…。てか交換したんメアドだけじゃね。」


僕はビックリした。


「そうだったんだけど、イクミがシン君から聞き出して、教えてもらった。いきなりだったらビックリするかと思ったんだけど…。迷惑だった?」



「そんなことないよ!それで、今日はどうしたの?」


僕の声は普段より2オクターブ高くなった。



「あのね…。明日く~ちゃんの地元で花火やるでしょ。私、まだ夏休みだからイクミと一緒にく~ちゃんの地元にきてるんだ。」

「え…。なにそれ…。」


「それでね、く~ちゃんバイク手に入れたらどこか連れて行ってくれるっていったじゃん…。」



「いや、バイク…あるにはあるんだけど…。まだ俺のものになってない…。それに1年たたないと二人乗りできないし…。」




「そうなんだ。ちょっと残念…。」

リサのこえがシュンとなる。


そこから少しの沈黙がはいる。


すると…


ポン…


ケンが僕の肩をたたいた。


僕はすかさず振り返る。

ケンの右手にはバリオスのキーが握られていた。

ケンは僕の方に鍵を持った手を軽く寄せるとにっこりと笑った。


え…。

僕は口をポカンと開けた。


ケータイを耳から外す。


ケンは小さな声で言った。


「好きな女の子からだろ。いいから行ってこい。今しかね~んだろ。ほら。楽しんで来い。」



「いいの…。」


「ああ。でも事故だけは気をつけろ。それと、女の子の命預かるってことも…。男なら責任持てよ。」



コクリ。


僕はうなずいた。



「あのさ、バイク用意できそうだから、迎えに行くよ。どこいけばいい?」


「え…。それじゃ駅前のビジネスホテルに来て…。」


「わかった。」


僕ははやる気持ちを抑えながら、キーを回し、イグニッションスイッチをオンにする。

安全スイッチをオフにして、スタータボタンを押す。


フォン、フォン、フォ~ん…


不老不死の神馬は雄たけびをあげた。

「気をつけろ。」


そう言ってケンとシンは僕を見送った。



手から伝わってくる振動。

耳に入る排気音…。

僕の肌に触れる風は、とてつもなく気持ちがいい。

信号が赤に変わる。


早く青になってほしい。

はやくリサに会いたい…。


あ…


あ…

あ~…

じれったいな・・・・。


まっててね。


プレゼントは何もないけれど…。


君といられる時間は何物にも代えがたい…。








時間はまだ8時を指したところだった。

駅前には人がたくさんいた。

アクセル一発吹かして、僕はバリオスのキーを外した。

駅前のビジネスホテル前で、僕はバイクを降りた。


ふ~。


息を軽く吐く。


「く~ちゃん!」


ひょっこりとリサが現れた。


「お~。久しぶり。元気だった?」



「久しぶりじゃないじゃん。毎日メールしてたじゃない。」



「まあ、会うのは久しぶりだからね。今着いたの?」



「うん。一通り荷物を整理してひと段落したとこ。」



「そうなんだ。てかイクミチャンは?」


「イクミはね、ちょっと遅くなってからくるみたい。実習のレポート書かなきゃなんないんだって。」


「そうなんだ。あ…だからシンが見送ってたわけだ…。なるほど…。」


「ねえ、く~ちゃんはご飯食べた?」


「いいや。まだだよ。」


「バイク乗ってごはん連れてってよ。イイ感じのところないの…。」



「え…。あ…。そうだ。俺も行ったことないけど行ってみたいところがあるんだ!先輩から聞いたとこ」


ケンから聞いた店が頭に浮かぶ。


「へぇ~。そんなとこ知ってんだ。いまどきの若い子は…まったく…」


「若い子って…。ほら乗って。」

僕はバイクにまたがり、タンデムシートにリサを乗せた。


「わ~。」


子供のようにはしゃぐリサ。


「それじゃ、グラブバーつかまって…。」


といったのだったが…


リサは僕の腰の前に手を回してきた。


「初めてで怖いから、こうしていい…?」

5つ年上の女が子供のような不安な声を出す。

「しょうがないな…それじゃあ行くよ…。」

セルを回し…

僕はギアをローに入れる。

そしてゆっくりとバイクを発進させた。


少しずつ少しずつ僕はスロットルを開ける。

そのたびに落っこちまいとするリサはその柔らかな胸を僕の肩甲骨のあたりに押し当てる。

信号が赤に変わる。

減速をすると今度はりさは僕の方に身を任せてくる。


「バイクって楽しいね~。」


「え…なに…」


RPMのサウンドはリサの声を僕の耳に届けることを少し拒んでいた。

「バイクって…。」


「きゃ…。もう…。」


信号が青に変わり僕はバイクを発進させる。


会話が成り立たないまま僕たちは、レストランに到着した。

雰囲気のいいレストラン。

財布の中身は心配なかったが、正直ドキドキした。

身分不相応な気がした。

うす暗く、ほんのりとした光の中で食べるオーガニック料理は、僕のマヒした味覚ではほとんど味がしなかった。


小1時間くらい経っただろうか。


僕たちは食事を終えると僕は外に出た。



「ねえ、これからどこか行く?」

僕がきくと…

「えっと…じゃあ、公園でまったりしたいな…。」

リサが言う

「オッケ~。それじゃあ乗って…。」

公園に向かい再び走り出したバイク…。

ゆっくりとゆっくりと…

キキッ…

公園についてリサをバイクから降ろした。

「あ…ブランコ乗りたい!」


リサがおもむろに走り出す。


なんだか不思議な感覚であった。

「ねえ、私ブランコに乗るから後ろから押して~。」


「なんで…。」



「いいじゃない。ほら・・ね」


「わかったよ。行くよ…」


僕はブランコに乗ったリサの背中を押した。


思ったよりも華奢な背中だった。

細くて、でも柔らかくって…。


「まったく。僕の方が年下だよ。立場逆転じゃん。」


「いいの。今日はく~ちゃんが男の子で、私が女の子の日だから。」


「どういうこと?」


「そういうこと。」


「何だよそれ。」

クスっとリサが笑う。

しばらくブランコをこいでいたが、リサは地面を足につけ、ブランコを止めた。


すると僕に向かってこう言った。


「ねえ、何かいうことあるんじゃない…。教習所で最後に会った日…。君は最後まで言えなかったこと。」



「それは…。」



「また言わないつもり。それでも男の子なの!」


「うるせ~。だから・・・俺は…その…リサのことが好きなんだよ。」


恥ずかしさのあまり僕は下を向いた。


「それじゃ聞こえないよ~。」

意地悪そうにリサが言う…。



「だから…俺は…リサのことが好きなんだって。初めてみた日から…一目ぼれした。毎日のメールが楽しみでしょうがないんだよ。それに…」



「わかったから。ありがとう。その言葉が聞きたかったんだ。こんなわがままな女の子でもいいの?大変だよ~。」

ニヤニヤしながらリサは言う。


「そんなんどうでもいいよ!とにかく…」


「ふ~ん。しょうがないな。いいよ。く~ちゃんの彼女になってあげても…。」









ええ


えええ~


「ホントに!いいの~。」



うつむいてコクリとうなずくリサ…。


しばらくの間の沈黙の時間が流れる。


「ねえ、そろそろ送ってってくれない?」



「うん、いいよ。」



僕は再びバイクにまたがる。


リサを後ろに乗せて・・・・。


いや、彼女を初めて後ろに乗せて。

心臓の高鳴りは激しい。

心臓が口から飛び出そうなくらい。


バイクを走らせること20分。

リサの止まっているホテルに着く。

「それじゃあ…。」


僕が帰ろうとすると…


「まって。その…イクミが来るまで時間があるから少し部屋でお話ししよう…。」


「え…う…うん…。」


リサは僕の手を引いて自分の部屋に連れて行った。

ガチャン…。


部屋に入ったリサは冷蔵庫を開け、缶チューハイを飲み始めた。


「く~ちゃんはバイクだから、コーラね。」


「てかどっち道、俺未成年だから酒は飲めないよ。」



「ホントに君は真面目なんだね。告白だってやっとの思いでしてくれたし…」


「それはね…。緊張するし…。」


「男の子なんだから、もっとガッと行かなきゃだめだよ。あ…真面目って言うより、チキンなんだ。臆病なんだね。」


「ちげーよ。誰が臆病なんだよ。」


「だってさっきから目、合わせてくれないし声も震えてるし…。君は臆病なんだよ・・・。臆病もの。」


くすくすとリサが笑う。


さすがに僕もカチンときた。

「うるさいな!からかうなよ!」


「じゃあ、臆病じゃないところ見せて。」


頭に血が上った僕は、リサの手首をつかんで僕の方へとグイッと引きよせた。


「それだけ?」


けろっとしているリサによけいにカッとなる。


顔を近づけて、クワっと目を見開き…


「これでどうだよ。」


「う~ん、少しはマシかな。でもまだまだって感じ。」


プツン…


僕の頭の中で何かが音をたてて切れた。

そして…


手首を持ったまま僕はリサをベッドの上に押し倒した。


ドスン…


するとリサは黙り込んでしまった。


「ごめん、痛くしちゃった?」


「ううん…。」


二人は折り重なるようにして、シングルベットの上にたおれこんだ。


足に絡まったシーツがすれる音。
リサの声と相まって僕に興奮を届けていく…。

明るかった街の灯りが1つ、またひとつと消えていく。
夜はどんどんと深くなる。

それはまるで、僕自信が感じたことのない、心地のいい世界に吸い込まれていくことを意味していたのだった。

2014年08月29日 イイね!

DREAM LAND

DREAM LAND





















それでは3番の方…





検定を始めます。




バイクに乗車してください。





僕はスタンドを払いバイクにまたがり、ミラーの調整を始める。




真夏の太陽が放つ肌に突き刺さるような日差し。

高原とはいえどじめじめとした空気が何ともいやらしく、顎を伝う汗がポツリポツリと400ccのタンクに滴り落ちる。

汗はネバネバした脂分を含んで…。


昨日までは我先にと牝を求めるセミたちの声が響き渡っていたこの広い大地であったが、今日はめっきりと聞こえない。


口の中には酸っぱい唾液でいっぱいだった。


朝ゴハンをからだは拒否した。


先ほど覚えたコースもぼんやりとしてくる。


早く終わらせたい、でもしっかりと合格したいという気持ちが心の中で、戦っていた。

自分との戦い、15分間の戦争がこれから始まる。

震える手でミラーを調整して、終わったととも僕は準備完了の合図をした。


カラ元気というか、やけくそになった僕は、右手を光を突き刺している太陽に相対するように、天高く上げたのだった。

勇気を振り絞った、僕の右の人差し指が太陽に突き刺さったと思った時に、発進せよとの号令がかかる。


ウィンカーを出し、後方を確認していよいよ発進させる。


まずはゆっくりと外周を回る。


最初の角を曲がると上り坂の途中でバイクを止める。

坂道発進の課題だった。

今までの教習ではミスをすることなく、クリアしていたためさほどは苦労しなかった。

いつもの調子でスロットルを開けてクラッチをつなぐ。

坂道を越えて左折をする。



ギアをローに落とし、クランクセクションへ。


ここも難なくクリアする。


エンジンハンガーがパイロンにコスっていないか不安だったが、CBは次のセクションへ行きたいと言わんばかりに、クランクをゆっくりと通り抜けていった。


セカンドに上げたままスラロームへ。


視線に注意しながら右へ左へバイクをひらひらと操る。

検定用のバイクだったかわからないが、普段乗っているものとはまた違う軽さを僕に与えてくれた。

その後急制動、八の字は難なくクリアする。



そして、最後にして最高難度の一本橋セクションに突入する。

いったん停止するという行為が僕にとってはとてもいじらしく感じた。


発進して安定した姿勢を取るのがとても難しいと感じていたからだ。



いよいよ停止線の前でバイクを止めようとした。


その時だった。


フロントブレーキを強く掛けたためか、バイクふらっと左に倒れそうになる。


まずい…

左足を支えにして、背筋に力を入れてバイクを起こす…。

ぐ…

ふん…


せい…










間一髪倒れることは免れた。


やばいやばい…。

少し落ち着こう。


深呼吸をし気持ちを何とか落ち着かせた僕は、狭路のに住む魔物と目をしっかりと合わせた。







ゴールは遥かかなた…


それでも行かなくては…


意を決して、一本橋と闘う。


乗り上げた瞬間、フロントタイヤがそっぽを向こうとするが、それに動じることはない。


初めて一本橋をクリアした時のあの場面を僕は浮かべた。


高原の女神が吹かせた風が見せてくれた、5歳年上の女の足を…







こんなときこそ使わなくては男ではないと思った。


自分のむっつりさに嫌気がさしそうだが、背に腹は代えられない。


ごめんよ…


心の中でつぶやく。



するとどうだろう。


肩の力がすっきりと抜け、頭に登っていた血が引いて行くのがわかった。


リラックスできているせいなのか、からだも少し軽かった。


アレほど長く感じた8秒間を、ほんの少しだけ短く過ごせたのであった。


最後まで気を抜かず。



やっとこスタート地点に戻ってきた。



バイクのスタンドを出し、ハンドルを切ってバイクを降りた。



「お疲れ様でした。それでは中に入ってお待ちください。」


やりきれるだけのことはやった。


そうおもい、ゆっくりと受付のソファーに腰を下ろす。


疲れがどっと出て目がうつろになった瞬間、急に僕を襲った。


「お~い、く~ちゃん!いけたんベ俺達!もう免許もらったも同然だよな!」


F1マシンのようなけたたましいシンの声で僕は我にかえる。



「まだ決まってねーだんベ。結果聞かないと納得できないよ。」



「だって俺達コケなかったし、途中で検定終わらなかったから平気だって!」



楽天的というかなんというか…


シンは自分の魅力全開でスキップしながら自販機のジュースを買いに行った。





「ほい。く~ちゃんの分も買ってきたい。飲んでよ。」




「さんきゅ。」



「のどかわいてたろ。これでスカッとさわやかに行こうよ~。」



するとしばらくして…



「これから普通二輪免許合格者の発表をします。対象の方は掲示板の前にきてください。」


教官の松野の声がした。

「よっしゃいくべ。!」




「ああ。」



僕は胸の鼓動が抑えられなかった。

受かっているのかいないのか…


「合格された方はここのボードに番号が出ます。受かった方は今回で終わり。残念ながら落ちてしまった方は補講を受けて再度ケン手の申し込みをしてください。それでは行きます…。」



どくん…



どくん…



体中を血液が駆け巡る。

それはえさを求めて泳ぐイワシの群れのように…。

「あ・・・あれ…」



教官・受付のスタッフがあわてている。


ひとりその様子を笑顔で見ていた松野の口から衝撃の一言…。


「ということは、全員不合格です!補講を申し込んでください!」


シーンと静まり返るロビー。



「なんて…ウソです~。今日の受験者は全員合格です!すみませんね。掲示板も私と一緒で年よりなものですから。反応が鈍くって…。不全で不全で。先漏れが激しくって。あっははは。」








パ~ン…。


僕の隣から大きな音がした。



そこには不敵な笑みを浮かべるシンの姿があった。


この音の正体は、シンの右手に握られていたブリックパックが跳ねた音だった。



「こんのくそじじぃ。ぶっ殺すぞてめ~!」



松野に向けてシンが突進した。


80キロの巨体が小さな初老の男に突き刺さろうとしていた。


すると次の瞬間…


「のわ…」


ケンカで負けたことのないシンが軽々と宙に浮く。


くるりと空中で一回転したシンは足から地面に着地した。


「みんな見たか。柔よく剛を制すとはこのことだ。バイクは力任せや気分任せで操ってはいけない。冷静にそして腕を磨いて安全運転で楽しんでください。それでは…」



おお~という歓声が巻き起こってもおかしくない光景だった。


僕と大して体つきが変わらないのに…


「か~。おっさんつえ~な。わかったよ。おれ腕磨くわ。」


シンがいつもの笑顔を取り戻した。


受付で必要書類を受け取る。

これを免許センターに持って行くことで、僕はライセンスを手に入れることができる。

しかし、ふとひとつのことがよぎる…

ここでリサとお別れとなってしまうのでしまうのではないかということ…。


はっきりと伝えておかなくてはならない。


せめて友達からでもいい。

いや、出会って2週間しかたっていないのだが…


毎日のメールのやり取り。



返信が遅いだけで、気持ちが暗くなり不安になった。


絵文字のない文章を見るとため息が出る。


ここまで女の子にドキドキしたのは初めてなのだから…。




リサ…














「おい、あれイクミちゃんとリサちゃんじゃね?」


シンがいう。


「お~い。お疲れ!ねえねえ、きいて!俺達、免許とったんよ!」



「お疲れ。ってことは今日で最後でしょ。うれしいやら何やら…」


イクミが答えた。


「何だよそれ。てかさ、教習終わってバイク買ったらみせるからさ、どっかいこう!」


シンが言う。


「全くあんたはしつこいね。しつこい男は女の子は引かれるよ~。ねえ、リサ。」


「う…うん。まあね。」


何か浮かない表情をしていた。


ニコッと笑ったイクミはシンの腕を強引に掴んだ。

「ちょ…おっぱいが肘に当たってるんだけど…。」

パカン…


「うるさい、このエロガキ。ほら、どこへ連れてってくれるの。ほら、あっちに地図があったから見に行こうよ。」



「ちょ…お~い、く~ちゃんはどうするんだよ。なあ!」


僕とリサはイクミに引きずられるシンを見送った。



すると、リサはプルっとしたくちびるを開けて言った。



「ちょっとこっちきて。」


「うん。」


僕は付いて行った。


連れて行かれたのは2輪車の車庫の裏だった。


「今日でお別れだね。ありがとう。夜景見たのとかいい思い出になったよ。」

リサが言う。

「こっちこそ。」

僕が返す。

「じゃあ、元気でね。って、言うかと思った?あのさ、今日で教習は終わりかもだけど、俺単車の免許取ったら東京に遊びに行くよ!」


「それって…。」


リサの視線が僕の瞳に飛び込んでくる。


「まだまだ話したいことあるし、それに…それに…」


僕は言いたい言葉が出てこない。



「ちょっと待って!虫が前髪に止まってる。取ってあげるから動かないで。」


虫が少し苦手な僕はシュッと身をすくめる。


思わず目をつむって頭の高さをリサの手の届くところに持って行った。


前髪に手が触れた…


え…



しばらくすると僕の左のホホに柔らかいものがそっと触れた。

それはこの世のものとは思えない柔らかさだった。

ホホに触れた優しい感触。

触れた瞬間のかすかなリサの吐息と相も変わらない髪の香りが僕を刺激する。

まさか…

思わず僕は彼女を見た。



「もう。なにオタオタしてるの。今度会うときはきちんと言ってよね。また連絡するから。バイバイ。」

細くのびた白い足と、ウェーブがかかった後ろ姿を僕に見せて、リサは帰って言った。


僕は立ちつくしてしまった。



生まれて初めての感覚。

足が棒のようになっていた。

高原の風が周りの木々を揺らす音が聞こえていた。


ただでさえ忘れることのできない16歳の夏の合宿が終わりを告げたのだった。














そして数日後…



僕とシンは免許センターにてバイクの免許を交付され、晴れてライダーとなった。


「よっしゃ~。免許取れたな~。そうだ、く~ちゃん、おれんちこいよ。いいもの見せてやる!」


「いいものって、おまえバイク買ったの?」



「ピンポ~ン。買ったっていうより、兄ちゃんの知り合いの人がしばらくバイク乗れないから、メンテナンスがてら乗ってくれだってさ。」



「え~!うらやましいな。俺なんかこれからバイトして買わなきゃだよ。」


「そんなく~ちゃんに吉報があるんだよ。まあ、いいからいいから。とりあえずいこう!」




そう言われてシンの家についていった。




「ただいま~。ケン兄ちゃん、免許取れたよ~。早くガレージ開けてよ。く~ちゃんもいるんだからさ。」


バッタのようにぴょんぴょんシンが跳ねて玄間の中に飛び込んだ。


「おう。今行く。まってろ~。」


ケンがひょっこりと表れた。


「おう、く~ちゃん久しぶり。あれ、なんか大人になったんじゃない?」


「それは2年たてばなりますよ。」



「ふ~ん。ちょっと気になるけど…」


そういってケンはガレージのカギを持って外へ行く。



ガラガラ…



ガレージを開けるとそこには2台のバイクが置いてあった。

レーサーをほうふつとさせるマシンのフォルム。

タンクにささる掃除機のようなホース。

眼前の計器には20まで振られたタコメーターが鎮座する。

ちらりと見せるごついフロントフォーク…。

リアはシュッと天を仰ぐ。

「これが俺の!ZXR250って言うんだ。ノーマルだとカウルが付いているけど、これは取っ払ってあるみたい。ハンドルはバーハンにしてあるから、ネイキッドと同じだな。」





「ほら、こっちがく~ちゃんのだよ。と言っても俺のバイクになる予定だったんだけどね。」


形こそCBそっくりであったが、少し小柄であった。

タンクには天高く跳ねあがる馬のエンブレム。

丸みを帯びたタンクとテールはどことなく色気を放っていた。

こちらの計器盤にも20まで振られたタコメーターが座っている。

小さくまとめられたエンジンから伸びた細いマフラーが印象に残った。






「これ…ばりうす・・・?てか俺のって…



「バリオスだよ。こいつは見てくれは走りと関係なさそうだけど、ZXRのエンジンとおんなじ系統だからブチ回るし早いんだよ。RPM管入っているから。」












「は…意味がよくわからないし、第一おれお金ないし。」



僕はきょとんとした。



ケンが言う。

「く~ちゃん、もちろんタダではないよ。これ、20万で下してあげるから、バイトしてお金貯めておいで。でも今日はめでたいから、その辺流しておいでよ。」


「いいんですか?」


「もちろん。ほら、エンジンかけてみな。」


僕はセルを回す。


フォン…

ボボボボ…


何だこれは…


CBとはまるっきり違うぞ…。

ちょ…

「なあ、くーちゃん、百聞はなんとかって言うから、その辺流しに行くベ。」

「おう。」

僕とシンはこぶしを突き合わせるいつもの儀式を済ませ、バイクにまたがる。

キーを右へ回し、オンに入れた。

セルを回す。

図太い音とともにクォーターマルチのエンジンが目覚める。

僕はギアをローに入れ160キロの物体を動かす準備をする。

クラッチを離して走り出した世界は、まさに夢のようだった。






アクセルを開けるたびに、エンジンは応えていく。

ギアをセカンドからサードに入れていく。

バイクはどんどん加速していく。

風はどんどん強くなる。

生ぬるい風がシャツの襟元から僕の体に滑り込んでくる。

排気音はだんだんと薄れていく。

歩道のケヤキの木はまるで影分身をするニンジャのように次から次へと僕の横を通り抜ける。

体験したことのないスピード。

今まで見ていた景色なのだろうか。

本当にここは自分が慣れ親しんだ町なのだろうか。

全てが全て新鮮だった。


夕陽が照らすアスファルトは太陽の光を吸いこみ、僕たちに夏の暑さを届ける。


うだるような暑さと夏の風。


今まで感じたことのない爽快感をからだ全身で受け止める。


信号が赤になりバイクを止める。


ボボボ…


250とは思えない太い音。

信号が青に変わると再びギアを入れて走りだす。

アクセルを開けるたびにバイクは僕が体で感じる熱い空気をたっぷりと吸いこみ、タンクのガソリンを燃やして前へ前へと走り出す。


流すだけだから行先なんて決めていない。

気の向くまま、思いのまま、4気筒サウンドを響かせて、僕たちは走っていくのであった。


2014年08月04日 イイね!

高原の女神さま

高原の女神さま















前回までのあらすじ


僕は川端孝太郎。みんなからく~ちゃんと呼ばれている。
中学時代、問題児であった親友の面倒をみるため職場体験にバイク屋についていくこととなった。
この問題児シンは兄貴の影響で、無類のバイク好き。
僕はこの体験を機にバイクに興味を持つようになった。
そして16歳の夏。
いよいよバイクの教習が始まったのだった。


高原の風薫るところで合宿免許を取りに行った僕とシンは、そこで2人の女子大生


リサと
















イクミと出会う。

















ひょんなことからリサとメールのやり取りをするようにもなったのだが…




















ガタン…




バタン…





フォーン!!




夏の入道雲から太陽が顔ををのぞかせる空の下、セミが高らかに声をあげ鳴いている高原に、バイクの空ぶかし音がさく裂した。













「おい、大丈夫かな…。」


教官の松野が僕の所へ早足で駆けて来る。


「大丈夫です!でもどうして…」


目の前にはまっすぐと伸びた1本の道。

バイクに乗っていなければさほど長くはないが、またがってみるとそれはそれはとても長く感じた。


教習生の中でもつまづく人がいるであろう、一本橋。


僕も例外なくつまづいていた。


最短時間で免許を取りたい僕の気持ちをあざ笑うかのように、渡りきることを拒否しているように思えた。


「君は視線が近いからうまくできない。肩の力も入っている。それだと渡りきるのは難しい。一つ一つでいいから着実にこなそう。私も君にハンコをやってひとりでも多くのライダーを増やしたいからね。でも、ちゃんとできるようにならんといけないよ。」




にっこりとほほ笑む初老の男の笑顔はとても優しかったが、言葉には少し重みを感じたのであった。



僕は考えた。


どうしよう…



そうだ。



余分な力を抜いて軽い気持ちでやってみよう。


目線を高く…。


僕はバイクに乗っていない。


お風呂に入っている…


リビングのソファーでくつろいでいる…



ようし…



停止線でバイクを止めた。


後方確認をし、ギアをローに入れる…



カタン。



フロントタイヤが細く長い一本道の入り口に入った。



カッタン…



続いてリアタイヤも乗っけることができた。




15メートルの道のりを7秒間と言う時間をかけて渡る。



この7秒間に関しては、生まれてから16年間で一番1秒の重みを感じていた。



お…




お…



あと少し…




フラ…



あ…


ガタン…



あ~…






あと少しのところで、脱輪してしまいわたることができなかった…。




「苦戦しているな~。よし。これから2回続けて渡ることができたら、ハンコをやろう。駄目だったら補修だからね。」




「はい。」





緊張のあまり手が、足ががくがくふるえている。



どうしよう…




まだ一度も成功していないのに…。



停止線にバイクを止める…。



後方確認するのにも関わらず、思うように後ろが見えない。



それでも僕は1本橋に挑戦をせねばならない。


よし。



ふっ…



心気を丹田にこめ、精神を統一させた。




今までも多々このような場面はあったが、精神統一のおかげで修羅場を乗り越えたんだ。



松野さんの言葉を頭に入れて…



カタン…




一本橋に差し掛かる。




目線を遠く、目線を遠くだぞ…



その時だった。





1台の教習車から、リサが降りてくるのが見えた。



あ…

リサちゃん…



かわいいな~…



ようし、俺はあの子を見続ける、そうすれば7秒後にはきっと渡れる…



徐々にバイクは進み、ちょうど中間に差し掛かったころだろうか。



高原の女神が僕にほほ笑んだ。





きゃっ…











おお~…



僕は目を見開いた。


見える…



見えるよ…


見えてるよポコさん!!!












な~に~見ちまったな!




男は黙って、ガン見!



男は黙ってガン見!






太ももと…



黒に紫のレースがしたためてある布のようなものが…




一瞬の出来事だったのかもしれない。




16歳の僕には刺激が強かった。




5歳年上の、大人の女の白いふとももはすっと伸びていたが、緩やかなカーブを描いていた。
僕が見たことないような絶景がそこには広がっていた。




う…



まずい…


分身が…



僕の息子様が…







思わず僕は腰を引いた。



するとどうだろう。



シートの前にぴったりと座るよりも二ーグリップがしやすい。



カッタンカッタン…



お…



無事にわたることができた…



高原の女神さま…



ありがとうございます。


僕は、初めてこの難関をクリアできた。



一度体で覚えたことは、忘れない。


あの光景とともに…



2回目も難なくクリアできて、僕は無事にハンコウをもらうことができた。



「しかし、君は本番に強いんだな…大したもんだよ。高原の女神さまが味方したんかな~…
なんてな。いや~バイク乗りはちょっぴりキザな言葉をはっしてしまうんだな~。はっはっはっ。」


小さい男の豪快な笑い声を聞いていたが、僕はまんざらでもなかった。


「いや、女神さまはきっといますよ。」



「その返し方…。きみもバイクに乗るべき人間だな。まあ、これからスラロームとかいろいろやって、見極めやったら、1段階が終わるからな。他は大したことない。君ならできるから、明日も頑張ろう。」




僕は、ちょっとした自信を覚えて揚々と宿舎へ戻っていった。




洗面道具をもって、風呂へといこうとすると…



「よ~く~ちゃん。これから風呂?俺も行くよ~。」


相変わらず甲高い声でシンが現れた。




きていた服を脱ぎ捨て、僕たちは湯船につかり、今日一日の疲れを癒していた。





「見てたんかよ。まあ、俺は本番に強いからね。」



平然と装う僕だった。



「すげーよな。さすが俺の相棒じゃん!風と戯れる友達同士じゃんか。てかさ、く~ちゃん早く女作れよ。本番に強い男はもてるぞ~。」



「何だよそれ。」



「またまた~。なにカマトトぶってんだよ。本番って言ったらこれしかね~だんベ。」



ぺろりと舌を出して、右目でウィンクをしたシンが、右手を差し出す。



人差し指と中指の間に親指を入れた状態で…



「それ、何のサインだよ。わっかんね~し。」



「そうか。女を知らないお前なら無理もない。教えてやろう。アレだよアレ。セ…」





「いわせね~よ。」



「何だよ。いわしてくれよ~。てか最近ノリがいいじゃん!いいことでもあったのか~?」



「別に。おい、そろそろ巨人戦始まるから出るベ。」




「おう。確か今日の先発は内海だったよな。今日は勝てるぞ!」




「ああ。ゆっくりみるべ。」










風呂からあがり、テレビをつけると巨人戦の中継が始まっていた。



「お…く~ちゃん、今日は内海絶好調じゃん!ここまでゼロ行進。しかも8回までで三振10個だってさ。」




「あ~。すげーな今年はタイトルいけるな。今夜も巨人が勝ったな。」



「ああ、間違いない。」


試合は2-0のまま進み、最終回の前のCMに突入する。


ビールをおいしそうに飲む男がテレビに映し出されたその時だった。



ブ~ン…ブ~ン…



ケータイ電話がメールの着信を知らせた。



開けてみると、リサからのメールだった。


なになに…




       お疲れ様~(*^。^*)

今なにしてるの~?
私はイクミとテレビ見てるよ~(^o^)
 
イクミったらおじさんみたいで、ビール飲みながら巨人戦見て大騒ぎ(笑)

私は私で缶チューハイ飲んでちょっと酔っ払っちゃって…。

       ゆっくり休んで…

       明日も頑張ろうね(≧∇≦)!!!
                 

僕はとてもとても昼間のことは言えないと思いながらも、それなりの答えを返そうと考えていた。



CMが終わり、いよいよ巨人の勝利を確信していた。



しかし、運が悪いことにピッチャーはランナー二人を背負っていた。



一打サヨナラのピンチ…



そして、4球目を投じた瞬間…



相手選手のバットがボールを捕らえた。



快音を残し、バックスクリーンにボールが着地した。




痛恨のサヨナラ負けだった…



「あ~。打たれちまったよ。マジか…」


するとシンのケータイが着信を知らせた。


「お…イクミちゃんからだ。へっへ~。連絡先聞いて正解だった。また外でお話しできるのかな。そうだ、今日はあの見晴らしいいとこに連れてこう!」


僕は少しドキドキした。


巨人戦見て絶叫してることと、リサに会えるかもしれないという期待と…


「はいはい。シン君でっすよ~」



「はいはいじゃね~よ。おい!打たれて負けちまったじゃねーかよ!このおとしまえどうつけるんだよ、あ~!?」



ケータイが壊れそうなくらい大きな声が聞こえてきた。


「おとしまえって…落ちついてよ、いくみちゃ~ん。」 


「落ち着いてられると思う~?ゲーム差が縮まったじゃね~か。ようし、これから反省会な。この間のところにすぐに集まるように!いいな」



「はいは~い…」







「やべ~。この間のとこに来いだってさ。でもまあ、いくんベ。ひょっとしたらリサちゃんも来るんじゃないの?」



「そ…そうだな。よし、行こう。」 




僕たちはサンダルに履き替えて外へ出た。


喫煙所のあたりですでにリサとイクミはいた。


二人ともパジャマを着て…


「く~ちゃん、パジャマだで。やべ~んな!」


「ああ…」



するとイクミがこちらに気づく。


「おせ~ぞお前ら。先輩待たすんじゃね~よ。しごいてやっカラな。」


イクミが吠えた…。


「ちょっとイクミ、飲みすぎだって。ごめんね。」 


リサがすかさず言う。


「いや~内海で駄目だとなると痛いよな~。ま、明日は大丈夫だからね~。ひゃっひゃっひゃ…」


シンがいつものテンションでいうと…


突然イクミがシンの胸ぐらをつかんだ。


「てめ~、何笑ってんだ!一戦一戦が戦いなんだからな。命かけてやってんだよ。わっかんね~のか?」


「ご…ごめんなさい。」


あのシンでさえキョトンとしてしまう勢いだった。

パジャマ姿を拝むどころではない。

そこからイクミの大演説が始まった。



しびれを切らしたシンが突然立ち上がった。



「あ!そうだ!く~ちゃん景色いいとこに行くベ。な、酔いもさめるから…」



「そうだな。」


僕も言う。


「ほら、イクミいい景色だってさ!行こうよ!」



「いい景色ぃ~?ようし、いくか…」



ほっと一息ついて僕たちは立ち上がろうとした。



しかし次の瞬間…



「やっぱやめだ。おい、く~ちゃんとリサで行ってきなよ。私、歩くん大変だからさ。」



「え~俺は~?」


シンがいうと…



「あ”~ん!?おめ~はここに残るんだよ。暗がりに女の子ひとり残す気か~。それにうちの話が聞けないってか?」


「はい。残ります。残らせてください先輩。」


「お~。おめ~見どころあるじゃね~か。たっぷりしごいてやっから覚悟しとけ。」


シンの顔が真っ青になったのがわかった僕だったが、リサと二人になれることで心臓の高鳴りが抑えられなかった。



「それじゃ、行こうか。」



「うん。」




僕とリサは先日の見晴らしのいい高台へと向かった。


そして夜景が見渡せる石の上に僕が先にひょいと登る。



「ちょっと、登るの大変だから手を貸してよ。」



え…



いわれるがままに僕は手を差し出した。



リサの手は小さくて、温かくて、とても柔らかかった。


手の甲はしっとりとして、僕の手は吸いこまれてしまうかと思うくらいであった。



石の上に座る。


僕とリサの距離はわずか10センチほどだった。


お酒を飲んでいるせいか。


リサの顔はほんのりと桜色になっていた。


風がなびかせる髪からはシャンプーの香りが、漂っている。
そしてほんのりとアルコールの香りが加わって…


思わずリサを見ていると…


「もう、見ないでよ。すっぴんなんだから。」


といった。


僕は、とっさに言った。


「普段とあんまし変わらないじゃん。」



「そんなことはないよ~。お世辞言ってくれてありがとう。うまいね~」



「お世辞じゃないって!ほんとだって!」



「そんなにむきにならなくっていいよ。まったくかわいいんだから。」


「うるせ~やい。てか、イクミさん大丈夫なん?」



「あ、アレいつもだから。てかイクミってすごいんだよ!高2の時にね、ソフトボールでインターハイにでてベスト4だったんだってさ。だからあんなに熱いんだよ。」



リサが言った。


「なるほど。体育会系か。」


「そう。私だってイクミと友達になって、だいぶ明るくなったんだから。」


「へぇ~、そうなんだ。」
しばらくそんな話をすると…




「そういえば、リサちゃんは教習は順調?」



「うん。悪戦苦闘してるけどね。」



「いや、俺に比べたらそんなのね…おれなんか…」




「知ってるよ。バイク倒してたもんね。大変そうだな~って思ったよ。」



「え…見られてたの…恥ずかしいな…」




「なんで?だって教習所なんだから、免許持ってない人が集まるんでしょ。しっぱいしたっていいじゃん。それに、倒してもまた起こしてやってやろうっていうキミの目、カッコ良かったよ。」


「え…あ…ありがとう。」



「あれ~赤くなってるの~かわいいわね、ぼくちゃん。」



「お…おちょくるなよ。」


「わかったわかった。てかさ、空黒くなってない?やばい感じがする。」



「確かに…」




リサの予感は的中した。



ぽつぽつと大粒の雨粒が垂れてきたかと思うと、一瞬で豪雨となった。






「やだ~。最悪。どうしよう。」




「とりあえずここから降りよう。ただ、下がぬかるんでるからな…あ…あそこに掘立小屋がある。そこへ移ろう。」



「うん。」



扉の付いていないトタン屋根の小屋は近所の人が雨よけに使っているのかわからないが、2畳ほどの広さしかない。そしてもちろん中には光が入らない限り真っ暗であった。



よく見えないものの、そこに入ってようやくリサのパジャマ姿を拝むことができた。







喜ぶのもつかの間…


パリパリ…



ズドン…



稲光の後に大きな音をたてた雷が、近くに落ちた。



「きゃ…く~ちゃん、怖いんだけど。もうちょっと近くに行っていい?」


「え…あ…うん。」



立て続けに雷は大地に突き刺さる。



スドン…


「きゃ…」



そのたびにリサは小さな悲鳴をあげて、僕の腕にしがみついてくる。


よほど怖かったのだろうか。

それとも少しだけではあるが雨にぬれたからだと気温の低下で寒かったのかわからない。

体は小刻みに震えている。


僕は、リサとの密着で緊張して震えている腕に力を入れた。

震えを抑え込んだ左手をちゃっかりリサの肩に回して…。

どこかいとおしい。


しばらくするとトタン屋根を叩いていた雨たちが、弱くなっていく。


どうやら入道雲は雨たちを連れて南進するみたいだ。


「お…雨雲は上がったみたい。戻ろうか。というか、怖い思いさせてごめんね。」


「ううん。大丈夫。」


リサはいった。



「今度は天気いい時にみんなで来ようね。」

僕は言う。


「え…う…うん。」


リサの微妙な反応…。


「どうしたの?もう雷なら南の方へ行っちゃったよ。」




にっこりと僕は笑って見せた。


「ううん、そうじゃないの。雷なったでしょ。その時私の肩を…」




僕はしまったと思った。


調子に乗って取り返しがつかない…


やっちまったぜポコ先生…



なんて思うことはみじんもなかった。




するとうつむいた顔から上目づかいで、困った僕の顔を見たリサが言った・・・。



「なんかね、君って面白いんだ。にっこりと笑った顔は少年なのに、きりっとした顔は男の表情なんだね。それに、腕もたくましくって、私を包み込んでくれたというか、何というか…かと思うと石鹸のにおいがするあたりはまだ子供なんだよね。」



「な…それって誉めてんの。」



「う~ん、わかんない。まあ、でも雷が行ったからよかったね。」



「うん。あ、下ぬかるんでるから気をつけてね。転んでかわいいパジャマ汚したら大変だよ。」



「そうだね。でも、私きちんと歩ける自信ないな…」



「う~ん、どうしたらいいか…」



「もう、ほんとにその辺は子供なんだから。こうやってほしいの。」



するとリサは僕の腕に自分の腕をからめてきた。


生まれて初めて女の子と腕を組む。


心臓が口から出てきそうだった。


それに左のひじがリサの右の胸とうまい具合に接触していた。


その柔らかさはとてつもなかった。

昔食べたペコちゃんのほっぺのような感触。
パジャマの隙間からは、くっきりとした谷間がその姿をのぞかせていた。


ひょっとして…


アレしてない。。。


そう思うと、きちんと歩くことができない。


「どうしたの?ちゃんと歩いてよ。」



「わかってるよ。でも、足場が悪いからゆっくりと…」



「ありがとう。君って優しいんだね。今度もまた二人でこよう。もっともっとおしゃべりしてさ。私、君のこともっと知りたいな。」



「え…う…うん。俺のことって…」



「何赤くなってんの。ほんとにかわいいというか…まさかエッチなこと考えてた?まったく。君くらいの男の子だったらしょうがないか。」



「そんなことないって!」



「わかったわかった。あ…シン君とイクミいるね。てか、シン君大丈夫かな。」



そういって僕の腕からリナは腕を外し、イクミの方へ行った。



そこにはぐったりとした様子のシンがいた。


「く…く~ちゃん…おれ…駄目だ…」



シンの足がプルプル震えていて、立っているのが大変そうだった。



よいの覚めたイクミが言った。



「いや~、私の悪い癖でさ、昔の記憶でついしごいちゃったよ。スクワット1500回やらせちゃった。ごめんね~。お詫びにおねいさんたちが今度大人の遊びを教えてあげるから許してよ。」



シンの足の震えが止まる…。


「約束だかんな!」



とたんに元気になったシン。


二人に別れを告げた僕たちはベッドに入った。


枕からはなぜだかリサの髪の香りがしてきたような…


左ひじの感覚がいつまでも残っているようなで、やっぱり今夜も眠れない僕であったのだった。



プロフィール

「やらかしました(((((((・・;) http://cvw.jp/b/2088116/40385510/
何シテル?   09/10 19:20
車は日産。 バイクはカワサキ。     4発集合管から放たれるエクゾーストサウンドにうっとりしている、硬派気どりの道楽者。 それが僕。。。 ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/4 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

リンク・クリップ

LAFセンサー&オーツーセンサー交換(122062km) 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/02/29 08:37:52
みんな大変だけど… 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/01/27 16:23:27
龍崎駈音さんのホンダ ホーネット250 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2015/06/02 18:45:42

愛車一覧

スズキ グース350 スズキ グース350
もう一度、二輪に乗る楽しみを見つけたい! 二輪車とはなんぞや… 原点に帰ろうとし、バリオ ...
スズキ アドレスV125 通勤快速足軽くん🎵 尻軽君と呼ばれぬよう気を付けます(笑) (スズキ アドレスV125)
グースをあちこち直しているものの、青空ガレージは、風の都合で作業が進まない今日この頃。 ...
カワサキ KSR110 カワサキ KSR110
訳あってバリオスを手放した後、どうしても2輪を降りたくないという思いと、バイクの勉強をす ...
カワサキ バリオスII カワサキ バリオスII
中免をとって初めて買ったバイクです。 バイクの楽しさ、バイクの厳しさ、そして女の子と自 ...

過去のブログ

ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation