クルマのデザインとして重要な順にと言うわけでなく、個人的に思い入れのある順で書いてます。
この一週間ちょこちょこ書いてたら、大作になってしまいましたw
何回かに分けようかとも思いましたが面倒なので一気に行っちゃいます、お付き合いいただければ幸いですww
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Mythos
この車について、本来なら説明はいらないですよね。
まあ、カーデザインにおける一つの金字塔ですから。
この車が発表されたのは1989年のTokyo Moter Show!
今では考えられませんね。もう、見たときには失神ものですww
すでに私はクルマとは別の専門に進んでいましたが、何といいますか、根本的な意味での衝撃を受けた感じでした。
説明不要とは言いながらも、思うところを少し書いてみます。
このクルマの具体的なアイデアとしてはこれ以上無く単純だと思います。ミッドエンジンのボディ後半「ヴォリューム」とフロントからキャビン前半までの「ヴォリューム」をサイドにとったアウトレットをきっかけにして交差させただけにすぎないことは一目瞭然ですね。
このデザインが成立した秘訣はバルケッタという形式だったことは、実例をみるとおわかりいただけると思いますので後ほど引用しますが、この時グリーンハウスというものを消し去ることが許された、これがコンセプトカーの「それ」たる所以でしょう。
何が言いたいかというと、本来はフロントセクション、グリーンハウス、リアセクションの3要素があるために複雑になるカーデザインの一要素をなくしちゃった。スパイダー、カブリオレ、コンバーチブル…これとバルケッタは違いますね。完全に削る。
とたんに機能を内包する「枠組み」がこんなにも明快に表現できてしまった、「形態は機能に従う」という近代の機能主義を日常のクルマには必要な機能を潔く省いたことでこんなにも簡単にしかも美しく実体化してしまう。
でも、削ったと言ったってバルケッタって伝統的に存在する形式ですからね。
あぁ、その概念ってクルマでもできたんだって言う驚きです。
(え、形態は機能に従うってそもそもが第一次機械時代、自動車などから始まった話じゃないのってツッコミは今のところ無しにして下さいww、これについてはもっと考える必要が有りそうですが…またいづれ)
ごく簡単に言うと私にとっては(年代に多きく関わると思いますが)クルマのデザインって機械だけのようなクラシックを別にすればそれまでそこまで機能/形態の明快な表現の実例ははなく、むしろ機能というものがスピード感や実用性のような次レベルの機能表現に置き換えられた上でデザインされてきたものがほとんどのように思えていたんです。
少なくともぱっと思いつかないんですね。
彫刻的に見せるためにはすべてをミニマムに削ぎ落として…もちろんディテールにも相当気が使われたようで、パネルは一体整形。グリルもルーバーも、円形のリアランプさえも無しです。つまり造形をパネルの継ぎ目やキャラクターラインやアクセサリに「一切」頼らないこと…マジです。
そして「サーフェース」と「ヴォリューム」の決定的な違い。
やや堅い言葉になってしまいますが、「クルマとしての可能枠」の中で近代の理念を象徴する記念碑的な彫刻を創ってしまったんですね。
さて、このMythosのデザイナーですが、まともな文献が手元になく可能な範囲で確認した限りでは、Pininfarinaに30年にもわたって在籍し元PininfarinaのCEO、現FIATグループのスタイル部最高位のLorenzo Ramaciotti氏が1988年にGMに就任後ほぼ最初期の仕事としてサインオフしたものということで間違いないかと思います。もちろんSergio Pininfarina氏の下で。
Lorenzo Ramaciotti 氏の作品歴とはそうそうたるもの。
ケン奥山氏も時系列からいって彼の下で勤務されていたわけですね。
私のいるような業種でも大人数でのデザインワークではチームリーダーやさらに管理職がいるのは当たり前ですが、特に製図版がスタジオから消えてコンピューター時代になると「それ」が誰のデザインなのかということがより見えづらくなっていく傾向だと思います。データはコピーができますし、一つの基本アイデアから展開してバリエーションを作る量とスピードが桁違いになりますので。しかし逆もまた有りで、デザインの世界では学生だって優秀なのはホント優秀なんです。きっと奥山氏も最初から優秀だったのでしょうね〜。
そこで比較したいのがこちら。
Ferrari Rossa Pininfarina Concept
Pininfarina 70周年記念モデルとして2000年にTorinoで発表されたこのクルマ、奥山氏に対してThe Best Concept Car of The Year awardが授与されているようです。
250Testarossaがモチーフだそうで、直筆スケッチにもこれを書き入れています。
しかし、個人的にはどう見てもMythosを参照しているようにしか見えませんw
だいぶ饒舌になってますが。
ベースがTestarossaから550Maranelloに変わって、「ヴォリューム」を前後入れ替えた。でもやっぱりバルケッタ。
(ちなみに実際に同年から448台のFerrari 550 Barchetta Pininfarinaがが販売されました。緊急用のスゴいソフトトップが備えられていたようですがw)
それにしてもRossaではエンジン位置の違いによる入れ替えが大成功したように思えます。ボリュームの扱いの単なる焼き直しに留まらず、現代FerrariやMaseratiに通じる数々の先見的なディテールをプレゼンできてますね。
思うには
こちらの方 が丁寧に解説されているようなトリマラン型というよりは、当初のQPに通じるように思えるマスクや、現代Ferrariにも通じるようなサイドのエアロダイナミクスオリエンテッドな感じ、2002年Enzo(Ferrari創業55周年)以降たびたび登場する半埋めリアランプ、縦に長いヘッドランプ、
最近よく見かけたようなフロントフードカットアウトも。
こちらLookSmartでモデルカーがあるようですが未入手
Ferrari La Rossa Ref.LS050
ちょっと欲しいです。
さて前述したMythosの悪例?を一つ。
本来のMythosは売られず今も博物館にあるそうですが、ブルネイのスルタンHassanal Bolkiah氏がスパイダーとしてPininfarinaにオーダーしたモデルが2台!あるんだそうで…これは見るに耐えませんw
こちらもMRでモデルカーあります。まあ、いりませんね。
Ferrari Mythos 'Sultan of Brunei' (Dark Blue)
Item# MRC.MR135B
MR COLLECTION 1/43
氏が同じ「人類」なのかどうかも怪しいぐらいではありますが、
こちらの「資産」 の項を参照くださいw
Fだけで400台もあるのなら、いろんな変わったオーダーをかけてるようで有名なのはこんなのとかw
456 Venice Estate
いくらでもディテールはあるんですが、すでに長くなりすぎてます。
しかーし、こっからが本題(ミニカー)ですw
Mythos のモデルカーって数多くありますし、レジンキットなんかも1/43だけで4社(以上?)もあるようなことらしく全部を網羅するなんてことはあきらめてますw
で、今回私が入手したのは2種
HOサイズ (1/87)
Euro model J1592
私はHOサイズが大好きでして、カワイイし、安いし、場所もとらない。
比較でiPhone置いときます。
初代ロードスターはMythosと同年の1989年発売だったんです。金もないのにこの年に即ハンコを押したw
もう一個は1/43
ダイヤペット25周年記念モデル No.185-01788
スケール比較もかねてキッチンスケールと、ターンテーブルみたいでしょw
すごい重量感で374グラム、無垢か?ならむしろコンセプトに忠実です、さすが!
ここで、リアスポイラーが2つ付いていることに注目です。
Mythos、実はリアスポイラーが可動なのです。
ぜひ、こちらをご覧ください。
動くMythos
VIDEO
VIDEO
もう最高ですw
おまけ
今手元にある「Pininfarinaの60年」という本ではMythosはほぼ最後のページ。
写真のようにこの本は私のまだまだ若かりし頃、Sergio Pininfarina氏にサインをいただいたものです。
私が選んだページは512SでもMythosでもなく037、今となってはちょっと残念なんですが、意図としてはレーシングカーだって美しいのがすごいんだゼ、と血気盛んな時だったんですね、たぶんww