今回は重要保安部品を分解し、ジャッキでの仮想1G再現状態で締め付けた。
ここで1G締め付けを解説。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2093767/blog/41875493/
サスペンションアームなどに圧入されるラバーブッシュ。
サスペンションアームを締め付けた実務経験者は分かりますが、たいていの場合、締め付けた状態でラバーブッシュが固定されます。
なのでジャッキアップした0Gの状態で締め付けると、着地した1G状態で、たわみます。
これが走行時サスペンションストロークでさらに縮むと、すぐに設計で想定した、たわみ量を超えるわけです。
たわめば亀裂が入りはじめ、すぐ「割れ」につながります。
サスペンションストロークの大きいドイツ車は、なおさらです。
「割れ」は非常にポピュラーな車検項目なので、この状態は非常によろしくはありません。
たわまないフリーフローティングなマウントブッシュであればスルー出来ますが、1ヶ所でもこのブッシュが採用されていれば、必ず1G締め付けが必要となります。
つまり車種によるサスペンション形式を熟知し、車種に見合った作業が必要ということです。
せっかく新品に交換しても、交換前よりも使用状況により1週間〜1ヶ月で亀裂を入れる結果となります。
とくに液体封入ラバーブッシュはウイスキーボンボンのそれのようにラバー自体薄いので、とくに多く採用するスカイラインやドイツ車には注意が必要です。
というよりも、むかしからスバル車にしろ、ごくごくフツーのことなんです。
私の考えではアライメント調整・測定など、タイヤホイール販売交換以外のサービスを提供するタイヤ専門店が、売り文句のために誇張しはじめたのがきっかけなのかな?と感じます。
一切付加価値ではありません、設計開発段階でメーカーが指定する基本的な整備要領です。
ここで例えば、あなたはいま手術が必要といわれました。
そこであなたはどう考えますか?
必要以上に、たくさん手術をすれば、どんどん健康になりますか?
どんな医師でも生活に支障をきたさないのであれば手術以外の方法をとります。
同様にわれわれは「故障している部品を交換する」「高性能なものに交換する」「定期交換指定部品」など以外、工場出荷時の状態からなるべく触りたくはない、どんな職人でも触ってしまうと触る前の理想的な状態は崩壊すると考えるのが本音です。
まさに板金塗装がそうで一度板金塗装すれば「修復歴あり」となります。
だから手術同様に交換する際は最低限の部品だけではなく、実務経験で同時に作業可能な交換時期が近い部品もその工程で交換します。
ディーラーや専門的な整備工場はお高い定説がありますが、これで都市伝説レベルなんだと証明出来、最終的にあるひとつの整備を1度で完成させた車と2度3度もかけて完成させた車とでは、後者ではほかの部品もみちづれに、あきらかに短命で高額となります。
ここでフツーの方ならピンと来ますよね?
「私の使用状況は1日24時間中23時間、左に一定の舵角で時速60㎞/hの状態が続きます」
そういうお客さまであれば、その走行状態で掛かる横Gの状態で組むことが、車両にとっての理想となります。
だからわれわれのレース車両では、それらを想定した最も理想的な状態で組んでいます。
急激な負荷が掛かり割れるのであれば、戻りも考え負荷を想定した状態で組む。
物事を柔軟に応用出来る力が必要とされます。
まさかとは思いますがインターネッツの情報を読むと、タイヤホイールを取り付け着地させて、規定トルクで締め付けるようなイメージの先入観をもってませんか?w
それこそ母親が陸運支局長秘書として当時から仕事してきた業者でもある、安全自動車のアライメントテスターG-SWATにかけながら調整するような?
キングピンまわりに荷重がかかろうが、たわみさえなければいいわけですので、逆にそこまで言い出して微調整する必要もありません。
リジッドラックでの作業なら必ずジャッキを使うはずですので、保険としてロワアームをジャッキアップさせ、1G締め付けのクセをつけると信頼性の向上につながります。
2柱リフトならアンダーホイストスタンドで。
これがさほど面倒な作業とは思えません。
くわえてBMWなどドイツ車のフロントストラットはキングピンにショックアブソーバーを挿入して締め付ける形式なんで、全体重(車両総重量換算55㎏・俺80㎏)で押し込んで締め付けてもFRフロントコーナーウェイト(前前軸重670㎏/2=335㎏・前/後:50.4/49.6)にはかないませんから精神衛生的にも非常によろしくはありません。
ゆえに作業前後の車高を測定する場合、フェンダーアーチから「タイヤ接地面」にではなく、フェンダーアーチから「車軸」までを測れば、分解しロワアームのジャッキアップで仮想1G再現する際、タイヤホイールの脱着作業を繰り返す必要がなくなります。
乗車定員フルの車両総重量なら、その状態で測定すればいいわけです。
たかが測定ですが担当者の作業を見れば実務経験値が一目瞭然となり、確実に保安基準に適合した業務を遂行できます。
以上をもとに整備工場の現場を例にします。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2093767/car/2495824/4932184/note.aspx
これは非常にまれですが、担当者の人格で面倒と判断したり、本当に分からずスルーしている場合。
上司が作業中の異変に気づき、すぐに改善させます。
万一上司も仕事で作業中のチェックが出来なくても(点検・試走・清掃・洗車を差し引いた)完成予定時刻や業務終了時刻前にチェックし、交代して指導しながらやり直す結果となります。
さらに繁忙期であれば担当者を厳しく指導し、上司が残業してなおしますw
つまりこの状態では世の中に出ません。
なので日本では整備工場の3人に1人は整備士が存在し、危険な状態の車両を即座にくい止めることが出来ます。
初めて扱う車種の場合はテストドライブ後に、目視での漏れやレンチをかけての緩みを再度チェックする。