
ことの始まりは今日の午後過ぎ。
私は連れ2人とT山に行って攻めていた。
NS-1の調子はよく、つい先日つけたばかりのRS125のIGコイルがいい仕事をしてくれ、上りもガンガン上った。
私達の他に単車で走りに来ている人もおり、その中に混じってテクニカルなT山を上ったり下ったりして攻め込んでいた。
その途中、広場で休憩していると遅れて来る予定の連れから連れのケータイに家に帰ったと連絡が入っていた。
そこで私たち一行はその連れの家まで行くことにし、私が一足先にその広場から飛び出した。
下りのT山は恐いけど、私は結構なペースで攻めながら下った。
その途中で遅れて来た連れとすれ違い、私はUターンして連れに「上に行こう」と合図し、なかなか下りてこない他の連れの元に向かった。
遅れてきた連れは私の遥か後方。
私は上りでもハイペースで走っていた。
そしてとある広い左コーナーに差し掛かった。
そこには向い側に単車のお兄さんがいたが、私は構わずバンクさせて颯爽とコーナーを駆け抜ける…
はずだった。
しかしバンクさせすぎたようでタイヤが耐えきれず、そのまま転倒した。
一瞬何が起きたか分からず、単車のお兄さんが「大丈夫!?」と言ってきて、私は手で大丈夫だと合図した。
しかし内心ではまさにパニック状態。
連れが皆集まってきて、走りを楽しんでいた他のお兄さん達も集まってきた。
次第に視界が壊れたテレビのようにボヤけていき、気分が悪くなり、クラクラしはじめ、耳が遠くなっていった。
その時に一人のお兄さんが「座っとき」と言ったのを皮切りに、私は力なくへなへなと座り込んだ。
お兄さん達が話しかけてくるが、正直そっとしておいてほしかった。
一応外見上では普通に話していたが、もう体力や精神的に限界だった。
話すだけでも精一杯。
ケガこそ左足の膝を擦り剥いただけで済んだものの、転倒したことによるショックがでかい。
左を向くと今まで跨っていた愛車が連れに支えられている。
スタンドが曲がってしまい、使い物にならなかったようだ。
ただこけただけなのに、車体の半分から後ろがヒドい状態になっている。
画像でもわかるだろうが、前タイヤが正常な位置である。
転倒の瞬間を目撃していたお兄さんが言うにはどうやらキャッツアイにヒットさせてしまったらしい。
その衝撃でフレームが曲がり、リアタイヤがあらぬ方向に曲がってしまったのである。
薄い意識の中で私は絶望した。
もう走れない…。
そのまま時は流れ、他のお兄さん達は下に降りて、私達だけになった。
連れの一人は親父さんがバイク屋をやっているので、お願いしてトラックでとりあえず連れの家まで運んでもらうことにした。
だんだんと意識がしっかりし始め、やっと視界も元に戻った。
そしてそのトラックを待っている時にまじまじと自分の愛車を見つめた…。
個々のパーツはほとんど生きており、部品取り車を買ってくれば十分復活出来るようだった。
しかし私はこの車体に愛着があるし、そんな事をしてたら手間がかかる。
今さら一から元通りに復元させる気力はもうなかった。
初めて自分で買ったエンジン付きの乗り物。
最初、無断で買ったのがバレた時には親に激怒され、一時はどうなることかと思った。
でも今では自由に乗り回すことができ、暇さえあれば磨いたり整備したりしていた。
この前日も今日のためにチェーンを洗浄・注油し、汚れていたアンダーカウルを磨いてやった。
それが今では変わり果てた姿になって連れの家に置かれている。
私はトラックに乗って連れの家に行き、降りてトラックに載っている愛車を見てたまらず号泣した。
自分が未熟なばかりに…。
こうして記憶を辿ってキーボードを叩いてたらまた涙が溢れ出てきた。
連れにも「無事なだけよかったよ!命があるに越したことはない」と励まされたが、正直その時の気分ではそんな事より愛車の方が無事であってほしかった…。
今までバイト代をつぎ込んで手塩にかけて育ててきた相棒。
これから強化クラッチを組もうと思ってキットも買っていたが、もうその封をあけることはないだろう…。
もう新しいバイクを買う気はない。
今ここでまた買ってしまうといよいよクルマを購入するための資金がなくなってしまう。
もう自動車学校入学目前で今さら同じ原チャを10万20万出して買うバカがどこにいるのか。
ホントはクルマ買ってもそのまま所有し乗り潰す気でいたが、こんなに早く自らの手で潰してしまうとは思わなかった。
今年の1月に購入して色んなトコを走ってきた。
行くアテもなく、がむしゃらに走る事もしばしば。
でもNS-1に乗っている時が一番気分が良かった。
しかしもう走れない。
心臓は動くが、基礎が逝ってしまった。
これからどうするかは具体的には決めていない。
そのまま連れの家に置いておくのもまずいし、かといってばらして部品取りにするのも可哀そう。
いずれは決断を下さなければならないが、まずは自分がしっかりしてからでないと後々後悔してしまいそうだ。
今まで俺のヘタクソな運転に耐えてくれてありがとう。
お前がいてホントによかった。
俺の事は恨んでもいい。
でもこれだけはわかってくれ
俺はお前が好きだ!!
最後に言うよ。
さようなら
そして、
ありがとう。