未だ着地点の見えない
三菱自動車の燃費不正問題。
二度のリコール隠し問題でどん底まで失墜した信用を
10年以上の月日をかけてやっと少し取り戻しつつあった三菱。
そこに持ち上がった今回の問題のダメージは計り知れません。
モーターファンとして三菱の存続を願わない人はいないでしょうが
いかんせん
「仏の顔も三度まで」。
正直今回ばかりはどうなっても止むを得ないと思います。
あの苦しい時期を乗り越えてきた全社員さんたち・・・
とりわけ全く新規来店の無い中、誠心誠意、既存客への対応に努めてきた
販社の営業マンたちの心中を思うと、つくづく残念でなりません。
20日の問題発覚時の記者会見から、26日国土交通省への報告後の会見。
そして昨日の決算報告での質疑応答と、連日相川哲郎社長が矢面に立って
問題を追及するメディアへの事情説明に追われています。
迅速でこまめなメディア対応は一見、
不祥事発覚時の企業の危機管理として正しいように見えますが・・・
会見の内容をよく精査してみると、どうもあまり上手く対応出来ているとは思えません。
今回の燃費不正の概要は二点。
「燃費試験で使用する走行抵抗の算出に、国が定めたのとは違う方法を使っていた。」
という問題と
「複数回行うテストの二乗平均を取るべきところを、良いデータだけを抽出して使用していた。」
という二つの別々の問題が同時に発覚しています。
まず前者に関しては、道路運送車両法で
走行抵抗の測定法は
「惰行法」を用いると指定された1991年当初から
それまでの慣習だった
「高速惰行法」での計測を続けていたという問題。
25年に渡る法令無視(違反)は、確かに悪質ではありますが
これは燃費の
「偽装」というよりは
「手抜き・杜撰」というべき事柄。
例えるならある物の長さを測るのに、ノギスを使うべきところを
物差しを当てて計測していたような物でしょうか。(?)
ところが後者の明らかな偽装行為と一緒くたに発表した物だから
メディアの受け取り方は
「25年も前から燃費を偽装していた!」となってしまった。
不祥事を公表するにしても、やり方が下手くそです。
そして後者に関しては意図的な数字の操作が行われていた訳ですが
肝心の、この改竄によって実際にどれだけ燃費が偽装されたのか?
(本当の燃費はどのくらいだったのか?)と言う所が未だ判然としない。
最初の会見では
「5~10%の乖離がある」と発表されましたが
二回目の会見では
「29.0km/lまでは達成の目途が立っていたが
目標の29.2km/lを達成するために偽装が行われた」との説明へと変化。
これではたった0.2km/lの為に偽装が行われた事になり、辻褄が合いません。
だってこの時の競合車のクラストップがムーブの29.0km/l。
単独トップですらないものの、すでにクラストップに肩を並べていた事になる。
たった1%の燃費改善の為に偽装にまで手を染めるものでしょうか?
会見では
「全ての車種の試験が終わるまでは結果を公表できない」としていますが
これでは何の為に急いで会見を開いたのかわからない。
迅速な対応で誠実な所を見せようとして、全く逆効果になってしまっています。
だって日産から走行抵抗についての確認を求められたのは昨年12月。
捜査の結果不正があったと明確になったのだって4月13日なんです。
どうせ時間が空くのだったら、全てテストして明確なデータが揃ってから
「調査の結果、何%の燃費偽装がある事が判明しました。」とやればよかったのに。
既に三回、それぞれ短くない時間を会見に割いているにも関わらず、肝心な事は全て
「分からない」 「調査中」 「外部の調査委員会で原因を究明していきたい」
誰が偽装を指示したのか?も分からない。
性能実験部の当時の部長が指示を認めたとの報がありましたが、
その後一転して曖昧な回答に終始。
そもそも考えてみれば燃費が目標に達しないのは性能実験部の責任じゃない。
独断で燃費を改ざんする謂われも筋合もないわけです。
何故長年にわたって法令と違う測定法が使われ続けてきたのかもわからない。
リコール隠し問題の時に、全社的に
「襟を正して信頼を回復しよう」という動きがあったはず。
何故その時に
「今までコレで良いと思ってやってきたけど、この機会にちゃんとやろう!」
とならなかったのか?誰がこれまで通りで良いと判断したのか?
相川社長に至っては高速惰行法自体を
「そういう物があるのを知らなかった。」そうな・・・・
「そういう実務的な事は通常、経営陣にまで報告されない。」との事。
たしかに会社の実務を隅々まで把握している経営者などいないでしょうけど、
外部から招聘されたプロ経営者ならともかく、相川社長は
初代eKワゴンの開発まで手掛けた、謂わば現場たたき上げの人物。
その人が知らないって・・・
「逆に何なら知ってるの?」と聞きたくなってしまいます。
要は不正を働いたことはもちろん愚行ではあるけれど
問題発覚後の対応も決して褒められたものではないという事。
どうせ対応が一段落したら責任を取らなくてはいけないんだから
相川社長にはここは死ぬ思いで頑張って頂きたいと思います。
余談ですが、この記事・・・
「日産が本当につくりたかった軽自動車」
全く持ってその通りだと思います。
Posted at 2016/04/28 02:49:43 | |
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