プロローグ
2週間前に届いた書留を開封せず机の上に放置。360のレストアで忙しくて細かいところには気が回らなかった。実は封筒の中身は・・・
我がインプレッサは前回のアタック以来まったく動かしていなかった。
前日にバッテリーのチェックとリアシートだけを外して準備しただけ。
洗車すらせず汚れたままだが機能には影響せずということで無視した。
またしても遅刻?
アタック当日、目を覚ましたのは午前5時過ぎ。
またしてもギリチョンの時刻となってしまった。4時半には出発したかったのに・・
適当に着る物を着て家を飛び出す。暖機運転もせず出発。ちょっとハイペースに。
八王子バイパスに差し掛かるとき、ETCが
「カードが装着されていません、ETCは使えません。」とアナウンス。
あわてて路肩により財布からカードを取り出す。が・・・
カードの有効期限が先月で切れていた。そうか、あの書留はこれだったのか・・・
財布の中身やクルマにあった小銭などを掻き集めた。なんと9500円しかない。
クレジットカードはすっかり忘れてしまい突然の金欠症に陥った。
ガソリンは取りあえずフルに近い状態。往復の高速料金などを計算し何とかなると判断。
八王子ICからだとどう見ても金額的にきつい。
あきる野インターチェンジを目指して車を急がせた。
新しき友
心配された天候は見事に晴れ渡り暑くなる予感が。
途中でコンビニに寄りおにぎり、パン、飲み物を調達。群サイを目指す。
受付時間には余裕で間に合った。ちょっと飛ばしすぎたか残りのガソリン約半分。
気温がかなり高く既にクルマの外気温計は30度に達していた。
受付を済ませパドックに移動し準備に取り掛かる。
今回は群サイのフルコース、タイヤの内圧が上がることを予想してかなり落とす。
F1.9、R1.7まで落としたがちょっと落としすぎか。
パドックで色々と準備をしていたらSTIの青い帽子とTシャツの親父さんがやって来た。
昨年のアタック最終戦以来何度かお見かけしたお方である。
「ど~も、チョンバです。」
「おお、チョンバさんでしたか、よろしくお願いいたします!」
ものすごく気さくで「分からないことがあればなんでも聞いてね」と。
今回は私の仲間の参加はおらず少々淋しいなと思っていたが、何だか嬉しくなった。
チョンバさんにはその後いろいろとクルマの面倒を見てもらうことになった。
そうそう、前回第2戦でお世話になった青スペC氏も元気に参戦されていた。
互いの健闘を誓って握手で挨拶。あまり無理をしないでねなどと言葉を交わす。
フリー走行
気温はますます上がり32度。暑い。
木陰に入ると高原の風がさわやかで気持ちいい。やっぱりテントは必須。
私は暑さから逃れるため常に木陰の芝生に腰を下ろして水分を補給しつつ体力を温存した。
フリー走行はロングコースを2本続けて行った。
実は群サイのドライは初めての経験。なるほど速度が乗る。
ネオバのグリップを体験しつつ1本目は様子見で抑えて走った。それでも速度は高い。
サスの減衰力はいっぱいまで高めハードに設定した。クルマの動きがいい。
途中、白のシビックと黄色の軽が落ちていたのにはドキリとさせられた。
2本目、自分の中では攻めて走った。気持ちがいいくらいに。
だが、最後のワイディング区間が終わった時点でブレーキペダルが奥まで入ってしまった。
コントロールタワーを目指す登りの直線途中にあるシケインでは遂に止まれなかった。
パイロンをなぎ倒して最後のスラロームセクション、ゆっくり流してゴール。
パドックに戻る徐行区間で何度もブレーキを踏むが奥までいってしまう。
エアが噛んだのか? 本番どうする?
ブレーキのエア抜き
チョンバさんに症状を話してみた。
「そりゃ、エアが噛んだな。」やっぱり。
「道具があれば治してあげるよ」と優しいお言葉。
何故か私はブリーダー・パイプとタンク、ブレーキオイルを持参していたのだ。
これは昨年
某氏のブログを読み、そのコメント欄に
Tさんからのアドバイスがあったからだ。
自分で調べてヤフオクから調達したものだった。たしか3500円くらい。役に立った。
チョンバさんの丁寧で素早い作業でエアを追い出しオイルを補給。
さすがプロである。いや、チョンバさんの本職がメカニックなのである。
クルマの修理時にDOT4に入れ替えたのにエアを噛むなんて。クルマが重いのか。
アクセルもブレーキもそれぞれに踏むべきところで踏んでいる。
決してブレーキを多用しているわけではないのに弱点がモロに出た。
タイヤは手で触れても火傷しそうなくらい熱い。
ローターは青く変色していた。ホイールはダストで真っ黒け。
内圧はF2.5、R2.2まで上がっていた。フリー走行2本でこの始末である。
夏の群サイ、恐るべし。
57歳になるエントラントの方が声をかけてくれた。
疲れたときには甘いものが必要ですよと板チョコをくれた。
お互いにいい年をしながらのアタック、大人の遊びだよねと言葉を交わす。
とてもさわやかな一瞬。無事に帰ることが大切だねなどと話し込む。
アタック本番
エンジンに火を入れヘルメットを被る。
スタートラインまで移動、グローブをつける。ドキドキしてきた。
前のグループのクルマが豪快に横を抜けていく。ギャアーッというスキール音に胸が踊る。
いよいよ私たちのグループのスタート。
1台、また1台と1分間隔でスタートラインを飛び出していく。神経を集中させる。
ところが私から2台前のスタートが遅れる。2分、3分と時間が過ぎていく。んん?
きっと誰かがやっちまったのだろう。集中力が途切れてくる。
6分後に再スタート、遂に私の番だ。もう一度集中しなおす。
エアコンをオフにする。ヘッドライトをつける。行くぞ!
係員から「窓を閉めてね」と注意される。ハイになった気分が急降下。
何故かリズムよく走れた。何だか怖さはフッ飛んでしまっている。
タイヤが気持ちよくグリップし時折悲鳴をあげる。「おっ、乗れてるじゃん」
いわゆるBコースを抜け高速区間へ。とにかく踏む。4速全開!
高速区間最後のシケイン。2速で抜けるところだ。
できるだけ粘って遅めに思い切りブレーキ。
「ありぁ?」
ペダルが床から抜けるんじゃないかと思うくらい奥に。
やっぱりパイロンなぎ倒し。1分間のペナルティいただき! (泣)
もうふかふかのブレーキ、エアが残っていたのか?
後半のワイディング・セクションは何度もブレーキを踏み変えて流して抜ける。
Yさんの落ちた場所でブレーキが役に立たずアウト側へ。落ちる、落ちる!
間一髪、落ちそうになりながらステアリングをフルロック、アンダー丸出し。
ズリズリ滑りながら難関を抜けられた。そのまま泣きそうな気持ちでゴール。
アタック2本目は危険と判断し棄権した。(シャレているワケじゃない)
このブレーキでは絶対に突き刺さる、落ちる、貼り付く、空を飛ぶ。
暗い気持ちになってトボトボとパドックへ戻る。情けない。
エンジンブロー>ブレーキトラブル
パドックに戻ると誰もいないはずなのに1台の白GC8がボンネットを開けてポツンと。
ありゃま、チョンバさんじゃないか、どうしたのだろう?
聞けばアタックに出ようとしてエンジンをかけたらカリカリと音がしたと言う。
メタル?棚落ち?エンジンブローで出走できなかったとのこと。何ということだ!
修理費が大変。ブレーキよりもエンジンの修理 (あるいは乗せ換え) のほうが高くつく。
28万キロに達したGC8が悲しそうに見えた。
私のは騙しながら自走して帰ることができるがエンジンがダメならどうしようもない。
積車を調達して帰還することになったが、それはそれで大変なことだ。
出走できない無念さもあるが、何よりも愛車が動かないほうが辛い。
彼の心中を察っすると言葉も出てこない。同じクルマ好きとして。
私はすっかり疲れ果て表彰式にも参加せずクルマの中でぐったり。
体中が痛くなってきた。やっぱ年か・・・
ブレーキのエアはABSに入っていたのが原因だろうとのこと。
ここでは治せないからディーラーでしっかり見てもらいなさいと忠告を受けた。感謝。
エピローグ
残り4分の1のガソリンしかない。帰路の道のりはもう考えない。
帰りの関越道はお約束の渋滞。トロトロと流れに任せガソリンの消費をケチった。
長い1日だった。
遅い夕食を摂り風呂に入ったら疲れがドッと来て意識を失う。
峠アタック、やっぱり楽しい。新たな出会いもあり青春に戻れる。
速い遅いはあるけどあの雰囲気はたまらなくいい。
最終戦、参加できるといいけどなぁ。