エンジン・ヘッド部からインテークにいくパイプを外してみたらべっとりと黒い液体が。これはエンジンオイルや水分がガスと混じってインテークまで戻されるブローバイガスってヤツだ。大昔はそのまま大気中に放出されていたが、環境汚染の要因として法でこれを禁じ、もう一度燃やすために吸入側に戻す仕組みになっている。
ブローバイガス (Blowby Gas) とは、そのまま直訳すると吹き抜けガスとなるが、エンジン内のピストンとシリンダーの間隙から混合気が吹き抜けてクランクケースに入り込む。ピストンリングが磨り減った古い車ほどブローバイは多く発生する。また高回転を常用しても同様に大量に発生する。
ガソリンが空気と混じって混合気になりそれが燃えると残るのは二酸化窒素や炭化水素などかなり人体に有害なガスだ。そんなガスに未燃焼ガソリン、水、エンジンオイルなど渾然一体となったものがブローバイガスだ。
オイルミストを伴うブローバイガスをそのままインテークに戻すと、ブローバイガスが冷やされ液化する。それが例の黒いべっとりした奴。そいつがインテークに戻されるからサクションパイプにオイルが溜まり、さらにはバルブの傘上に堆積して性能に支障をもたらす。ターボ車はインタークーラー吸入口にもオイルがべっとり。らしい。
それらをもう一度シリンダーに戻して燃やすというのはエンジンの耐久性に影響がでるのは疑いないのではと考えてしまう。何より精神衛生上よくない。オイルキャッチタンクを取り付けたところでエンジンの性能が上がるわけではないが。
そこでオイルキャッチタンクを付けブローバイに含まれるオイルとガスを分離することを思いついた。ヤフオクなどで検索すると3千円台の安いものから2万円を超えるものまである。何が違うんだ?
調べてみるとブローバイからオイルを分離できるかどうかで価格差があるようだ。貧乏人の私に2万円近い額はちと躊躇する。さりとて安いだけで単なる「筒」を買っても意味がない。時折見かけるチューニング車のオイルキャッチタンクのリターンホースがオイルまみれに汚れていたことを思い出す。あれじゃ何の役目も果たしていない。多分。
じゃ、作るか。ってことで材料を物色。
カミさんに余っている茶筒がないか催促。ちと古めの「京都・一保堂」の茶筒を貰った。ここの宇治茶はメチャうまかった。缶の底にサビが少し出ているが何とかなるだろう。大きさは直径70ミリに長さ120ミリ。筒いっぱいまでオイルをためるわけではないので、約0.4リッターくらいの容量になるだろうか。少容量だが溜まるオイルをこまめに抜けば役に立つだろう。
さて、DIY派の味方ホームセンターに馳せ参じ材料を物色。頭の中にはそれとなくイメージが出来上がっている。まずはニップル。乳首ではない、念のため。
エルボはちと大きくて高い。即座に諦める。1個180円の短いニップルを選択。ホースバンド大小をいくつか。耐油ホースに塗料、金属パテ、取付金具、その他などを購入。あとは会社にあるものも拝借するつもり。
右の図はオイルとガスを分離するセパレーターを設けたイメージ図。あくまでもイメージだが、概ねこんな感じのキャッチタンクになるはず。溜まったオイルの排出は順次考える。ことにしよう。
眺めのパイプで導かれたブローバイは底面やセパレーターなどに触れることで分離させることが狙い。完全に分離させることは難しいが安物のキャッチタンクよりはマシだろう。これで効果がなければリターンのホース途中にフェル・ストレーナーをかますのも手かもしれない。
茶筒のフタの上部に3つの穴を開ける。4ミリのドリルでガイド穴を開け、その後はハンドリーマーでゴリゴリと広げる。広げる大きさは約15パイ。その後は丸ヤスリでシコシコと削り取り16パイにまで。
茶筒のサビを取るために紙やすりでペーパーがけ。一応防錆として塗料を塗る予定。サビを残さず丁寧に時間をかけて磨き上げる。
溜まったオイルの排出には噴霧器などに使われる「ボールコック」と呼ばれるバルブを使う。缶の下側に設置すればレバーをひねるだけでオイルを抜き出せる。
2つのニップルには会社から拝借した硬質プラスチックパイプを取り付ける。2液タイプの金属パテを使う。これはブローバイが入ってくる側に使用するもの。2つを用意したのは左右のブローバイ出口から直接ホースを引くため。インタークーラーに取り付けてある黒いブローバイ導管は使わない。
タンク入り口から硬質パイプを使って遠いところに導くのは出口のニップルへオイルミストが入らなくするため。途中にはオイルとガスを分離させるセパレーターを設ける。長さは7.5センチ。
セパレーターは昨年ブレーキダクト・カバーを作ったときのパンチホールのアルミ板が余っていたものを利用した。
晴れて風のない日、茶筒を塗装する。色は赤を選んだ。塗装といってもスプレーするだけ。塗って乾かしまた塗るを何度か繰り返す。フタと本体はメンテナンスを考えアルミテープとホースバンドで固定する予定。そのときに取付金具もバンドと友締めする。
硬質プラスチックパイプのついた2本のニップルにセパレーターを取り付け金属パテで固定。パイプから噴出したミストが缶の底当たったり、上に逆流したときにセパレーターに触れることでガスとオイルの分離を期待できるわけだ。うまく分離してくれればいいのだが。
続いてフタに3本のニップルをやはり金属パテで取り付ける。漏れ防止として各ニップルの内側には水道用パッキンをはめた。さらに外側には耐熱の金属パテを盛っておく。これで密閉度は完璧。だと思う。次に排出バルブを取り付ける。液体パッキンと金属パテで固定。一晩寝かせる。
翌日、金属パテはカチカチに固まる。フタと本体をアルミテープで巻き取付金具もホースバンドで固定した。とりあえず完成かな。
取り付けに際して耐油ホースのサイズを実際にエンジンルームに持ち込んで測る。やや長めにそれぞれを切ってちょっと加工する。耐油ホースといえ熱やまわりからの干渉に弱い。そこで会社から余ったホースメッシュを貰い被せることにした。全部で3本分必要だったが足りなかった。次回会社が購入したら分けてもらうことにしよう。
さて、取り付け。
たかが直径70ミリとはいえそれを許容するほどのスペースはインプレッサにはない。フューズボックス横にスペースがあるが、そこにはセキュリティ用のサイレンが鎮座している。仕方がなくウィンドウ・ウォッシャー・タンクをぎりぎりバッテリー側に寄せて無理やりキャッチタンクを滑り込ませることに。おかげでウィンドウ・ウォッシャー・タンクを固定することができなくなったがキャッチタンクが押すことで身動きできないのでOKかなと。いずれ車体側に穴を開けて固定してもいいだろう。
ホースを配管することに。エンジンのヘッドに直接ホースを留めるのに気になったことがある。熱だ。耐油ホースで耐えられるほどの耐熱性はない。そこで純正のホースを少しだけ残し途中に継ぎ手を使って配管することに。
異径の継ぎ手はホームセンターには売っていなかった。そこで近所の配管工事専門会社に行って継ぎ手を分けてもらった。油にも耐性があるという硬質テフロンの異径継ぎ手を2本、格安で譲っていただいた。
純正のホースを切るのに少々気が咎めたが思い切って切断。何とかホースをエンジンルームにはわせ配管を終えた。もう一度各部に緩みがないかチェック。おそらく漏れはないだろうと確信する。
ブログでは1ページにまとめたけど実際には完成~取り付けまで1週間ほど時間をかけている。費用は耐油ホース、ニップル、ホースバンド、塗料、パッキン、金属パテ2種などを含め約5000円くらい。初めは古びた茶筒に過ぎなかったけど自分なりに満足できる「自作オイルキャッ茶タンク」ができた。それも「一保堂」というブランドで。(笑)
反省点
今回使用した耐油ホースは熱に弱いので本格的な耐熱ホースを用意すべきだった。ネットで色々と検索したらブリヂストン製で非常に強いホースが販売されているので次回トライしたい。ちと高いがw
耐油ホースのサイズを単一にしたのは早計だった。結局それを基にニップルサイズまで決定したのだから。エンジン側のブローバイ出口は径12ミリ、リターン側が径15ミリ。それらに合わせたニップルやホースを用意すればよかった。異径継手も必要なく少しは安くできたかもしれない。事前によく調べることが大切だ。
日頃のメンテを考えればタンク内にどれほどオイルが溜まったかを見るインジケーターの設置が必要。エア用のワンタッチ式エルボ継手を利用すればそれほど難しいものではない。次回のアップグレードで採用したい。
ニップルの位置に工夫が必要。ホース取り回しの際、上からニップルにはめるのはスペース的に難がある。今回は割りと低めにセットできたが、さもないとボンネットに干渉する。エルボ型ニップルは大きくて高価だが次の課題として取り組みたい。
タンク容量が少ないのが気になる。取り付け位置にはまだ工夫の余地があるので次回作る機会があれば少なくても1リッターくらいの容器を探し、取り付け場所も色々と検討したい。配管のセンスもw
最期に、クランクケースからのブローバイ処理も次の課題。配管をどうするのか今のうちから考えておいたほうがよさそうだ。ここには多分PVCバルブがあるんじゃないだろうか? 現状はどうやらインテーク・サクションに直接つなげられているように見えるが詳しくは分からん。もし知っている人がいたら教えていただきたい。
Posted at 2009/06/05 20:23:26 | |
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