
§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection
べつにターボとは限らないけれども、何らかの過給装置を、扱いやすさとか太いトルク獲得のために、つまり「実用性」の向上のために用いる手があるんじゃないか。とくに軽自動車のように、エンジンのキャパシティが限られていて、パワーを「回転」によって絞り出すことが多い場合、低・中速域での「力」を過給によって稼ぐことができれば、たとえば発進はラクになり、頻繁なギヤ・シフトからも解放されることにならないか。
なぜなら、軽自動車とは、女性層やビギナー向けということになっているようだが、ハード的に考察すると実は違うからだ。多かれ少なかれ高回転型に設定された小さなエンジンからパワーを的確に取り出すには、かなり大胆な右足の踏み込みと、同時にデリケートな左足のクラッチ・ワークを必要とする。(MTの場合)
要するに、むしろ巧い人こそが、軽自動車を(他車並みに)速く走らせることができるのであり、“教習所運転”から最も遠いところにあるカテゴリーのクルマのひとつが「軽」なのだ。(教習所は、近頃、ディーゼル車を多用している。アイドリングでクラッチをつないでも発進していくようなエンジンを教習車に用いている)
──であるから、ターボなどによって、モリモリ/グイグイ走りのクルマに「軽」を変えてあげることは、全国の軽ユーザーにとって大いなる福音となるはず……というのが私見であった。「550cc+ターボ」(注1)という考え方ではなく、1.2~1.3リッター級の扱いやすいエンジンを作るつもりで、「軽」のターボ版を構想する。そういう提案である。
もっとも、自動車工学的には、ターボで低・中速域をパワー&トルク・アップすることこそ、実はむずかしいのであるそうだが(排気での過給だから、構造的にはその通りか)、そのへんの困難さをうかがわせない軽自動車用のパワーユニットができあがった。ミラ・ターボの「TR-XX EFI」と「フルタイム4WD EFI」という2機種に搭載されたエンジンがそれである。
その名のように、これまでのインタークーラー付きターボに、新たにEFIを装着して58ps(プラス8psとなった)としたものだが、そのチューニングは、マキシマム・パワーもさることながら、「下」での「力」を増すことの方に意が払われている。チョークもオートチョークとなり、実用度もさらに向上した。パワー的に言って、十分以上に速い「軽」ではあるけれど、普通車と同じようなシフトポイントと走行感覚を持つ「軽」であることの方を報告したい。そう、ずいぶんとズボラ運転が可能な「軽」なのだ。
次なるこのエンジンの使い途は、スポーティな「XX」といった特殊バージョンにではなく、それこそ女性層が買いそうな「普通の軽」への展開であると見た。この層では、価格の競争がシビアになるという側面があるので、こんなにカネのかかったエンジンを載せたんじゃ勝負にならないかもしれないが、でも、「軽」の可能性を大きく拡げるパワーユニットではあろう。
「軽」の世界は、触れるたびに、いつも何かが“大きく”なる。ウォッチャーとして、こんなにおもしろいカテゴリーはないと、あらためて宣言したい。
(1987/12/08)
○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ミラ・ターボTR-XX EFI/フルタイム4WD EFI(87年10月~ )
◆普通車と同じような感覚で乗れる軽自動車。これは「軽」の90年代におけるテーマとなると思う。「同じ」とは、ハンドルの重さ、アクセルワーク、空調などである。なぜなら、モータリゼーション草創期のように、「軽」にしか乗らないというような人はもういないからだ。特殊であってはならない、小さくてもいいけど──。これが、これからの「軽」を活かす。税制などその特権は大いに活用すべきだが、甘えは不可。このことを、すべての軽自動車に提言する。
○注1
550cc+ターボ:80年代の軽自動車は、そのエンジン排気量が550ccだった。1990年から、それが660ccに引き上げられて今日に至っている。
○2014年のための注釈的メモ
上記の排気量の件もそうだが、これはかなり「80年代後半」という時代を感じさせるコラムではある。たとえば、軽自動車の試乗記がMT車をベースに書かれていることが、そのひとつ。今日のスタンダードといえる「CVT」は、まだ一社(スバル)が試験的に(?)採用しただけだった。
また、当時の「軽」のターボは、そのほとんどがひたすら出力志向だった。その時代を経て、後年にターボを扱いやすさのために使うと、スズキがワゴンRに「Mターボ」(マイルド・ターボ)を設定。これはNA(自然吸気=ターボなし)と高出力ターボの中間という仕様だったが、ただ今日ではもうラインナップから消えている。
その理由は、「軽」のエンジンがターボ付きもターボなしも、どちらも低・中速域での扱いやすさ重視の設計になったからであろう。1990年に排気量がプラス110ccの「660」になったことは、「軽」のエンジンの発想と作り方を変えたのだ。また時代の変化もあった。90年代半ば以降、軽自動車は“競走の具”から、日常生活を豊かにするためのものとなっていた。そして、新パッケージングの提案も含めて、そんな時代と見事にシンクロしたのがワゴンR(93年)だったと思う。
Posted at 2014/10/02 16:21:27 | |
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