
VWジャパンが2月1日から受注開始を告知している
電気自動車e-up!
今日、ひょんなことから、この話題のクルマに試乗できる機会を得ました。とある事情で朝から出かけてきた山間部のスノードライブの帰り道、氷雪に晒されドロドロに汚れてしまったGTIを社会復帰させるべく、行きつけのディーラーさんに洗車をお願いしたところ、「
話のタネにどうですか?」とe-up!の試乗を勧められた次第です。まだ、正式発売前にもかかわらず、ナンバーを取得して堂々と公道を走行できる試乗車が、ディーラーに用意されていたのです。
まずは第1印象から。
白いボディカラーを装ったe-up!試乗車は、青く縁取られたVWのフロントエンブレムや、専用15インチホイールがノーマルとの違いを訴えてはいるものの、その主張はあくまで控えめ。一見するかぎり、普通のup!とどこがどう違うのか、わかりません。
個性の主張が控えめなのはインテリアも同様でした。ボディカラーと同色に塗装されたインテリアトリムの質感は、ノーマルup!と全く同じ。メーター回りにはバッテリー残量計など電気自動車っぽい計器類が配されていますが、表示はデジタルでは無く
アナログ式です。操作方法も、電気自動車っぽさを感じさせず、何とイグニッション・キーを回してクルマを始動させる必要があります。サイドブレーキも、手動のタイプでした。
唯一、up!との違いを感じたのが、5速ASGではなく、普通のATのようなシフトノブが採用されていたこと。そもそも電気自動車には
ギア・チェンジという概念がないので、「P」「R」「N」「D」の切り替えがきけば、それで十分なのでしょう。
このような
アナログ感満載の演出は、VWが敢えて狙ったコンセプトと考えてよいと思います。
「
革新的技術は、人々の生活に溶け込んでこそ意味がある。だから私たちは、自分たちのクルマを、あたかも未来からやってきた、特別なもののようには見せつけたりしません。」
カタログのなかでVWが堂々と宣言しているとおり、e-up!は特別な電気自動車である前に、我々にとってもなじみ深い
クルマという道具であることを強く志向しているように思えます。トヨタのハイブリッドや燃料電池車(その名もミライ!)に対する当てこすりのようにも聞こえるけれど、VWの清々しい決意表明には好感が持てます。
さて、アナログなキー操作でe-up!のモーターを始動させ公道に乗り出してみると、まずびっくりしたのが、低速トルクの豊かさ。アクセルを踏めば踏むだけ、もりもりトルクが盛り上がって、そのままどこまでも加速していく印象です。小型車にありがちな非力なイメージなど全くありません。ゴルフ・コンフォートラインやポロに搭載される1.2TSIエンジンを上回るほどの
最大トルク(21.4kgm)は電気自動車ならではの美点で、やはり伊達ではありませんね。
営業マン氏のお薦めでGTIの試乗時に走行したディーラー裏の「
峠道」にも、足を伸ばしてみました。上り勾配でもトルクが衰える気配を見せなかったのは予想通りでしたが、e-up!のハンドリングはここで
意外なスポーティさを見せます。ある程度のスピードに乗っていても、ステアリングを切れば切った分だけ、正確にコーナーをトレースできる安定感は思いのほか心強く、良い意味で予想を裏切るものでした。XDSのようなハイテク装置を足回りに備えているわけでもないのに、コーナーでの挙動が安定しているのは、何故か?それは、床下に装着された重量200キロ以上のバッテリー装置が、車体の
低重心化に貢献しているからとの理由で、中年オヤジも思わず納得です。
試乗インプレッションを書き連ねていくと、良いことずくめのクルマのように思えてきますが、もちろん問題点もあります。最大のネックは、やはり新車時の価格設定ですね。
このクルマ、いくらで売り出されると思いますか?との営業マン氏の質問に、特に予備知識のなかった自分は「250万円くらいが適正価格ですかねぇ?」と無邪気に回答したのですが、正解は驚きの「
366万9,000円(消費税込)」でした(汗)。
購入時に補助金が適用される可能性が高いため、実際の負担は300万円前後に落ち着きそうですが、それでも、ちょっと手を出しづらい値付けであることに変わりはありません。同じ価格帯で購入可能なガソリン車、たとえばゴルフ・ハイラインが322万円であることを考えると、現時点ではe-up!の購入に二の足を踏むユーザーが多数になってしまうのでは?と懸念を感じます。車格的にはポロの電気自動車なら、この価格設定もありとは思うのですが・・・・。
とはいえ、我々とは無縁の未来の乗り物と思われてきた電気自動車を、ここまで身近な道具としてブラッシュアップして世に問うてきたVWの本気度には、大いに共感するところがあります。年内には、
e-Golfの日本発売も既にリリースされていますが、欧州で評判のプラグイン・ハイブリッドモデルの
ゴルフGTEの日本導入はこの先いったいどうなるのでしょう?輸入車の大敵・円安がこれ以上、酷いことにならないよう、こっそりと祈るばかりです。
Posted at 2015/01/18 20:26:24 | |
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