
9月の連休にでかけたツーリングの初日、瀬戸大橋を渡って四国に勇躍上陸した直後、まず向かった先は丸亀方面です。時刻はちょうどお昼どき、讃岐うどんの評判店・
麺処綿谷で、肉ぶっかけうどんをツルツルいただいてみようかというアイディアが浮かびました。
このお店、以前出張で四国を訪れたとき、同僚に紹介してもらい訪れたことがあるので、だいたいの様子はわかっています。味はもちろん上等ですが、ボリュームの凄さがこの店のセールスポイント。うどん1玉の「小」が通常の2倍弱の量なので、大の大人でも十分に満足できます。ドライブの空腹を満たすには、もってこいでしょう。
お店に到着すると、連休中だけあって、パーキングには地元車だけでなく県外ナンバーがいっぱい。店に周りにはずらりと並んだ長蛇の行列が出来上がっていて、千客万来の様子です。運良く1台分のスペースを見つけ、すかさず駐車。善男善女が列をなす最後尾に迷わず加わりました。
ざっと観察してみると、行列の長さは30~40メートルほどでしょうか。自分の前には100人近くが待っていそうです。普通なら何時間待たされるのか予測できない状況ですが、セルフうどんの大型店は、お客の回転がとにかく早い!30分も待つことはないだろうと見当をつけました。すると予想通り、行列はスルスルと前に進んで、並らび始めてから15分も経たないうちに、店内に入ることができました。
セルフ方式のカウンター越しに、
スペシャルぶっかけうどんの冷・小をオーダーします。
麺処綿谷の名物・肉ぶっかけうどんは、牛肉か豚肉のいずれかをチョイスできますが、それをどちらも載っけて、温泉卵とわかめをトッピングしたのが、このスペシャル・メニュー。こいつは一粒で二度美味しい!肉の甘さとだし汁の旨さが太めの麺に絡んで、ボリュームも満点とくれば、もう言葉は要りません。一心不乱にうどんをと具を平らげるばかりです。いやあ旨い!ごちそうさまでした。
讃岐うどんを完食した後は、いよいよツーリング初日の最終目的地の宿へとGTIの進路を向けます。再び高速に乗って、高松道・松山道ルートを愛媛に向かって西進!。
めざすは、高知と愛媛の県境付近に位置する標高約1400メートルの
シラサ峠です。
山荘しらさは、大自然のなかに佇む一軒宿というよりも、登山基地の山小屋といったほうがふさわしい施設ですが、アクセス路となる
瓶ヶ森林道の山岳ドライブを是非一度楽しんでみたいという動機もあって、今回予約を入れた次第です。
さて、いよ西条ICで高速を脱出し、西条の街中から南の山々の様子を遠望してみると、何やら雲行きが怪しくなっています。山の頂はグレーの雨雲にすっかり覆い尽くされ、シラサ峠に向かう方向もガスに包まれていそうな気配・・・・。秋の連休中、四国エリアの全域では晴れ予報が報じられていましたが、山の天気は本当に変わりやすい。すっかり油断していました。
麓のコンビニから曇った南の空を眺め、この先どうしたものか?としばらく思案します。今、このタイミングで山荘をめざして山岳エリアに突入すれば深い霧の中で立ち往生するのが心配です。けれど、今さら目的地を変更し別の宿を確保するのも難しい。予定通り山々へ進むべきか?それとも勇気ある撤退を決断し神戸まで引き返すか?二者択一の選択を迫られましたが、ひとまず天候の回復を待って、結論を先延ばしにしました。
自問自答を繰り返しつつ1時間ほど麓で時間を潰しましたが、そうこうするうちに、南の空が明るくなって、秋の青空が戻ってきました。標高の高い辺りでは、まだ雲が残っていますが、これ以上、天候が崩れる心配はないでしょう。そうと決まれば、いざ、山岳ドライブに出発!長い長い山道走行の前に、ハイオク・満タンを給油して備えも万全です。
西条市内からは、
R194で南に向かいました。河原で催される「
いもだき」の様子を横目に、2車線国道を快走。ワインディングで標高を稼ぎつつ、山間部へと分け入っていきます。全長5432メートルの
寒風山トンネルを抜け高知県に入ると、すぐに現れる瓶ヶ森林道入口の標識に従い左折。いよいよシラサ峠をめざす本格的山岳ドライブが始まります。
地図で確認してみると、先ほど走行した寒風山トンネルの真上を縫うようにクネクネとした山道が続いており、瓶ヶ森林道の入口はその先に設けられているようです。
走り出してすぐに、道は1車線の隘路に変わって、展望のない森の中をひたすら進みます。休日のせいでしょうか?細く険しい道でも対向車が頻繁に現れわれ、油断のできない状況が続きました。そんなタフな山道を約30分も走った頃合いに、ようやく林道の入口となるポイントに到達しました。
この地点からシラサ峠へと続いていく
瓶ヶ森林道は、高知・愛媛県境の深い山々を峰伝いにトレースしていく山岳道路。晴れていれば、森林限界を超えた標高1800メートルの尾根からは遮るもののない緑の稜線の眺望を存分に満喫でき、日本屈指の絶景道路と評判ですね。下の写真は「絶景ドライブ100選」というムックのページを撮影したものですが、まさしく天空のスカイライン!こんな景色を愛でながらドライブを楽しめるなら、深い山々にわざわざクルマでやって来た甲斐もあろうというものです。
しかし、めざす山荘は林道入口から20キロも離れた場所です。目的地に至るまでは、絶景路といえど、
1~1.5車線幅の狭い林道をひたすら進んでいくしか手段がありません。
おまけに標高が上がってくるにつれて、お天気がまた少し怪しくなってきました。
四国の山々は雲の出るところ。高い峰々から次々とわき出す霧が、麓に向かって滝のように流れ落ちていきます。人智を超えた大自然に抱かれながら進みましたが、この先いったい何が待っているのか?期待と不安が交錯します。
東黒森登山道の入口あたりまで林道を進んでいくと、遂にGTIは、雲の真っ直中に突入しました。周りは完全にガスに覆われ、容赦なく視界が奪われます。本来であれば、この地点から瓶ヶ森登山道入口あたりまでが、絶景ルートのハイライトなのですが、白い靄にのなかでは、景色など何も見えません。それより何より、身の安全が第一。1~1.5車線の隘路では、待避可能なスペースを見つけることも難しいため、ヘッドランプとフォグランプを両方点灯して、視界を確保しながら前進を続けます。現在どこを走っているのか?もはや、よくわからない状況でしたが、時折現れる対向車をやり過ごし、地を這う亀のようにジリジリと進むしかありません。
ところが、さらに標高を上げ、林道の最高地点・海抜1800メートル付近に迫ると、雲の上に抜け出すことができたのか?夕暮れの青空が鮮やかに目の前に広がりました。
ようやく見つけた駐車スペースにGTIを停め、景色を見渡すと、北に
瓶ヶ森、西に
石鎚山が誇らしげに聳えており、夕陽に照らされた雲海の中からは、駱駝のコブのように面白い形をした
子持権現山がひょっこりと顔をのぞかせています。神秘的でいながら、どこかユーモラスな風景を楽しむことができ、長くタフなドライブの気疲れも心持ち軽くなりました。
さあ、目的地まで残すところ僅か。下り坂のワインディングを縫うように走れば、雲海のただ中に再び突入です。白いガスの真っ直中をしばらく走って行くと、低い笹が群生する平坦地が現れ、初日の宿・山荘しらさに無事到着しました。
標高1400メートルの大自然に佇む山荘は、もうすっかり秋の気配。案内されたお部屋には早くもコタツが置かれていて、夜になると冷え込みが厳しそうです。
日の入りの頃合いには、あたりを覆っていた霧もすっかり晴れ、夕焼けのなか、石鎚山のシルエットがくっきりと浮かび上がりました。ああ、良かった!明日は、良い天気になりそうです。
自由気ままな四国の旅路、さて明日は何処へ行きましょうか?今では珍しいサッポロラガーで乾杯しながら、ドライブ計画を練るとしましょう。次回に続きます。
