
Air Pressure Reed Valveと称して始まったシステムの原型は昨年のこの時期に構想としてありました。
バイク用としてシステム構成していました。
そしてクルマ用に製作しだしたのが9月のこと。
実用できるのかZ660を試験車として稼働いたしました。
繰り返しになりますが基本概念の説明を。
エンジンは原則的に吸気行程の時に"吸入できる空気の量"によって性能が決まると思います。
吸入空気量が多くなれば、それだけ余分の燃料を燃焼できるから最大トルクの発生も増し馬力も大きくなる。
またコレクター等が小さいままならば吸入する流速が早められ基礎トルク発生位置も高められる。
そしておのずとレスポンスが高められるとも考えています。
レシプロエンジンは吸気をする時にピストンが上死点から下死点に下降します。
その時、ピストンは負圧を作り外気との圧力差が生まれ、その圧力差で吸気を行います。
エンジンはこの吸気を繰り返していきます。
繰り返すということは、この部分に圧力の変化が生じるということで、脈を打つように連動します。
圧力の変化はインマニの中で反射することもあります。
この反射を上手く利用すると吸気を余分に押し込むことができます。
これは慣性効果(ラム効果)を利用して充填効率を高めることになります。
エンジンの吸気の速度は当然エンジン回転数によって異なり、高回転になれば圧力・速度も変化していきます。スロットル、インマニ、コレクター、エアクリボックスの容積や形や距離も多大な影響を及ぼすと考えています。
以上を踏まえた上で独立パーツA.P.R.V.の目的はというと・・・。
圧力変化の脈動を利用してさらに充填効率を引き上げ、トルクを得る。
脈動及び負圧を利用しリードバルブを開閉させ、吸入された空気はなるだけ逃さないようにする。
その経過によりインマニだけでなくエアクリボックス自体も慣性効果を効かせるチャンバーとして利用する。
その結果、吸気管系の容積を実質的に変更する。
そして密度の高まっている空気の境界域を拡充させ、よりシリンダー内との圧力差を生じさせる。
またそれは圧力の復元の早さにも繋げていき、レスポンスアップにも繋げていく。
というところでしょうか・・・。
あといかにスムーズに吹け上がるかも課題ですね。
低回転域でも高回転域でも能力を発揮出来なければ意味が無いと思っています。
とりわけ重要視しているのは過渡特性の変化状況の問題です。
ただ走るだけでなく曲がることも考えなくてはなりません。
私はアクセルもステアリングの一部と認識しています。
基本、過渡特性はよほどのことをしないと変化させることは難しいところです。
もともとのシステムがハイパワー、高圧縮、高回転型エンジンに設定しての代物。
一連の試走で極端に高回転域の伸びが良すぎて最大パワーの発生位置がズレていることが度々ありました。
いかにレブリミット以下の回転域に押さえ込み特性を充実させるかが課題でした。
エンジンとしてはパワーを出すことも必要ではあります、しかし・・・。
実用的にはできるだけ大きいトルクを広い回転域で出せる方が力強いエンジンになると思います。
エンジンの軸トルクはエンジン性能の基本です。
軸トルクが大きくなれば発進しやすくなるとも言えます。
当然コーナリングでの優位性が増していきます。
レーサーでは当然この点は課題になる部分です。
これはコントロールのしやすさに繋がる要素とも考えています。
過渡特性の重要性が求められると思います。
そのためテスト走行では登坂でのアクセルON/OFF全開走行、峠攻めを繰り返しています。
全てに繋がると考えているからです。
私の場合テストそのものが高負荷的ですが。
A.P.R.V.はターン・インしやすくターン・アウトしやすいのも特徴です。
圧力の減圧が早く加圧も早いからです。
コーナーリングではこの味付けは有効だと思っています。
当初は吸入パートからということでA.P.R.V.(仮)が思わぬ成果を挙げました。
ブースト圧が0.9kg/cm2とか記録したりしました。
失敗を繰り返しブーストも安定域が0.8kg/cm2に落ち着かせる
そして流体の特性に付いて気づきver1.0がA.P.R.V.の基本形として出来上がりました。
ver1.0、ver1.1、ver1.2は色々と工夫していきましたが荒削りなピーキーさはアカンコレということでデュアル化へと進みます。
デュアル化されたA.P.R.V.。
ここに行き着いて特性の違いを登り坂の表現で・・・
ノーマルは溜を作って登らなければならない感じ
ver1.1はスルスルと登って行く感じ
ver2.1は坂の途中からでも加速して行く感じ
と表現できるようになりました。
レスポンスは以前より良くなり低中速のトルクの上乗せができました。
最終的にはver.2.3まで作製いたしました。
で気をよくしてトリプル化します。
トリプル化されたA.P.R.V.。
最初とても苦労しました。
ターボとは無関係にエンジンが勝手に伸びて行くのです。
ターボが脚を引っ張っている感じでした。
ECUのリミッターカットも考えましたが"ノーマル"でどこまで行けるかも大前提だったので調整に継ぐ調整を行い物にしました。
結果どのZ660に取りつけてもみんな楽しいと言ってくれそうなものが出来上がりました。
ver3.0、ver3.1、ver3.2、ver3.3と取り進めていってほぼ完成形に至りました。
と言ってもあくまで吸入口部分を独立パーツとしてみた場合ですが・・・。
それからI.F.を取付けたver.3.4.0〜ver3.4.2に至ります。
コレは別の特性、高速域での加速アップを目指したものです。
100km/h〜の加速アップを目途に考案したものです。
高速での追い越しが楽になりました。
以上A.P.R.V.の吸気口のだいたいの試作ができたので今度はエアクリボックスの圧力コントロールにシフトして行きます。
現在考察中のD.C.S.(減圧コントロールシステム)取付け。
そして通常吸入口閉鎖。
コレをもってA.P.R.V.の完成になります。