若い君達へ

私は車、バイクが好きなただのおじさん

君達に少しだけ話を聞いてほしい
別に喧嘩をしたいわけじゃない

深夜、おじさんは友人と夜の街に繰り出し、帰りにコンビニへ寄る
若い君達が5-6人、車とバイクでたむろしていた

どの車もバイクも
至ってノーマルだけど
これからカスタムするんだ、という気持ちだけは伝わってきた

ビビりのおじさんは
嘗め回すように見てくる君達を
若かりし頃の自分を見ているようで
心の中で

「友人達と一緒にいるから、と調子に乗りすぎないように、事故に気を付けるんだぞ」

と思った

おじさんのホームコースに繰り出す若い君達

なんだかよくわからない胸騒ぎがしたが

友人の買い物とトイレが長引いて
君達が出て5分後くらいだろうか
おじさんは君達を追うようにコンビニを出た

ちょうどコンビニを出たところでパトカーがおじさんの車の前に現れる
深夜のパトロールコースをおじさんは知っている

君達が気になって仕方なかったが
パトカーを追い抜くわけにもいかず
のんびりパトカーの後ろを走る

そのうち、普段避けることのない
定期パトロールのパトカーがなぜか左にウインカーを出し路肩に避けた

緊急の入電でもあって確認中？

パトカーを追い越し
2つほどカーブを曲がり
さすがに君達に何かあったなんてことはないだろうと思っていたら

君達を見つけてしまった

左カーブ手前で道路左脇に止まっている車とバイク
反対車線のガードレールの凹みと路面の傷
その側に呆然と立ち尽くす君達、そして君達の夜でもわかる血の気の引いた顔

その先は川、ではなく岩場ともいえる場所
機械も道具も
救護資格は君達と同じ教習所で習う知識以外何も持ってない
おじさんには何もできないし

ものの数十秒でパトカー、プロが来ることはわかっている

ガードレールの隙間からバイクと一緒に君たちのうちの誰か一人が行った
な、と。

おじさんは瞬時にいろんなことを考えた

だから止まりもせず
ただただ
さっきのコンビニで一声かけておけばよかったと思うだけ


でも、やっぱり気持ちのどこかで
まさか「死」なんてことはないと思っていたおじさん

だけど
ついさっきその場所を通ったら
花が置いてあった

おじさんにも子供がいるけど
この先免許を取ってバイクに乗るし車にも乗ると思う
大好きな車、バイクで死んでほしくて
免許を取らせるわけじゃないし、車、バイクを買うわけじゃない


おじさんは
深夜のコンビニで君達を見かけたら声をかけると思う

お願いだから
友人達と一緒にいるから、と調子に乗りすぎないように、事故に気を付けて欲しい
喧嘩をしたいわけじゃない
ただ、君達のことが若かりし頃の危なっかしい自分と重なって少し心配なだけだから