大淀病院産科医師を支援します

以前のエントリでも触れたように、奈良・大淀病院での妊婦死亡事例において、遺族の方が産婦人科医と病院を相手取って損害賠償請求の民事訴訟を起こされました。本日25日は、その初公判の日でした。

まずはこの問題を語るにあたり、亡くなられた方、そして遺族の方々に哀悼の意を表したく思います。

説明を、病気を、そして死亡を受け入れ難い心情は理解できます。そのことで遺族をいたずらに責めるべきではありません。人の死は、理屈で簡単に割り切れるものではないということは十分に承知しています。

しかしこの件は、子癇発作に脳出血を合併するという稀な事例で、症状を後から振り返っても診断は極めて困難であったと考えられています。そしてマスコミによる「6時間放置」「たらい回し」といった批判は的を得ないものと考えます。

真実を求めて訴訟を起こすのは、確かに当然の権利です。しかし例えば、小児麻痺に関する民事訴訟についての話。

小児麻痺の子を育てていくのにはもちろん精神的・肉体的負担がありますし、金銭的負担も軽くはないはずです。その責任をどこかに求めたくなる気持ちはもちろん理解できます。しかし例えば麻痺の原因を医療側に訴える訴訟においては、「出産時の医療行為が原因である」として医療側が賠償金を支払ったか和解した事例であっても、医療が原因となっていないことの方が多いことが学術的に明らかにされています。

患者さんを救済するために真実を曲げることがあってはならないし、救済のために真実を曲げなければならないとすればそれはシステムの問題です。そういった意味でも、医療側にミスがなくても患者さん側を補償する「無過失補償制度」の早期制定が望まれます。

また蛇足ですが、搬送先がなかなか見つからなかったということについても、搬送を断った各病院の責任ではなく救急医療体制の不備が問題であったと考えられます。”善意”だけでは命は救えず、専門家によるマンパワーや設備が必要なのです。

私は、大淀病院の産婦人科医（やこの件に関わった医師たち）の過失のためにこの患者さんが亡くなった訳ではないということを信じ、日本の医療の将来のためにこの医師を支援したいと思います。もしこのことにご賛同頂けるようでしたら、コメントをお寄せ頂ければと思います。