街乗りグルマのF10 528iについて数少ない不満点の一つにブレーキの効きがあります。以前に
欧州仕様F10ブレーキについてまとめたことがありましたが、日本仕様のブレーキは欧州仕様に対して1グレードずつ落とされています。本来、348x30mmローターを採用している528iだと日本仕様ではワンランク小径の330x24mmローターと小型キャリパーにダウングレードされます。これは速度レンジが低いとはいえ、重量が公称値で1,770kgもある車両としては心もとないシステムです。このブレーキはF30のMSPブレーキはもちろんのこと、E9x系335iのフロントブレーキやなんと同じF10の535iリアブレーキよりも容量が小さいといういくらなんでもコストカットしすぎな残念ブレーキで、6速以上でOD領域となりエンジンブレーキの全く効かない8ATとも相まって特に高速での制動力に大きな不満が残るものです。また、フロントのみを小径化したことによるブレーキバランスの崩れも気になるところです。実際、街乗り速度でのブレーキングにおいても静止寸前のグニュッというかズルズルっとしたパッドとローターがズレたようなフロントブレーキの感触は非常に不快なものです。
一般的なブレーキ強化策としてはより強いパッドに換えるかブレンボなどのBBKを組んでやるのが早いわけですが、今回は特にフロントのローター容量が少なすぎることとリアキャリパーは電制パーキングブレーキが組み込まれていること、フロントのみ社外キャリパー等に変更するとデザイン的なアンバランスが気になるという理由から、見てくれは少々悪くなりますが前後のデザイン的なバランスが取れ、かつブレンボなどより安価にアップグレードが可能なBMW純正の大型ブレーキへフロントのみ変更してみました。
F10に取り付け可能な純正大型キャリパーはM5用のブレンボ製6ポット(※1)を始め約4種類ありますが、今回、装着したのはM5を除いた通常F10シリーズのトップグレードたるM550DX/550iで採用されている大型スライドキャリパー(BMWの呼称は"Single-piston aluminium swing-caliper in frame structure"。P.N. 34116786817, 34116786818)です。もちろん完全無加工でのポン付けが可能です(※2)。
※1:M5のブレンボキャリパーはスウィングアームに直付けする形でラジアルマウントされています。そのため、アキシャルマウント方式を取る通常のF10に取り付けるためにはブラケットの製作や若干の加工が必要です。
※2:キャリパーで1番デカイのがM5用Brembo、2番目がB5や760に使用されているもの、3番目がM550DXや750/550などに使用されているものです。ローターは径の大きな順に400x36mm、374x36mm、348x36mmとなります。またF10に取り付け可能かどうかわかりませんがBMW純正ローターとして一番デカい410x36mmというのもあります。ちなみにリアローターで一番デカいのは402mm。
というわけでいつもながらのこちらにおじゃまして早速取り付け開始です・・・が、それなりに時間が掛かるだろうと近くのサテンでコーヒーを飲んでたら秒殺で作業が終了してしまい、取り付け時の写真はありませんm(_ _)m
というわけでいきなり取り付け完成の図です。キャリパーはBMWの呼称にもあるようにアルミ製キャリパーをスチールのフレームで取り囲むことによって剛性を強化してあります。アキシャルマウント方式ですがブラケット自体はキャリパーと別体式になっており、ブラケットを交換することによって374mmローターも使用可能です。ちなみに同型キャリパーでブラック塗装されたバージョンもあります。
ローターサイズは348x36mmです(P.N. 34116785669&34116785670)。BMWお得意のアルミ製ベルハットとスチール製ローターをリベットピンでつなぐ2ピース構造ですがベルの再利用は出来ません。左右で別品番が指定されているところを見るとカーブベンチレーション構造なんでしょうか。純正状態ではプレーンですが、そのまま取り付けるのもあれなんで6本のストレートスリットを入れてみました。これだけ巨大なブレーキですがこの状態で純正18インチホイールで飲み込むことができます。ちなみにマスター容量を心配される方もいらっしゃると思いますが、F1x系の場合はマスターシリンダーは全てのグレードで共通ですので心配ありません。
ちなみに下はホンモノのB5 BiturboとM550dxのブレーキ。B5は760Li用ブレーキを流用しています。ローター径は374x36mm。キャリパーも一回り大きいです。一方、M550dxはキャリパーが今回装着したものと同一品ですがローター径はB5と同じ374x36mmです。ただし、サイズは一緒でもローター自体は品番も違う別物です(写真でM550dxのローターの方が小さく見えるのはバックプレートの違いによるものです)。
<ブレーキ比較表>
| 変更前 | 変更後 |
Disc Rotor | 330x24mm | 348x36mm |
Pad面積 | 約155x64mm | 約193x80mm |
システム重量(片側) | 約15.5kg | 約22.7kg |
装着後、ちょい乗りをしてみましたがブレーキフィール・タッチ共に不自然さは全く感じられず非常に良好です。さすがに純正フルードとゴムホースのままということもあって社外BBKのようなカッチリ感こそありませんが高速からの制動力にも全く不満がないレベルです(メッシュホースにスライドピンをリジッド化してやればかなりタッチは良くなると思います)。ちょっと強く踏むとスリットローター特有のゴリゴリしたいかにもパッド削れてますという感触が伝わってくるのもなかなか良い感じです(笑。また、今回ローターが330x24mmから348x36mmと熱容量はかなり増えたものの径は欧州仕様の本来のサイズになったため、リア330x20mmのままで日本仕様の吊るし状態よりブレーキバランスが良いようです。ただし、バネ下の重量が片側で約7.2kgずつ増加したことによってステアリングの感触やフロントの動きはやや重くなりました。が、むしろ今の状態のほうが昔から馴染んできたBMWのステアリングフィールに近い気がします(現状のフロント348x36mmとリア330x20mmの組み合わせは本国530iの高速ブレーキ仕様と同一のようです。F10は純正ブレーキを使用してフロント374x36mm・リア370x24mmまで強化することができます。ただし、リアに370mmを使用する場合はオフセットステーが必要です)。
<今月のオマケ>
F10 535i/535dに追加設定されたらしいM Performanceのテールパイプ。550用によく似てますね。
<追記:コスト的な検証>
純正品を使用してブレーキを強化した場合、一般的なBBKを使用して強化するのとコスト的にどれほど割安なのかを検証してみました。
F10用BBKの代表格であるブレンボGTキットを装着する場合、価格は某有名店のキャンペーンを利用すると365x34mmに6ポットの組み合わせで43万円。リアのRDD370x20mmビックローターキットは24万円なので合計67万円が必要となります。対して純正強化ブレーキはヤフオク品の750i新車外しキット(1台分で7.8万円)をベースにフロント374x36mm・リア370x24mmまで強化するために必要な部品(374x36mmローター・370x24mmローター・フロント純正ブラケット374mm用・M550DXリアキャリパー・M5用リアブレーキパッド・M550DXキャリパーステー)とリアオフセットステー制作費を6万円として計算すると合計で概算35万円となります(パーツは全て個人輸入品で送料を含めます)。更にリアを345x24mmでガマンすると26万円で収まってしまいます。この試算はヤフオクで状態の良いフロント用純正キャリパーが安値で手に入ることが前提ではありますが、リアローター分プラスアルファのコストでM550DXと同等のブレーキシステムにまでアップグレードできるのは魅力的ですね。
Posted at 2012/11/05 12:14:58 | |
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