製作した出力段の周波数特性をLTSpiceで見ると極は500-600MHz程度の周波数にあるのが分かります。このグラフとNJM2737の「電圧利得・位相 対 周波数特性例」のグラフを見比べると出力段の極が全体に与える影響はないと判断されます。すなわち位相補正なしでそのままフィードバックを掛けられるハズ。もっとも使っているモデルを信頼していいのかは不明だし実際には配線容量などの影響を大いに受けるのでこのグラフのようにはならないが、手元にネットアナやトラジェネがないので測定できない。発振してたらその時に対処する。
一応回路図を書きます。面倒くさいので手書き。470uと50kのボリュームは元々の基板に付いています。現物は単電源で動かすのでバイアスが必要。とりあえずLM385を使いますがノイズに関して疑義も。問題があるようだったら抵抗分割にしてデカいキャパシターを入れるつもり。またあまり根拠はないけれどもゲインを1.5倍程度にしてみました。
ということで全体を組んでみました。大した部品数ではないので直ぐに完成。
ここで熱暴走しないかを再度調べることに。半田ごてで出力トランジスタの足に熱を加えます。こんどはフィードバックが掛かっているので直流の電位は当然変化しない。電源から流れる電流は先と一緒で50mA程度増加します。加熱を止めると電流は減っていき定常状態に。この実験結果から何か確定的なことが言える訳ではないが、それほど酷いことは起こらないだろう。多分...
元々の基板のICの所から信号を引っ張り出して、コネクターで接続します。基板のハウジングへの収納も問題ない。
これに実験用電源を接続して耳栓型ヘッドホンを刺して聞いてみる。ボリュームを絞った状態では何も聞こえない。LM4880よりも静かなものがやっとできました。しかしこれで終わるほど甘くは無かった。
USBのスイッチング電源に変えたところノイズが聞こえる。TDA2822よりは遥かにマシだが電池駆動のLM4880のヘッドホンアンプよりも少々うるさい。別のUSB電源にすると雑音も変わる。ううむ。これではワザワザ製作した意味がない。電源のせいにするのは簡単だが、PSRRによる抑圧があるハズだ。ということで簡単なところから調べる。まずは5Vのラインにより強力なLCフィルターを多段に入れてみた。ほとんど効果なし。電源ラインに乗ったノーマルモードノイズが主因ではないようだ。次にコモンモードチョークを5V/GNDに入れてみるが全く効果なし。可能性は低いがLM385を抵抗に変えてデカいキャパシターを入れてみるも変化なし。
次に考えられるのはグランドの共通インピーダンス。そこで電源ラインのグランドを製作した基板に直接繋いでみた。そうするとハム性の雑音が消えた。ノイジーな電源のリターンと信号がグランドを共用していることが原因と判明。ハム性以外の雑音は本体基板の470uFのバイパスキャパシターを流れるノイズ電流が本体基板上で信号グランドを流れるのが原因。470uFを撤去して実験用電源と同様に静かになった。それからケーブルの外皮を指で触れるとハムが出てくる。アンプの入力インピーダンスは47kだがカップリングしてノイズを拾うようだ。
結局コネクターを2ピン増やして入力信号グランドとスピーカ出力グランドと電源グランドの3系統に分離、これでスイッチング電源でも静かになった。念のため入力はシールドケーブルに変更、指で触っても問題ない。それからインダクターを80uHのものにして、470uFの代わりに1000uFを製作した基板に載せて完成。本体の基板もグランドの分離に対応するように切り貼り。効果は不明だがボリュームのハウジングを信号グランドに落とす。また元々の基板に付いていたZobel回路はそのまま流用。
さて、入力をグランドに接続してボリュームを回すと雑音が出て来る。真ん中付近で最大となり、絞り切った時と回し切ったときは何も聞こえない。絞り切るとボリュームの中点すなわちアンプの入力はグランドに落ちる。回し切ると外部でやはりグランドに落ちる。要するに信号源抵抗の雑音が出て来るようだ。アンプの入力から雑音電流が流出しているのかも。大したレベルではないし気にしないという考えもあるし出来ることは限られているが検討してみた。
ボリュームはBカーブの50kで次の図でRHとRLはボリュームの位置で値が変わる。RBはバイアス抵抗で47k。ここに外部抵抗RXをボリュームのRH/RLと並行に取り付けて信号源抵抗RSを下げる。ここで//は抵抗の並列の意味。RIは信号源から見た回路の入力抵抗。
信号源抵抗RSはいくらでも下げることが出来るが、同時に入力抵抗RIも下がる。RIは10k-50k程度が多いらしいので、この値が10k程度となるRXの値はRX=20k程度となる。RX=20kのときのRIの値はボリュームの位置によって変わり次の表のようになる。また信号源抵抗RSは最大で5k程度。なお元々の最大値は10k程度です。
またボリュームの回転位置とレベルの関係は(RL//RX//RB)/RIとなり計算すると次のグラフとなる。途中の変化が緩慢で使いにくそうだが、まあいいか。
ということで20kΩをボリュームと並列に取り付けたところ少しだけ静かになりました。
さてさて、これで終わりだと楽なのだがまだ続きがあります。スピーカに付属のUSB電源ケーブルを見たところ異常に細い。抵抗を測ってみると0.7Ωもある。行きと帰りで1.4Ω。一体幾ら電流を流すつもりでケーブルを選んでるんだろう。製品の箱には最大出力1Wとある。I*I*4=1とするとピークで流れる電流はI=0.5A、ステレオだと1Aとなり電圧降下は1.4V。最大で出せる電圧は(5-1.4)/2=1.8V。1W時のピーク電圧はE*E/4=1とすると2Vとなり1.8Vよりも大きい。つまり箱に書かれた最大出力をステレオで出すのは不可能ということ。またUSB2の規格では取れる電流は0.5AでUSB3で0.9A、USB BCで1.5A。恐らく1Wというのは、ステレオ合計のことなのだろう。当方の設計でも1A程度流れるのでこのケーブルを使うのは論外。ついでに左のスピーカに行くケーブルも調べたところ0.4Ωある。これも行き帰りで0.8Ω。1500円の製品の出来というものが良く理解できる。
結局スピーカーケーブルをAWG20に変更し、本体の裏側に穴を二個開けて一個は電源の入力用、もう一つはオーディオの入力用としました。これで入力にシールドケーブルが使える。
このスピーカーにビデオから信号を入れたところ最大ボリューム位置で普通のレベル。1.5倍では少々ゲインが小さかったようです。まあ使用に不都合はないので、ゲインの変更は次回にメンテをする必要が起きた時にやることにします。
ということでノイズの酷かったスピーカーがとても静かになりました。
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2023/09/18 01:44:57