2014年10月14日
ダッソー・ラファールにおける翼幅荷重と余剰推力(余剰パワー率)について
相変わらず、素晴らしい機動性と運動性を兼ね備えたデモフライトを実施しているダッソー・ラファールです。時にはプラス11Gとも12Gとも荷重が掛ける事が出来る戦闘機は、まず有り得ません。
ですが、これは瞬間的な荷重指数の一旦。戦闘機はいかに維持出来る荷重が出来るかが、ドッグファイト時においてのパラメーターと考えていいでしょう。特にこのダッソー・ラファールやユーロファイター・タイフーン、サーブJAS39グリペンなどは無尾翼デルタ翼に前翼カナードを装備した、3.5世代機のコンフィギュレーション。だが、いかに高機動を誇る無尾翼デルタ翼とは言っても欠点もあるのも確か。それが何かを示すためにちょっとお話を。これが理解出来れば、空自航空祭等でのF-15やF-2の機動性、運動性がしたたかさと何故かというのがちょっとでも理解出来れば幸いと思います。また、これは民間旅客機にも反映することなので、これが理解出来れば、現代の旅客機が双発機が多いのかが分かると思います。
まず、戦闘機がドッグファイト時において、その性能を発揮出来るパラメーターが翼幅荷重と余剰推力(余剰パワー率)です。ただ、翼幅荷重については幾つかの論文があるので、ここでは一般的な翼幅荷重の式を出します。
まず、その前に航空機のとって厄介なのが空気抵抗。これには空気抵抗=形状抵抗+誘導抵抗で表します。つまり
空気抵抗=Sq(C100+Cl2/πeA)=CdoSq+(W2/b2)(1/πeq)となります。
S:空気抵抗 W:重量 Cdo:形状抵抗係数 b:翼幅 q:動圧 e:空力効率とします。
つまり、この場合の誘導抵抗は翼幅荷重の二乗に比例する、あるいは翼幅荷重に比例すると言うことになります。ですが・・・
一般的に使われるのは重量/翼幅2=翼面加重/アスペクト比で表します。
ですが、実際に飛行中の飛行機の運動性は単純な推力重量比ではなく、その飛行状態でどれだけ余剰推力率(SPCIFIC EXCESS THRUST)、余剰パワー率(SPCIFIC EXCESS POWER)を持っているかで決まります。
余剰推力率=SET=α=(T-D)/Wあるいは余剰パワー率=SEP=Ps=V(T-D)/Wとなります。
α:加速 D:抵抗 V:速力 W:重量 T:エンジン推力 RC:上昇率となるわけです。
余剰推力率(SET)はその状態からの加速能力を表し、余剰パワー率(SEP:Ps)はエネルギー運動能力、上昇余力(RC)を示し、つまり余剰パワー率が大きければ加速にも上昇にも自由に活用出来ます。また、旋回に伴う抵抗増加に打ち勝って上昇旋回、維持旋回と自由に空戦機動が出来ると言うわけです。
そこでSEP、Psの式を展開すると
Ps=TV/W-(1/2)[1/W/S](CdoPV3)-(W/b2)(2/πepV2)となります。
これは推力重量比T/Wが大きくすればPsは大きくなるが、W/b2を低くすることも大切で旋回中にはWがnWとなる(nは荷重倍数)からT/Wの効果はnが大きくなると急激に低下し、W/b2(翼幅加重)の影響も大きくなる。だが、意外な事に翼幅加重が一定ならば、翼面加重を低くすると(翼面積を大きくする)、Psは上昇率は低下してしまいます。
翼幅荷重が大切な要素になっているのは戦闘機だけではなく、人力飛行機のような限られたパワーで飛行する機体では翼幅荷重の低下が鍵となります。また、YS-11のような旅客機でも片発停止の際にも、速やかな離陸上昇性能を得るためにも低い翼幅荷重が必要となります。
つまり、空気抵抗をいかに小さくするブレンテッドウィングボディの採用と主翼端からの誘導抵抗減少のためのウィングレットの採用、常に最適化出来る揚抗比を確保するためと静安定性重視による運動性確保の為のフライ・バイ・ワイヤの採用はそのためでもあります。
戦闘機も旅客機も考える事は結局、同じと言う事になります。そこで今の旅客機が双発機が多いのはエンジンやパイロンによる誘導抵抗減少の為です。その為には推力30t~45t級のスラストパワーが必要だったという訳です。
かなり、長文になりましたが、いかに現代の航空機テクノロジーが空力理論に基づいて設計、開発、製造されているかが理解出来れば幸いですね。
・・・分かった?(^^;)
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Posted at
2014/10/14 20:35:03
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